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癪
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しゃく
ふりがな文庫
“
癪
(
しゃく
)” の例文
そして、私の肥ること考えると些か
癪
(
しゃく
)
ね、生活条件が深く作用しているのだから。それはもとより瘠っぽちのたちではないけれども。
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「其の損得という奴が何時も人間を引廻すのが
癪
(
しゃく
)
に障る。損得に引廻されぬ者のみであったなら世間はすらりと治まるであろうに。」
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私はこの、熊谷の言葉が又
癪
(
しゃく
)
に触りました。「踊ってやんな」とは何と云う云い草だ。己を何だと思っているのだ? この青二才が!
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
斬る達者アリマス、勇武の国アリマス、ただ、芸事できない、芸事できない国野蛮アリマス——こうぬかしやがるのが
癪
(
しゃく
)
なんでげして
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それだけでも
癪
(
しゃく
)
に
障
(
さわ
)
ってたまらないのに、彼奴め、自分の非をわすれて、先頃、お金蔵の金子が台帳と少々合わないのを
楯
(
たて
)
に取って
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
でも、当時を
風靡
(
ふうび
)
した官員さんの細君になったので、また縁がつながったものと見える。思うに私の母はちと
癪
(
しゃく
)
だったに違いない。
旧聞日本橋:15 流れた唾き
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
私は何でもなしに言ったのだけれど、みさをは、私の言葉が
癪
(
しゃく
)
にさわったのか、
執拗
(
しつよう
)
にだまりこくって
莨
(
たばこ
)
ばかりふかしていました。
アパートの殺人
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
その時分までは何でもカンでも
舶来
(
はくれえ
)
舶来
(
はくれえ
)
ってんで紅茶でも何でもメード・イン・
毛唐
(
けとう
)
でねえと幅が利かねえのが
癪
(
しゃく
)
だってんで……。
人間腸詰
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
私も
癪
(
しゃく
)
にさわりましたから、「君がそういう
料簡
(
りょうけん
)
なら僕にも考えがある。僕は人道上、花嫁に事情を告げるだけだ」と申しました。
暴風雨の夜
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
たしかにひどく
癪
(
しゃく
)
にさわる親切ぶかい態度をまじえるのを、私は不審と屈辱と、立腹との気持をもって認めざるをえないことがあった。
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
だが
癪
(
しゃく
)
に障るのは相手の態度である、新泉小太郎はこっちを無視していた。乙にすましかえってまるっきりこっちを見ようともしない。
桑の木物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
斯
(
こ
)
う/\
云
(
い
)
う次第で僕は長崎に
居
(
お
)
られぬ、余り
癪
(
しゃく
)
に
障
(
さわ
)
るからこのまゝ江戸に
飛出
(
とびだ
)
す
積
(
つも
)
りだが、実は江戸に知る人はなし、方角が分らぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
そして、三上の一言に、まだその顔をほてらせながら、ギクギクしていた。そして今日の潮の長さを、しきりに
癪
(
しゃく
)
にさわっていた。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
しかし私はその紫色が
癪
(
しゃく
)
にも
障
(
さわ
)
ったので、見えもしない物の影を紫になど頼まれても描いてやるものかという気になってしまった。
めでたき風景
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
つねから、お前の
悧巧
(
りこう
)
ぶった
馬面
(
うまづら
)
が
癪
(
しゃく
)
にさわっていたのだが、これほど、ふざけた
奴
(
やつ
)
とは知らなかった。程度があるぞ、馬鹿野郎。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
もう小説は面白くなく、読む内に
厭
(
あ
)
きて来て、
就中
(
なかんずく
)
作中の人物が栄華をしたり、色々に活動するのを見ると、
癪
(
しゃく
)
に障って来るのである。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
その当の相手が、何だかじぶんを疑って二の足を踏んでるようすだから
