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むく
ふりがな文庫
“
酬
(
むく
)” の例文
季子は剣を墓にかけて、故人の意に
酬
(
むく
)
いたと云うから、余も
亦
(
また
)
「猫」を
碣頭
(
けっとう
)
に献じて、往日の気の毒を五年後の今日に晴そうと思う。
『吾輩は猫である』中篇自序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
飛んでもない
悪戯者
(
いたずらもの
)
へ、あらゆる方法で捕獲の手が試みられた。だが、彼はそれに対してトンボや綱渡りを
酬
(
むく
)
いて見せるだけだった。
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼等の忠告のすぐその後で、すぐその場へ行くといふ事が、彼等に対する憤懣の唯一の
遣
(
や
)
り
場
(
ば
)
であり、彼等に
酬
(
むく
)
いる唯一の道なんだ!
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
新聞の受売からグット思い上りをした
女丈夫
(
じょじょうぶ
)
、しかも気を使ッて一飯の恩は
酬
(
むく
)
いぬがちでも、
睚眥
(
がいさい
)
の
怨
(
えん
)
は必ず報ずるという
蚰蜒魂
(
げじげじだましい
)
で
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
願くは、本校の恩人及び諸君は、余の不学短識を捨ててその熱心を取り、余をして知己の人に
酬
(
むく
)
ゆるの一端を得せしめよ(喝采)。
祝東京専門学校之開校
(新字新仮名)
/
小野梓
(著)
▼ もっと見る
必らず
酬
(
むく
)
ふべしと思ふ程ならば、酬はずして
自
(
おのづ
)
から酬ゆるものを。必らず忘れじといふ恩ならば、忘るゝとも自から忘るまじきを。
哀詞序
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
併し其が、唯の同時代人としての好しみからに過ぎない程、此側の人々の努力は、詩の神から
酬
(
むく
)
いられるに値して居ない様である。
歌の円寂する時
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
お作は柳町まで来て、
最中
(
もなか
)
の折を一つ買った。そうしてそれを風呂敷に包んで
一端
(
いっぱし
)
何か
酬
(
むく
)
いられたような心持で、元気よく
行
(
ある
)
き出した。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
僅々
(
きんきん
)
二、三年の知己の恩に
酬
(
むく
)
いるに、その後四十年の長い間、かつて変ることなかりしブラームスの好意は
褒
(
ほ
)
められるべきものである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
今我が枕頭に座って居ったとすれば我はこれに
酬
(
むく
)
いるに「馬鹿野郎」という
肝癪
(
かんしゃく
)
の一言を以てその座を
逐払
(
おいはら
)
うに止まるであろう。
病牀苦語
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
そうして、どうぞ私の言葉をも信じて下さい。あなたの今までの苦労なぞは、これからさきの幸福の一秒間で永遠に
酬
(
むく
)
われます。
世界怪談名作集:07 ヴィール夫人の亡霊
(新字新仮名)
/
ダニエル・デフォー
(著)
王大いに喜び諸臣に
告
(
い
)
えらく、もし能く灌頂刹帝大王の命を救う者あらば何を
酬
(
むく
)
うべきやと。諸臣さようの者には半国を与うべしと
白
(
もう
)
す。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そこで無理やりに千金を
押付
(
おしつけ
)
て、別に二百金を中間に立って
取做
(
とりな
)
してくれる人に
酬
(
むく
)
い、そして贋鼎を
豪奪
(
ごうだつ
)
するようにして去った。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
先見の明は、奇禍を以て
酬
(
むく
)
いられたり。彼は
蟄居
(
ちっきょ
)
申し附けられたり、彼の『三国通覧』『海国兵談』はその
板木
(
はんぎ
)
さえも取り上げられたり。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
おそらく一日の口賃はわずかなものでありましょうが、そういう人たちの仕事を見ていると、沢山
酬
(
むく
)
いてやらねばすまない心地がします。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
春陽堂新支配人磯部節治君の強硬な勧誘を
斥
(
しりぞ
)
けることができず、その取捨を一任する約束で、同氏の好意に
酬
(
むく
)
いるほかはなかつたのである。
「花問答」後記
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
土人の惨めさ、等々。しかし、此の公開状は、冷笑を以て
酬
(
むく
)
