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川面
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かわも
ふりがな文庫
“
川面
(
かわも
)” の例文
じっと、狭い肩身を
竦
(
すく
)
め合ったまま、潮田又之丞、小野寺幸右衛門、武林唯七の三名は、顔も
得上
(
えあ
)
げずに、暗い
川面
(
かわも
)
を見つめていた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もう少し先へ行くと
都鳥
(
みやこどり
)
と、
瓦屋
(
かわらや
)
が名物ですが、この辺はまだ町の中で、岸にはいろいろのゴミが、雪と一緒に
川面
(
かわも
)
を埋めております。
銭形平次捕物控:021 雪の精
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
地しばりやおおばこなど、葉末に露をたたえた雑草をはだし
足袋
(
たび
)
に蹴立てて歩いて行った。白い
川面
(
かわも
)
がとおくまで光っていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
そのとき、
二人
(
ふたり
)
の
目
(
め
)
には、
水
(
みず
)
の
清
(
きよ
)
らかな、
草
(
くさ
)
の
葉先
(
はさき
)
がぬれて
光
(
ひか
)
る、しんとした、
涼
(
すず
)
しい
風
(
かぜ
)
の
吹
(
ふ
)
く
川面
(
かわも
)
の
景色
(
けしき
)
がありありとうかんだのであります。
海ぼたる
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
季節でもないこの夜更けに、ボート遊びをしているような物好きもなく、暗い
川面
(
かわも
)
には、彼らの
外
(
ほか
)
に貸ボートの赤い
行燈
(
あんどん
)
は、一つも見当らなかった。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
それは、熱心に
川面
(
かわも
)
を見つめながら鈎を上げ下げしていると、沈床のかげから二、三尾の大鮎が追いつ、追われつして、互いに絡まりながら泳ぎ出してきた。
想い出
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
わたしは、まだいくらか残っていた酒に未練をおぼえて一と口飲んでは書き一と口飲んでは書きしたが最後の
雫
(
しずく
)
をしぼってしまうと罎を
川面
(
かわも
)
へほうり投げた。
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それは
川面
(
かわも
)
の
漣波
(
れんぱ
)
に、
蘆荻
(
ろてき
)
のそよぎに、昼顔の花に、鳥のさえずりに、ボロ服とボロ
靴
(
ぐつ
)
にあるのではないか。
映画雑感(Ⅰ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
遥
(
はるか
)
に
川面
(
かわも
)
を見渡すと前岸は模糊として煙のようだ。あるともないとも分らぬ。燈火が一点見える。あれが前岸の家かも知れぬ。
汐
(
しお
)
は今満ちきりて
溢
(
あふ
)
るるばかりだ。
句合の月
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
すると、今し方通った川蒸汽の横波が、斜に
川面
(
かわも
)
をすべって来て、大きく伝馬の底を
揺
(
ゆす
)
り上げた。
ひょっとこ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして一せいに眼をかがやかせて、広い
川面
(
かわも
)
の方へつまさきをのびあがらせるのだった。
海底大陸
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
川面
(
かわも
)
には薄い靄が流れて、列び茶屋にはもうちらちらと提灯の火が揺らめいて見えた。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
北の岸は
卑湿
(
ひしゆう
)
の地なるまゝいと荒れたれば、自然の趣きありて、初夏の
新蘆
(
しんろ
)
栄ゆる頃、晩秋の風の音に力入りて聞ゆる折などは、
川面
(
かわも
)
の眺めいとをかしく、花紅葉のほかの好き風情あり。
水の東京
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
川霧はまったく晴れてオールに破れた
川面
(
かわも
)
が、
小波
(
さざなみ
)
をたてて、日にキラキラと光った。モコウは黙々としてオールをあやつり、黙々として四人を川岸にあげ、そして黙々としてこぎ帰った。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
ボオトの場景が
最後
(
ラスト
)
を
飾
(
かざ
)
り、
観
(
み
)
ていれば、
撮影
(
さつえい
)
された覚えもある
荒川
(
あらかわ
)
放水路、
蘆
(
あし
)
の
茂
(
しげ
)
みも、
川面
(
かわも
)
の
漣
(
さざなみ
)
も、すべて
強烈
(
きょうれつ
)
な
斜陽
(
しゃよう
)
の逆光線に、
輝
(
かがや
)
いているなかを、エイト・オアス・シェルの
影画
(
シルエット
)
が
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
