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肺腑
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はいふ
ふりがな文庫
“
肺腑
(
はいふ
)” の例文
美しい聲——少しうはづつて居りますが、人の
肺腑
(
はいふ
)
に透るやうな、一番印象づける美しい聲と共に、十八九の娘が飛込んで來ました。
銭形平次捕物控:048 お藤は解く
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
先年来の身をもってした経験が彼の
肺腑
(
はいふ
)
に徹していた。従って彼は、彼の胸中を知っている家臣の処置を、自分の処置と考えていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
聞書は話の
殆
(
ほとんど
)
其
儘
(
まゝ
)
である。君は私に書き直させようとしたが、私は君の
肺腑
(
はいふ
)
から流れ出た語の権威を尊重して、殆其儘これを公にする。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
金森、蜂屋のふたりは、今、北陸にある丹羽長秀の
麾下
(
きか
)
の将だ。秀吉は、長秀を味方にすべく、先頃から、
肺腑
(
はいふ
)
をくだいている
容子
(
ようす
)
だった。
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
どちらも遠くへだたったところから途切れ途切れに聞えて来るのだが、その声には
肺腑
(
はいふ
)
をしぼって
哭
(
な
)
くものの底知れぬなげきがこもっていた。
日本婦道記:松の花
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
兒玉
(
こだま
)
の
言々句々
(
げん/\くゝ
)
、
肺腑
(
はいふ
)
より
出
(
い
)
で、
其顏
(
そのかほ
)
には
熱誠
(
ねつせい
)
の
色
(
いろ
)
動
(
うご
)
いて
居
(
ゐ
)
るのを
見
(
み
)
て、
人々
(
ひと/″\
)
は
流石
(
さすが
)
に
耳
(
みゝ
)
を
傾
(
かた
)
むけて
謹聽
(
きんちやう
)
するやうになつた。
日の出
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
実際ルクレチウスに現われた科学者魂といったようなものにはそれだけでも近代の科学者の
肺腑
(
はいふ
)
に強い共鳴を感じさせないではおかないものがある。
ルクレチウスと科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それも、くねくねと曲がりくねった金くぎ流のおぼつかない文字で、一読
肺腑
(
はいふ
)
をえぐるような悲しい訴えと祈願が、たどたどしげに書いてあるのでした。
右門捕物帖:25 卒塔婆を祭った米びつ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「そうだなあ、味だな」鼈四郎は
哄笑
(
こうしょう
)
して、去り気ない様子を示したが、始めて人に
肺腑
(
はいふ
)
を
衝
(
つ
)
かれた気持がした。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
物語の進展に連れて沈痛な盲人の言語風貌が
髣髴
(
ほうふつ
)
として現れ来り、深く
肺腑
(
はいふ
)
に迫るものがあるのである。
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
幾多の顔の、幾多の表情のうちで、あるものは必ず人の
肺腑
(
はいふ
)
に入る。面上の筋肉が
我勝
(
われが
)
ちに
躍
(
おど
)
るためではない。頭上の毛髪が一筋ごとに
稲妻
(
いなずま
)
を起すためでもない。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夫人はと見ると、
遉
(
さすが
)
に彼の言葉が一々
肺腑
(
はいふ
)
を
衝
(
つ
)
いていると見えて、うなだれ気味に、黙々と聴いていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
肺腑
(
はいふ
)
の底から自分はこの暮れ行く地中海の
海原
(
うなばら
)
に対して、声一杯に美しい歌を
唄
(
うた
)
つて見たいと思つた。
黄昏の地中海
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
肺腑
(
はいふ
)
をつく、というのは、こういうときのことを言うのだろう。サト子は、いつもこの手でやられる。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
私はもっぱら女主人の同情に訴えるつもりで
肺腑
(
はいふ
)
の底から出る熱い息と一緒にかこち顔にそう言った。
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
この人の
肺腑
(
はいふ
)
に食い入って、身も心も迷わせてやれば、お城づとめがおろそかになるに相違ない。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「えーい、君少し注意したまへ!」と色を失つて飛んで来た川島先生は
肺腑
(
はいふ
)
を絞つた声で
眉間
(
みけん
)
に深い
竪皺
(
たてじわ
)
を刻み歯をがた/\
顫
(
ふる
)
