あく)” の例文
あくる日はまる一日じゅう、諸方しょほうの訪問についやされた。新来の旅人はずこのまちのお歴々がたを訪問した。初めに県知事に敬意を表した。
そのあくる朝の事。元五郎親爺は素裸体に、鉈をしっかりと掴んだままの死体になって、鎮守さまのうしろの井戸から引き上げられた。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私が死んだあくる日、他所よそへ縁付いても不思議はないわけですが、私にしてみれば、同じ破談にするにしても、せめて半歳待って貰って
あくる朝総督へ電話で私の考えをお話ししましたところ、総督が非常に喜ばれて、今まで何十人と世界のプリマドンナがこの町に来たが
お蝶夫人 (新字新仮名) / 三浦環(著)
気の小さな浅之丞は、死様しにざまのむごたらしさをひどく気に病むでゐたが、そのあくる日から自分の腹のなかで猫の啼き声がすると言ひ出した。
あくあさ私が兄さんに向って、「昨夜ゆうべは寝られたか」と聞きますと、兄さんは首をって、「寝られるどころか。君は実にうらやましい」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どうか、もう一年、おゆるし下さい、と長兄に泣訴しては裏切る。そのとしも、そうであった。そのあくるとしも、そうであった。
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)
あくる朝十時、ロビイでお茶の時間が開かれた時、博士と伊藤豊治の二人は、さっぱりと身装みなりを改めて、片隅の卓子テーブルで熱い珈琲コーヒーすすっていた。
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あくる日には登勢ははや女中たちといっしょに、あんさんお下りさんやおへんか、寺田屋の三十石が出ますえと、キンキンした声で客を呼び
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
ちょっと小言は云ったものの大して叱りもしなかったが、今から思えば縮尻しくじりだった……と、あくは帯を貰う。その翌る日はかんざしを貰う。……
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あくる日になるとまた武蔵のほうから光悦に、刀のとぎや扱いについて教えを乞うと、光悦は自分の「御研小屋」へ彼を案内して
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お島はその一夜ひとよは、むかし自分の拭掃除ふきそうじなどをした浜屋の二階の一室に泊って、あくは、町のはずれにある菩提所ぼだいしょへ墓まいりに行った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
私の帰ったことを知らされた母もそのあくる朝早々やって来た。母も大分年をとって見えたが、今は身装みなりもきちんとしていた。
あくる朝眼を覚して見ますと、狸らしいものは、其所らあたりに一疋も居りません。自分が仔狸と一緒に、踊つたらしい跡形もありませんでした。
馬鹿七 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
そのいたずらは鐘楼から釣鐘を下ろして、それを山門の外へ持って行って打捨うっちゃったのであります。あくる朝になって寺の坊さんたちが驚きました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あくる明治五年以後の十カ年に一千万円とし、そのほか、開拓使内の租税収入その他は従前の通り使用することとなった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
妙義へ戻ったあくる日に、僕は再び赤座のところへ絵葉書を送って、仕事の都合で十月の末ごろまではこっちに山籠りをするつもりだと言ってやった。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
昼間は客が多いので、仕事はたいてい夜中だけれど、夜中の仕事は私には少々辛くなって来た。あくる日はおばけのような顔で、ふためとは見られない。
生活 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ところがあくる朝、露のおりてゐる郵便箱を主人が開けて見ると、最先まつさきに出たのがX—新聞だつた。夕方もさうである。そして翌朝も翌夕もその通り。
姉弟と新聞配達 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
そのあくる晩、二番目の息子は、同じやうにして、二ばん目の王女にだまされて、水のそこにしづんでしまひました。
湖水の鐘 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
そして、あくる朝は夜が明けるとスグに、歩き出しました。私の辿たどっている道は、最短距離のつもりでわざと、山の背伝いの細道を、分けていたのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
そのニュースが人々をおどろかしたのは、伸子と素子とが銀のスプーンのことから気分をこじらせて、口をきかないで床についたあくる朝のことである。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
あくる四月の末に死んだが、最後を秋の夜に聴いたゆえか、自分は小せんの死というと、あの若竹の秋の夜が、あの若竹の打ち水濡れし前栽が、目にうか
寄席行灯 (新字新仮名) / 正岡容(著)
そのあくる晩も、知らせが有ったら直に病院へ出掛ける積りで、疲れて眠っていると、遅くなって電報を受取った。
芽生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
