)” の例文
気の毒にねと私が言うと「それが、——気の毒なわけではないんですよ。トコトンさんは金をゴマンとめ込んでいるんですからね」
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
海辺に住むミサゴという一種のたかはつねに魚類を捕え食い、余ったものはこれを海岸の岩石の水たまりの中に漬けてめておく。
動物の私有財産 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
「気保養だなんて、まだ/\そんな気楽な真似は出来ないよ。これからうんと稼いで金でもまつたのちの事なんだね、それは。」
が、私がお金をめたのは、正直な正しいり方ではなかったのです。私はお金を蓄めるのに、いろいろ悪いことをしました。
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そして、天下は、今、蓄財の使い時じゃで、わしと、調所が、せっせとめて、お前等兄弟に、使わせてやりたいのじゃ。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
野鍛冶のった小柄が、一本いくらに売れるかと考えれば、十年、つちの鬼になって稼いでも、二百両の金がまるかどうだか。百も、知っていた。
野槌の百 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わたくしが伺いましたところでは、あなたさまは、海産物とやらばかりではなく、上方、西国で、沢山にお米を買いめておいでなそうで——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
嫁に食べさせる物をおしんでめた金を寄附して、早晩滅亡する運命を持っている両本願寺のような迷信の府を愚かにも支持しようとするに過ぎない。
姑と嫁について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
彼は世界中で見集め、聞き集め、考えめた幸福の集成図を組み立てにかかった。妻もその道具立ての一つであった。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
もう長い間、五、六年このかた、彼は結婚という事を楽しい空想にしながら、それでも絶えず金をちびちびめて、時節到来を待っていたのである。
「おマンさん、慾のない人じゃなあ、五円出すというのじゃけ、売ったらよかろうに。五円なんて金、わたし等が、一年働いたって、まりゃせんのに」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
そんなら旦那様わしい一つお願いが有りやすだ、其処そこらに落ちてる廃物すたりものを拾いめて、それを売り、二文でも三文でも旦那様へ預けるから、安い利でいが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ドールン お金が? 開業して以来三十年、いいかね君、しかも昼もも自分が自分のものでない、落ちつかぬ生活をしてきて、めた金がやっと二千だぜ。
「ははあ、こいつはまた先祖は士分ではない、検校けんぎょうだ——検校が金をめて小旗本の株でも買ったんだろう」
教師をしていた間けちけちとめていた貯金もすっかり心細くなってしまい、寺田は大学時代の旧師に泣きついて、史学雑誌の編輯へんしゅうの仕事を世話してもらった。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
併し代々だい/″\学者で法談はふだん上手じやうず和上わじやうが来て住職に成り、とし何度なんどか諸国を巡回して、法談でめた布施ふせを持帰つては、其れで生活くらしを立て、御堂みだう庫裡くりの普請をもる。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
「おあ! おうさに言うなよ。お父うは、馬一匹買えるだけに、金をめてから知らせるべし。」
(新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
その二十人の不払い労働から、めて経営している会社の株のことを、電報がはいるとすぐに気にするだろう。遺族には、香典が二十円ずつぐらいは行くであろう。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
又人に物をれと云った事が一度も無いから付けた名前で、慈善小僧というのは、この小僧が貰った物の余りを決してめず他のあわれな者にもなく呉れてしま
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
何か描いた次手ついでに、この次手にこんな物を描いておこうと考えて、そして描いたものを一品々々めておいたのなどが、個人展に並んだら、却って面白かろうと思います。
双語 (新字新仮名) / 上村松園(著)
「この銅山やまには神様がいる。いくら金をめて出ようとしたって駄目だ。金は必ず戻ってくる」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何が力? その時死から私を守って呉れるのは金だけですよ、その金も、もう新しくめられる金ではない、一カペイカずつ消えて行く金、二度と我が手にはとりかえせない金です。
(新字新仮名) / 宮本百合子(著)
多分高の知れたものだったであったろう、もしそうでなく、沢山預けていたとすれば、め込むために若旦那からしぼっていたと云うことにもなる、と、婆やは云って、事に依ると
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
どういう御用か知らんが、何かお頼みの筋ならまアした方がいいでしょうよ。鋪石よりも冷い人ですからね。だがあの人もああして金をめこんだが、もう長いことはありますまい。
無駄骨 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
かうしてつむめた藕絲は、皆一纏めにして寺々に納入しようと言ふのである。寺には其々それ/″\技女ぎぢよが居て、其絲で、唐土様もろこしやうと言ふよりも、天竺風な織物を織るのだと言ふ評判であつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