もう暮れかけて、ときどきサーッと
時雨
(
しぐ
)
れてくる。むこう岸はボーッと雨に煙り、折からいっぱいの上潮で、柳の枝の先がずっぷり水に
浸
(
つ
)
かり、手長蝦だの舟虫がピチャピチャと
川面
(
かわも
)
で跳ねる。
顎十郎捕物帳:24 蠑螈
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
川上はだいぶ降ったと見えて、放水路の
川面
(
かわも
)
は
赭土色
(
あかつちいろ
)
を増してふくれ上った。中川放水路の堤の塔門型の水門はきりっと閉った。水泳場のある材木堀も界隈の蘆洲の根方もたっぷりと
水嵩
(
みずかさ
)
を増した。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
喜ぶ
川面
(
かわも
)
死の淵より
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
堀留川を下って、
楓河岸
(
かえでがし
)
、箱崎河岸と、河岸づたいに、二つの影が一つのように、まだ
川面
(
かわも
)
の
靄
(
もや
)
も暁闇も深い道を、ひた走りに馳けてくる。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
土手の人足は至つて疎らですが、
川面
(
かわも
)
は夜櫻見物の船が隙もなく往來し、絃歌と歡聲が春の波を湧き立たせるばかりです。
銭形平次捕物控:040 兵庫の眼玉
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ひやり——と、
川面
(
かわも
)
をすべった風が、はだけた胸の汗ばんだ肌をくすぐった。いつの間にか陽も傾きかけていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
あるときは、
寒
(
さむ
)
い
風
(
かぜ
)
が、すすり
泣
(
な
)
くように、
川面
(
かわも
)
を
吹
(
ふ
)
いているのでした。また、
夏
(
なつ
)
の
晩方
(
ばんがた
)
には、
赤
(
あか
)
い
雲
(
くも
)
が、さながら
血
(
ち
)
を
流
(
なが
)
すようにうつっていることもありました。
万の死
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
畑の中にある
溝
(
みぞ
)
の少し大きいくらいな平凡な川がひとすじ流れ、両岸には一面に
芒
(
すすき
)
のような草が長く生い茂っているのが、水が見えないくらい
川面
(
かわも
)
に
覆
(
おお
)
いかぶさっていて
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
白髥橋を徒歩で往来する人は、よくよく急ぎの用でもない限り、妙なもので、一度は立止って
欄干
(
らんかん
)
に
凭
(
もた
)
れて、じっと
川面
(
かわも
)
を見下している。夏の
外
(
ほか
)
は、
涼
(
すず
)
みの為とは云えぬ。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その中に上げ
汐
(
しお
)
の
川面
(
かわも
)
が、急に闇を加えたのに驚いて、ふとあたりを見まわすと、いつの間にか我々を乗せた
猪牙舟
(
ちょきぶね
)
は、一段と
櫓
(
ろ
)
の音を早めながら、今ではもう両国橋を後にして
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
黄浦江
(
こうほこう
)
は、あの広い
川面
(
かわも
)
が、木製の寝台を浮べて一杯となり、上る船も下る船も、完全に航路を
遮断
(
しゃだん
)
されてしまって、船会社や船長は、かんかんになって怒ったが、どうすることも出来ない。
時限爆弾奇譚:――金博士シリーズ・8――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
たとえば極貧を現わすために水道の止まった流しに
猫
(
ねこ
)
の眠っている画面を出すとか、放免された囚人の歓喜を現わすのに春の雪解けの
川面
(
かわも
)
を出すとか、よしやそれほどの技巧は用いないまでも
映画芸術
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
川面
(
かわも
)
から
映
(
て
)
りかえす陽のひかりが屋根舟の障子にチラチラとうごく。
顎十郎捕物帳:12 咸臨丸受取
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
川には、
藍屋町
(
あいやまち
)
の
藍滓
(
あいかす
)
が油のように浮いて、深淵のごとき深い色をドンヨリと流しています。その
川面
(
かわも
)
を見おろしている女の顔をごらんなさい。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
後ろからは伊三松の船、向うからガラッ八の船が、これは灯を滅茶滅茶に点けて、
篝船
(
かがりぶね
)
ほど
川面
(
かわも
)
を照らしながら
銭形平次捕物控:046 双生児の呪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
電燈の届かぬ遠くの方の魚達は、その目の玉ばかりが、夏の夜の
川面
(
かわも
)
を飛びかう
螢
(
ほたる
)
の様に、縦横に、上下に、
彗星
(
すいせい
)
の尾を引いて、あやしげな
燐光
(
りんこう
)
