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足蹴
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あしげ
ふりがな文庫
“
足蹴
(
あしげ
)” の例文
しかし、重苦しく
足蹴
(
あしげ
)
りに出来ないものは、
却
(
かえ
)
ってしがない職人である彼自身の内にあった。これもやっぱり
一聯
(
いちれん
)
の支配者なのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
覚悟したれば身を
交
(
かわ
)
して、案のごとく
踵
(
かかと
)
をあげたる、彼が
足蹴
(
あしげ
)
をば
外
(
そら
)
してやりたり。蒲団持ちながら座を立ちたれば、
拳
(
こぶし
)
の
楯
(
たて
)
に
差翳
(
さしかざ
)
して。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
束帯
(
そくたい
)
の
裾
(
すそ
)
が、同時に、長い
弧
(
こ
)
をえがいた。すかさず、べつな武者へも宮は
足蹴
(
あしげ
)
をくれるやいな、だっと、元の階段のほうへ、一躍しかけた。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ぐたりと伸びるところを、半纏男は足をもってずるずると堀ばたに引張ってゆき、
足蹴
(
あしげ
)
にしてどーんと堀の中になげこんだ。
東京要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
源は
腹愈
(
はらいせ
)
のつもりで、
路傍
(
みちばた
)
の石を
足蹴
(
あしげ
)
にしてやった。尊大な源の
生命
(
いのち
)
は名誉です。その名誉が身を離れたとすれば、残る源は——何でしょう。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
足蹴
(
あしげ
)
にして追い出すわけにもゆかず、まあ、赤の他人の罹災者をおあずかり申すつもりで、お前たちを黙ってこの家に置いてやる事にしたのだ。
冬の花火
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
陸軍主計
(
りくぐんしゅけい
)
の軍服を着た牧野は、
邪慳
(
じゃけん
)
に犬を
足蹴
(
あしげ
)
にした。犬は彼が座敷へ通ると、白い背中の毛を
逆立
(
さかだ
)
てながら、
無性
(
むしょう
)
に
吠
(
ほ
)
え立て始めたのだった。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
イリヤー・ペトローヴィッチがここに来ていて、おかみをぶっているのだ!
足蹴
(
あしげ
)
にしたり、頭を段々へぶっつけたりしている——それは
明瞭
(
めいりょう
)
だ。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
私は
足蹴
(
あしげ
)
にされ、台所の揚け板のなかに押しこめられた時は、このひとは本当に私を殺すのではないかと思った。私は子供のように声をあげて泣いた。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
マンハイムはしいて笑い出した。クリストフはそれを後ろから
足蹴
(
あしげ
)
にしようとした。マンハイムは腹をかかえて笑いながら、テーブルの後ろに逃げ込んだ。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
さう言つちや済まないけれど、育てた恩も聞飽きてゐるわ。それを
追繰返
(
おつくりかへ
)
し、
引繰返
(
ひつくりかへ
)
し、
悪体交
(
あくたいまじ
)
りには、散々聴せて、
了局
(
しまひ
)
は口返答したと云つて
足蹴
(
あしげ
)
にする。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
さればこそ、われら、夢の
覇絆
(
きづな
)
を破りて、
諸
(
もろ/\
)
の偶像を
足蹴
(
あしげ
)
にし、
十字架
(
クルス
)
をもちて、
十字架
(
クルス
)
を抱かむかな。
頌歌
(旧字旧仮名)
/
ポール・クローデル
(著)
お庄は剛情に坐り込んで、
薪片
(
まきぎれ
)
で打たれたり、
足蹴
(
あしげ
)
にされたりしている母親の様子を幾度も見せられた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そしてこの箱は、幾度も幾度も
足蹴
(
あしげ
)
にされたのでした(でも、あとで分る通り、この箱は悪い箱でしたから、そうして足蹴にされたりするのが当り前だったのです)
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
「推参な、下郎の分際で武士たるものの魂を
足蹴
(
あしげ
)
にした
不埒
(
ふらち
)
な奴、刀の手前、許すわけには相成らん」
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
転んだ小虎は古杭で、横腹を打って、
顛倒
(
てんとう
)
した。それをお鉄は執念深くも、
足蹴
(
あしげ
)
にして、
痰唾
(
たんつば
)
まで吹掛けた。竜次郎はつくづく此お鉄の無智な圧迫に耐えられなく成った。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
彼らは
足蹴
(
