ことば)” の例文
旧字:
小村は蟇口がまぐちから一枚の紙幣をつまみ出して相手に握らせた。放浪者はひどく辞退していたが、熱心な小村のことばに動かされてしまった。
流転 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
理は道理の理——これを言明するのことばの意味を理解する能力のある者は、この言明に同意せざるを得ないものを公理というのであるが
「ねえ金さん、それならお気に入るでしょう?」とお光は笑いながら言ったが、亭主の前であるからかことば使いが妙に改まっている。
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
あらゆる謝罪のことばをならべたが——巌流は耳がないように、見向きもせず、仲間ちゅうげんしぼらせた手拭で、顔など拭いて平然としていた。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いさめの道を知らでことばをあらくして人にさからい、みだりにいえば人怒りて必ず聞きいれず。人に益なくしてわが身のわざわいとなる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わたくしは京水を説き、其父文孝堂玄俊、其伯父錦橋、錦橋の妻沢、錦橋の養嗣子霧渓等に及び、これがために多くのことばを費した。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
古来日本国の上流社会にもっとも重んずるところの一大主義を曖昧糢糊あいまいもこかん瞞着まんちゃくしたる者なりと評して、これに答うることばはなかるべし。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
以前から善く聴きなれている「業突張ごうつくばり」とか「穀潰ごくつぶし」とかいうようなことばが、彼女のただれた心のきずのうえに、また新しい痛みを与えた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
かどわかして逃げたと、みんなそう信じている。よく聞いてみると、なるほどそう信ぜられても弁解のことばがないほど、すべてが符合するのだ
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
などとことばをかけたり水を汲んでやったり致しますが、妙なもので若い女が手桶ておけを持ってくと「姉さん汲んで上げましょう」と云いますが
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
其詩やことば自在じざいにして、意を立つる荘重、孝孺に期するに大成を以てし、必ず経世済民の真儒とならんことを欲す。章末に句有り、曰く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
世に売れている人たちの仕事場などに比べては見るかげもないほどの手狭てぜまな処、当り前ならば、こっちからことばを低くして訪問もすべきであるのを
さればボーモントおよびフレッチャーの『金無い智者』にも不思議に好景気な人を指して、精魂が鼠か妖婆の加護を受くるでないかということばがある。
土人などはそういってとがめられると非常にことばを低うし内々賄賂わいろでもやるのかどうか仕舞しまいには通って行ってしまうです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そういう質問をする毎に、「まだ定まっていないのです」と、謙遜のことばを以て答えられる。この方面でもアマチュアを以て、自ら任じて居られるらしい。
小酒井不木氏スケッチ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いや、船のことは、わたしにまかせておいてください。あなたは、ロンドンに入港してのちの歓迎にこたえることばなど今から考えて置かれるがいいでしょう」
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
天地自然の哀切なるものに応へようとする挨拶のことばさへ見失つてしまふ普段の愚かさを愧ぢたのであつた。
痩身記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
ことに私をば娘のやうに思ひ、日頃ひごろの厚きなさけは海山にもたとへ難きほどに候へば、なかなかことばを返し候段にては無之これなく、心弱しとは思ひながら、涙のこぼれ候ばかりにて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「その方は儒書を読んでおりながら、自分の身を検束することを知らないで、みだらなことばを吐いて、我が官府をそしるとは、何事だ、その方を犁舌獄りぜつごくへ下すからそう思え」
令狐生冥夢録 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
重井おもいの変心を機として妾を誑惑たぶらかさんの下心あるが如くなお落ち着き払いて、この熱罵ねつばをば微笑もて受け流しつつ、そののち数〻しばしばい寄りては、かにかくと甘きことばろう
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
この答に対して彼は「本当にインディード!」というより他にことばがなかった。誠に当時の米国人(今もなおしかり)の日本の基督信者に対する態度はたいていかくのごときものであった。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
答うべきことばを知らざるように、老婦人はただ太息といきつきてかしらを下げつ。ややありて声を低くし
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
兄が此様このやうねんことばを鄭寧にしてものを頼んだ事は無いので、貢さんは気の毒に思つた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
夫はこれほどの志望こころざしになうに、すこしも不足のない器量人であると、日頃の苦悩も忘れ果て、夫の挨拶のことばの終りに共にうやうやしく頭をさげると、あまりの嬉しさに夢中になっていたために
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
