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庵室
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あんしつ
ふりがな文庫
“
庵室
(
あんしつ
)” の例文
これも三年掛かったと本人が私に話していました。風采は禅坊主見たいな人で、
庵室
(
あんしつ
)
にでも
瓢然
(
ひょうぜん
)
として坐っていそうな風の人であった。
幕末維新懐古談:78 谷中時代の弟子のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
そして初めは不快に思はれた、粗野なその家が、日をふるに従つて、どこか彼の身についた片田舎の
庵室
(
あんしつ
)
のやうに思はれた。
閾
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
伊右衛門はお岩の亡霊に悩まされるので、
蛇山
(
へびやま
)
の
庵室
(
あんしつ
)
に
籠
(
こも
)
って、
浄念
(
じょうねん
)
と云う坊主に
祈祷
(
きとう
)
してもらっているところであった。
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
千恵も
暫
(
しばら
)
く散歩のふりをしながら、本堂から小会堂のあたり、裏門の方にある
庵室
(
あんしつ
)
のへんなどをぶらぶらしてみました。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
一昨日
(
おととい
)
の晩三人で来て前の
家
(
うち
)
は策で売らしてしまったから、
笠阿弥陀堂
(
かさあみだどう
)
の横手に
交遊庵
(
こうゆうあん
)
という
庵室
(
あんしつ
)
がありましょう、
二間
(
ふたま
)
室
(
ま
)
があって、庭も
些
(
ちっ
)
とあり
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
蒲衣子
(
ほいし
)
の
庵室
(
あんしつ
)
は、変わった道場である。
僅
(
わず
)
か四、五人しか弟子はいないが、彼らはいずれも師の歩みに
倣
(
なろ
)
うて、自然の
秘鑰
(
ひやく
)
を探究する者どもであった。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
門からのぞくと、
庵室
(
あんしつ
)
のなかには、
白髪童顔
(
はくはつどうがん
)
の
翁
(
おきな
)
が、果物で酒を
酌
(
く
)
みながら、
総髪
(
そうはつ
)
にゆったりっぱな
武士
(
ぶし
)
とむかいあって、なにかしきりに笑い
興
(
きょう
)
じている。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
迄
(
まで
)
侍者
(
じしや
)
をしてゐましたが、
此頃
(
このごろ
)
では
塔頭
(
たつちゆう
)
にある
古
(
ふる
)
い
庵室
(
あんしつ
)
に
手
(
て
)
を
入
(
い
)
れて、
其所
(
そこ
)
に
住
(
す
)
んでゐるとか
聞
(
き
)
きました。
何
(
ど
)
うですか、まあ
着
(
つ
)
いたら
尋
(
たづ
)
ねて
御覽
(
ごらん
)
なさい。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
斗丈翁
(
とじょうおう
)
という有名な俳人の、五
反麻
(
たんま
)
という地の
庵室
(
あんしつ
)
へかくれたりして、所在をくらましておられました。
犬神娘
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
いや
味
(
み
)
を申し上げているのではありません。眼夢、かくの
如
(
ごと
)
く、いまはつくづく無分別の出家
遁世
(
とんせい
)
を後悔いたし、冬の吉野の
庵室
(
あんしつ
)
に寒さに震えて
坐
(
すわ
)
って居ります。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
過て宇都谷
峠
(
たうげ
)
に到れば
絶頂
(
ぜつちやう
)
の
庵室
(
あんしつ
)
地藏尊
(
ぢざうそん
)
の
境内
(
けいだい
)
に
西行
(
さいぎやう
)
の
袈裟掛
(
けさかけ
)
松あり其所の
脇
(
わき
)
へ年の頃五十位と見ゆる旅
僧
(
そう
)
のやつれたるが十歳許りの女の子を引立來り彼の
僧
(
そう
)
目
(
め
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
西坂本の
庵室
