“百日紅:さるすべり” の例文
“百日紅:さるすべり”を含む作品の著者(上位)作品数
岡本綺堂9
泉鏡花7
北原白秋4
芥川竜之介4
太宰治4
“百日紅:さるすべり”を含む作品のジャンル比率
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.2%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行1.1%
文学 > 日本文学 > 日本文学0.9%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
枯れ木に花の咲いたような、百日紅さるすべりが一本、すぐ横手に立っている。そのこずえ高く、やにわにせみが鳴きだした。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
影は板葺きの屋根を這って、軒先に突き出ている大きい百日紅さるすべりを足がかりに、するすると滑り落ちて来るらしかった。
半七捕物帳:22 筆屋の娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
高源寺は相当に広い寺で、花盛りの頃には定めし見事であったろうと思われる百日紅さるすべりの大樹が門をおおっていた。
半七捕物帳:66 地蔵は踊る (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
北向の表庭は、百日紅さるすべりまばらな葉越に、日が一ぱいにさして、夾竹桃にはもうところどころ花が咲いている。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
その井戸に被さるようになった百日紅さるすべりの大木があるのが私には珍しくて、曲った幹のつるつるしたのをでて見ました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
楓を植ゑ込んである馬車廻しの中に、たゞ一本の百日紅さるすべりが、もう可なり強い日光の中に、赤く咲き乱れてゐるのが目に付いた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
百年以上の百日紅さるすべりがあったのは、村の飲代のみしろに植木屋に売られ、植木屋から粕谷の墓守に売られた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
少女おとめは神崎の捨てた石を拾って、百日紅さるすべりの樹に倚りかかって、西の山の端に沈む夕日を眺めながら小声で唱歌をうたっている。
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
かえでを植え込んである馬車廻しの中に、たゞ一本の百日紅さるすべりが、もう可なり強い日光の中に、赤く咲き乱れているのが目に付いた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「それが駄目でした。この百日紅さるすべり油蝉あぶらぜみがいっぱいたかって、朝っから晩までしゃあしゃあ鳴くので気が狂いかけました。」
彼は昔の彼ならず (新字新仮名) / 太宰治(著)
……土塀の崩屋根くずれやねを仰いで血のような百日紅さるすべりの咲満ちた枝を、涼傘ひがささきくすぐる、とたまらない。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
紅梅は花が散ってしまっていて青青した葉をひろげ、百日紅さるすべりは枝々のまたからささくれのようなひょろひょろした若葉を生やしていた。
彼は昔の彼ならず (新字新仮名) / 太宰治(著)
夏から秋にかけては、こういう停車場には大きい百日紅さるすべりや大きい桐や柳などが眼につくことがある。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
夏から秋にかけては、こういう停車場には大きい百日紅さるすべりや大きい桐や柳などが眼につくことがある。
薬前薬後 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのとなりに古風な黒板塀の家があって、黒板塀の上から盛りの百日紅さるすべりの花がさし出しています。
木のしょうはまるで違うが、花の趣が遠目とおめにはどこか百日紅さるすべりに似たところがある。
西には養老の山脈、はるかには伊吹山、北には鉄橋を越えて、岐阜の金華山、かすかに御岳。つい水のむこうが四季の里の百日紅さるすべり
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
叔父が家の向側には、農家の垣根かきねのところに、高く枝を垂れた百日紅さるすべりの樹があった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
百日紅さるすべり燃残もえのこりを、真向まっこうに仰いで、日影を吸うと、出損なったくさめをウッと吸って、扇子の隙なく袖をおさえる。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
舊くはあるがゆかしい家中かちゆう屋敷で、庭に咲く百日紅さるすべり、花はないまでも桔梗、芍藥なぞ、この地方の夏はそこにも深いものがあつた。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
……土塀の崩屋根くずれやねを仰いで血のやうな百日紅さるすべり咲満さきみちた枝を、涼傘ひがささきくすぐる、とたまらない。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
小さい寺ではあるが、門内の掃除は綺麗に行きとどいて、白い百日紅さるすべりの大樹が眼についた。
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
サト子のほうへは目端めはしもくれず、庭の百日紅さるすべりの花をながめながら、大人物の風格で悠然と朝の食事をすませると、女中に食器をさげさせた。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
萩もまだ盛りとゆかず、僅に雁来紅、百日紅さるすべり、はちすの花などが秋の色をあつめている。
九月の或る日 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
思切って、ずかずかと立入って、障子を開けますと、百日紅さるすべりが、ちらちらと咲いている。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、いよいよ目指す海岸へ出た喜びに、その辺の百日紅さるすべりの手頃な枝を切って、洋杖ステッキなぞを削りながら足も軽やかに、山を降りていたのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