いられたに過ぎなかった。大小説家の驚くべき政治的無知、
云々
(
うんぬん
)
。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
一つには恩に
酬
(
むく
)
ゆるため、一つには君等が邪魔をするために、国家の大事を誤ると慨いている——それが気の毒で、頼みを引受けたまでじゃ
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
父との再会に当って、云いたいこと、聞きたいことの数々の期待をもっていたが、実際にはその期待は一つも
酬
(
むく
)
われなかった。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
凍る身体に
鞭
(
むち
)
打ちつつ、人にも知られず
酬
(
むく
)
いられることも
少
(
すくな
)
いこういう仕事に黙々と従事するのもまた男子の本懐であろう。
満洲通信
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
かれらの帰って行くところに彼らの一日の勉学を
酬
(
むく
)
ゆるための美しい幸福と慰藉とが、その広い温かい翼をひろげているようにさえ思われた。
幼年時代
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
沼南の五十年の政治家生活が
終
(
つい
)
に台閣の椅子を
酬
(
むく
)
いられなかったのは沼南の志が世俗の権勢でなかったからばかりではない。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
私は太子や私の印度の友人たちに私の義憤と同情を伝え私に対する侮辱に
酬
(
むく
)
いるためにはこの野郎と英語で渡り合う必要を感じたのであった。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
武官系で参議級の人物をいただこうと思い、わざわざ指名したその人への要望が、カラフト
抛棄
(
ほうき
)
論となって
酬
(
むく
)
いられていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
労苦が
酬
(
むく
)
われて、次第に、社会的地位が出来、責任のある立場に就くようになったとき、金五郎をもっとも悲しませたものは、無学であった。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
親の因果が子に
酬
(
むく
)
うとやら、何にも知りません子供たちにまで(涙をふき)
饑
(
ひも
)
じいめをさせます、
何方
(
どちら
)
と云って知っている人もございませんで
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
手品には手品をもって
酬
(
むく
)
いると言った明智は、あらかじめこのことあるを察して、昼のうちにちゃんとマネキンを注文しておいたのに違いない。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
葉子は木部のあわてかたを見ると、車内で彼から受けた侮辱にかなり小気味よく
酬
(
むく
)
い得たという誇りを感じて、胸の中がややすがすがしくなった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
友人と思って始終まいりますから、お座敷の出入りも許していただければ、今日までの志が
酬
(
むく
)
いられた気がするでしょう
源氏物語:40 夕霧二
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
我らはヨブが悪を
以
(
もっ
)
て悪に
酬
(
むく
)
いたと見たくはない。万一にもしかりとせば、我らはそれを学ばぬように
力
(
つと
)
めねばならぬ。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
子供
(
こども
)
には
罪
(
つみ
)
がありません。みんな
大人
(
おとな
)
の
犯
(
おか
)
した
悪
(
あく
)
の
酬
(
むく
)
いです。どうか、
世間
(
せけん
)
にそのことがわかってもらいたいのです。
子供は悲しみを知らず
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その時はこういう訳で少し心配がありますとかこういう事を聞きましたとかその原因を話して先方の疑問に明答を与えるのがその親切に
酬
(
むく
)
ゆる礼だ。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
モシモ僕以外ノ男性ガ彼女ノアノ長所ヲ知ッタナラバ、ソシテ僕ガソノ天与ノ幸運ニ十分
酬
(
むく
)
イテイナイヿヲ知ッタナラバ、ドンナヿガ起ルデアロウカ。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
あなたが雇人にいくら寛大であり、いくら
酬
(
むく
)
いられるからといって、彼等が自分の女に二十ギンの散歩服を買ってやれる身分だとは考えられますまい。
白銀の失踪
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