はして叱つたが、頬を流れる私の涙を見ると
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
また
肺腑
(
はいふ
)
を刺す露骨な皮肉を言って、深い恨みを買うこともあった。そういう意地悪い言葉を言いたくなる時には、舌を
噛
(
か
)
んで口に出すまいとした。しかし間に合わなかった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
福士大尉は、アンの耳に口をつけて、
肺腑
(
はいふ
)
をしぼるような声で、最後の言葉を送った。
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ぼくにはよく解らないながら、川北氏の一言一句はネルチンスキイの
肺腑
(
はいふ
)
に
染
(
し
)
み
渡
(
わた
)
るとみえ、彼はいかにも
恐縮
(
きょうしゅく
)
した様子で、「I'm sorry.」を
繰返
(
くりかえ
)
しては
頷
(
うなず
)
いていました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
しかし、その無心の笑い声は、玄石の
肺腑
(
はいふ
)
を熊手で掻きむしるようだった。
二人の盲人
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
踏みはだけた膝の上に
両肱
(
りょうひじ
)
を突張って、二三度大きく唾を
嚥
(
の
)
み込むうちに、みるみる
蒼白
(
まっさお
)
な顔になりながら、物凄い
眼
(
まなこ
)
で相手を睨み付けた。唇をわななかせつつ
肺腑
(
はいふ
)
を絞るような声を出した。
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
敏
(
さとし
)
もとより
築山
(
つきやま
)
ごしに
拜
(
をが
)
むばかりの
願
(
ねが
)
ひならず、あはれ
此君
(
このきみ
)
が
肺腑
(
はいふ
)
に
入
(
い
)
りて
秘密
(
ひみつ
)
の
鍵
(
かぎ
)
を
我
(
わ
)
が
手
(
て
)
にしたく、
時機
(
をり
)
あれかしと
待
(
ま
)
つま
待遠
(
まちどほ
)
や、
一月
(
ひとつき
)
ばかりを
仇
(
あだ
)
に
暮
(
くら
)
して
近
(
ちか
)
づく
便
(
たよ
)
りの
無
(
な
)
きこそは
道理
(
だうり
)
なれ
暁月夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
職業軍人のだらしなさは敗戦日本の
肺腑
(
はいふ
)
を
抉
(
えぐ
)
る悲惨事である。
咢堂小論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
血まみれの
肺腑
(
はいふ
)
は落ちた、死魔の足下。
ルバイヤート
(新字新仮名)
/
オマル・ハイヤーム
(著)
いきなり
肺腑
(
はいふ
)
にながれ込んで
佐藤春夫詩集
(旧字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
美しい声——少しうわずっておりますが、人の
肺腑
(
はいふ
)
に透るような、一番印象づける美しい声と共に、十八九の娘が飛び込んで来ました。
銭形平次捕物控:048 お藤は解く
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
周防の言葉には
肺腑
(
はいふ
)
を刺すおもむきがあった。周防がそういう調子で、それほど思いきったことを云おうとは、涌谷どのも予想しなかったらしい。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
汝の
眼
(
まなこ
)
は、主君を見るに、なべて世にうとく、甘言によくうごき、下情には暗く、人の
肺腑
(
はいふ
)
を視るにはその
明
(
めい
)
なきものと、一様に心得おるらしい。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
肺腑
(
はいふ
)
を突きえぐるようなその声を、黙々として聞いていた泥斎が、とつぜん言い叫んだ声もろともに、がばとそこへひれ伏すと、意外な秘密を明かしました。
右門捕物帖:27 献上博多人形
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
言葉で現わされない人間の真相が躍然としてスクリーンの上に動いて観客の
肺腑
(
はいふ
)
に焼き付くのであった。
ニュース映画と新聞記事
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
もっと平岡を
動揺
(
ゆすぶ
)
る事が出来た。もっと彼の
肺腑
(
はいふ
)
に
入
(
い
)
る事が出来た。に違ない。その代り遣り損えば、三千代に迷惑がかかって来る。平岡と
喧嘩
(
けんか
)
になる。かも知れない。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は、
肺腑
(
はいふ
)
をしぼって
呶鳴
(
どな
)
りつけた。
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
が物々しい重圧も、いわゆる名曲的な
威嚇
(
いかく
)
もなく、直ちにわれわれの
肺腑
(
はいふ
)
に入って、シューベルトと共に歌わせなければやまない良さがあるのである。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
