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木像
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もくざう
少い
人が
人形を
運んで
行く
後になり
前になり、
天守へ
入つて
四階目へ
上つた、
処、
柱の
根に
其の
木像を
抱緊めて、
死んだやうに
眠つて
居る。
...
其の着物が
残つて
居ります。それから
御先代の
木像と
過去帳が
残つて
居ります」「それでは、ちよいとそれを
持つて
来て
貰ひたい」といふと、
女将は
直に車に乗つて
行つて取つて
来ました。
海上に
起る千
差萬別の
事變をば一も
見遁すまじき
筈の
其見張番は
今や
何をか
爲すと
見廻はすと、
此時右舷の
當番水夫は
木像の
如く
船首の
方に
向つたまゝ、
今の
微な
砲聲は
耳にも
入らぬ
樣子
然れば、
言ふ
通りに
仕上つて、
其処で
其の
木像が
動くかな、
目を
働かすかな、
指す
手は
伸び、
引く
手は
曲るか、
足は
何うじや、
歩行くかな。
『まだ
聞きたい。
御身が
作の
其の
膚は
滑かぢやらう。が、
肉はあるか、
手に
触れて
暖味があるか、
木像の
身は
冷たうないか。』
其の
又家來又家來と
云ふんだけれど、お
互に
詰りませんや。これぢや、なんぼお
木像でも
鬱陶しからう、お
氣の
毒だ。
木像、
神あるなり。
神なけれども
霊あつて
来り
憑る。
山深く、
里幽に、
堂宇廃頽して、
愈活けるが
如く
然る
也。
たゞ
南谿が
記したる
姉妹の
此の
木像のみ、
外ヶ
浜の
砂漠の
中にも
緑水のあたり
花菖蒲、
色のしたゝるを
覚ゆる
事、
巴、
山吹の
其にも
優れり。
幼き
頃より
今も
亦然り。
読む
人々も、
恁くては
筋骨の
逞しく、
膝節手ふしもふしくれ
立ちたる、がんまの
娘を
想像せずや。
知らず、
此の
方は
或は
画像などにて、
南谿が
目のあたり
見て
写し
置ける
木像とは
違へるならむか。