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慎
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つつ
ふりがな文庫
“
慎
(
つつ
)” の例文
旧字:
愼
おゝ、あはれ、
小
(
ささ
)
やかに
慎
(
つつ
)
ましい寐姿は、
藻脱
(
もぬけ
)
の殻か、山に夢がさまよふなら、
衝戻
(
つきもど
)
す鐘も聞えよ、と念じ
危
(
あや
)
ぶむ程こそありけれ。
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
たとい猟師のような殺生稼ぎのあらくれ男ですら、山をおそれ、はばかる心は案外強いもので、
慎
(
つつ
)
しむ所はつつしむのが、しおらしい。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
「だから注意するんだ。僕の攻撃はいくらでも我慢するが、縁もゆかりもない人の悪口などは、ちっと
慎
(
つつ
)
しんでくれ、こんな所へ来て」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
襖をそっと細目にあけて、内の様子をうかがってみると、かき立てた
燈火
(
ともしび
)
の横に坐り、所在なさそうに
慎
(
つつ
)
ましく、
蓬生
(
よもぎゅう
)
は
暦
(
こよみ
)
を繰っていた。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そしてわが新宇宙艇が月世界探険にのぼる決心だと知るとたいへん
愕
(
おどろ
)
いて、その
暴挙
(
ぼうきょ
)
をぜひ
慎
(
つつ
)
しむようにといくども勧告をしてきたのだった。
月世界探険記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
彼女の挙措と同じように愛情深い
慎
(
つつ
)
ましい手紙だった。彼に自分の日常を語ってきかせながら、高くとまったやさしい控え目を失わなかった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
庸三の少し後ろの方に
慎
(
つつ
)
ましく坐っていたが、そうした明るい集りのなかで見ると、最近まためっきり顔や姿の
窶
(
やつ
)
れて来たのが
際立
(
きわだ
)
って見えた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
是は
喪
(
も
)
の
忌
(
いみ
)
を黒不浄、月の
障
(
さわ
)
りを赤不浄というに対して、白であろうと事もなげに解する者が多いが、産屋の
慎
(
つつ
)
しみを白というべき理由はない。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そう
云
(
い
)
いかけて、青年は口を
噤
(
つぐ
)
んでしまった。が、口の中では、美奈子の
慎
(
つつ
)
ましさや美しさに対する
讃美
(
さんび
)
の言葉を、
噛
(
か
)
み
潰
(
つぶ
)
したのに違いなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
慎
(
つつ
)
ましやかな態度で云って、
悧巧
(
りこう
)
そうな、小さく円く、パッチリとした
眸
(
ひとみ
)
を伏せて、こころもち胸を引くようにして
挨拶
(
あいさつ
)
する、その身のこなしには
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一、幼少のときにある
放蕩息子
(
ほうとうむすこ
)
が身をあやまって、自分のみならず大勢の人に
迷惑
(
めいわく
)
やら心配をかけたのをみて、婦人関係は深く
慎
(
つつ
)
しむべしと決心した。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
と、若い血しおを圧し抑えて、
努
(
つと
)
めて、
慎
(
つつ
)
ましやかに云うのであったが、涙は
滂沱
(
ぼうだ
)
として、畳をぬらしていた。
日本名婦伝:小野寺十内の妻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
食事の態度は
行儀
(
ぎょうぎ
)
よく
慎
(
つつ
)
ましかった。少年はたっぷり食べた。「お雑作でがんした」礼もちゃんと言った。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
あらゆる
慎
(
つつ
)
しみ、あらゆる品格、あらゆる悔いがなかった。すべては、ただ、あるがままに投げだされ、惜しみなく発散し、浪費し、行われ、つくされていた。
道鏡
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
慎
(
つつ
)
ましい婿の態度を、心地よげに見やりながら、ゆっくり茶を喫した源兵衛、やがてさりげない調子で
入婿十万両
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
近代音楽史の上に、
慎
(
つつ
)
ましやかながら、
毅然
(
きぜん
)
として
聳
(
そび
)
ゆるセザール・フランクの姿は
尊
(
とうと
)
くもなつかしい。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
にんじんはこうして、めいめいの幸福を一部分ずつ取って、
慎
(
つつ
)
ましく自分の幸福を組み立てるのである。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
