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秘
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かく
ふりがな文庫
“
秘
(
かく
)” の例文
旧字:
祕
その四巻の古目録というのは、一名
絵目録
(
えもくろく
)
ともいって、上泉伊勢守が自筆で、新陰流の
秘
(
かく
)
し
太刀
(
だち
)
を、絵と文章で書いたものであった。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「全く、知らないです。謂って利益になることなら、何
秘
(
かく
)
すものですか。またちっとも秘さねばならない必要も
見出
(
みいだ
)
さないです。」
海城発電
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
どこかで一緒にお茶でも喫んだらしいだけです。しかし妻は彼に会ったことは
秘
(
かく
)
していましたから、私は少しも知りませんでした。
消えた霊媒女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
わたくし自身も何を取得に
秘
(
かく
)
れた
素性
(
すじょう
)
のことなぞ自分で
強
(
し
)
いて掘り起しましょうぞ。そんな懸念は永遠に無くなったと思っていました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それがよしや暗黒の中に各々幽かに万物照応の理順を
秘
(
かく
)
してゐるとはいへ、鋭感な今の私には松の葉が如何に光り、檞が如何に戦慄し
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
▼ もっと見る
しばらく言い合ったが、お庄は
秘
(
かく
)
し
逐
(
おお
)
せないような気がした。そして
袂
(
たもと
)
で顔ににじみ出る汗を拭きながら、黙って裏口の方へ出て行った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「へえ、しかし、そいつは、黙つて
秘
(
かく
)
してるよりや、ましじやないか。少くとも、お前にとつては、うれしいことじやないか」
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
いつでも嬢様を尋ねるときは
面
(
おもて
)
に喜びの色輝やきて晴/\としてゐるが、
其
(
その
)
皮一重下に
秘
(
かく
)
るゝ苦痛は如何ばかりぞと思ふと実に同情する子。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
おたみの姿態と
容貌
(
ようぼう
)
とは、そのどこやらに、年を
秘
(
かく
)
している
半玉
(
はんぎょく
)
などによく見られるような、早熟な色めいた表情が認められたからである。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
この一件を
秘
(
かく
)
して置いて、どこからか急養子を迎えて、その上で主人の左京は死去したように披露すれば、なんとか無事に済まされない事もない。
半七捕物帳:61 吉良の脇指
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
支配人が賊を追って行くと、岩見はその宝石を見つけ、悪心を起し、
突差
(
とっさ
)
に敷物の下かなんかに
秘
(
かく
)
した、そうして仮死を
粧
(
よそお
)
うていたに違いありません。
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
「これはやはり、あなたが直接に奥さんにお訊ねになって、あなたに対して
秘
(
かく
)
されていたことを、話してもらうのが一番早道ではないかと思われますがね」
暗号舞踏人の謎
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
それじゃあおまえあんまりというものだよ、何もわたし達あおまえの
叔母
(
おば
)
さんに
告口
(
いつけぐち
)
でもしやしまいし、そんなに
秘
(
かく
)
し
立
(
だて
)
をしなくってもいいじゃあないか。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
おまえさんの
秘
(
かく
)
しごとを、あたしがちゃんと掴んでいることは、おまえさんがようく知っている。でも、今だって、それを歯の外に出しちゃあいないのだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
家の人は、この娘が普通の人間でないのを怖れて、世間にこのことを
秘
(
かく
)
そうとした。而して外に出して、勝手に生きた蛇や、蛙を食うのを止めようと思った。
薔薇と巫女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
『
秘
(
かく
)
すな!
