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引立
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ひった
ふりがな文庫
“
引立
(
ひった
)” の例文
立騒ぐ召つかいどもを叱りつも
細引
(
ほそびき
)
を
持
(
も
)
て来さして、しかと両手をゆわえあえず奥まりたる三畳の暗き
一室
(
ひとま
)
に
引立
(
ひった
)
てゆきてそのまま柱に
縛
(
いまし
)
めたり。
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、何処でかキャンキャンと二声三声犬の啼声がする……
佶
(
きっ
)
と耳を
引立
(
ひった
)
って見たが、もう
其切
(
それきり
)
で聞えない。隣町あたりで
凍
(
かじ
)
けたような物売の声がする。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
さればこそ衣類と髪の不似合な装いをしたのでござらぬか、さりとは不届至極な為され方、さア此の上は両人とも当家を
引立
(
ひった
)
て、
大目附衆
(
おおめつけしゅう
)
へ差出さねば成らぬ
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「今あすこで一服すって待っているだが、顔さえ見れば直ぐに
引立
(
ひった
)
てて連れて行こうという
見脈
(
けんまく
)
だで……」
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
それから彼は口を堅くつぐみさま、警官等の
引立
(
ひった
)
てるがままに身体を任した。
サレーダイン公爵の罪業
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
▼ もっと見る
(おつやは太吉を
引立
(
ひった
)
てて、
上
(
かみ
)
のかたの障子の
中
(
うち
)
に入る。
山風
(
やまかぜ
)
の音。)
影:(一幕)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
尾を
撮
(
つま
)
んで、にょろりと
引立
(
ひった
)
てると、青黒い背筋が
畝
(
うね
)
って、びくりと鎌首を
擡
(
もた
)
げる
発奮
(
はずみ
)
に、手術服という白いのを
被
(
はお
)
ったのが、手を振って、飛上る。
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
法は法、
抂
(
ま
)
げる訳になりませぬから、文治お町の両人を駕籠に乗せて奉行所へ
引立
(
ひった
)
てました。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
さて食事も済む。二階へ立戻ッて文三が再び取旁付に懸ろうとして見たが、何となく
拍子抜
(
ひょうしぬ
)
けがして以前のような気力が出ない。ソッと小声で「大丈夫」と言ッて見たがどうも気が
引立
(
ひった
)
たぬ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
といって、今、お夏を
引立
(
ひった
)
てたのを見るや否や、軍鶏の
頸
(
うなじ
)
を捕えようとした鉄は、両の
掌
(
てのひら
)
で目を
蓋
(
ふた
)
して
背後
(
うしろ
)
へ
反
(
そ
)
った。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ただ枕元で喋るばかりで
些
(
ちっ
)
とも手が届かねえ、奥の
肥
(
ふと
)
ったお
金
(
きん
)
さんと云うかみさんは、
己
(
おれ
)
を
引立
(
ひった
)
って、
虎子
(
おまる
)
へしなせえってコウ
引立
(
ひきた
)
って居てズンと
下
(
おろ
)
すから、虎子で
臀
(
しり
)
を
打
(
ぶ
)
つので
痛
(
いて
)
えやな
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
今の
時世
(
ときよ
)
に、またとない
結縁
(
けちえん
)
じゃに因って、半日も早うのう、その
難有
(
ありがた
)
い人のお姿拝もうと思うての、やらやっと重たい腰を
引立
(
ひった
)
てて出て来たことよ。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
畠には桐を作り、大樹が何十本となく植込んで有り、下は一杯の畠に成って居ります。裏手の灰小屋へ身を潜め、耳を
引立
(
ひった
)
て宅の様子を聞いて居りますると、お瀧が
爪弾
(
つめびき
)
で何か弾いて居ります。
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
と推着けるように辞退して来たものを、ここで
躊躇
(
ちゅうちょ
)
している内に、座を立たれては恐多い、と心を
引立
(
ひった
)
てた腰を、自分で突飛ばすごとく、
大跨
(
おおまた
)
に出合頭。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
清藏は曲者を
引立
(
ひった
)
てまして
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
身は——思う
旨
(
むね
)
がある。一度社宅から出直す。
棚村
(
たなむら
)
は、身ととも参れ。——村の人も婦を連れて、
引立
(
ひった
)
てて——
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
(や、なぐり込みに来やがったな、さ、殺せ、)というと、椅子を取って
引立
(
ひった
)
てて、脚を
掴
(
つか
)
んでぐンと
揮
(
ふ
)
った。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
左の
腕
(
かいな
)
を、ぐい、と
掴
(
つか
)
んで、
獣
(
けもの
)
にしては毛が少ねえ、おおおお
正真
(
しょうじん
)
正銘の仁右衛門だ、よく化けた、とまだそんな事を云いながら、肩にかけて
引立
(
ひった
)
てると
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ぱっと
風説
(
うわさ
)
の
立
(
たち
)
ますため、病人は心が
引立
(
ひった
)
ち、気の狂ったのも安心して治りますが、
免
(
のが
)
れられぬ因縁で、その
令室
(
おくがた
)
の夫というが、
旅行
(
たび
)
さきの海から帰って
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
婆
(
ばばあ
)
がやかましいから急ごう、と云うと、髪をばらりと
振
(
ふ
)
って、私の手をむずと取って
駆出
(
かけだ
)
したんだが、
引立
(
ひった
)
てた
腕
(
うで
)
が
捥
(
も
)
げるように痛む、足も
宙
(
ちゅう
)
で息が
詰
(
つま
)
った。
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「つままれめ、どこをほッつく。」と