希臘ギリシャの昔ゼノが足のきアキリスと歩みののろい亀との間に成立する競争にことばを託して、いかなるアキリスもけっして亀に追いつく事はできないと説いたのは取も直さずこの消息である。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さも毒々しいことばで書き連ねて、匿名でその子供の親に送ったものがありました。
融和促進 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
エヘン、そんならその古語、すなわちこれは『易経えききょう』に在ることばだが、「其臭如蘭」と云うこの蘭はそもそも何か。それは正に菊科植物に属する Eupatorium 属中のフジバカマよ。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
安藤は告別のことばの中で「三年一万九百日」と誤つて言つた。その女教師は三年の間この学校にゐたつたのだ。それ以来年長としかさの生徒は何時もこの事を言つては、校長を軽蔑する種にしてゐる。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
隗の帽子は巡回して渠の前に着せるとき、世話人はことばひくうして挨拶あいさつせり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
現身うつせみの常のことばとおもへどもぎてし聞けば心まどひぬ (同・二九六一)
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
滔々とうとう数千言を費して、丁寧親切にクリトーンにむかって、正義の重んずべきこと、法律の破るべからざることを語り、よりてもって脱獄の非を教え諭したので、さすがのクリトーンもついことばなくして
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
翁の作に芭蕉を移辞うつすことばといふ文あり、そのをはりのことば
ことばの過ぎたるかな」と。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
洞源和尚にことばもない。
疑獄元兇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
大坂の石山本願寺も、三好笑岩みよししょうがん松井友閑まついゆうかんを使者として、ともあれ、友好的なことばと、贈り物を供えに来た。信長は、その人々にも
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしはさきに蘭軒を叙しをはつた時、これに論賛を附せなかつた如くに、今叙述全く終つた後も、復総評のためにことばを費さぬであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
空々しいようなことばをかけて、茶をいれたり菓子を持って来たりして、何か言出しそうにしている父親の傍に、じっと坐ってなぞいなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
大「いや是は恐入ったことで……斯様な御心配を戴く理由わけもなし、おことばのお礼で十分、どうか品物の所は御免をこうむりとう、思召おぼしめしだけ頂戴致す」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
例の仙太とお照なり。二人はひしと抱合いたるまま、互いにことばもなく、ひたぶる運を天に任す折から、何者とも知れず、やにわに戸板に取附きて
片男波 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
くまでに酷言こくげんせずともなどといささか不平もありながら、さりとて何と答弁のことばもなくして甚だ苦しきことなるべし。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
一に私意を以て邪詖じゃひことばを出して、枉抑おうよくはなはだ過ぎたり、世の人も心また多く平らかならず、いわんやその学をそうする者をやと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ことばを厚うし、身を謙下へりくだっても後学のために見ておきたいと思っていたところでありましたが、神尾があんまり我物顔わがものがおに思わせぶりをするものだから
英語のうちうまことばがある、日本の詩や歌にも美いのがあるけれども、私は今日卒業なされる方々にお別れの言葉として、私のごく好きな詩の一句がある
人格の養成 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
また「同一のものが同時に二つの場所にあり得ない」というのがある。これも同一・同時、二つの場所ということばがわかれば、この言明に同意せざるを得ない。
想ひを寄せる勇士の頭上にふりかけながら彼等のいさほしを乞ひ希ふ「首途かどでの泉」として、また、凱歌を挙げて引きあげて来た戦士が、「市の歓迎のことば」を享ける表象として
山彦の街 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
私もさう御迷惑に成る事は望みませんです、せめて満足致されるほどのおことばを、唯一言ひとことで宜いのですから、今までのお馴染効なじみがひにどうぞ間さん、それだけお聞せ下さいまし
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
はだえ艶にことば潔く妙相奇挺きてい黒白短なく、肥痩所を得、才色双絶で志性金剛石ほど堅い上に、何でも夫の意の向うままになり、多く男子を産み、種姓劣らず、好んで善人を愛し
退社といふことばが我ながらムカムカしてる胸に冷水ひやみづを浴せた様に心に響いた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
てうの新聞はれも決闘ぢやうの写真をはさんで種種いろ/\と激賞のことばを並べて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
すべて至尊に対し奉ると同様の尊敬のことばを用いているのである。
国号の由来 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)