彼の金力を
罵
(
ののし
)
った自分達丈を苦しめる丈なら、まだいゝ、罪も
酬
(
むく
)
いもない老いた父を、苦しめる相手の非道を、心の底より憎まずにはいられなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
この砂糖店は幸か不幸か、繁昌の
最中
(
もなか
)
に閉じられて、陸は世間の同情に
酬
(
むく
)
いることを得なかった。家族関係の上に除きがたい
障礙
(
しょうがい
)
が生じたためである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
桂木は其の
病
(
や
)
まざる
前
(
ぜん
)
の性質に
復
(
ふく
)
したれば、貴夫人が
情
(
なさけ
)
ある贈物に
酬
(
むく
)
いるため——
函嶺
(
はこね
)
を越ゆる時汽車の中で
逢
(
あ
)
つた同窓の学友に、
何処
(
どちら
)
へ、と問はれて
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
甲走
(
かんばし
)
るきいの声は、焔と煙とを
衝
(
つ
)
いて、板屋の棟にいる宮内に届いた、宮内はゲラゲラと、精力を一途に集めたような、笑い声を上から浴せかけて
酬
(
むく
)
いた。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
我もこれに
酬
(
むく
)
ゆるに相手を
軽蔑
(
けいべつ
)
しあるいは
馬鹿者視
(
ばかものし
)
したりせず、最善を尽すべしと決心する。双方が共に相許し合い、尊敬と同情をもって結びつけられる。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「世界で日本、日本で粕谷」に拍手喝采した諸君は、此時破顔一笑、
会心
(
かいしん
)
のさざめきを以て
酬
(
むく
)
うてくれました。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
とにかく自分の心持だけはいい機会に打明けて、先方からもはっきりした言葉を
酬
(
むく
)
いられたいと願っていた。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
そは人々なかりせば、我は或は
饑渇
(
きかつ
)
の爲めに
苦
(
くるし
)
められけんも計り難きが故なり。我が人々の爲めに身にふさはしき
業
(
わざ
)
して、恩義に
酬
(
むく
)
いんとせしことは幾度ぞ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
もつて彼の愛に
酬
(
むく
)
いた後の彼は彼の主張に立もどつて肉の衝動を感ずる時にだけは彼は配偶者らしい愛情をもつて私を遇したけれども肉の対象なしに霊だけで私を
岩野清子氏の『双棲と寡居』について
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
一朝政権を握れば憲政会自身がまた官僚主義者たることにおいて同じ穴の
貍
(
むじな
)
であることを
掩蔽
(
えんぺい
)
し、寺内、後藤二氏から受取った悪罵以上の悪罵を以て
酬
(
むく
)
いながら
選挙に対する婦人の希望
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
“ドイツ軍の長距離砲
敢
(
あ
)
えて
恐
(
おそ
)
るるに
足
(
た
)
らず、われまた、更に一歩進んだ新長距離砲をもって
酬
(
むく
)
いん!”
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ダメス王の鼻は王の生前に於て眼や口その他の動的表現係より受けたる恩義に
酬
(
むく
)
ゆるために王の死後
鼻の表現
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
今少し余も心をひきしめ情を曲げて、その高嘱に
負
(
そむ
)
かぬようにし、知己の感に
酬
(
むく
)
ゆべきであったろう。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
せめて石さえ存在すれば「誰か」の「何か」であるぐらいな手繰りにはなる、人の唇より
酬
(
むく
)
われた
語
(
ことば
)
に曰く、「こんな邪魔なもの
抛
(
ほう
)
り出せ」これで一切の結末がついた
梓川の上流
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
が、結局噛みつくような眼で
酬
(
むく
)
い
返
(
かえ
)
されるだけで、彼女は幾度か引き下らねばならなかったのだ。
絶景万国博覧会
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
岸本が彼女に忸々しく仕向けたことは、
必
(
きっ
)
とその同じ仕向けでもって、彼女はそれを夫に
酬
(
むく
)
いた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
酬
常用漢字
中学
部首:⾣
13画
“酬”を含む語句
献酬
報酬
応酬
應酬
無報酬
獻酬
一矢酬
一酬
人質酬
冷酬
報酬金
恩酬
相酬
賡酬
酬報
酬恩庵