後日ごじつ)” の例文
これは博士の書斎にある書類棚しょるいだなの、原稿袋の中に保存せられていたもので、後日ごじつこれを発見した人々の間に問題となった一文である。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
不二夫君は、後日ごじつのしょうこにと、たいせつにパジャマのポケットに入れていた、ゆうべの脅迫状を取りだして喜多村にしめすのでした。
大金塊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
余は不足ふそくしなと余分のしなとの直接交換ちよくせつこうくわんのみならず、必要以外の品と雖も後日ごじつようを考へて取り換へ置く事も有りしならんと思惟するなり
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
「いいつけをまもって、すなおにはたらく者へは、後日ごじつ、じゅうぶんな褒美ほうびをくれるし、とやこう申すやつはってすてるからさよう心得こころえろ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一 私儀わたくしぎ狂言作者志望につき福地先生門生もんせい相成あいなり貴座きざ楽屋へ出入被差許候上者でいりさしゆるされそうろううえは劇道の秘事楽屋一切の密事決而けっして口外致間敷いたすまじく依而よって後日ごじつのため一札如件いっさつくだんのごとし
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ロレ 諸天善神しょてんぜんじんねがはくはこの神聖しんせいなるしきませられませい、ゆめ後日ごじつ悲哀かなしみくださしまして御譴責ごけんせきあそばされますな。
「わたくしは人に仕えることの出来る者ではありません。あなたとは不釣合いです。なまじいに結婚して後日ごじつの恨みを残すような事があってはなりません」
(2) 予算ノ款項かんこうニ超過シ又ハ予算ノほかニ生シタル支出アルトキハ後日ごじつ帝国議会ノ承諾しょうだくヲ求ムルヲ要ス
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
後日ごじつ東京驛とうきやうえきかへつたとき居合ゐあはせた赤帽君あかばうくんに、その二十四——のをくと、ちやう非番ひばんやすみだとふ。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれは日記帳に、「あゝわれつひにへんや、あゝわれつひに田舎いなかの一教師にうもれんとするか。明日! 明日は万事定まるべし。村会の夜の集合! ああ! 一語以て後日ごじつに寄す」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
この差の起こる所以ゆえんは、アメリカ人はもっとかねを欲しい、みずか貯蓄ちょちくして後日ごじつ安楽に暮らそうというのである。イギリス人はこんにちの制度ではほとんど家族の顔を見ることも出来ない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
これと婚姻を通ずるも後日ごじつ生計せいけいの見込なしとて、一概に擯斥ひんせきする者あり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この男が後日ごじつ成金になって十七万円の講堂を寄附した当座、明治学園では神さまの次が赤羽さんのようだった。もっともジョンソン博士も猪股先生も死んでしまったから、学風が幾分変ったのだろう。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
この思想中には後日ごじつの将軍たる、徳川政府最後の将軍慶喜よしのぶ公すら含蓄がんちくしたるものにして、烈公、藤田の徒は申すにも及ばず、その散じて、天下の尊攘家を喚起し、その流れて薩摩に入りたるもの
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
尚その命令書には『おっ後日ごじつ何等カノ命令アルマデハ本件ニ関シ総指揮官部へ報告ニ及バズ』と但書ただしがきを書くから、予め諒承りょうしょうありたい
出て来たらどんなにも詫びて——と市十郎は、自責のつぐないを後日ごじつに期して、その後もその木賃から子を負って、毎日、どこともなく出歩いていた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
団十郎に何の料簡りょうけんがあったわけではなく、彼の性質として、自分の思ったことを率直に言ったに過ぎないのであるが、それを覚ったのは遥かに後日ごじつのことで
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ひめすくいださんため、たゞ一人ひとりにてまゐりしは、ひそか庵室いほりにかくまひおき、後日ごじつをりて、ロミオへおくとゞけん存念ぞんねんしかるにまゐれば、ひめ目覺めざむるすこしき前方まへかた
それに、これらのいさましい少年たちは、後日ごじつ、またどのような手がらをたてないものでもないのです。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
これ必定ひつじょう、駈落の侍が路用ろようの金なるべしと心付き候へば、なほ更空恐しく相なり、後日ごじつの掛り合になり候ては一大事と、そのまゝ捨て置き立去らむと致せしが、ふとまた思直おもいなおせば
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さて出口でぐちから、裏山のそのじゃ矢倉やぐらを案内しよう、と老実まめやかに勧めたけれども、この際、観音かんおん御堂みどう背後うしろへ通り越す心持こころもちはしなかったので、挨拶あいさつ後日ごじつを期して、散策子は
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
後日ごじつにおいて小栗上野介おぐりこうずけのすけの如きもまたその一なりとわざるを得ず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
今日こそ世人の軽々けいけい看過するところならんといえども、その実は恐るべき禍乱の徴候にして、我が輩は天下後日ごじつの世相を臆測し、日本の学問は不幸にして政治に附着して、その惨状の極度はかの趙末
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
したがって自分は子守か乳母うばの真似をしていればよいと思うか、あるいは自分のあずかれるものは日本国をうて立つ後日ごじつの国民である。中には貴族の子もあり富豪ふごうの愛嬢もあり、また学者の後裔こうえいもある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
後日ごじつの為めに指紋を取って置いたのさ——それとなくね」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
あやうく四馬剣尺の魔手ましゅからのがれた、春木、牛丸の二少年は、つぎの日、山をくだると、そこで後日ごじつを約して戸倉老人とわかれた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さゝ、はやなしゃれ。生存いきながらへて、後日ごじつ自分じぶんは、狂人きちがひ仁情なさけで、あやふところたすかったとおひなされ。
名分めいぶんはそれだったが、彼の意中には、べつに何か後日ごじつのための目的があったのかも分らない。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これについて、後日ごじつ、わが金博士はこのことを伝え聞き、そしてしずかにいったことである。
佐々木道誉や左近らが、わしの性根を見てやろうと、寄ってたかって杯をいるものに相違ない。すでに宵からの酒。さりとて、ここでぶざまな酔い崩れなど見せては後日ごじつの笑われぐさ。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多分このお守袋は、彼女がミマツ団員の誰かに拾いあげられた当時、気のきいた女団員が、後日ごじつのために、ひそかに二重のお守袋をつくって、房枝のはだにつけ、きせておいたものらしい。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この伊那丸に恩義を売りつけ、柴田が配下に立たせようはかりごとか、または、後日ごじつに、人穴城をうばおうという汝らの奸策かんさく、この伊那丸は若年じゃくねんでも、そのくらいなことは、あきらかに読めている
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菊亭右大臣きくていうだいじんともある堂上どうじょうやかたへ、うかつに手を入れれば、後日ごじつ朝廷ちょうていから、どんなおとがめがあるかもしれないから——これは秀吉ひでよしじしんの手をもってしても、めったなことはできないのであろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
待っていましたという風に答えては、佐吉め、ぎつけておるナと、かえってこの主人にはおもしろくない気持が後日ごじつにやってくるにちがいない。ぼやっとして見せるに限ると、考えたからである。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後日ごじつ
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)