孔明の声は、一語一句、呉将の
肺腑
(
はいふ
)
にしみた。弔文は長い辞句と切々たる名文によってつづられ、聞く者、哭くまいとしても哭かずにいられなかった。
三国志:08 望蜀の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
口でかなわないのはわかりきっているが、なにか
肺腑
(
はいふ
)
を
抉
(
えぐ
)
るようなことを、一と言だけ云ってやりたいと思い、ふるえながら、なにを云ってやろうかと考えた。
赤ひげ診療譚:08 氷の下の芽
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼の悪い方の片目のまぶたとひとしく静かに
抑
(
おさ
)
えられている。それでいて正成のことばは、公卿列座のすべての者の
肺腑
(
はいふ
)
をドキッとさせたようだった。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
手負ながら、お嘉代の
烈々
(
れつれつ
)
たる
気魄
(
きはく
)
が、その打ち
湿
(
しめ
)
った言葉のうちにも、聴く者の
肺腑
(
はいふ
)
を
抉
(
えぐ
)
ります。
銭形平次捕物控:147 縞の財布
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
早々
(
そうそう
)
に駈けもどって
軍
(
いくさ
)
の手当てをいそぎまする。いちいちのおことばは
肺腑
(
はいふ
)
を刺し、これ以上の辱には座にも耐えられません。これにて、おいとまを」
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
手負乍ら、お嘉代の
烈々
(
れつ/\
)
たる
氣魄
(
きはく
)
が、その打ち
濕
(
しめ
)
つた言葉のうちにも、聽く者の
肺腑
(
はいふ
)
を
抉
(
ゑぐ
)
ります。
銭形平次捕物控:147 縞の財布
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と一ト声、それは辺りの
肺腑
(
はいふ
)
をも刺すような
劈
(
つんざ
)
きのまに、走り寄って、後醍醐のお胸へ、しがみついておられた。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
このうち、毒酒の方を呑めば、
肺腑
(
はいふ
)
を破つて立ちどころに死にますが、藥酒の方を呑めば、不老長壽とまでは行かずとも、神氣
爽
(
さはや
)
かに、百病立ちどころに癒えると申します
銭形平次捕物控:237 毒酒薬酒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
武蔵は、耳のないような顔をしていたが、彼の言葉が終るのを待って——そしてなお、磯打ち返す波音の間を
措
(
お
)
いてから——相手の
肺腑
(
はいふ
)
へ不意にいった。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
このうち、毒酒の方を呑めば、
肺腑
(
はいふ
)
を破って立ちどころに死にますが、薬酒の方を呑めば、不老長寿とまでは行かずとも、神気爽やかに、百病立ちどころに癒えると申します
銭形平次捕物控:237 毒酒薬酒
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
夏侯惇は感服して、おそらく魏王の
肺腑
(
はいふ
)
を見ぬいた言であろうと、ひそかにその旨をまた諸将へ告げた。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平次の言葉は、囁き加減ですが、噛んで含めるように、半蔵の
肺腑
(
はいふ
)
に喰い込んで行きました。
銭形平次捕物控:012 殺され半蔵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
白面蒲柳
(
はくめんほりゅう
)
の彼を
睥睨
(
へいげい
)
して、ふたたび道場の床に立った鐘巻自斎、その声はにわかに峻烈となり、木剣を
把
(
と
)
らぬ先に、
対手
(
あいて
)
の
肺腑
(
はいふ
)
を
抉
(
えぐ
)
りぬいて響いた。が、
谺返
(
こだまがえ
)
しに
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平次の言葉はこの上もなく静かですが、
釘
(
くぎ
)
を打ち込むように相手の
肺腑
(
はいふ
)
に響く様子です。
銭形平次捕物控:111 火遁の術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
門人の一人がさし出した笠を受け取って、静かに二歩、三歩道場から出ようとすると、不意に一同の耳を
劈
(
つんざ
)
き、自斎の
肺腑
(
はいふ
)
にも沁み入ったであろうほどな、大喝一声。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平次の言葉は此上もなく靜かですが、釘を打ち込むやうに相手の
肺腑
(
はいふ
)
に響く樣子です。
銭形平次捕物控:111 火遁の術
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
“肺腑”の意味
《名詞》
肺腑(はいふ)
肺。肺臓。
心の奥底。
急所。
(context、dated)みうち。
(出典:Wiktionary)
肺
常用漢字
小6
部首:⾁
9画
腑
漢検1級
部首:⾁
12画
“肺”で始まる語句
肺炎
肺
肺病
肺尖
肺結核
肺臓
肺肝
肺病患者
肺尖加答児
肺癆