あしげ
)
に強い。彼らはあらゆる方面に成長をなし得る。彼らは
溝
(
どぶ
)
の中で遊んでいる、けれど騒動があるとすっくと立ち上がる。
霰弾
(
さんだん
)
の前にもたじろがないほど豪胆である。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
いくら
仕
(
し
)
がない芸人でも、女から
手切
(
てぎれ
)
を貰って引込むような男だと、高をくくられたのが
口惜
(
くや
)
しいから、金は
突返
(
つっかえ
)
して、高慢ちきな
横面
(
よこつら
)
を
足蹴
(
あしげ
)
にして飛出そうと立ちかかる途端
あぢさゐ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
明
(
みん
)
の天子の墓を悪僧が掘って種〻の貴い物を奪い、おまけに骸骨を
足蹴
(
あしげ
)
にしたので
罰
(
ばち
)
が当って
脚疾
(
きゃくしつ
)
になり、その事遂に発覚するに至った読むさえ忌わしい
談
(
はなし
)
は雑書に見えている。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
なんでもないことに腹を立てて、この年上の娘を
撲
(
なぐ
)
ったり、
足蹴
(
あしげ
)
にしたりしたが、娘の方では一度も自分にはむかって来ようとはしない。ただ、少年にされるがままになっている。
三つの挿話
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
其の握飯を御老母に投付け、彦六爺に
悪口
(
あっこう
)
を云い、遂に御老母に皿を投付け、おつむりに疵が出来ました、
未
(
ま
)
だそれにても飽き足らず御老母を
足蹴
(
あしげ
)
に致すのを文治郎見ました故に
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
実にもって客観なるものを、かくまでに
足蹴
(
あしげ
)
にかける彼の主観は、正しくもまた極端なる内容本位をもって、
巍然
(
ぎぜん
)
として、しかも悠揚洒々その名画を生み続けたのである。(昭和六年)
牧渓の書の妙諦
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
磯部の玄関にて
生酔
(
なまよい
)
本性違はぬ処を示し、吾太夫を
足蹴
(
あしげ
)
にするも面白し。酒醒めし件にてひどく
恐入
(
おそれい
)
らせ、ここへ詫に出る主計之助がやはり酒乱にて誤をなせりといふも照応して好し。
明治座評:(明治二十九年四月)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
近くの月輪のひとりをダッ!
足蹴
(
あしげ
)
にしたかと思うと、その、はずみをくらって取りおとす大刀を拾い取るが早いか、やはり、のっそりの仁王立ちの、流祖自源坊案
不破水月
(
ふわすいげつ
)
のかまえ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「ふしだらな真似をして、後で後悔しないがいいよ」とソフィヤが言った、「聞いたろう、マーシェンカの話を。
足蹴
(
あしげ
)
にされる、
手綱
(
たづな
)
でひゅうひゅう打たれる。お前さんも用心おしよ。」
女房ども
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
おさんを
殴
(
なぐ
)
り、叩き倒し、
足蹴
(
あしげ
)
にかけた、——可哀そうに、おさんはあやまるばかりだった、自分ではなにも知らない、そんな男の名は知らない、夢中でわけがわからなくなっただけだ
おさん
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
足蹴
(
あしげ
)
にしたりしないという、フェア・プレイの精神のあらわれであろう。
比島投降記:ある新聞記者の見た敗戦
(新字新仮名)
/
石川欣一
(著)
彼れはいきなり女に飛びかかって、所きらわず殴ったり
足蹴
(
あしげ
)
にしたりした。女は痛いといいつづけながらも彼れにからまりついた。そして
噛
(
か
)
みついた。彼れはとうとう女を抱きすくめて道路に出た。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
私は彼女の鏡台を
足蹴
(
あしげ
)
にして踏折つた、針箱を庭に叩きつけた、一度他家に持つて行つたものを知らん顔して携へて来るなど失敬だと怒つて。さうして
性懲
(
しやうこ
)
りのない痴情喧嘩に
数多
(
あまた
)
の歳月をおくつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
乗円 (憂はしげに、長順に向ひ)御宗門を
足蹴
(
あしげ
)
に致いたな。
南蛮寺門前
(新字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
譲次は傷つける恋人を
足蹴
(
あしげ
)
にして、血の池地獄へ蹴り落した。
地獄風景
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その度毎に彼女は庄吉を打ったりまたは
足蹴
(
あしげ
)
にしたりした。
少年の死
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「えらそうに、野太刀なぞ横たえやがって、なんで、いい気持でわが
輩
(
はい
)
が寝ているところを、この大事な
禅杖
(
ぜんじょう
)
を
足蹴
(
あしげ
)
