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矢鱈
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やたら
ふりがな文庫
“
矢鱈
(
やたら
)” の例文
近頃活躍し出した出版界が何々全集、何々叢書と
矢鱈
(
やたら
)
に金文字気分を煽るのは、主としてこの流行を当込んでいるものと考えられる。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
それで
謂
(
い
)
わば
矢鱈
(
やたら
)
に読んで見た方であるが、それとて矢張り一定の時期が来なければ、幾ら何と思っても解らぬものは解る道理がない。
私の経過した学生時代
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
むやみ
矢鱈
(
やたら
)
に、
淋
(
さび
)
しい、と言ったり、御前会議が、まるでもう同人雑誌の合評会の如く、ただ、わあわあ騒いで
怨
(
うら
)
んだり憎んだり
鉄面皮
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼は
掌
(
てのひら
)
でばたばたと鳥居の柱を敲きながら
矢鱈
(
やたら
)
に身体をも打ち付けた。打ち付け打ち付け
罵詈讒謗
(
ばりざんぼう
)
を極めて見たが鳥居は動かなかった。
或る部落の五つの話
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
躬恒のは
瑣細
(
ささい
)
な事を
矢鱈
(
やたら
)
に仰山に述べたのみなれば無趣味なれども家持のは全く無い事を空想で現はして見せたる故面白く被感候。
歌よみに与ふる書
(旧字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
▼ もっと見る
それでは御免
蒙
(
こうむ
)
って、
私
(
わし
)
は
一膳
(
いちぜん
)
遣附
(
やッつ
)
けるぜ。
鍋
(
なべ
)
の底はじりじりいう、
昨夜
(
ゆうべ
)
から気を
揉
(
も
)
んで酒の虫は揉殺したが、
矢鱈
(
やたら
)
無性
(
むしょう
)
に腹が空いた。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
うごめかして
白山
(
はくさん
)
の祭禮に勇を振ひて
女連
(
をんなづれ
)
の敵を驚かせしこと親父に追出されて信州の友を尋ね
矢鱈
(
やたら
)
婦人に思ひ付かれしこと智計を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
そして警句が出れば出る程、忘れる筈の一件が
矢鱈
(
やたら
)
無上
(
むしょう
)
に込み上げて、いくら振り落そうと
藻掻
(
もが
)
いても始末に悪い事になるのだ。
The Affair of Two Watches
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
自分も物を
矢鱈
(
やたら
)
に買う気だけは起らないといっても、ときどき理由もなくむらむらと怒ったり、夢を見ても匂いや色をはっきり感じたり
馬車
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
仏蘭西
(
フランス
)
語を知つて居る船頭が
其
(
それ
)
等の貴族の旧邸で今は美術品の製造所に成つて居る
家家
(
いへいへ
)
へ
矢鱈
(
やたら
)
に船を着けて記念の為に縦覧せよと勧める。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
「あツ、何をするのさ、又私をどうしようと言ふのだえ。——安岡つ引の癖にしやがつて、
矢鱈
(
やたら
)
に人を縛つてどうするんだ」
銭形平次捕物控:196 三つの死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
つまり書籍の偶像崇拝家で、書物さえ見れば
矢鱈
(
やたら
)
に御辞儀をしたり合掌したりする、ビブリオラートルと云う連中である。
愛書癖
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
神社
(
じんじゃ
)
に
祀
(
まつ
)
られたからと
申
(
もう
)
して、
矢鱈
(
やたら
)
に
六ヶ
(
むずか
)
しい
問題
(
もんだい
)
などを
私
(
わたくし
)
のところにお
持込
(
もちこ
)
みになられることは
固
(
かた
)
く
御辞退
(
ごじたい
)
いたします。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
矢鱈
(
やたら
)
に使つてはならないものだが、しかし場合によつては——例へば今なんぞには適したものです。ジエィン、水を少し。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
そう火事が
矢鱈
(
やたら
)
無性
(
むしょう
)
にあって堪るもんでございますか。さて品川
停車場
(
ステーション
)
より新橋へ帰るつもりで参って見ると、パッタリ逢ったはお若さんでげす。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「入湯の
際
(
きわ
)
だがね、このコスモスてえ花は——」と峰吉は
矢鱈
(
やたら
)
に人をつかまえて講釈をするのだ。コスモス——何という寂然たる病的な存在だろう。
舞馬
