トップ
>
蓄
>
た
ふりがな文庫
“
蓄
(
た
)” の例文
気の毒にねと私が言うと「それが、——気の毒なわけではないんですよ。トコトンさんは金をゴマンと
蓄
(
た
)
め込んでいるんですからね」
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
海辺に住むミサゴという一種の
鷹
(
たか
)
はつねに魚類を捕え食い、余ったものはこれを海岸の岩石の水たまりの中に漬けて
蓄
(
た
)
めておく。
動物の私有財産
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
「気保養だなんて、まだ/\そんな気楽な真似は出来ないよ。これからうんと稼いで金でも
蓄
(
た
)
まつた
後
(
のち
)
の事なんだね、それは。」
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
が、私がお金を
蓄
(
た
)
めたのは、正直な正しい
遣
(
や
)
り方ではなかったのです。私はお金を蓄めるのに、いろいろ悪いことをしました。
三人兄弟
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そして、天下は、今、蓄財の使い時じゃで、わしと、調所が、せっせと
蓄
(
た
)
めて、お前等兄弟に、使わせてやりたいのじゃ。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
▼ もっと見る
野鍛冶の
鍛
(
う
)
った小柄が、一本いくらに売れるかと考えれば、十年、
槌
(
つち
)
の鬼になって稼いでも、二百両の金が
蓄
(
た
)
まるかどうだか。百も、知っていた。
野槌の百
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「わたくしが伺いましたところでは、あなたさまは、海産物とやらばかりではなく、上方、西国で、沢山にお米を買い
蓄
(
た
)
めておいでなそうで——」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
嫁に食べさせる物を
吝
(
おし
)
んで
蓄
(
た
)
めた金を寄附して、早晩滅亡する運命を持っている両本願寺のような迷信の府を愚かにも支持しようとするに過ぎない。
姑と嫁について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
彼は世界中で見集め、聞き集め、考え
蓄
(
た
)
めた幸福の集成図を組み立てにかかった。妻もその道具立ての一つであった。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
もう長い間、五、六年このかた、彼は結婚という事を楽しい空想にしながら、それでも絶えず金をちびちび
蓄
(
た
)
めて、時節到来を待っていたのである。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
「おマンさん、慾のない人じゃなあ、五円出すというのじゃけ、売ったらよかろうに。五円なんて金、わたし等が、一年働いたって、
蓄
(
た
)
まりゃせんのに」
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
そんなら旦那様
私
(
わし
)
い一つお願いが有りやすだ、
其処
(
そこ
)
らに落ちてる
廃物
(
すたりもの
)
を拾い
蓄
(
た
)
めて、それを売り、二文でも三文でも旦那様へ預けるから、安い利で
宜
(
い
)
いが
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ドールン お金が? 開業して以来三十年、いいかね君、しかも昼も
夜
(
よ
)
も自分が自分のものでない、落ちつかぬ生活をしてきて、
蓄
(
た
)
めた金がやっと二千だぜ。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「ははあ、こいつはまた先祖は士分ではない、
検校
(
けんぎょう
)
だ——検校が金を
蓄
(
た
)
めて小旗本の株でも買ったんだろう」
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
教師をしていた間けちけちと
蓄
(
た
)
めていた貯金もすっかり心細くなってしまい、寺田は大学時代の旧師に泣きついて、史学雑誌の
編輯
(
へんしゅう
)
の仕事を世話してもらった。
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
併し
代々
(
だい/″\
)
学者で
法談
(
はふだん
)
の
上手
(
じやうず
)
な
和上
(
わじやう
)
が来て住職に成り、
年
(
とし
)
に
何度
(
なんど
)
か諸国を巡回して、法談で
蓄
(
た
)
めた
布施
(
ふせ
)
を持帰つては、其れで
生活
(
くらし
)
を立て、
御堂
(
みだう
)
や
庫裡
(
くり
)
の普請をも
為
(
す
)
る。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
「お
母
(
か
)
あ! お
父
(
ど
)
うさに言うなよ。お父うは、馬一匹買えるだけに、金を
蓄
(
た
)
めてから知らせるべし。」
馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
その二十人の不払い労働から、
蓄
(
た
)
めて経営している会社の株のことを、電報がはいるとすぐに気にするだろう。遺族には、香典が二十円ずつぐらいは行くであろう。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
又人に物を
呉
(
く
)
れと云った事が一度も無いから付けた名前で、慈善小僧というのは、この小僧が貰った物の余りを決して
蓄
(
た
)
めず他の
憐
(
あわ
)
れな者に
惜
(
お
)
し
気
(
げ
)
もなく呉れて
終
(
しま
)
い
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
何か描いた
次手
(
ついで
)
に、この次手にこんな物を描いておこうと考えて、そして描いたものを一品々々
蓄
(
た
)
めておいたのなどが、個人展に並んだら、却って面白かろうと思います。
双語