喚
(
わめ
)
きざま、
引立
(
ひった
)
てたり。また庭に
引出
(
ひきいだ
)
して水をやあびせられむかと、泣叫びてふりもぎるに、おさえたる手をゆるべず
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
誰でも可い、何をすると
咎
(
とが
)
めりゃ、黙れとくらわす。
此女
(
こいつ
)
取調
(
とりしらべ
)
の筋があるで、交番まで
引立
(
ひった
)
てる、
私
(
わし
)
は雀部じゃというてみい、
何奴
(
どいつ
)
もひょこひょこと
米搗虫
(
こめつきむし
)
よ。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
巡行の巡査が
怪
(
あやし
)
んで
引立
(
ひった
)
て、最寄の警察で取調べたのが、俵町の裏長屋に居たそれだと謂って引渡された。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
傍
(
かたわら
)
の茶棚の上へ、出来て来たのを
仰向
(
あおむ
)
いてのせた、立膝で、
煙草盆
(
たばこぼん
)
を引寄せると、
引立
(
ひった
)
てるように鉄瓶をおろして、ちょいと触ってみて、
埋
(
い
)
けてあった火を一挟み。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
うむ、用があるこっちへ来いと、力任せに
引立
(
ひった
)
てられ、鬼に
捕
(
と
)
らるる心地して、大声上げて救いを呼べど、四天王の面々はこの時既に遁げたれば、誰も助くる者無くて
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
先
(
ま
)
ず口の
裏
(
うち
)
でいって見て、小首を傾けた。
杖
(
ステッキ
)
が邪魔なので
腕
(
かいな
)
の
処
(
ところ
)
へ
揺
(
ゆす
)
り上げて、
引包
(
ひきつつ
)
んだその
袖
(
そで
)
ともに腕組をした。菜種の
花道
(
はなみち
)
、幕の外の
引込
(
ひっこ
)
みには
引立
(
ひった
)
たない
野郎姿
(
やろうすがた
)
。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
先
(
せん
)
の内は、自分でもいやいや
引立
(
ひった
)
てられるようにして帰り帰りしたものですが、一ツは人の
許
(
とこ
)
へ自分は来て、我が
家
(
うち
)
へ誰も呼ばない、という遠慮か、妙な時ふと立っちゃ
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
不意にハッと驚くを、そのまま
引立
(
ひった
)
つるがごとくにして座敷に来り、手を離し、
摚
(
どう
)
とすわり、一あしよろめいて柱に
凭
(
よ
)
る白糸と顔を見合せ、思わずともに、はらはらと泣く。
錦染滝白糸:――其一幕――
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ぐい、と取って、
引立
(
ひった
)
てる。右と左へ、なよやかに脇を開いて、
扱帯
(
しごき
)
の端が縁を離れた。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
走り行きたる
三人
(
みたり
)
の軍夫は、二
人
(
にん
)
左右より両手を取り、一
人
(
にん
)
後
(
うしろ
)
より
背
(
せな
)
を推して、端麗多く世に類なき一個清国の婦人の
年少
(
としわか
)
なるを、荒けなく
引立
(
ひった
)
て来りて、海野の
傍
(
かたえ
)
に推据えたる
海城発電
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
踠
(
もが
)
くない、
螇蚸
(
ばった
)
、わはは、はは、」多磨太は容赦なくそのいわゆる小羊を
引立
(
ひった
)
てた。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
卓子
(
テエブル
)
の上へ、
煙管
(
きせる
)
を持ったまま長く
露出
(
むきだ
)
した火鉢へ
翳
(
かざ
)
した、鼠色の
襯衣
(
しゃつ
)
の腕を、先生ぶるぶると震わすと、歯をくいしばって、
引立
(
ひった
)
てるようにぐいと
擡
(
もた
)
げて、床板へ火鉢をどさり。
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いや、
御身
(
おみ
)
たち、(村人と
禰宜
(
ねぎ
)
にいう)この
婦
(
おんな
)
を案内に
引立
(
ひった
)
てて、臨場裁断と申すのじゃ。怪しい
品々
(
しなじな
)
かっぽじって
来
(
こ
)
られい。証拠の上に、根から
詮議
(
せんぎ
)
をせねばならぬ。さ、婦、立てい。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
推し返す、遣返す——
突込
(
つっこ
)
む、
突放
(
つっぱな
)
す。
引立
(
ひった
)
てる、引手繰る。始末がつかない。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
黒髪は崩るるごとく蔵人の
背
(
せな
)
に揺れかかって
真白
(
まっしろ
)
な
腕
(
かいな
)
は逆に、半身
捻
(
ねじ
)
れたと思うと二人の者に
引立
(
ひった
)
てられて、風に柳の
靡
(
なび
)
くよう、横ざまに
身悶
(
みもだ
)
えした、お夏はさも
口惜
(
くや
)
しげに唇を歪めたが
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
五六名どやどやと
入来
(
いりきた
)
りて、正体もなき謙三郎をお通の手より奪い取りて、有無を謂わせず
引立
(
ひった
)
つるに、
啊呀
(
あなや
)
とばかり
跳起
(
はねお
)
きたるまま、茫然として立ちたるお通の、歯をくいしばり、瞳を据えて
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
荷物を
引立
(
ひった
)
てて来て、二人で改札口を出た。その
半纏着
(
はんてんぎ
)
と、薄色背広の押並んだ対照は妙であったが、
乗客
(
のりて
)
はただこの二人の影のちらちらと分れて映るばかり、十四五人には過ぎないのであった。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
手桶を
引立
(
ひった
)
てて、お源は腰を切って、出て、
溝板
(
どぶいた
)
を下駄で鳴らす。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
宅膳
引立
(
ひった
)
てて
可
(
よ
)
うござる。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、
引立
(
ひった
)
てて、ずいと出た。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
引
常用漢字
小2
部首:⼸
4画
立
常用漢字
小1
部首:⽴
5画
“引立”で始まる語句
引立々々