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擽
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くすぐ
ふりがな文庫
“
擽
(
くすぐ
)” の例文
あの人は鼻のあたりに
擽
(
くすぐ
)
つたい笑ひを漂はせてる。すると、私は妙にそれが小憎らしく、また、訳のわからない嫉妬が芽ぐんで来る。
脱殻
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
今は大変に疲れている、併し、浴後の
暢
(
の
)
んびりした、甘い倦怠が快く全身を
擽
(
くすぐ
)
っている。さあ為事だ為事だ。(二五八八、一一、一)
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
内部
(
なか
)
は、湿っぽい密閉された
室
(
へや
)
特有の闇で、そこからは、濁りきっていて妙に埃っぽい、
咽喉
(
のど
)
を
擽
(
くすぐ
)
るような空気が流れ出てくるのだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
と
揶揄
(
やゆ
)
一番した。ナカ/\
性
(
たち
)
が悪い。
態〻
(
わざわざ
)
二流会社を志望する僕達は決して優秀でないから、
擽
(
くすぐ
)
ったいような心持で顔を見合せた。
恩師
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
唯吉
(
たゞきち
)
は、
襟許
(
えりもと
)
から、
手足
(
てあし
)
、
身體中
(
からだぢう
)
、
柳
(
やなぎ
)
の
葉
(
は
)
で、さら/\と
擽
(
くすぐ
)
られたやうに、
他愛
(
たわい
)
なく、むず/\したので、ぶる/\と
肩
(
かた
)
を
搖
(
ゆす
)
つて
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
この芝居はどこやら
擽
(
くすぐ
)
ったく、余り空想的で今日の現実と結ばれた実体がなくて、主題は現実的な力を欠いているとしか感じられない。
ソヴェトの芝居
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
といって僕の両脇に手を入れて、抱き
起
(
おこ
)
そうとなさった。僕は
擽
(
くすぐ
)
ったくってたまらないから、大きな声を出してあははあははと笑った。
碁石を呑んだ八っちゃん
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
自分
(
じぶん
)
の
蒲團
(
ふとん
)
の
側
(
そば
)
まで
射
(
さ
)
し
込
(
こ
)
む
日
(
ひ
)
に
誘
(
さそ
)
ひ
出
(
だ
)
されたやうに、
雨戸
(
あまど
)
の
閾際
(
しきゐぎは
)
まで
出
(
で
)
て
與吉
(
よきち
)
を
抱
(
だ
)
いては
倒
(
たふ
)
して
見
(
み
)
たり、
擽
(
くすぐ
)
つて
見
(
み
)
たりして
騷
(
さわ
)
がした。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
お島は
擽
(
くすぐ
)
ったいような、いらいらしい気持を紛らせようとして、そこを離れて、子供を
揶揄
(
からか
)
ったり、
嫂
(
あによめ
)
と
高声
(
たかごえ
)
で話したりしていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
皆は中将の言ふ様に、飛行家になるのだつたら、相場で大穴を明けた
後
(
あと
)
でも遅くはあるまいと思つて、
擽
(
くすぐ
)
つたさうな顔つきをした。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「そうかねえ……」と、自分は彼女のニコニコした顔と
紅
(
あか
)
い模様や
鬱金色
(
うこんいろ
)
の小ぎれと見
較
(
くら
)
べて、
擽
(
くすぐ
)
ったい気持を感じさせられた。
死児を産む
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
すると奥で
擽
(
くすぐ
)
られたようにクックッ笑う声がするので、もう一度戻ってみると、オルガンの蔭で、少女とアブ公が、
絡
(
から
)
み合って寝ていた。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これが犯人の足の裏を、
擽
(
くすぐ
)
るのです。まず犯人を椅子に縛りつけて置き、靴下を脱がせます。そしてその足の下へ此の器械を据えつけます。
発明小僧
(新字新仮名)
/
海野十三
、
佐野昌一
(著)
「ふゝゝゝ。」とおふくろは、
擽
(
くすぐ
)
ツたいやうに笑出して、「何だか、
謎
(
なぞ
)
をかけられてゐるやうですね。」と事もなげにいふ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
すると文吉は
擽
(
くすぐ
)
ったさが鼻へ抜け、痛さが身体中の
要処
(
ようしょ
)
々々の力を引抜き、たゞ「あー あー」と口を開けて全身は空に
捥
(
もが
)
くだけであります。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「うむ、そう言われるとなんだか