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
「この
銅山
(
やま
)
には神様がいる。いくら金を
蓄
(
た
)
めて出ようとしたって駄目だ。金は必ず戻ってくる」
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何が力? その時死から私を守って呉れるのは金だけですよ、その金も、もう新しく
蓄
(
た
)
められる金ではない、一
哥
(
カペイカ
)
ずつ消えて行く金、二度と我が手にはとりかえせない金です。
街
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
多分高の知れたものだったであったろう、もしそうでなく、沢山預けていたとすれば、
蓄
(
た
)
め込むために若旦那から
搾
(
しぼ
)
っていたと云うことにもなる、と、婆やは云って、事に依ると
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
どういう御用か知らんが、何かお頼みの筋ならまア
止
(
よ
)
した方がいいでしょうよ。鋪石よりも冷い人ですからね。だがあの人もああして金を
蓄
(
た
)
めこんだが、もう長いことはありますまい。
無駄骨
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
かうして
績
(
つむ
)
ぎ
蓄
(
た
)
めた藕絲は、皆一纏めにして寺々に納入しようと言ふのである。寺には
其々
(
それ/″\
)
の
技女
(
ぎぢよ
)
が居て、其絲で、
唐土様
(
もろこしやう
)
と言ふよりも、天竺風な織物を織るのだと言ふ評判であつた。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
嘘もなければ
偽
(
いつわ
)
りもない。で分配はどこから見ても、一点の不公平もなかったのだ。三人ながら同じように、同じタカに分け合ったのだ。それを俺は上手に利用し、あるが上にもなお
蓄
(
た
)
めた。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
しかし十銭玉一つであろうが、一銭銅貨一枚であろうが、とにかく「塵一本」でも「自分のもの」として
蓄
(
た
)
め込むことに無上の法悦(?)を感ずるRにとって、それは不可抗の誘惑だったに相違ない。
沼畔小話集
(新字新仮名)
/
犬田卯
(著)
俳優中村梅玉の楽みは、金を
蓄
(
た
)
めるのと、夕方庭の石燈籠に
灯
(
ひ
)
を入れて、ゆつくりお茶を
啜
(
すゝ
)
るのと、この二つださうだ。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
藤
(
ふじ
)
の実の減りかたのはげしいのを見てもわかる。雉子は、藤の実を
蓄
(
た
)
めて、食糧対策を講じるとじゃけ、遠方には行っとらん。もうすこし頑張ってみよう
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
広海屋火事の晩
非業
(
ひごう
)
に倒れた浜川平之進と、相役をつとめて、
賄賂不浄財
(
わいろふじょうざい
)
を取り
蓄
(
た
)
め、今は隠居を願って、楽々と世を送っている、横山五助その人なのだった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
大臣、関白からして、土地国有を無視し、諸国に私田を
蓄
(
た
)
めこんで、
私
(
わたくし
)
に租税をしぼり取ってるのだ。地方の郡司や国司など、もちろんいい事にして、まねするさ。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分の屋敷だという地所を買い求めるぐらいの小金でも、どうにかして
蓄
(
た
)
めて来たいと思うから。
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
多「何でもハア
廃
(
すた
)
りにはなんねえもので、釘かけでも拾いやんす、それを売って金を
蓄
(
た
)
めやんす」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
西比利亜
(
シベリア
)
の形勢を
他所
(
よそ
)
に益々美しく大きくなっておられたが、セミヨノフ将軍が
蹉跌
(
さてつ
)
して巨大な国際的ルンペンとなり、ホルワット将軍が金を
蓄
(
た
)
めて
北平
(
ペーピン
)
に隠遁したあとは
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
『
己
(
おれ
)
が銭を
蓄
(
た
)
めて土地を買占めたと云ふ事が新聞に出た相だが、お前は読ま無かつたか。』
執達吏
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
もっとも
吝
(
けち
)
で
蓄
(
た
)
めている
奴
(
やつ
)
があるかも知れないが、これは例外である。例外であるが蓄めていればそれだけの労力というものを
後
(
あと
)
へ
繰越
(
くりこ
)
すのだから、やはり同じ
理窟
(
りくつ
)
になります。
道楽と職業
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こうして
績
(
つむ
)
ぎ
蓄
(
た
)
めた藕糸は、皆
一纏
(
ひとまと
)
めにして、寺々に納めようと、言うのである。寺には、
其々
(
それそれ
)
の
技女
(
ぎじょ
)
が居て、其糸で、
唐土様
(
もろこしよう
)
と言うよりも、
天竺風
(
てんじくふう
)
な織物に織りあげる、と言う評判であった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
「ぼちぼちのつもりじゃったとに、長い間には、
蓄
(
た
)
まるもんじゃなあ。実は、久しぶりに、こうやって取りだしてみて、自分でも
呆
(
あき
)
れとったところじゃ」
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
「てへッ、ただはおかんと、すさまじいや、
汝
(
てめえ
)
の屋敷じゃあ、賭場あらしをして、金を
蓄
(
た
)
めたか」
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
父
(
おど
)
!