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
日比谷から死骸をアノ河岸まで担いで来る筈は無し、又海軍原でも無い、と云う者は海軍原へは
矢鱈
(
やたら
)
に
這入
(
はいら
)
れもせず
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
ところが、先生は煙草に餓えていて
矢鱈
(
やたら
)
に吸い込んだのですからね。たちまちこの有様です。もう踏んでも
蹴
(
け
)
っても眼をさますことじゃありませんよ
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と京子は叫んだが、其の痛みは彼女の意慾を更に
鞭
(
むち
)
打った。京子は直ぐさま窓に襲いかかり
矢鱈
(
やたら
)
にそこらを手探りした。盲目のように窓を
撫
(
な
)
で廻した。
春:――二つの連作――
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
これを数多い広告のなかから拾ひ出した米国の雑誌記者は、奇妙な広告だ、珍しい広告だ、滅多に見かけられない広告だといつて
矢鱈
(
やたら
)
に吹聴してゐる。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
なんでも一日の
中
(
うち
)
に一時間か二時間は無邪気に盛んに運動するが宜い。その方が勉強しても早く理解する。
矢鱈
(
やたら
)
に本を見てもどうかすると理解が出来ぬ。
始業式に臨みて
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
「それはさうであつたけれど、本當は、あなたの來る頃までと云つて置いたのに、誰れかいい人を待つてるからだらうと、
矢鱈
(
やたら
)
にお酒を飮んで動かないの」
泡鳴五部作:04 断橋
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
「賠償する事にしたって好いさ。どうせそうザラにある訳じゃないから。新聞はそんな方ばかり書くから
矢鱈
(
やたら
)
に多いようだが、そんなものじゃないからね」
支倉事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
剣士一統、
矢鱈
(
やたら
)
に柄を叩いて
敷台
(
しきだい
)
から
前庭
(
まえ
)
の植込み、各室へ通ずる
板廊
(
いたろう
)
のあたりをガヤガヤ押し廻っていると
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
本を読んだら理性を恢復するかと思つて、滅多
矢鱈
(
やたら
)
に本を読んだ。しかしそれは興味をもつて読んだのではなく、どうにもしやうがないから読んだのである。
我が生活
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
消しの出来たのを引裂いて二度の文言を案じる間に、同じく不思議が胸に浮んで、その消した紙へ、楷書行書艸書片仮名平仮名、何だか
矢鱈
(
やたら
)
に書きつゞけて
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
彼は煙をプカプカと
矢鱈
(
やたら
)
にふかし続けていたが、そのうちに椅子から飛びあがると、ハタと膝を打った。
流線間諜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
アノ書物へ
矢鱈
(
やたら
)
に孔を明けて喰い通して行くヤツは決してシミではない。これは甲虫の一種でその成虫は長サ三粍有るか無いか位な栗色をした小さいヤツである。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
「
礫
(
いし
)
でも入つたんかいな。一寸お待ち、
矢鱈
(
やたら
)
こすつたりしたらあかへん。わて今取つて上げまほ。」
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
さう、
矢鱈
(
やたら
)
に存在してゐる家ではない。大阪南区
内安堂寺町
(
うちあんだうじまち
)
二丁目、交番を西へ行つて、茶商と、おもち屋との間の露次を入ると、井戸のすぐ脇にあるのが、それである。
貧乏一期、二期、三期:わが落魄の記
(新字旧仮名)
/
直木三十五
(著)
泣き叫び乍らその胸に
犇
(
ひし
)
と抱きついた——それをちらりと見た時、彼は泣きも得ず只
地団太
(
ぢだんだ
)
を踏んで、なほ終り迄それを見続けようとする伯父の頭髪を滅多
矢鱈
(
やたら
)
にむしつた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
亨一は
矢鱈
(
やたら
)
に激昂した。此汚名は何の時にか
雪
(
すす
)
がねばならぬと思つた。それ故目前の争論を惹き起すまいとして耐忍の上にも耐忍をした此日の苦痛は心骨にしみ徹るのであつた。
計画
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
矢鱈
(
やたら
)
に吸つてゐる煙草の煙は、襖の隙間から洩れ出て、辰男の顏のあたりにも漂つた。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
十月頃の日本晴れの空の下にでも、一望尽る処なき瓦屋根の海を見れば、
矢鱈
(
やたら
)
に
突立
(
つった
)
っている電柱の丸太の
浅間
(
あさま
)