福済寺ふくさいじにわれ居り見ればくれなゐに街の処々ところどころ百日紅さるすべりのはな
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
朝涼あさすゞのあいだと云っても一里半ほどの路を来たので、駕籠屋は汗びっしょりになって、店さきの百日紅さるすべりの木の下でしきりに汗を拭いています。
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
長堤は走り、両岸の模糊もこたる彎曲線のすえは空よりやや濃くくろんで、さて、花は盛りのべにと白とのこの庭の百日紅さるすべりの近景である。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「光陰」のタッチの軽快、「こぶ」のペエソス、「百日紅さるすべり」に於ける強烈な自己凝視など、外国十九世紀の一流品にも比肩ひけん出来る逸品と信じます。
風の便り (新字新仮名) / 太宰治(著)
大きい百日紅さるすべりの下にある石の井筒には、一面に湿しめっぽい苔がむしていた。
米友は百日紅さるすべりの枝を伝って、塀を乗り越してやって来ました。米友の投げた小石をそらした竜之助は、刀を抱えて、障子をあけて、家の中へ入ってしまいました。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
百日紅さるすべり 何、まだ早うござんさあね。わたしなどは御覧の通り枯枝ばかりさ。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
百日紅さるすべり 何、まだ早うござんさあね。わたしなどは御覧の通り枯枝ばかりさ。
新緑の庭 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
傍らに百日紅さるすべりの大木があって、曲りくねって、上にかぶさっています。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
花をつけた百日紅さるすべりやカンナの紅が、てらてらした緑のなかに燃えていた。
死のなかの風景 (新字新仮名) / 原民喜(著)
おらあ家へ入ろうと思うと、向うの百日紅さるすべりの樹の下に立っている……
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして、百日紅さるすべりはなが、ふさのつけからもがれていました。
二百十日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
百日紅さるすべりなめ木肌こはだのこぼれ日は花咲き足らひいとどしき搖れ
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
百日紅さるすべり老木おいきしらけて厠戸かはやどの前なる石もあとなくなりぬ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
百日紅さるすべりなめ木肌こはだのこぼれ日は花咲き足らひいとどしき揺れ
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
暑い陽光ひざしが、百日紅さるすべりの上の、静かな空にみなぎっていた。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
「扶病歩園。従来遊戯作生涯。酔歩吟行少在家。病脚連旬堪自笑。扶筇纔看薬欄花。」その百日紅さるすべりがさいてゐたので、蘭軒は折らせて阿部邸の茶山が許に送つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
この墓をすがしとへば差出さしで咲く向ひの墓の百日紅さるすべりのはな
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
この墓をすがしとへば差出さしで咲く向ひの墓の百日紅さるすべりのはな
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
熱い、寂しい感じのする百日紅さるすべりの花なぞもさかりに咲く時であった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
苦笑をかくしながら、二人は匆々そうそうに、百日紅さるすべりの門を出て、
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
花の一ぱい咲いている百日紅さるすべりの木に、せみが来て鳴き出した。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
門をはいると右側には百日紅さるすべりの大木が真紅まっかに咲いていた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
雁来紅がんらいこう、はちす、黄蜀葵、百日紅さるすべり、水引、その他。
坂下に止っていた汲取屋の馬車馬が、どうしたはずみかながえから脱けて、そのままトコトコと坂をのぼり、百日紅さるすべりの枝の下をくぐって、いきなり私の庭に入ってきた。
庭の眺め (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
百日紅さるすべりあり、花桐はなぎりあり、また常磐木ときわぎあり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人は道路から右へ折れこみ、森山牧場の納屋の前を通って中庭のようになった狭い草地へはいって行った。白い花をつけた百日紅さるすべりの木があって、それが霧の中で匂っていた。
金狼 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
お初の門口かどぐちには大きな百日紅さるすべりの木が立っていました。
子供役者の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
弥左衛門は、うなずいて、黙々と先に歩いて行く。汗が、茶帷子ちゃかたびらの背に滲み出している。寺院の築地ついじをすぐ横へ曲った。百日紅さるすべりの花がすぐ眼について、
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
縁先の庭には百日紅さるすべりが一本、——彼は未だに覚えてゐる。
或阿呆の一生 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