(
あんしつ
)
に
隠栖
(
いんせい
)
する尼僧の母は、すでに六十歳を越した
老媼
(
ろうおう
)
であることを思う時、滋幹の心は自然冷めたい現実の前に出ることを尻込みしなかったであろうか。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「そんな事はしねえが、説教はする。八宗兼學の大した修業者だが、この世の慾を絶つて、小さい
庵室
(
あんしつ
)
に籠り、若い弟子の鐵童と一緒に、朝夕お
經
(
きやう
)
ばかり讀んでゐる」
銭形平次捕物控:104 活き仏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
師僧
般陀羅
(
はんだら
)
の遺示により、はるばるインドから唐土に渡って、河南のほとり崇山に
庵室
(
あんしつ
)
をいとなみながら、よく面壁九年の座禅修業を行ないつづけたと伝えられている
右門捕物帖:09 達磨を好く遊女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
此月の
初頃
(
はじめごろ
)
なりしが、畫にある
樣
(
やう
)
な
上﨟
(
じやうらふ
)
の如何なる故ありてか、かの
庵室
(
あんしつ
)
に
籠
(
こも
)
りたりと想ひ給へ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
其と共に姫の身は、此
庵室
(
あんしつ
)
に暫らく留め置かれることになった。たとい、都からの迎えが来ても、結界を越えた贖いを果す日数だけは、ここに居させよう、と言うのである。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
そこは
蓮照寺
(
れんしょうじ
)
という
尼寺
(
あまでら
)
なのよ。そこは女人の外は禁制なんだけれど、裏門から忍びこんでごらんなさい。そして鐘つき堂のある丘をのぼると、そこに小さな
庵室
(
あんしつ
)
があってよ。
鍵から抜け出した女
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
吐き出すようにいって、本堂のむこうにある自分の
庵室
(
あんしつ
)
のほうへ、どんどん帰って行った。
巷説享保図絵
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
石川河の
磧
(
かわら
)
に近く
庵室
(
あんしつ
)
をしつらえさせて、昔物語の姫君のように、下げ髪に
几帳
(
きちょう
)
を立て、そこに
冥想
(
めいそう
)
し、読書するという
富家
(
ふうか
)
の
女
(
ひと
)
は、石の上露子とも石河の夕千鳥とも名乗って
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
吉田国五郎の人形芝居は例へば
清玄
(
せいげん
)
の
庵室
(
あんしつ
)
などでも、血だらけな清玄の幽霊は
大夫
(
たいふ
)
の
見台
(
けんだい
)
が二つに割れると、その中から姿を現はしたものである。
寄席
(
よせ
)
の広瀬も焼けてしまつたであらう。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
大小の村のほかに、このとおりそこここに、出村だの部落だの、坊さんの
庵室
(
あんしつ
)
だの、水車小屋だのが散らばっています。……牛や馬も、どっさりいました。この水色に塗ってある所がそれです。
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「兄さん、
庵室
(
あんしつ
)
つて、こんなに何もないものですか。」
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
地獄谷の
庵室
(
あんしつ
)
と仰しゃったのを心当てに尋ねてみましたが、これはどうやら例のお人の悪い御
嘲弄
(
ちょうろう
)
であったらしく
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
悟浄
(
ごじょう
)
がこの
庵室
(
あんしつ
)
を去る四、五日前のこと、少年は朝、
庵
(
いおり
)
を出たっきりでもどって来なかった。彼といっしょに出ていった一人の弟子は不思議な報告をした。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
「橋の
袂
(
たもと
)
の柳の
裏
(
うち
)
に、人住むとしも見えぬ
庵室
(
あんしつ
)
あるを、試みに敲けば、世を
逃
(
のが
)
れたる隠士の
居
(
きょ
)
なり。幸いと冷たき人を
担
(
かつ
)
ぎ入るる。
兜