癪
(
しゃく
)
にさわってたまらない。持前の気性でポンポンやり出す。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
トレープレフ おっ母さんはね、この小っぽけな舞台で
喝采
(
かっさい
)
を浴びるのが、あのニーナさんで、自分じゃないのが、
癪
(
しゃく
)
のたねなんですよ。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
おお、私の太陽。私はだらしのない愛情のように太陽が
癪
(
しゃく
)
に触った。
裘
(
けごろも
)
のようなものは、反対に、
緊迫衣
(
ストレート・ジャケット
)
のように私を圧迫した。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
「人が悪いな、この人は。それまで心得ていて、はぐらかすんだから。(大阪城でございます、)はちと
癪
(
しゃく
)
だろうじゃないか。」
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「君は一体なんだね?」刑事は
癪
(
しゃく
)
に触ったらしく、「大そう知ったか振りをするが、何か加害者の逃亡する所でもみたのかね?」
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
真田幸村の弔い合戦、それが主でもあったけれど、第一には徳川の天下が余りに横暴に過ぎるので、それが
癪
(
しゃく
)
に触ってならぬのであった。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
好きでもないのに好いてると思われるのは
癪
(
しゃく
)
で、豹一は返答に困った。しかし、嫌いだというのは
打
(
ぶ
)
ち
壊
(
こわ
)
しだ。そう思ったので
雨
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
財産といったところで、元々死んだ山本の親爺さんのもの、貴様が我が物顔に振舞っているのが、
無体
(
むてい
)
癪
(
しゃく
)
に触ってかなわねえのだ
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
程なく夫人のお
癪
(
しゃく
)
から
揉
(
もみ
)
やわらげて、殿さまの御肝癖も療治し、果は自分の胸の
痞
(
つかえ
)
も押さげたという、なかなか小腕のきく男で。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
フォーゲル夫人はクリストフの行状にたいする自分の考えを、彼女に言わないではおかなかった。ルイザの平気なのが
癪
(
しゃく
)
にさわっていた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
私は中学生のとき漢文の試験に「日本に多きは人なり。日本に少きも
亦
(
また
)
人なり」という文章の解釈をだされて
癪
(
しゃく
)
にさわったことがあったが
教祖の文学:――小林秀雄論――
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「
癪
(
しゃく
)
にさわるから、御用ッと首筋へ武者振り付くと身をかわしてデンと来やがった。それで顔も見せねえんだから凄い腕前だ」
銭形平次捕物控:025 兵糧丸秘聞
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
次郎がみんなのどぎもをぬくような血書を書いたということが第一
癪
(
しゃく
)
だったうえに、自分もついそれに署名しなければならないはめになり
次郎物語:04 第四部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
癪
(
しゃく
)
に触って堪らぬ。ホイホイ
背後
(
うしろ
)
から追い追い立て、約二里ばかり進めば、八溝川の上流、過般の出水の為に橋が落ちている。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
だから皆さんが勝手なあて
推量
(
ずいりょう
)
なぞをしているのが少しは
癪
(
しゃく
)
にさわったけれども、
滑稽
(
こっけい
)
に見えてしかたがなかったんですのよ。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
私も
癪
(
しゃく
)
に障りましたから、お話をしかけて下さると危いですからって、もう相手になりません。すると、マッチを貸せと言うんです。葉巻を
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
中川がかくまで人に重んぜらるるを見て最前の若紳士
忽
(
たちま
)
ち
癪
(
しゃく
)
に触りけん「オイ中川君」と何か挑むような
口気
(
こうき
)
にて呼かけたり。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
同時に小林の意味もよく突きとめておきたかった。それを見抜いて、わざと高を
括
(
くく
)
ったように落ちついている小林の態度がまた
癪
(
しゃく
)
に
障
(
さわ
)