何有
(
なあに
)
、解つてるよ、
確乎
(
ちやん
)
と解つてるよ。高が君等の行動が解らん様では、これで君、札幌はいくら狭くつても新聞記者の
招牌
(
かんばん
)
は出されないからね。』
札幌
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「彼らは自分たちが狙われているのを
秘
(
かく
)
そうとして、俺などを巻添えにするようだよ。どう考えても俺は自分が彼らより先に担がれようなどとは思われないよ。」
鬼涙村
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
これまで、良人の情事を慶太郎へだけはひた
秘
(
かく
)
しに秘してきただけに、夫人は今をとりかえしのつかぬことに思い、それを見せたのが自分の
所為
(
せい
)
のように愧入った。
女心拾遺
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
時にはそれを亨一にも
秘
(
かく
)
すことすらあつた。重大な豫報が何であるか、亨一には
略
(
ほぼ
)
推測がついた。
計画
(旧字旧仮名)
/
平出修
(著)
お人形が皆のいない間に歩いたり、物をいったりする事、だがそれを
秘
(
かく
)
す必要から、人の気配がすると、「稲妻のように」自分の席に飛び戻るのだという事などでした。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
そして母親が殺された其男を呪い、醜い記憶を持った間柄をどんなに
秘
(
かく
)
していたかを知っていた。
P丘の殺人事件
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
えゝ
秘
(
かく
)
したっていけません、
何
(
ど
)
んな山の中でも思う人と添うならばと云う、これは当り前で、吾妻川で布などを
晒
(
さら
)
して、合間に鯉こくの骨を取って種々な事をなさるんでしょう
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
無上の愛らしい形態のなかに
秘
(
かく
)
されている、この人類全体の過去の努力と永遠にわたる望みを、私たちは知らずしらずわれらの
幼児
(
おさなご
)
として
愛
(
め
)
でよろこんでいるのだと思われます。
おさなご
(新字新仮名)
/
羽仁もと子
(著)
何よりも僕の考えていることは、友人面をしてのさばりたくないことだ。君の手紙のうれしかったのは、そんな
秘
(
かく
)
れた愛情の支持者があの中にいたことだ。君が神なら僕も神だ。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
『
英語
(
えいご
)
で
云
(
い
)
ひ
給
(
たま
)
へ!』と
云
(
い
)
つて
小鷲
(
こわし
)
は、『そんな
長
(
なが
)
ッたらしい
事
(
こと
)
は
半分
(
はんぶん
)
も
解
(
わか
)
らない、
幾
(
いく
)
ら
云
(
い
)
つたつて
駄目
(
だめ
)
だ、
何
(
いづ
)
れも
信
(
しん
)
ずるに
足
(
た
)
らん!』
云
(
い
)
つて
微笑
(
びせう
)
を
秘
(
かく
)
すために
頭
(
あたま
)
を
下
(
さ
)
げました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
相手が実の兄である事を
秘
(
かく
)
いて、仇討をさせようとした……それを銀次が感付いて
骸骨の黒穂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
かの
墻
(
かき
)
を越えて
奔
(
はし
)
るなどの
猥
(
みだ
)
りがましき類ならねば、
将
(
は
)
た何をか包み
秘
(
かく
)
さんとて、
頓
(
やが
)
て東上の途中大阪の親戚に立ち寄らんとの意を
洩
(
も
)
らしけるに、さらばその親戚は
誰
(
た
)
れ町名番地は
如何
(
いか
)
になど
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
彼の胸ははだけて、寝衣の間から
蒼
(
あお
)
ざめた皮膚が浮び上るやうに眺められた。次の瞬間、彼女は全く別のことを考へてゐた。長い間
推
(
お
)
し
秘
(
かく
)
された一つの影響がこの時花さいたもののやうだつた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
『だが別に、
秘
(
かく
)
してゐたといふわけではない』
亡弟
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
もうこうなっては
秘
(
かく
)
してもおけないので、早速お寺の方へも使を走らせましたので、主なる檀家の人々も追々集ってまいりました。
むかでの跫音
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
腹部を袖で
秘
(
かく
)
すらしい、というだけでも、この話の運びを
辿
(
たど
)
って、読者も、あらかじめ
頷
(
うなず
)
かるるであろう、この
婦
(
おんな
)
は姙娠している。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「真っ先に、そちなどが、歓んでよいはずなのに……その当惑そうな顔いろは何事だ。……いや、何か、わしに
秘
(
かく
)
している事があるな」
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これだけは、云ふ必要がなければ云はずにおかうと思つたのだつたが、ここまで来ると、もう
秘
(
かく
)
しておくのが負担に思はれた。
双面神
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