昨晩血を吐いたと云ふ樣なあくる日は、傍から見てゐてもその身體がほそ/″\と消えていつて了うかと思ふ樣な、力のないぐつたりした樣子をしてゐた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
あくる日、眼がさめたときは、靄がしっとりと窓にせまって、庭のアベーテは、梢だけ墨絵のように、浮き出して見える。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
あくもいいお天気てんきで、お日様ひさまあお牛蒡ごぼうにきらきらしてきました。そこで母鳥ははどり子供達こどもたちをぞろぞろ水際みずぎわれてて、ポシャンとみました。
あくやうや下刻げこくになつて、ちやんと共揃ともぞろひをした武士ぶしあらためて愚老ぐらうむかへにえましたが、美濃守樣みののかみさまはもうまへごろ御臨終ごりんじうでござりまして。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それだのにあくる朝の七時にはもうその姿が見えなくなっていた。寝床も室の中もきちんとなったままであった。
あくる日、またおつもが痛み始めて——ちやうど二週間目になつてゐました——そいでおやすみになつたまゝ、もうお目覺めにやならなかつたんでございます。
叔父はそのあくる朝、沢山たくさんの同じ戦争に行く人と一緒に、私達の村はずれの停車場を通った。叔母も、祖父も、私の母も一緒に、構内に入って早くから待っていた。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
そしてこの菱沼さんの「いらいら」はあくる日まで持越されていたんです……もっとも無理もないんで、その問題の翌る日になって、いよいよ開廷時間が迫るまで
あやつり裁判 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
あくる朝、このなまづ醫者は、おきみと周三を、二階の居間へ呼び寄せた。彼はそこで朝酒をやつてゐた。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
それをふところにわたくしが相国寺の焼跡に立ったのは、あくる日のかれこれたつみの刻でもございましたろうか。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
あくる日。大納言は思案にかきくれ、うちもだえた。夜明けは、彼の心をしずめるために訪れはせず、恋と、不安と、たくらみと、野獣の血潮をもたらして、訪れていた。
紫大納言 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
あくる十七日の夕方左柳高次が早馬で馳せ付け私の前へ平伏して、姉さん、と云つたきり太息といきをついて居りますから、ては愈々と覚悟して、こみ上げる涙をじつと抑へ
千里駒後日譚 (新字旧仮名) / 川田瑞穂楢崎竜川田雪山(著)
あくる年の春、上野の花が散ってしまった頃、ある夜膳を下げに来た宿の主婦の問わず語りに、阪の下の荒物屋の娘が亡くなったと云う話をした。今日葬式が済んだと云う。
やもり物語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
S・S・Sの名が世間を騒がしたあくる年、タシカ明治二十三年の桜の花の散った頃だった。
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
あくる朝まで許可されてあるということなので、私は是が非でも泊ってくれるように頼んだ。
一月ちかく入院していた俵的はやっと退院したが、あくる年の秋になると、また同じ兆候ちょうこうがあらわれて入院した。それが次第に健康を恢復かいふくしてきたのは六つになってからである。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
あくる一日を宿屋に休息してゆうゆう傷の手当、刀のていれに費やして夕ぐれとともに石神を発足、くらい山道を足にまかせて、眠っている中納言様の御城下常陸ひたちの水戸を過ぎ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
小悪魔はあくる朝急いで燕麦の畑へ行きました。ところが燕麦はすっかり刈り倒してありました。イワンは麦粒のこぼれるのを少くするために、夜どおし刈ってしまったのでした。
イワンの馬鹿 (新字新仮名) / レオ・トルストイ(著)
お千代はこんな家へはあまり立寄らない方がいいと帰道かえりみちには思返しながら、あくる日になると女給の口をさがし歩くのがいやなのと行きどころがないのとでまた立寄って時間をつぶす。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
藩士尊攘派が追われたのちの京都へ、あくる文久四年(元治げんじ元)正月将軍は再び上洛し、右大臣従一位の叙位をうけ、朝廷に十五万俵を献じ「公武一和顕然」たるものだった。二月の綸旨りんじ
尊攘戦略史 (新字新仮名) / 服部之総(著)
あくる日が来ても、瑠璃子の容子は前日と少しも変らなかった。美奈子には、時々優しい言葉をかけたけれども、青年には一言も言わなかった。青年の顔に、絶望の色が、段々濃くなって行った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
そのあくる日から、ホテルの看板が、こんな風に書き変へられました。
川へおちた玉ねぎさん (新字旧仮名) / 村山籌子(著)
決闘の約束をするにしてもあくる朝は必ずチャンバラやったもんだ
あくる日一日寝て居たが痛みは益〻烈しくなるばかりであつた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
「御気分はいかがです?」とあくる日、医者が彼にたずねた。
あくる日一日、平次はガラッ八を鞭撻べんたつして、吉田一学の屋敷と、一学の娘百枝ももえの嫁入り先、金助町の園山若狭の屋敷を探らせました。