った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この期待を裏切る坊さんがいると、それだけ
癪
(
しゃく
)
にさわるわけであるが、それは余り多くを坊さんに望むからのことであろう。
僧堂教育論
(新字新仮名)
/
鈴木大拙
(著)
西光の人格や陰謀の動機をよく理解している俊寛には、彼らのそうした愚痴が、
癪
(
しゃく
)
に触って仕方がない。彼の神経は、日に増しいらいらする。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
二人は、何か早口で
喋
(
しゃべ
)
りながら、こっちへやってきた。わたくしはそれを見て、少々
癪
(
しゃく
)
にさわった。そういう気持は、誰にでも判るであろう。
第四次元の男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
馬琴も相手の言いぐさが
癪
(
しゃく
)
にさわりながら、妙にその相手が憎めなかった。その代りに彼自身の軽蔑を、表白してやりたいという欲望がある。
戯作三昧
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
すると池上は、人の事でもそういう無邪気で
長閑
(
のどか
)
な話を聞くと何だか
癪
(
しゃく
)
に触ると言って、その理由を苦渋そうに話しました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それを聴くと私はグッと
癪
(
しゃく
)
に
障
(
さわ
)
った。そして長火鉢に
揷
(
さ
)
してあった
鉄火箸
(
てつひばし
)
をぎゅうと握りしめて座り直りながら大きな声で
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「そんなことどうでもよござんすよ。それより、妾
癪
(
しゃく
)
にさわるのは、
選
(
よ
)
りに選って妾の顔へ、あんな大きな穴をあけて……」
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
癪
(
しゃく
)
に触ったもんで一週間ほどってもの、食事をとらないで頑張ってやりましたよ。尤もそれは家だけで、外ではやっていましたけれど。(笑う)
みごとな女
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
この場で、一通りの説明だけをして貰いたかった私は、この言葉を聞いて
癪
(
しゃく
)
にさわった。老人の住所を、聞いておこうかと思ったが、止めにした。
想い出
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
「そんなことよりも、僕が一番
癪
(
しゃく
)
に障ったのは」と来たので、また天神さまのお
喋舌
(
しゃべり
)
かと言ってやりたかったが、さきは例の熱心な調子であった
猫八
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
杉田はむっとしたが、くだらん
奴
(
やつ
)
を相手にしてもと思って、
他方
(
わき
)
を向いてしまった。実に
癪
(
しゃく
)
にさわる、三十七の
己
(
おれ
)
を冷やかす気が知れぬと思った。
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
騎馬の兵士が大久保
柏木
(
かしわぎ
)
の
小路
(
こみち
)
を隊をなして
駆
(
は
)
せ廻るのは、
甚
(
はなは
)
だ
五月蠅
(
うるさ
)
いものである。
否
(
いな
)
五月蠅いではない
癪
(
しゃく
)
にさわる。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お杉はさも
癪
(
しゃく
)
にさわると云うようにして
起
(
た
)
って往った。そこは
土室
(
どま
)
に臨んで三畳の畳を敷き、音蔵が手内職の
袋張
(
ふくろはり
)
の台を一方の隅へ置いてあった。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
この句を聞かされた時私は馬鹿にされたような気持がして、その友人のお母さんの不真面目なのが
癪
(
しゃく
)
にさわりました。
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
それを見ると若い連中は、尚さら、おだてたり、からかったり、脅迫したりした。私は
癪
(
しゃく
)
にさわって仕様がなかった。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
窓ぎわの娘はこの光景を見ると
癪
(
しゃく
)
にさわって、背を向けた。高慢らしく、物問いたげにしていた妻の顔は、急になみなみならぬ愛想のよさを示した。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
“癪”の解説
癪(しゃく)とは、近代以前の日本において、原因が分からない疼痛を伴う内臓疾患を一括した俗称。積(せき)ともいい、疝気とともに疝癪(せんしゃく)とも呼ばれた。
(出典:Wikipedia)
癪
漢検1級
部首:⽧
21画
“癪”を含む語句
癇癪持
小癪
疝癪
疳癪持
癇癪
疳癪
肝癪
癇癪玉
癪持
癪気
疳癪玉
肝癪持
小間癪
癪氣
疳癪筋
癇癪筋
癇癪声
疳癪声
空癪
肝癪玉
...