を放ちながら、行違っています。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そして彼は幾らかとびだした眼を見はって
傍
(
かたわ
)
らの大野の顔を見た。
川面
(
かわも
)
の反射か、前方の灯かげのためか、彼の目はぎらり冷たく光った。あるいは闇のかがやきであったかも知れない。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
暗い
川面
(
かわも
)
を眺めました。
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
で、京橋尻の河岸ぞいなどは、一時はさびれ果てたものだが、近頃では、また、たそがれれば裏の
川面
(
かわも
)
へ、かぼそい
灯
(
あかり
)
のもる家もぼつぼつふえていた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
やがて川蒸気は、両国から駒形橋を経て、暮れかかった
川面
(
かわも
)
を、その頃改築中の厩橋の下にかかりました。
悪人の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
道はすでに
相国寺
(
しょうこくじ
)
の大路端れに出ていて、半町ほど先には、ひろい
川面
(
かわも
)
の水が
銀鱗
(
ぎんりん
)
を立てて、水に近い
館
(
やかた
)
の
築地
(
ついじ
)
にまでその明るい光をぎらぎら映していた。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何時
(
いつ
)
の間にやら橋の中程に立った娘、
暫
(
しば
)
らく魅入られるように、
川面
(
かわも
)
を差しのぞいて居りましたが、やがて、ゾッとしたように身を引くと、自分の肩を深々と掻き抱いて
悪人の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
酒菰
(
さかごも
)
をかぶって蔵屋敷の用水桶のかげに、犬のように寝ている中に、土佐堀の
櫓韻
(
ろいん
)
、
川面
(
かわも
)
からのぼる白い霧、まだ人通りはないが、うッすらと夜が明けかけてくる。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
日和
(
ひより
)
は上々、向島の土手の上は人間で盛りこぼれそうで、
川面
(
かわも
)
は
遊山船
(
ゆさんぶね
)
でいっぱい、小僧の一人や二人が向島へ駈け出したところで、花見船を見付けることなどは思いも寄りません。
銭形平次捕物控:297 花見の留守
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
猫回
(
ねこがえ
)
りに、
舟縁
(
ふなべり
)
を越えて、時ならぬ水音、ザアーッと、一面の
飛沫
(
しぶき
)
に、
川面
(
かわも
)
を夕立のようにさせた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夕霞は音もなく
川面
(
かわも
)
をこめてその辺はもうたそがれの色が
濃
(
こまや
)
かになって居ります。
悪人の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
弾
(
はず
)
みあう息を揃えて、どやどやそこに
佇
(
たたず
)
んで、しばしは出し抜かれたように
川面
(
かわも
)
を見ていたが、店をしまいかけた茶屋の者に訊ねると、たしかに小猿と前髪は乗ったとある。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「殺せ、殺してくれ」とかれが
歯噛
(
はが
)
みをするのを聞き流して、暗い
川面
(
かわも
)
をのぞいていた孫兵衛、一つ二つ軽く手を鳴らすと、いつかの晩のような約束で、三次の船がギイと寄ってきた。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いや、敵は二万、味方は五百余人、かかったところで、ほんの
一瞬
(
いっとき
)
、ここの
川面
(
かわも
)
を、赤く染めてしまうだけだ。討死は、覚悟だが、その死を、できるだけ有効にして死なねばならぬ」
新書太閤記:10 第十分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ふたりは、夜の
川面
(
かわも
)
に、眼を落しながら、しばらく、沈黙しあっていた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
川面
(
かわも
)
を這う白いものに、もう相互の舟影は、
朧々
(
おぼろおぼろ
)
になっていた。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『……でも』と、お千賀は暗い
川面
(
かわも
)
をのぞきこみながら——
濞かみ浪人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
悪罵
(
あくば
)
は、順々に、その口々から飛び出して、
川面
(
かわも
)
を打った。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
性善坊は、暗い
川面
(
かわも
)
を指さして
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
川
常用漢字
小1
部首:⼮
3画
面
常用漢字
小3
部首:⾯
9画
“川”で始まる語句
川
川柳
川上
川岸
川下
川原
川越
川端
川辺
川向