万事万端
思切
(
おもいき
)
りが
能
(
よ
)
くて、世に処し
政
(
まつりごと
)
を料理するにも卑劣でない、
至極
(
しごく
)
面白い気風であるが、何分にも支那流の
磊落
(
らいらく
)
を気取て一身の私を
慎
(
つつ
)
しむことに気が付かぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
傍人
(
ばうじん
)
慌てゝ彼をとゞめて曰く、君よ口を
慎
(
つつ
)
しめ、かの破れたる帽子の下に宇宙は包まれてありと。
閑天地
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
さすがに
慎
(
つつ
)
ましくて恋人になった男に全生命を任せているというような人が私は好きで、おとなしいそうした人を自分の思うように教えて成長させていければよいと思う
源氏物語:04 夕顔
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
東京中のあらゆる階級の女の、あらゆる指を、彼は
片
(
かた
)
っ
端
(
ぱし
)
から見て来たのだった。省線電車の中に並んだ女達が
慎
(
つつ
)
ましく膝の上に揃えた指、乗合自動車の吊り革を
掴
(
つか
)
む女達の指。
指と指環
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
取次ぎに出て来た一人の少女(それが小間使で、お志保というのであるという事を彼は知っているはずはなかった。)が
慎
(
つつ
)
ましやかに坐って自分を仰ぎ見ているのに気がつくと
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
そして彼は、
己
(
おの
)
が恋の
浄
(
きよ
)
い貞潔な焔が燃え上がっている犠牲壇のまわりを、
慎
(
つつ
)
ましくめぐり歩いて、その焔の前にひざまずいては、あらゆる手を尽して、それを
煽
(
あお
)
り立て
護
(
まも
)
り立てた。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
独逸クルウの
誰
(
だれ
)
かの
愛人
(
リイベ
)
とみえる、一人のゲルマン娘は、いつも
毅然
(
きぜん
)
としていて、練習時間には、
慎
(
つつ
)
ましく、ひとり日蔭
椅子
(
いす
)
に
坐
(
すわ
)
り、編物か、読書に
耽
(
ふけ
)
っていて、その
端麗
(
たんれい
)
な姿にも
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「ゆゆし」は、
慎
(
つつ
)
しみなく、
憚
(
はばか
)
らずという意もあって、結局同一に帰するのだから、此歌の場合も、「慎しみもなく」と
翻
(
ほん
)
してもいいが、忌々しいの方がもっと直接的に響くようである。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
お前を産んだお前の親しい民族は、今言葉を
慎
(
つつ
)
しむ事を命ぜられているのだ。それ故にそれらの人々に代って、お前を愛し惜しんでいる者がこの世にあるという事を、生前のお前に知らせたいのだ。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
ことに
嫂
(
あによめ
)
に
気下味
(
きまず
)
い事をいうのは、直接兄に当るよりもなお悪いと思って、平生から
慎
(
つつ
)
しんでいた。しかし腹の中はむしろ反対であった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は
慎
(
つつ
)
ましやかな苦笑を
洩
(
もら
)
しながら「
実事
(
じつごと
)
の奥義の解せぬ人達のする事じゃ。また実事の面白さの解せぬ人達の見る芝居じゃ」と、一言の下に
貶
(
けな
)
し去った。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
畏
(
おそ
)
れと、
慎
(
つつ
)
しみと、感謝と、それに自然を敬重する知恵が要望されること、今日より切なるはない。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
そのうしろから活け花の道具を持った、一人の女がついて来て、隅のほうに
慎
(
つつ
)
ましく手をついた。
雨の山吹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
人々の話を幸子と二人で
慎
(
つつ
)
ましく聴いていただけであったが、それにしては師匠も特別に眼をかけてくれ、自分もいつかは名取にして貰おうと云う下心がないでもなかったのに
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
マデレンのくろずんだ巨大な
寺院
(
じいん
)
を背景として一日中自動車の
洪水
(
こうずい
)
が
渦巻
(
うずま
)
いているプラス・ド・マデレンの
一隅
(
かたすみ
)
にクラシックな品位を保って
慎
(
つつ
)
ましく存在するレストラン・ラルウ
異国食餌抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その頃の青年華族などは、適当にケチで、お品がよくて、個性が無くて、積極的な行動を
慎
(
つつ
)
しんで、自分の意見をさえ言わなければ、それで
先
(
ま
)
ず同族間の評判は
申分
(
もうしぶん
)
無かったのです。
奇談クラブ〔戦後版〕:13 食魔
