歸途かへり)” の例文
新字:帰途
空はさはやか晴渡はれわたツて、星が、何かの眼のやうに、ちろり、ちろりまたたきをしてをる。もう村の若衆等わかいしゆたちが、夜遊よあそび歸途かへり放歌うたすらきこえない。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
にしろよわつたらしい。……舞臺ぶたい歸途かへりとして、いま隧道トンネルすのは、芝居しばゐ奈落ならくくゞるやうなものだ、いや、眞個まつたく奈落ならくだつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
れから町人ちやうにんいへよりの歸途かへり郵便局いうびんきよくそばで、かね懇意こんい一人ひとり警部けいぶ出遇であつたが警部けいぶかれ握手あくしゆして數歩計すうほばかともあるいた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
御用を濟ませて大阪へしたよ、歸途かへりはお伊勢詣りもし度いからといふ文面では、まだ十日や二十日はかゝりさうです。
をぢさんは歸途かへりに本郷の友達のうちに寄ると、友達は自分の識つてゐる踊の師匠の大浚おほさらひが柳橋のあるところに開かれて、これから義理に顔出しをしなければならないから
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
芝の神明樣しんめいさま祭禮おまつり歸途かへりに、京橋の松田といふ料理店おちややで、支那人の人浚ひとさらひに目をつけられたとかで、祖母と供の者を吃驚させたことがあるが、むやみやたらと敵愾心を煽つて
日本橋あたり (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
今日は幸ひ土曜日なので、授業が濟むと直ぐ歸つた。そして、歸途かへりに買つて來た——一圓某の安物ではあるが——白地の荒い染の反物をつて、二人の單衣を仕立に掛つた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ところ或日あるひのこと、やはり學校がくかう歸途かへり庄園しやうゑんかべうへでラクダルを揄揶からかつて少年こどもの中に、なんおもつたかひど感心かんしんしてしま自分じぶん是非ぜひ怠惰屋なまけやにならうと決心けつしんした一人ひとりあつた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
お辰樣が扇の風にでも沸ひてほしく、お宿もとまで罷り出たる次第と例に似ぬ與之助がをかしき詞に、お辰座をたちて迎へながら、大分御機げんで御座んすの、梅見のお歸途かへり
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
葬式ともらひ歸途かへりにか、戲れに笛吹き鳴らし
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
この歸途かへりに、公園こうゑんしたで、小枝こえだくびをうなだれた、洋傘パラソルたゝんだばかり、バスケツトひとたない、薄色うすいろふくけた、中年ちうねん華奢きやしや西洋婦人せいやうふじんた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
汽車の歸途かへりの路すがら、奈何どうしても通抜とほりぬけが出來なかつたから、突然ではあつたが、なつかしい此村を訪問したと云ふ事、今では東京に理髮店を開いてゐて、熟練な職人を四人も使つてるが
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
興味があるから、ついうちから遠く離れて、歸途かへりには往々まゝとんだおそろしい思をする事もある。けれども螢にうかされて、半分は夢中になツてゐるのだから家の遠くなる事などは氣が付かう筈が無い。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
倉賀屋の歸途かへり、平次は斯んな事を言ひ出すのです。
やつひとどんぶり、それでも我慢がまんたひらげて、「うれしい、お見事みごと。」とめられたが、歸途かへりみちくらつて、溝端どぶばたるがいなや、げツといつて、現實げんじつ立所たちどころ暴露ばくろにおよんだ。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
君の亂暴は、或は生來うまれつきなのかも知れないね。そら、まだお互に郷里くにに居て、尋常科の時分だ。僕が四年に君が三年だつたかな、學校の歸途かへりに、そら、酒屋の林檎畑へ這入はいつた事があつたらう。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして、をどり……をどり歸途かへり……着崩きくづしたところては、往路ゆきではあるまい。踊子をどりこだらう。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その日は歸途かへりに雨に會つて來て、食事に茶の間に行くと外の人は既う濟んで私一人きりだ。内儀は私に少し濡れた羽織を脱がせて、眞佐子に切爐の火でさせ乍ら、自分は私に飯をよそつて呉れてゐた。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「お歸途かへりに、二十四——とんでください。そのときわたまをしますから。」
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それがために意地汚いぢきたなく、歸途かへりうした場所ばしよ立寄たちよつた次第しだいではない。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
却説さてれて、歸途かへりである。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたし見舞みまひつた歸途かへりです。」
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いゝえ歸途かへりいのよ。」
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)