いはく)” の例文
百樹もゝきいはく、我が幼年えうねんの頃は元日のあしたより扇々と市中をうりありくこゑ、あるひは白酒々の声も春めきて心ものどかなりしが此声今はなし。
(僕いはく、勿論である)夏目漱石なつめそうせきの「硝子戸の中」なども、芸術的小品として、随筆の上乗じやうじようなるものだと思ふ。(僕いはくすこぶる僕も同感である)
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それ羅山らざん口号こうがういはく萬葉集まんえふしふ古詩こしたり、古今集こきんしふ唐詩たうしたり、伊勢物語いせものがたり変風へんぷうじやうはつするににせたり、源氏物語げんじものがたり荘子さうし天台てんだいしよたりとあり。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
然はあれど我が早稻田文學に對して出しゝ言を顧みるに、おほよそ三つあり、いはく早稻田文學の沒理想、曰早稻田文學の沒却理想、曰逍遙子と烏有先生と。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
うすると、きいちやんいはく、「釜敷かましき? なんにするだらう?」
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大聖孔子たいせいこうしいはくうつたへを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
百樹もゝきいはく、我が幼年えうねんの頃は元日のあしたより扇々と市中をうりありくこゑ、あるひは白酒々の声も春めきて心ものどかなりしが此声今はなし。
翻長太息はんちやうたいそくに堪へずしていはく台州たいしう有人ひとありと。古人が詩に心を用ふる、惨憺経営の跡想ふべし。青々せいせいが句集妻木つまぎの中に、「初夢やあけなるひもの結ぼほる」
で、きやくうていはく
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
越後にねりやうかんを賞味して大に感嘆かんたんし、岩居にいひていはく、此ねりやうかんも近年のものなり、常のやうかんにくらぶればあぢはひまされり。
貴問にいはく、近来娼婦型しやうふけい女人によにん増加せるを如何いかに思ふと。然れども僕は娼婦型の女人の増加せる事実を信ずるあたはず。
娼婦美と冒険 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
前年さきのとし江戸にありし時右の事をさき山東翁さんとうをうにかたりしに、をういはく世路せいろなだ総滝そたきよりも危からん、世はあしもとを見てわたるべきにやとてわらへり。
昔は姜度きやうとたんするや、李林甫りりんぼしゆ書を作つていはく、聞く、弄麞ろうしやうよろこびありと。客之を視て口をおほふ。蓋し林甫りんぽ璋字しやうじを誤つて、麞字しやうじを書せるを笑へるなり。
越後にねりやうかんを賞味して大に感嘆かんたんし、岩居にいひていはく、此ねりやうかんも近年のものなり、常のやうかんにくらぶればあぢはひまされり。
古道具屋の主人いはく、「これは安土あづちの城にあつたものです。」僕いはく、「ふたの裏に何か横文字があるね。」主人いはく
病中雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
すぎとし北国より人ありてこぶしの大さの夜光やくわうの玉あり、よく一しつてらす、よきあたひあらばうらんといひしかば、即座そくざに其人にたくしていはく、其玉もとめたし
曲翠きよくすゐとふ発句ほつくを取りあつめ、集作ると云へる、此道の執心しふしんなるべきや。をういはく、これ卑しき心よりわが上手じやうずなるを知られんと我を忘れたる名聞よりいづる事也。」
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
九、室生犀星むろふさいせい碓氷うすひ山上よりつらなる妙義めうぎ崔嵬さいくわいたるを望んでいはく、「妙義山めいぎさんと言ふ山は生姜しやうがに似てゐるね。」
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
十 第一の手紙にいはく、「社会主義を捨てん、父にそむかん乎、どうしたものでせう?」更に第二の手紙にいはく、「原稿至急願上げ候。」而して第三の手紙にいはく
病中雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
狩野芳涯かのうはうがい常に諸弟子しよていしに教へていはく、「ぐわの神理、唯まさ悟得ごとくすべきのみ。師授によるべからず」と。一日芳涯病んです。たまたま白雨天を傾けて来り、深巷しんかうせきとして行人かうじんを絶つ。
「或禅僧、詩の事を尋ねられしに、翁いはく、詩の事は隠士素堂いんしそだうと云ふもの此道に深きすきものにて、人の名を知れるなり。かれ常に云ふ、詩は隠者の詩、風雅にてよろし。」
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
忌々いまいましければ向うの足を踏み返したるに、その老婦人忽ち演説を始めていはく、「皆さん。この人は唯今私が誤まつて足を踏んだのに、今度はわざと私の足を踏みました。云々うんぬん
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
慇懃いんぎんに礼を施していはく、「あなたはソオシアル・ダンスをおやりですか?」佐佐木夫人の良人をつと即ち佐佐木茂索、「あいつは一体何ものかね」と言へば、何度も玉に負けたる隆一
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
土芳とはういふ、翁いはく、学ぶ事は常にあり。席に臨んで文台と我とかんはつを入れず。思ふことすみやかいひいでて、ここいたりてまよふ念なし。文台引おろせば即反故ほごなりときびしく示さるることばもあり。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
が、長崎を立つ段になると、僕自身うつかり上野屋うへのや雨外套あまぐわいたうを忘れて来てしまつた。菊池の嬉しがるまいことか、忌々いまいましくも大笑ひをしていはく、「君もまた細心さいしんは誇れないね。」(同上)
続澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼等の一人ひとり、僕をあはれんでいはく、「注射でもなすつたら、よろしうございませうに。」
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕の自治寮じちれうにありし頃、同室の藤野滋ふぢのしげる君、しばしば僕をあざけつていはく、「君は文科にゐる癖に巻煙草の味も知らないんですか?」と。僕は今や巻煙草の味を知り過ぎ、かへつて断煙を実行せんとす。
病中雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕の為に感激していはく、「君もシエリングの如く除名処分を受けしか」と! シエリングもまた僕の如く三十円の金を出ししぶりしや否や、僕はいま寡聞くわぶんにしてこれを知らざるを遺憾ゐかんとするものなり。
その頃の赤門生活 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
(註にいはく、一游亭は撞木杖をついてゐる。)
予は日記に書していはく
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)