擽
(
くすぐ
)
ってえような気持もするが、浮気で言うんじゃあねえ、あの女はあんまり薄情すぎる」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
心の隅を名状し難い微妙な何者かが
擽
(
くすぐ
)
っている。それは例えば少年の日の恋の思出の如く、ほのかにも匂やかな感情だ。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そして、懷つこい手紙でも送つて喜ばせてやらうかと、卷紙をひろげて筆を採つて見たが、どういふものか
擽
(
くすぐ
)
つたい氣持がして筆が運ばれなかつた。
母と子
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
平次は事もなげですが、大師樣をだしに使ふのは
擽
(
くすぐ
)
つたいのか、八五郎はテレ隱しにポリポリ
小鬢
(
こびん
)
を掻いて居ります。
銭形平次捕物控:149 遺言状
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
早く逃げよ、洗礼を受けた人たち! 彼女の唇は氷で、寝床は冷たい水中だ。彼女は君を
擽
(
くすぐ
)
つて河の中へ引き込むぞ。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:03 怖ろしき復讐
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
裕佐はかう云つたが、何だか胸が
擽
(
くすぐ
)
つたいやうな気がした。「さア、此金で、俺はあいつを身うけする事が出来るんだ。もしそれが出来る事なら!」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
狡智に
長
(
た
)
けたベナビデスの
面
(
おもて
)
眼
蒐
(
が
)
けて拳銃を発射する時の喜びばかりが
擽
(
くすぐ
)
るように、胸に込み上げていたのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
彼女の指先の紅らみの中に浮き出てゐた
細
(
ほつそ
)
りとした
指半月
(
つめのね
)
、豊な彼女の唇を縁づける
擽
(
くすぐ
)
るやうな繊細な彎曲、房々と垂れた彼女の髪の
微
(
かすか
)
な動揺と光沢
静物
(新字旧仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
私が最も純粋な愛としたものにおいてさえ、それが自己の優越の感じに
擽
(
くすぐ
)
られようという動機によって濁らされていなかったと誇り得ないではないか。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
お延の漢語が突然津田を
擽
(
くすぐ
)
った。彼は笑い出した。ちょっと
眉
(
まゆ
)
を動かしたお延はすぐ
甘垂
(
あまった
)
れるような口調を使った。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
同じく彼の佳きレパートリイの一つたる「吉原百人斬」の中の
宝生
(
ほうしやう
)
栄之丞住居の一席も、艶冶な描写が、いまに私の耳を哀しく悩ましく
擽
(
くすぐ
)
つて熄まない。
吉原百人斬り
(新字旧仮名)
/
正岡容
(著)
金五郎は
擽
(
くすぐ
)
ったく、変な気持になって来たが、お京を怒らせたくはなかったので、なすがままに、まかせていた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
かうして彼は何の憚りもなく、天の与へて呉れた好機に乗つたが、彼の心の何処かには、何となく
擽
(
くすぐ
)
つたい或るもの、小供に耻づかしい或るものがあつた。
虎
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
私はよく気の毒な女だと思つてたが、それでも此滑稽な顔を見たら最後、腹の虫が喉まで出て来て
擽
(
くすぐ
)
る様で、罪な事とは知り乍ら、種々な事を云つて揶揄ふ。
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「按摩はさっき通ったよ。白の背広で。だがよく按摩の好きな人だな。僕なぞは
擽
(
くすぐ
)
ったくてしょうがない。」
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
そしてあとはまた何か
擽
(
くすぐ
)
られるようにはしゃいだ、笑い声が聞こえた。色を売る女のような笑い声だった。
遠野へ
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
然し先刻のあの僧侶が、祖母の為に永遠に経を読む等という真ッ赤な嘘を、公然とお互に通してゆく世の中を考えると、彼女は
擽
(
くすぐ
)
られるような気持ちにもなった。
棄てる金
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
これや少し
擽
(
くすぐ
)
ったいな。こんな家庭があるだろうか。おや、おや、俺の思索はどうしてこんなに乱れるだろう。題目はこんなに
好
(
い
)
いのだが出来そうも無さそうだ。
幸福な家庭
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
で、堀は亀の足の脇の下を
擽
(
くすぐ