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
幸福の涙が閉じた
眼瞼
(
まぶた
)
から流れた。そばについてる小娘が、
慎
(
つつ
)
ましくその涙を
拭
(
ふ
)
いてくれたが、彼はそれに気づかなかった。彼はこの下界に起こってることをもう何にも感じなかった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
短気は
慎
(
つつ
)
しもうではござらぬか……その
中
(
うち
)
ご老師にも思い返されて愚老のお頼みに応ぜられ、大砲ご鋳造くださるやも知れず、それはともかく、まず当分は、城内にご逗留なされますよう。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と、油学士は、急に
慎
(
つつ
)
しみの色を現して、醤主席を
拝
(
はい
)
したのであった。
人造人間戦車の機密:――金博士シリーズ・2――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
左
(
さ
)
りとて
唯
(
ただ
)
これを口に言うばかりでなく、近く自分の身より始めて、
仮初
(
かりそ
)
めにも言行
齟齬
(
そご
)
しては
済
(
す
)
まぬ事だと、
先
(
ま
)
ず一身の私を
慎
(
つつ
)
しみ、一家の生活法を
謀
(
はか
)
り、他人の世話にならぬようにと心掛けて
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
声も
朗
(
ほがら
)
かに、
且
(
か
)
つ
慎
(
つつ
)
ましく
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
生れてからまだ一度も顔を合せた
覚
(
おぼえ
)
のないその婦人は、
寝掛
(
ねがけ
)
と見えて、白昼なら人前を
憚
(
はば
)
かるような
慎
(
つつ
)
しみの足りない姿を津田の前に
露
(
あら
)
わした。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
妾
(
わたし
)
、何処だっていゝわ。貴女のお好きなところなら何処だっていゝわ。」美奈子は、
慎
(
つつ
)
ましくそう云った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
後ろに
慎
(
つつ
)
ましく控えたのは、二十二三の内儀、
白粉
(
おしろい
)
も紅も抜きにして少し
世帯崩
(
しょたいくず
)
れのした、——若くて派手ではありませんが、さすがの平次もしばらく
見惚
(
みと
)
れたほどの美しい女でした。
銭形平次捕物控:078 十手の道
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼女は彼に
挨拶
(
あいさつ
)
をし、ごくやさしい声で、
機嫌
(
きげん
)
はどうかと尋ねた。おとなしい
慎
(
つつ
)
ましい様子でピアノについた。まったく従順な天使だった。意地悪な生徒らしい
悪戯
(
いたずら
)
を、もう少しもしなかった。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
けれども僕の前に出て畏こまる事よりほかに何も知っていない彼女の姿が、僕にはいかに
慎
(
つつ
)
ましやかにいかに控目に、いかに女として
憐
(
あわ
)
れ深く見えたろう。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何よりも
先
(
ま
)
ず、その石竹色に
湿
(
うる
)
んでいる頬に、微笑の先駆として浮かんで来る、
笑靨
(
えくぼ
)
が現われた。それに続いて、
慎
(
つつ
)
ましい
脣
(
くちびる
)
、高くはないけれども穏やかな品のいゝ鼻。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
五十前後の内儀お
縫
(
ぬい
)
は、主人彦太郎の後ろから
慎
(
つつ
)
ましく顔を出しました。
銭形平次捕物控:146 秤座政談
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そうして故意に反対の方を見たり、あるいは向うへ二三歩あるき出したりした。それがため、妙に遠慮深いところのできた敬太郎はなるべく
露骨
(
むきだし
)
に女の方を見るのを
慎
(
つつ
)
しんでいた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
茂野は
慎
(
つつ
)
ましく黙礼して、自宅の方へ引返しました。
銭形平次捕物控:139 父の遺書
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
けれども女と一直線になって、背中合せに坐っている自分の位置を考えると、この際そんな盲動は
慎
(
つつ
)
しまなければならないので、眼のやりどころに困るという風で、ただ正面をぽかんと見廻した。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
慎
(
つつ
)
しむにはあまり
飄
(
ひょう
)
きんである。聴衆は迷うた。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
慎
常用漢字
中学
部首:⼼
13画
“慎”を含む語句
謹慎
要慎
慎深
粛慎
可慎
慎重
不謹慎
畏慎
矯慎
生島慎九郎
猶可慎
隠居慎
独慎
細井知慎
謹慎室
三慎
閉門謹慎
身慎莫
賈慎庵
許慎
...