しさに呆れながら、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
東京は大きな都会であるという事を感じ得る。
銀座界隈
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
次にわれ等の仕事は、積極的の自主的意見に捕えられて、
矢鱈
(
やたら
)
に反対したり、又個人的欲望の奴隷となりて、白を黒と言いくるめたりするような人であっては、
殆
(
ほとん
)
ど何事も
為
(
な
)
し得ない。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
私の不精はだん/\昂じて来てこの頃でははがき一本かく事でさへおつくうなのです、ですから無論誰ともはなしもしませんし、聞きもしません、たゞ話たいこと
丈
(
だ
)
けが
矢鱈
(
やたら
)
にあります。
私信:――野上彌生様へ
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
つまりピアノ線の両端に
重錘
(
おもり
)
をつけたようなものを
矢鱈
(
やたら
)
と空中に打ち上げれば襲撃飛行機隊は多少の迷惑を感じそうな気がする。少なくも爆弾よりも安価でしかも却って有効かもしれない。
烏瓜の花と蛾
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
細目に開けた障子の隙間から、顔だけ出したお菊の声は、
矢鱈
(
やたら
)
に低かった。
曲亭馬琴
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
また良民の承知なしに
矢鱈
(
やたら
)
に人をつまみあげて掌に乗せることはできない。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
強い人間は
無暗
(
むやみ
)
に強く、弱い人間は
矢鱈
(
やたら
)
に弱く、悪い人間は何処
迄
(
まで
)
も悪く、善い人間は最後まで善い、こんな
塩梅
(
あんばい
)
に書かれている。講談式であり草双紙式である。本当の人間は書かれていない。
大衆物寸観
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
アンナ・ニコロが私を引ずって
矢鱈
(
やたら
)
に接吻する。愛の聖歌奏でて旋転する夢路たどっているようだ。苦もないアンナ・ニコロ私に身を委せながら。階段、万国の男女が酔いどれてはやしたてる。
恋の一杯売
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
学科は
何時迄
(
いつまで
)
経
(
た
)
っても面白くも何ともないが、
譬
(
たと
)
えば競馬へ引出された馬のようなもので、同じような青年と一つ
埒入
(
らちない
)
に鼻を列べて見ると、
負
(
まけ
)
るのが
可厭
(
いや
)
でいきり出す、
矢鱈
(
やたら
)
に
無上
(
むしょう
)
にいきり出す。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
しかしかれらは子供のくせに、
矢鱈
(
やたら
)
に魚釣りがうまかった。僕などにくらべて、いつも二倍か三倍も釣り上げてゆく。玄人級だ。身なりもよくないし、釣道具もお粗末なものだ。それでたくさん釣る。
魚の餌
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
助十 えゝ、手前こそ
矢鱈
(
やたら
)
に無駄口をきくぢやあねえか。
権三と助十
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
矢鱈
(
やたら
)
に仙人よばりせられんは余り嬉しき事にあらず。
人生の意義
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
ずり
落
(
お
)
ちた
崖土
(
がけつち
)
に、
無性
(
むしやう
)
矢鱈
(
やたら
)
に
匍
(
は
)
ひ
廻
(
まは
)
つたお
薯
(
いも
)
の
蔓
(
つる
)
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そうして
矢鱈
(
やたら
)
に変テコなお伽話を書いて人に見せたり、話して聞かせたりしたものでしたが、誰も相手にしてくれませんでした。
涙香・ポー・それから
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ひとりで、がぶがぶ酒のんで、そのうちに、幸吉を相手にして、
矢鱈
(
やたら
)
に難題を吹っかけた。弱い者いじめを、はじめたのである。
新樹の言葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
こう云う時には人間を見懸けて
矢鱈
(
やたら
)
にこすり付けるか、松の木の皮で充分摩擦術を行うか、二者その一を
択
(
えら
)
ばんと不愉快で安眠も出来兼ねる。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
大帝はいきなり主人の頭に拳骨を一つ
喰
(
くら
)
はして、そのまゝ外へ飛び出した。あとに残された主人は、壁の油虫のやうに椅子の上で
矢鱈
(
やたら
)
に手足をもがいてゐた。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
矢
常用漢字
小2
部首:⽮
5画
鱈
漢検準1級
部首:⿂
22画
“矢鱈”で始まる語句
矢鱈無性