そんな噂が世間にきこえると、自然商売の障りにもなる。かたがたこれは自分ひとりの胸に納めておく方がいいと考えて、家内のものにも
秘
(
かく
)
していた。
月の夜がたり
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
毒薬と云へばあの俺がある種類の予防に
納
(
しま
)
つて置いたあの甘汞を、何と間違へたか、蒼くなつて慌てて
秘
(
かく
)
して了つた俺の弟はほんとに可哀いい道化ものだ。
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
天保の
饑饉年
(
ききんどし
)
にも、普通の平民は余分の米を蓄える事が許されないで
箪笥
(
たんす
)
に米を入れて
秘
(
かく
)
したもんだが
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
亡くなった叔母の弟が田舎へ帰省するときお庄はその男と約束しておいて、自分で路費を少しばかり拵えて、叔父にも母親にも
秘
(
かく
)
して、磯野の田舎へ遊びに行った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私は人に
秘
(
かく
)
れて、これらの書物を繙く夜々、多少なりとも、あれらの荒唐無稽を在り得べき夢として身辺に感じ度い念願から、壁には長剣の十字を切つて飾りとなし
鬼の門
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
モ一つには、その二人が自分の紹介も待たずして
知己
(
ちかづき
)
になつたのが、訳もなく不愉快なのだ。
秘
(
かく
)
して置いた物を
他人
(
ひと
)
に勝手に見られた様な感じが、信吾の心を焦立せてゐる。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
出入の
秘
(
かく
)
し戸を、思い切って開けることが出来たのだが、こちらはそうはいかない——闇太郎は、油断のある男ではない上に、今夜は、つい鼻のさきに、目も耳もはしっこい
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
と
質
(
ただ
)
すと、源三は
術
(
じゅつ
)
無
(
なさ
)
そうに、かつは
憐愍
(
あわれみ
)
と
宥恕
(
ゆるし
)
とを
乞
(
こ
)
うような
面
(
かお
)
をして
微
(
かすか
)
に
点頭
(
うなずい
)
た。源三の腹の中は
秘
(
かく
)
しきれなくなって、ここに至ってその
継子根性
(
ままここんじょう
)
の
本相
(
ほんしょう
)
を現してしまった。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
中に二三の人からすず子にあてた極めて簡単な手紙が、すず子の心熱を
煽
(
あふ
)
るらしかつた。時にはそれを亨一にも
秘
(
かく
)
すことすらあつた。重大な予報が何であるか、亨一には略推測がついた。
計画
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
「怒ったのか。……おれは
秘
(
かく
)
していては悪いから正直にいってしまったが、おめえの身に取れば、いい気持はしないだろうからな」
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「全く、知らないです。いつて利益になることなら、何
秘
(
かく
)
すものですか。また
些少
(
ちっと
)
も秘さねばならない必要も見出さないです。」
海城発電
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
この矢先に又こんなことが世間に聞えてはよくないと、金兵衛は努めてそれを
秘
(
かく
)
して置こうとしたが、誰がしゃべるのか近所ではすぐに知ってしまった。
半七捕物帳:16 津の国屋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
るい 奥さまには、
秘
(
かく
)
す必要なんかございません。わたくしも、女ですもの。そんなことが一度ぐらゐあつたつて不思議はございますまい。申上げますわ。
顔
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
そして大抵の女なら
秘
(
かく
)
したがるような事までもずばずばと平気で先方からきり出すという風なのです。
機密の魅惑
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
警察では検挙したものを検挙しないと
秘
(
かく
)
す事は絶対にないので、全く警察にはいないようです
最後の大杉
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「嫌ならいゝよ。未だ此方に蘭丸や牛若丸や沢山あるんだけれど、そんなのをやらないばつかりだ。」浜田は
懐中
(
ふところ
)
から蘭丸の綺麗な顔を僅ばかりのぞかせて直ぐに
秘
(
かく
)
してしまつた。
蘭丸の絵
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
私の母は、何時でも「
那麽
(
あんな
)
無精な女もないもんだ。」と叔母を悪く言ひながら、それでも猶何に
彼
(
か
)
につけて世話する事を、怠らなかつた。或時は父に
秘
(
かく
)
してまでも
実家
(
さと
)
の窮状を援けた。
刑余の叔父
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
“秘”の意味
《名詞》
(ヒ) 秘密
(ヒ) 計り知れない奥深いところ。秘儀、奥義。
(出典:Wiktionary)
秘
常用漢字
小6
部首:⽲
10画
“秘”を含む語句
秘密
神秘
秘蔵
秘伝
秘訣
秘奥
秘事
秘術
内秘
秘中
秘法
秘帖
秘蹟
秘戯
心秘
秘藏
秘密室
秘曲
秘蔵娘
秘書
...