脊丈のほどもおもわるる、あの百日紅さるすべりの樹の枝に、真黒まっくろ立烏帽子たてえぼし鈍色にぶいろに黄を交えた練衣ねりぎぬに、水色のさしぬきした神官の姿一体。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
玄関の前の百日紅さるすべりは、ことしは花が咲きませんでした。
おさん (新字新仮名) / 太宰治(著)
その代り葉の落ち尽す事早きものは、百日紅さるすべり第一なり。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
紅い、寂しい百日紅さるすべりの花は、未だお俊の眼にあった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
飯島では、まだ百日紅さるすべりの花が咲いているというのに、北鎌倉の山曲やまたわではすすきの穂がなびき、日陰になるところで、山茶花さざんかつぼみがふくらみかけている。
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
古い崩れがけた黒塀くろべいが隣とのしきりをしてはるが、隣の庭にある百日紅さるすべり丁度てうど此方こちらの庭木であるかのやうにあざやかにすぐ眼の前に咲いてる。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
今日も庭の百日紅さるすべりの梢に蛇が居る。何処かの杉の森でふくろがごろ/\のどを鳴らして居る。麦が収められて、緑暗い村々に、すこしの明るさを見せるのは卵色の栗の花である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
大抵普通の大きさが普通の鉄瓶位いのものと思っていた百日紅さるすべりの幹を試みに私は両手で抱えて見たが、なかなかその半ばにも及ばず、両人で腕を伸ばし合って辛うじて抱き廻すことが出来た。
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
そこに旧い記憶のある百日紅さるすべりの樹を見つけた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
停車場の前には百日紅さるすべりの大きい枝がさながら日除けのように拡がっていましたが、そのたくさんの花が白昼まひるの日にあかあかと照らされているのが、まぶしいほどに暑苦しく見えました。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
百日紅さるすべりの根に丸い石があるでしょう。」
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ここでさらに嘉門はよろめいて、左内とお菊とが向かい合って、黙然とたたずんでいる真ん中のあたりをヒョロヒョロと縫って向こう側へ行ったが、そこには花をつけていない百日紅さるすべりの木が立っていた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
周りは小さい丘や築山つきやまの名残りをとゞめた高みになつてゐて、相当な庭園だつた証拠には、かえでとか百日紅さるすべりとかいふ観賞樹の木の太さに、庭師のしつけが残つた枝振りで察しられた。
夏の夜の夢 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
真中に大きな百日紅さるすべりの木がある。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
「なるほど、この百日紅さるすべりの木がいい足場になるんだ、この枝を伝わってああ行くと、塀をおどり越すなんぞは盲目めくらにもできらあな。よし、今日はひとつ、あの枝をぶち落しといてやれ、どうなるか」
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
父には五つの歳に別れまして、母と祖母ばばとの手で育てられ、一反ばかりの広い屋敷に、山茶花さざんかもあり百日紅さるすべりもあり、黄金色の茘枝れいしの実が袖垣そでがきに下っていたのは今も眼の先にちらつきます。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
少しく片寄った頭上の辺には、紫の色の花房を垂れた、藤棚が小高くかかっているし、裾をグルリとめぐるようにしては、馬酔木あせびくさむら百日紅さるすべりの老木や、灌木などの飛び散っている、この裏庭の奥まった所に
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「くには、青森です。夾竹桃などめずらしいのです。私には、ま夏の花がいいようです。ねむ。百日紅さるすべりあおい。日まわり。夾竹桃。はす。それから、鬼百合。夏菊。どくだみ。みんな好きです。ただ、木槿もくげだけは、きらいです。」
めくら草紙 (新字新仮名) / 太宰治(著)
いや、火薬庫の暗い森を背中から離すと、邸構えの寂しい町も、桜の落葉に日が燃えて、梅の枝にほんのりと薄綿の霧が薫る……百日紅さるすべりの枯れながら、二つ三つ咲残ったのも、何となく思出おもいでの暑さを見せて、世はまださして秋の末でもなさそうに心強い。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一つ奇体なことには、つい三四ヶ月前、夏の終り頃に見た、或る山のなかの一軒家——そこには、百合ゆり百日紅さるすべりとが咲いて居た——その人気のない大きな家に年とつた母と二人きりで居た小娘、その白い美しい足と手の指とが彼のうつつの夢に現はれたあの娘。
約束なんか履行りこうした事がない。それで詰問を受けると決してびた事がない何とかとか云う。あの寺の境内に百日紅さるすべりが咲いていた時分、この百日紅が散るまでに美学原論と云う著述をすると云うから、駄目だ、到底出来る気遣きづかいはないと云ったのさ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其處そこる、……百日紅さるすべりひだりえだだ。」上野うへの東照宮とうせうぐう石段いしだんから、不忍しのばずいけはるかに、大學だいがく大時計おほどけいはり分明ぶんめいえたひとみである。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
——お先に、今夜のお礼をいっておきますよ。わたしたち仲間の紋切形もんきりがたで、仕事をするとその場から、プイと百里や二百里は飛びますからね——お前さんも、たまには江戸へ息抜きにおいでなさいな。本郷妻恋ほんごうつまごい一丁目、門垣根もんがきね百日紅さるすべりがあって、挿花はなの師匠の若後家と聞けばすぐ知れますよ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)