近頃活躍し出した出版界が何々全集、何々叢書と矢鱈に金文字気分を煽るのは、主としてこの流行を当込んでいるものと考えられる。
街頭から見た新東京の裏面 (新字新仮名) / 夢野久作、杉山萠円(著)
私の経過した学生時代 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
The Affair of Two Watches (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「あツ、何をするのさ、又私をどうしようと言ふのだえ。——安岡つ引の癖にしやがつて、矢鱈に人を縛つてどうするんだ」
銭形平次捕物控:196 三つの死 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
矢鱈に使つてはならないものだが、しかし場合によつては——例へば今なんぞには適したものです。ジエィン、水を少し。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア (旧字旧仮名) / シャーロット・ブロンテ(著)
根岸お行の松 因果塚の由来 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
春:――二つの連作―― (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
これを数多い広告のなかから拾ひ出した米国の雑誌記者は、奇妙な広告だ、珍しい広告だ、滅多に見かけられない広告だといつて矢鱈に吹聴してゐる。
茶話:04 大正七(一九一八)年 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「それはさうであつたけれど、本當は、あなたの來る頃までと云つて置いたのに、誰れかいい人を待つてるからだらうと、矢鱈にお酒を飮んで動かないの」
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
貧乏一期、二期、三期:わが落魄の記 (新字旧仮名) / 直木三十五(著)
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死 (新字旧仮名) / 長与善郎(著)
霊訓 (新字新仮名) / ウィリアム・ステイントン・モーゼス(著)
私信:――野上彌生様へ (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
また良民の承知なしに矢鱈に人をつまみあげて掌に乗せることはできない。
ガリバー旅行記 (新字新仮名) / ジョナサン・スウィフト(著)
アンナ・ニコロが私を引ずって矢鱈に接吻する。愛の聖歌奏でて旋転する夢路たどっているようだ。苦もないアンナ・ニコロ私に身を委せながら。階段、万国の男女が酔いどれてはやしたてる。
しかしかれらは子供のくせに、矢鱈に魚釣りがうまかった。僕などにくらべて、いつも二倍か三倍も釣り上げてゆく。玄人級だ。身なりもよくないし、釣道具もお粗末なものだ。それでたくさん釣る。
そうして矢鱈に変テコなお伽話を書いて人に見せたり、話して聞かせたりしたものでしたが、誰も相手にしてくれませんでした。
涙香・ポー・それから (新字新仮名) / 夢野久作(著)
茶話:05 大正八(一九一九)年 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)