(
かぶと
)
を脱げば眼さえ氷りて……」
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その
何
(
なん
)
でごぜえます、王子の在にお
寮
(
りょう
)
があるので、その
庵室
(
あんしつ
)
見たような所の
側
(
わき
)
の、
些
(
ちっ
)
とばかりの地面へ
家
(
うち
)
を建てゝ、楽に暮していた風流の隠居さんが有りまして
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「そんな事はしねえが、説教はする。八宗兼学の大した修業者だが、この世の欲を絶って、小さい
庵室
(
あんしつ
)
に
籠
(
こも
)
り、若い弟子の鉄童と一緒に、朝夕お経ばかり読んでいる」
銭形平次捕物控:104 活き仏
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
忠隣の忠臣吉見太郎左衛門は、所司代庁の捕卒を五六人
伴
(
つ
)
れ、訴人の僧侶を案内にして九条のほうへ往った。そして、僧侶の教えるままに
天神
(
てんじん
)
の裏手にある
庵室
(
あんしつ
)
へ往った。
切支丹転び
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
万法蔵院の北の山陰に、昔から小な
庵室
(
あんしつ
)
があった。昔からと言うのは、村人がすべて、そう信じて居たのである。荒廃すれば繕い繕いして、人は住まぬ廬に、
孔雀明王像
(
くじゃくみょうおうぞう
)
が据えてあった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
竹藪でしずれる雪の音、近くで聞こえる読経の声、近所に
庵室
(
あんしつ
)
でもあるらしい。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「フーム、では
果心
(
かしん
)
先生には、
鞍馬
(
くらま
)
の
庵室
(
あんしつ
)
にも、おすがたが見えなかったか」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いかさま、こゝへ来て見ると、その崖の上の
苔
(
こけ
)
の間に微かなひとすじの坂路があって、そこを登り詰めたあたりに傾きかゝった小さな門が建っているのは、多分その奥が
庵室
(
あんしつ
)
になっているのであろう。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
打越
(
うちこえ
)
て柴屋寺へと
急
(
いそぎ
)
ける(柴屋寺と言は柴屋宗長が
庵室
(
あんしつ
)
にして今
猶
(
なほ
)
在
(
あり
)
と)既に其夜も
子刻
(
こゝのつ
)
の
拍子木
(
ひやうしぎ
)
諸倶
(
もろとも
)
家々の
軒行燈
(
のきあんどん
)
も早引て
廓
(
くるわ
)
の中も
寂寞
(
ひつそり
)
と
往來
(
ゆきゝ
)
の人も
稀
(
まれ
)
なれば
時刻
(
じこく
)
も丁度
吉野屋
(
よしのや
)
の
裏口
(
うらぐち
)
脱
(
ぬけ
)
て
傾城
(
けいせい
)
白妙名に
裏表
(
うらうへ
)
の
墨染
(
すみぞめ
)
の衣を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
秀蓮尼
(
しゅうれんに
)
庵室
(
あんしつ
)
鍵から抜け出した女
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
地獄谷の
庵室
(
あんしつ
)
と仰しやつたのを心当てに尋ねてみましたが、これはどうやら例のお人の悪い御
嘲弄
(
ちょうろう
)
であつたらしく
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
平次は立ち上がつて八五郎に合圖をすると、
疾風
(
しつぷう
)
の如く道尊の
庵室
(
あんしつ
)
へ飛んで行きました。
銭形平次捕物控:064 九百九十両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
夕闇の中へ飛出すと、眞つ直ぐに
雜司
(
ざふし
)
ヶ
谷
(
や
)
庵室
(
あんしつ
)
へ。
銭形平次捕物控:104 活き仏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
“庵室”の意味
《名詞》
僧尼の居所。
隠遁した者の住まい。いおり。
(出典:Wiktionary)
庵
漢検準1級
部首:⼴
11画
室
常用漢字
小2
部首:⼧
9画
“庵”で始まる語句
庵
庵主
庵原
庵崎
庵寺
庵看板
庵原将監
庵原郡
庵峠
庵號