にしながら澄ましていくか」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「火の玉」少尉は重傷に屈せず、
奮然
(
ふんぜん
)
と立ち上った。そしてキンチャコフがピストルを握り直そうとしたところを、すかさずとびこんで
足蹴
(
あしげ
)
にした。
空中漂流一週間
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
が、さし身の角が寝たと言っては、料理番をけなしつけ、玉子焼の形が崩れたと言っては、客の食べ
余
(
あまり
)
を無礼だと、お姑に、重箱を
足蹴
(
あしげ
)
にされた事もあります。
山吹
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
土百姓
(
どびゃくしょう
)
めが、
大胆
(
だいたん
)
にも□□□□□□□□□□□(虫食いのために読み難し)とて伝三を
足蹴
(
あしげ
)
にかけければ、不敵の伝三腹を
据
(
す
)
え兼ね、あり合う
鍬
(
くわ
)
をとるより早く
伝吉の敵打ち
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
身長がもう二、三寸も伸びて身体つきがよくなることなら、後ろから
足蹴
(
あしげ
)
にされてもいとわなかったろう。その他の事においては、彼は自分自身にしごく満足していた。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
剛情なお島は、到頭
麺棒
(
めんぼう
)
で
撲
(
なぐ
)
られたり
足蹴
(
あしげ
)
にされたりするまでに、養父の怒を募らせてしまった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私から脱いで差上げなければならなかったのを、たとえ一枚でも欲しいと申した私の心が恥かしうございます……とこう申しますと、その人が、いきなり私を
足蹴
(
あしげ
)
に致しました。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ほかの人だったら、
足蹴
(
あしげ
)
にして追い散らしてしまったにちがいない。
畜犬談:―伊馬鵜平君に与える―
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼は相手がなに者だか知らなかったが、唾を吐きかけられた目明しは怒り、
十手
(
じって
)
でさんざんに打ちすえたのち、子分の者に栄二を縛らせ、
足蹴
(
あしげ
)
にしたり、
手桶
(
ておけ
)
の水をぶっかけたりして突き転がした。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そう思って、意外な
蹉跌
(
さてつ
)
に、無念な唇をかみしめた。そして、そこの薄のろ武士を、
足蹴
(
あしげ
)
にしても飽き足らなく思った。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
頭を
足蹴
(
あしげ
)
にされた。腹にも
載
(
の
)
った。
胸元
(
むなもと
)
を踏みつけては、駆けだしてゆく。あッ、
口中
(
こうちゅう
)
へ泥靴を……。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そら拳固だ、どッこい
足蹴
(
あしげ
)
だ、おっとその手を食うものか、その内に一人つんのめるね、ざまあ見やがれと、一々
合点
(
がってん
)
が出来ますだろう。どうです、強くなった証拠ですぜ。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「あなた私を
足蹴
(
あしげ
)
にしましたね。」お銀は険しいような目色をした。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
いや、
反
(
かへ
)
つてだん/\可愛がり始めて、しまひには若殿様でさへ、時々柿や栗を投げて御やりになつたばかりか、侍の誰やらがこの猿を
足蹴
(
あしげ
)
にした時なぞは、大層御立腹にもなつたさうでございます。
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「武士たるものの魂を
足蹴
(
あしげ
)
にするとは何事だ」
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ひどい乱打と
足蹴
(
あしげ
)
の
下
(
もと
)
に、捕われた男は大きな
呻
(
うめ
)
きを発したが、それが逃げるだけ逃げ廻っていたこの人間の猛然と立ち直った挑戦であったとみえ
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自転車を下りて見ていたんだが、爺の背中へ、
足蹴
(
あしげ
)
に砂を
打
(
ぶ
)
っかけて
遁
(
に
)
げて来たんだ。
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、お袖を
捉
(
とら
)
えて叩き伏せた。泣き狂い、泣きさけぶのを、わけも
糺
(
ただ
)
さず、二つ三つ、
足蹴
(
あしげ
)
をくれて、
悶絶
(
もんぜつ
)
させた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
足
常用漢字
小1
部首:⾜
7画
蹴
常用漢字
中学
部首:⾜
19画
“足”で始まる語句
足
足袋
足許
足下
足音
足掻
足駄
足利
足跡
足痕