)
ると、亀は二、三尺動いた。まるで不思議な大きな石が動くように。——その亀の動いた下に暗い穴があった。かれは其処をくぐった。
幼年時代
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
大学という言葉が子供の私の心を
擽
(
くすぐ
)
ったのだ。また私の医者になるということは母の望みでもあった。
前途なお
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
ふと彼女を
視
(
み
)
ると、僕の学生時代のモスの
兵児帯
(
へこおび
)
を探し出して
締
(
し
)
めているのだ。何だか
擽
(
くすぐ
)
ったいものが身内を走ったが、僕は故意にシンケンな表情をかまえていた。
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
気が
顛倒
(
てんとう
)
いたし、いささか頭の調子が狂っているのではないかしら——と、真面目に相手にすることも出来ないといったように、みな
擽
(
くすぐ
)
ったいような顔を見合って
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
甚だ
擽
(
くすぐ
)
ったい感じが致しますが、この辺が世間の心理の測り知るべからざる所だろうと悟りました。
安死術
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
そしてともすれば肉の締りがほぐれて行くやうな氣持がして、快い睡魔が
何時
(
いつ
)
となく體を包んで行くのである。片隅で誰かの幽かな
鼾聲
(
いびきごゑ
)
が
擽
(
くすぐ
)
るやうな音を立ててゐる。
猫又先生
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
桟橋の端には、物語めいた一そうの
短舟
(
ボウテ
)
が、テイジョ河口の三角浪に
擽
(
くすぐ
)
られて忍び笑いしていた。
踊る地平線:08 しっぷ・あほうい!
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
そう云って、私は彼を裸かにさせたまま、その脊骨のへんな突起を、
象牙
(
ぞうげ
)
でもいじるように、何度も
撫
(
な
)
でてみた。彼は目をつぶりながら、なんだか
擽
(
くすぐ
)
ったそうにしていた。
燃ゆる頬
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
馬琴は幸福の意識に溺れながら、こんな事を考へた。さうしてそれが、更に又彼の心を
擽
(
くすぐ
)
つた。
戯作三昧
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
路
(
みち
)
ばたの小石までがはっきりと見えるほどでありながら、何だか
眼
(
め
)
の前がもやもやと
霞
(
かす
)
んで居て、遠くをじっと見詰めると、
瞳
(
ひとみ
)
が
擽
(
くすぐ
)
ったいように感ぜられる、一種不思議な
母を恋うる記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一等の
車室
(
ワゴンリ
)
を借りきってモスコーからパリーへ急行しつつある若いロシア人ルオフ・メリコフは、その植物のにおいに
鼻孔
(
びこう
)
を
擽
(
くすぐ
)
られながら、窓の外に眼をやると、そこには
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
然しそれでも自分は今日の正義の声は余りに、かしましい拙悪な吹奏者の喇叭のやうに、その底に或る不協和な、
擽
(
くすぐ
)
つたい何ものかゞ聞きとれると白状しないではをられない。
愛人と厭人
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
畠の縁に茂つた草が柔く
擽
(
くすぐ
)
るやうに足の指にさはる。季子は突然そこへ
蹲踞
(
しやが
)
んでしまつた。
或夜
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
土橋を潜る水は
温
(
ぬる
)
みて夢ばかりなる水蒸気は白く
顫
(
ふる
)
え、岸を蔽えるクローバーは柔らかに足裏の触覚を
擽
(
くすぐ
)
りて、いかにわれをして試みんとする春の旅の楽しきを思わしめしよ。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
わたしはまったく美男子になり済まして、なんだか
擽
(
くすぐ
)
ったいような心持ちになりました。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
彼は私の膝蓋骨を数回前後に動かし、この震動的な
捏
(
こ
)
ねるような動作を背中、
肩胛骨
(
けんこうこつ
)
、首筋と続けて行い、横腹まで捏ねようとしたが、これ丈は
擽
(
くすぐ
)
ったくってこらえ切れなかった。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
「へッ、今だってあなたその
女
(
ひと
)
に会っているんでしょう。」
擽
(
くすぐ
)
るように疑って言った。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
擽
漢検1級
部首:⼿
18画
“擽”を含む語句
擽林
擽痒
擽痒感覚