やぶ)” の例文
旧字:
そなた達の大事な武器の呪いは今やぶそこなわれようとして居るのだ。汝等みな生物の形をとって、この一期の戦いに味方となって呉れ。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
また上下の文ありて「入りては則ち髪を乱し形をやぶり、出でては則ち窈窕ようちょうして態をす……これ心を専らにし色を正すことあたわずとう」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
豊野より汽車に乗りて、軽井沢にゆく。途次線路のやぶれたるところ多し、又かりつくろいたるのみなれば、そこに来るごとに車のあゆみをゆるくす。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
総てその身を傷けその心をやぶる鋭利なやひばである。恐しい両岸の誘惑である。私達はさういふ心境に停つてゐてはならない。
谷合の碧い空 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
義人の妝飾そうしょくは「髪をみ金を掛けまた衣〔を着〕るがごとき外面の妝飾にあらず、ただ心の内のかくれたる人すなわちやぶることなき柔和にゅうわ恬静おだやかなる霊」
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
さればアレキサンダー王テーベスをやぶった時「アレキサンダー王はこの城壁を砕けり、妓王フリーネはこれを再興せり」
豊かに結ばれた唇には、刀刃とうじんの堅きを段々にやぶり、風濤洪水ふうとうこうずいの暴力を和やかにしずむる無限の力強さがある。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
されど吾妻は悄然せうぜんとして動きもやらず「——考へて見ると警察程、社会の安寧をやぶるものは有りませんねエ、泥棒する奴も悪いだらうが、とらへる奴の方がほ悪党だ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
一身を物的境遇より退しりぞかせて、心的境遇に入らしむることも、これまた麒麟きりん老ゆるも駑馬どばに劣るに至らざる工夫くふう。木は根あればすなわち栄え、根やぶるればすなわち枯る。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
諸王未だ必ずしも反せざるに、先ず諸王を削奪せんとするの意をいだいて諸王に臨むは、かみは太祖の意をやぶり、しもは宗室のしんを破るなり。三年父の志を改めざるは、孝というべし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
吾恋をやぶりし唯継! 彼等の恋を壊らんとしはそ、その吾の今千葉におもむくも、又或は壊り、或は壊らんと為るにあらざる無きか。しかもその貪欲は吾に何をか与へんとすらん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
亜剌比亜アラビアの沙漠に悪疫あり、奔馬して一瞬に人体をやぶる。マホメットの時終滅す」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こころみに思へ、品蕭ひんせうの如き、後庭花こうていくわの如き、倒澆燭たうげうしよくの如き、金瓶梅きんぺいばい肉蒲団にくぶとん中の語彙ごゐを借りて一篇の小説を作らん時、善くその淫褻いんせつ俗をやぶるを看破すべき検閲官のすう何人なるかを。(一月三十一日)
三に曰く、みことのりを承はりては必ず謹め、きみをば則ちあめとす。やつこらをば則ちつちとす。天おほひ地載せて、四時よつのときめぐり行き、万気よろづのしるし通ふことを得。地、天を覆はむとるときは、則ちやぶるることを致さむのみ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
(6)旧約伝道の書第十二章第六—七節、「しかる時には銀の紐は解け金の盞は砕け吊瓶つるべは泉の側にやぶ轆轤くるまいどかたわられん、しかしてちりもとごとく土に帰り霊魂たましいはこれをさずけし神にかえるべし」
日本は未だ国を成さざるものなりなど、口を極めて攻撃せらるるときは、我輩も心の内には外国人の謬見びゅうけん妄漫ぼうまんを知らざるにあらず、我が徳風くまでにやぶれたるにあらず、我が家族悉皆しっかい然るにあらず
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あわれかれの心は根底よりやぶれ、次第に弱くなって来た。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
もちう。その質すでにやぶれば、またいずくんぞあるをえん
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「乱暴でも生命は自らやぶりはしません。」
計画 (新字旧仮名) / 平出修(著)
しかも、その道へ行く前に生をやぶって、自我の欲情に急いだ自殺の罪は、生々世々しょうしょうせせおぎなわねばならぬことと思います。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
碓氷嶺過ぎて横川にいたる。嶺の路ここかしこにやぶれたるところ多かりしが、そは皆かりに繕いたれば車通いしなり。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
取る物さえ取れば跡は全くやぶりおわるより、国宝ともなるべく、学者の研究を要する古物珍品不断失われ、たまたまその道の人の手に入るも出所が知れぬゆえ
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
流下して来た巨材の衝突によつて一角がやぶれたため遂に破壊して仕舞つたのです。
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
彼等の死ありていささか吾が活のくるしきをも慰むべきか、吾が活ありて、始めて彼等が死のいたましきを弔ふに足らんか。吾がちようは断たれ、吾が心はやぶれたり、彼等が肉はただれ、彼等が骨は砕けたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ヒンズー教にカリ女神を女性力すなわち破壊力の表識としこの力常に眠れど瞬間だも激すればたちまち劇しく起きて万物をやぶりおわるとするを会わせかんがうべしと。
そこにやぶれも、押し戻されもせぬ永遠の天界が見出されるのだとするのであります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
流下りゅうかして来た巨材の衝突によって一角いっかくやぶれたため遂に破壊してしまったのです。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
竜が住む城の名は戯楽けらく、縦横三千由旬ゆじゅん、竜王中に満つ、二種の竜王あり、一は法行といい世界を護る、二は非法行で世間をやぶる、その城中なる法行王の住所は熱砂らず
酷烈ならずば汝等疾く死ね、れよ進めよ、無法に住して放逸無慚無理無体にれ立て暴れ立て進め進め、神とも戦へぶつをも擲け、道理をやぶつて壊りすてなば天下は我等がものなるぞと
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
猴兵市中に入りて家をやぶり人を打つ、諸猴固有の語を話し、夥しく子を産む。その子両親に似ざれば官道に棄つるを、インド人拾い取りて諸の手工や踊りを教え夜中これを売る。
合点のゆかぬことだとは思ったが、怖ろしい人の云うことだから、言葉に従って春久は相手になると、十目ばかり互に石を下した時、よしよしもはや打つまい、と云って押しやぶってしまった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
伊勢の御笥作り内人うちんど土屋氏は昔槌屋と称え、豪富なりしをにくみ数十人囲みやぶりに掛かりかえって敗北した時、荒木田守武あらきだもりたけの狂歌に「宇治武者は千人ありとも炮烙ほうろくの槌一つにはかなはざりけり」
無法に住して放逸無慚むざん無理無体に暴れ立て暴れ立て進め進め、神とも戦え仏をもたたけ、道理をやぶって壊りすてなば天下は我らがものなるぞと、叱咜しったするたび土石を飛ばしてうしの刻よりとらの刻
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
帝釈よ、我輩を害するなかれ、我輩をやぶるなかれ、我輩の愛好する歓楽を
もし天真をやぶらばあに能く常あらんや、けだし張公特にいまだこの理を知らざる故のみと記す。雄鶏を雌と隔離して一生交会せしめなんだら果して正しく時を報ずるものにや。暇多い人の実験をつ。