嘘もなければいつわりもない。で分配はどこから見ても、一点の不公平もなかったのだ。三人ながら同じように、同じタカに分け合ったのだ。それを俺は上手に利用し、あるが上にもなおめた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかし十銭玉一つであろうが、一銭銅貨一枚であろうが、とにかく「塵一本」でも「自分のもの」としてめ込むことに無上の法悦(?)を感ずるRにとって、それは不可抗の誘惑だったに相違ない。
沼畔小話集 (新字新仮名) / 犬田卯(著)
俳優中村梅玉の楽みは、金をめるのと、夕方庭の石燈籠にを入れて、ゆつくりお茶をすゝるのと、この二つださうだ。
ふじの実の減りかたのはげしいのを見てもわかる。雉子は、藤の実をめて、食糧対策を講じるとじゃけ、遠方には行っとらん。もうすこし頑張ってみよう
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
広海屋火事の晩非業ひごうに倒れた浜川平之進と、相役をつとめて、賄賂不浄財わいろふじょうざいを取りめ、今は隠居を願って、楽々と世を送っている、横山五助その人なのだった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
大臣、関白からして、土地国有を無視し、諸国に私田をめこんで、わたくしに租税をしぼり取ってるのだ。地方の郡司や国司など、もちろんいい事にして、まねするさ。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分の屋敷だという地所を買い求めるぐらいの小金でも、どうにかしてめて来たいと思うから。
土竜 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
多「何でもハアすたりにはなんねえもので、釘かけでも拾いやんす、それを売って金をめやんす」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
西比利亜シベリアの形勢を他所よそに益々美しく大きくなっておられたが、セミヨノフ将軍が蹉跌さてつして巨大な国際的ルンペンとなり、ホルワット将軍が金をめて北平ペーピンに隠遁したあとは
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おれが銭をめて土地を買占めたと云ふ事が新聞に出た相だが、お前は読ま無かつたか。』
執達吏 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
もっともけちめているやつがあるかも知れないが、これは例外である。例外であるが蓄めていればそれだけの労力というものをあと繰越くりこすのだから、やはり同じ理窟りくつになります。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こうしてつむめた藕糸は、皆一纏ひとまとめにして、寺々に納めようと、言うのである。寺には、其々それそれ技女ぎじょが居て、其糸で、唐土様もろこしようと言うよりも、天竺風てんじくふうな織物に織りあげる、と言う評判であった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
「ぼちぼちのつもりじゃったとに、長い間には、まるもんじゃなあ。実は、久しぶりに、こうやって取りだしてみて、自分でもあきれとったところじゃ」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「てへッ、ただはおかんと、すさまじいや、てめえの屋敷じゃあ、賭場あらしをして、金をめたか」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おど! おらも、小金をめで、二三年のうぢには帰って来るがら、丈夫でいろな、父!」
土竜 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
善「極めた給金をめて、国へ帰る時の資本もとでにして、国のいえを立てるのじゃアないかえ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
伊勢は寂照寺の画僧月僊げつせんは乞食月僊と言はれて、幾万といふ潤筆料をめ込んだ坊さんだが、その弟子に谷口月窓といふ男がゐて、沈黙家むつつりやで石のやうに手堅いうまれつきであつた。
あっしゃこれで貴女あなた生命いのちがけのファンなんだよ。ドンナにヤバい思いをしても、貴女あなたの芝居ばっかりは一度も欠かした事はないし、ブロマイドだって千枚以上めているんだぜ。ハハ」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
師にお目にかかったら——と幾つもの疑問を宿題にして範宴は胸にめていたが、あまりに、彼が憔悴しょうすいしているさまを見たせいか、慈円僧正は、彼が、なにを問うても
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おあ! 俺が日傭ひでまで取って来たぜにだけはめでてけれ。馬を買うのだから。」
(新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
このような絵の直接御用命者にはる○○な方々もある。西洋人もある。間接の手を経て外国へも続々行くらしい。某ホテルのボーイ頭なぞはその仲介に立って大金をめていると聞く。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
それが大きな紙袋にまると、さいの目に切った寒餅や黒豆など加えて、母が砂糖煎りにしてくれたのを、ぼくらはあられと呼んで、冬の菓子によろこび合ったことだった。
「そう、嘆くな。嘆いたとて、どうなるものぞい。おぬし、金はめたじゃないか。金が、老いのつえ。これからは隠居して、花鳥風月を友としてのう……。それも、いいぞよ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むしろ、彼女の美貌びぼうまでが、養父のめている金と共に、呪咀じゅその的に見られていた。
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その山神様の白木の輿こしが、ここから八里も十里も先の山のやしろに、何年目かの順番が廻って来ると、据えられたもので、土民は、らせをうけると、稼ぎめた五穀やら、大事な娘までも
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)