俺
(
おら
)
も、小金を
蓄
(
た
)
めで、二三年のうぢには帰って来るがら、丈夫でいろな、父!」
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
善「極めた給金を
蓄
(
た
)
めて、国へ帰る時の
資本
(
もとで
)
にして、国の
家
(
いえ
)
を立てるのじゃアないかえ」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
伊勢は寂照寺の画僧
月僊
(
げつせん
)
は乞食月僊と言はれて、幾万といふ潤筆料を
蓄
(
た
)
め込んだ坊さんだが、その弟子に谷口月窓といふ男がゐて、
沈黙家
(
むつつりや
)
で石のやうに手堅い
性
(
うま
)
れつきであつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「
私
(
あっし
)
ゃこれで
貴女
(
あなた
)
の
生命
(
いのち
)
がけのファンなんだよ。ドンナに
危
(
ヤバ
)
い思いをしても、
貴女
(
あなた
)
の芝居ばっかりは一度も欠かした事はないし、ブロマイドだって千枚以上
蓄
(
た
)
めているんだぜ。ハハ」
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
師にお目にかかったら——と幾つもの疑問を宿題にして範宴は胸に
蓄
(
た
)
めていたが、あまりに、彼が
憔悴
(
しょうすい
)
しているさまを見たせいか、慈円僧正は、彼が、なにを問うても
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「お
母
(
が
)
あ! 俺が
日傭
(
ひでま
)
で取って来た
銭
(
ぜに
)
だけは
蓄
(
た
)
めでてけれ。馬を買うのだから。」
馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
このような絵の直接御用命者には
然
(
さ
)
る○○な方々もある。西洋人もある。間接の手を経て外国へも続々行くらしい。某ホテルのボーイ頭なぞはその仲介に立って大金を
蓄
(
た
)
めていると聞く。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
それが大きな紙袋に
蓄
(
た
)
まると、
賽
(
さい
)
の目に切った寒餅や黒豆など加えて、母が砂糖煎りにしてくれたのを、ぼくらはあられと呼んで、冬の菓子によろこび合ったことだった。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「そう、嘆くな。嘆いたとて、どうなるものぞい。おぬし、金は
蓄
(
た
)
めたじゃないか。金が、老いの
杖
(
つえ
)
。これからは隠居して、花鳥風月を友として
喃
(
のう
)
……。それも、いいぞよ」
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
むしろ、彼女の
美貌
(
びぼう
)
までが、養父の
蓄
(
た
)
めている金と共に、
呪咀
(
じゅそ
)
の的に見られていた。
鍋島甲斐守
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その山神様の白木の
輿
(
こし
)
が、ここから八里も十里も先の山の
社
(
やしろ
)
に、何年目かの順番が廻って来ると、据えられたもので、土民は、
報
(
し
)
らせをうけると、稼ぎ
蓄
(
た
)
めた五穀やら、大事な娘までも
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蓄
常用漢字
中学
部首:⾋
13画
“蓄”を含む語句
貯蓄
含蓄
蓄財
蓄妾
蓄財家
蓄殖
蘊蓄
蓄音機
蓄膿症
蓄音器
蓄積
薀蓄
電蓄
蓄電池
蓄膿
蓄水池
蓄髯
蝋管蓄音機
蓄電器
貯蓄心
...