もろ)” の例文
濃いもやが、かさなり重り、汽車ともろともにかけりながら、その百鬼夜行ひゃくきやこうの、ふわふわと明けゆく空に、消際きえぎわらしい顔で、硝子がらす窓をのぞいて
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
芹沢とお梅との寝ていたところの屏風はもろに押し倒されて、三人の黒装束はそれにのしかかると見れば、屏風の上から蜂の巣のように
ともすると夏はもろはだぬぎになったりして、当り屋仲間の細君が、以前から大家たいけだったように勿体もったいぶっているのと、歩調が合わなくなると
その急カーヴで機関車が全列車もろともに傾斜すると、レールが車輪の方へ猛烈に盛り上ったものだから、案外にも無事にそこを通過しました。
呼出よびいだしに相成しかば村役人ども并に三五郎妻おふみもろともに江戸表大岡殿御役宅やくたくまかり出しむねとゞけしによりやがて越前守殿の白洲へ呼入よびいれられ三五郎つまお文を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
馬の前脚をもろに立てて、茅野雄をその馬の脚のもとに、乗り潰そうと正面から、逼って来た一騎の郷民があった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一時間とたぬうちにこの船もろとも木葉微塵こっぱみじんにしてやるから、ゆっくり見物してるがいい……おい王、この餓鬼どもをふんじばって急いで仕事にとりかかろうぜ
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
横あいに明閃めいせんした十手のぬしへ、あっというまにもろ手づきの早業、刀身の半ばまで胸板に埋めておいて、片脚あげて抜き倒すとともに、三転——四転、また五転
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ひとりが突然、お蝶のえりがみへつかまると、ひとりは素早くもろ足を取って、彼女の体を浮かそうとする。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と金剛力を出して一振ひとふりすると恐ろしい力、鳥居は笠木かさぎ一文字いちもんじもろにドンと落ちた。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いわば月並つきなみの衣類なり所持品です。それがうまくこうを奏して隅田すみだ氏の妹と間違えられたのです。顔面のもろくだけたのは、神も夫人の心根こころねあわれみ給いてのことでしょう。僕は復讐を誓いました。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
日につのる寒さもちこたへもろの葉のかがやける見れば椎よ冬の葉
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
両方から攻める奴をもろうきすといいます。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
花崗閃緑 削剥の、 時代はもろあげつらふ。
文語詩稿 一百篇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
辞世 一 もろともにちぎりし事はなかばにて
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しろがねのくるるはきしり、もろとびら
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
断念あきらめたように、何の不足もないらしくさっぱりと言われたので、死なばもろともだ、と私もどっかり腰を落した。むっくり持上って、跡は冷たい。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこを、踏みこたえた泰軒、剣を棄てて四つに組む——と見せて、そくに腰をひねったからたまらない。あおりをくった岡崎兵衛、もろに手を突いて地面をなめた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
見屆て申すなり彌々いよ/\いはぬに於てはかうすると首筋くびすぢつかんで引摺出し力にまかせて板縁いたえん摺付々々すりつけ/\サア何だ坊主め白状しろ何處どこかくせしぞ但しは落したかと茂助ももろともに聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
袋はそのまま杖槍は腰に、猿が猿まわしに取っつくように、がんりきの背中へ御免とも言わずに飛びつくと、心得たもので、がんりきの百が、そのままもろに肩をゆすり上げて——
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
日につのる寒さもちこたへもろの葉のかがやける見れば椎よ冬の葉
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
がくれて、もろとびら
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
奪ひ取り行掛ゆきがけ駄賃だちんにしてくれんと獨り笑壺ゑつぼ入相いりあひかねもろともに江戸を立出たちいで品川宿の相摸屋へ上りのめうたへとざんざめきしが一寸ちよつとこに入り子刻こゝのつかね相※あひづに相摸屋を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
瞬く間に立蔽たちおおう、黒漆こくしつ屏風びょうぶ一万枚、電光いなびかりを開いて、風に流す竜巻たつまき馳掛はせかけた、その余波なごりが、松並木へも、大粒な雨ともろともに、ばらばらと、ふな沙魚はぜなどを降らせました。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つかえながら、横なぎの一刀、ふかく踏みこんできた一人の脇腹をもろに割りつけて
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
玉ぼこの道つくりびとすがすがし蕗と萱とをもろに刈りそぐ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
パッパ、チイチイもろきおいに歓喜の声を上げて、踊りながら、飛びながら、ついばむと、今度は目白鳥が中へまじった。雀同志は、突合つつきあって、先を争って狂っても、その目白鳥にはおとなしく優しかった。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
冬山は雑木のかげりゆふ早しけよとぞもろけしむ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
とて罪深つみふかさにへないため、もろともにかくす、とあつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とをの指もろ手挟たばさむ手裏剣のつぎつぎはやしうつ手は見えず
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ふと起る、この彼面かのも嘲笑あざわらふ人のもろこゑ。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)