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境界
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きょうがい
ふりがな文庫
“
境界
(
きょうがい
)” の例文
いかにも哀れな、気の毒な
境界
(
きょうがい
)
である。しかし一転してわが身の上を顧みれば、彼と我れとの間に、はたしてどれほどの差があるか。
高瀬舟
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
丸髷
(
まるまげ
)
に結ったり教師らしい
地味
(
じみ
)
な束髪に上げたりしている四人の学校友だちも、今は葉子とはかけ隔たった
境界
(
きょうがい
)
の言葉づかいをして
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
当座四五日は例の老人の顔を見る毎に嘆息
而已
(
のみ
)
していたが、それも向う
境界
(
きょうがい
)
に移る習いとかで、日を経る
随
(
まま
)
に苦にもならなく成る。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
もとより真の
已達
(
いたつ
)
の
境界
(
きょうがい
)
には死生の
間
(
かん
)
にすら関所がなくなっている、まして覚めているということも
睡
(
ねむ
)
っているということもない
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
芸妓
(
げいぎ
)
のようなものの
境界
(
きょうがい
)
を言ったのであるが、その芸妓が酒に身を投げる位であるから、客の方はもとよりいうまでもないことである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
▼ もっと見る
一度
(
ひとたび
)
この
境界
(
きょうがい
)
に入れば天地も万有も、すべての対象というものがことごとくなくなって、ただ自分だけが存在するのだと云います。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼はしょっちゅうそれを
悔
(
くや
)
しがり寂しがるのみで、その
境界
(
きょうがい
)
を打開する方法はあっても、それに対する処置を取り得なかった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
色々の事業をやって、
何時
(
いつ
)
でもその
隠棲的
(
いんせいてき
)
な趣味のために結局は失敗して来た伯父は、六十になって
漸
(
ようや
)
く満足の出来る
境界
(
きょうがい
)
を得たようであった。
由布院行
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
慣れない事は仕様のない者で中々その初めの
中
(
うち
)
は云えん者だが
明日
(
みょうにち
)
御飯
(
おまんま
)
を喰べる事が出来ないと云う
境界
(
きょうがい
)
でございますから一生懸命であります
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
これから
出逢
(
であ
)
わなくてはならない、
暫
(
しばら
)
くの間の陰気な
境界
(
きょうがい
)
に対して、この人の来るという事がよほど力になるのである。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
ほんとの、よろこび、安住の
境界
(
きょうがい
)
、それはどこにもない。真実の光に浴せる人間らしい“
道心
(
どうしん
)
”こそ、いまは欲しい。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
つまりは自他共に認めたどうにもならぬ
境界
(
きょうがい
)
にあるという、ユミのあきらめからくる気のゆるみが、不覚にも心の奥を覗かせることになるのだろうか。
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
しかし、電車だの劇場だのは、恐ろしくなると
直
(
すぐ
)
に戸外へ逃げ出す事が出来るだけ、それだけ汽車程自分を Madness の
境界
(
きょうがい
)
へ導きはしなかった。
恐怖
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかしかくのごときは千古の達人が深く自ら求むるところあって、自ら選択して飛び込んだ特種の
境界
(
きょうがい
)
である。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
その
境界
(
きょうがい
)
を去るの遠近を論ずれば、日本はなおこれに近く、英亜諸国はこれを去ること遠しと言わざるを得ず。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
この歌も、何の苦も無く作っているようだが、うちに
籠
(
こも
)
るものがあり、
調
(
しらべ
)
ものびのびとこだわりのないところ、家持の至りついた一つの
境界
(
きょうがい
)
であるだろう。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
これも又似たることにていかなる
境界
(
きょうがい
)
にありても平気にて、出来る
丈
(
だけ
)
の事は決して廃せず、一日は一日丈進み行くやう心掛くるときは、心も
穏
(
おだやか
)
になり
申者
(
もうすもの
)
に候。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
私は妹からのたよりで、お前さんたちが、どんなにつらい
境界
(
きょうがい
)
を送っているかよく知っている。ま、
年
(
ねん
)
の明けるまで辛抱しなさいね。決して短気を起こしたりなんかしないでね
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
あの人たちに訳を話すと、おなじ
境界
(
きょうがい
)
にある
夥間
(
なかま
)
だ、よくのみ込むであろうから、爺さんをお前さんの父親、
小児
(
こども
)
を弟に、不意に尋ねて来た分に、治兵衛の方へ構えるが
可
(
よ
)
い。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
自分の仕事に思うさま働いてみたい——奴隷のようなこれまでの
境界
(
きょうがい
)
に、盲動と屈従とを
強
(
し
)
いられて来た彼女の心に、そうした欲望の目覚めて来たのは、一度山から出て来て
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
自然の方則は人間の力では
枉
(
ま
)
げられない。この点では人間も昆虫も全く同じ
境界
(
きょうがい
)
にある。
津浪と人間
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
この三月の
間
(
ま
)
に、彼が身生はいかに多様の
境界
(
きょうがい
)
を経来たりしぞ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
さいぜんも申す通り、我等が
境界
(
きょうがい
)
は
跣足乞食
(
はだしこじき
)
と同じ身分じゃ。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
善吉の今の
境界
(
きょうがい
)
が、いかにも哀れに気の毒に考えられる。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
余は実にかやうな
境界
(
きょうがい
)
に陥つて居るのである。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
「飛んだ事になって来たね」と迷亭君が真面目にからかうあとに付いて、独仙君が「面白い
境界
(
きょうがい
)
だ」と少しく感心したようすに見えた。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
とうとう往来を通る学生を見ていて、あの中に若し頼もしい人がいて、自分を今の
境界
(
きょうがい
)
から救ってくれるようにはなるまいかとまで考えた。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
お勢は今
甚
(
はなは
)
だしく迷っている、
豕
(
いのこ
)
を
抱
(
いだ
)
いて臭きを知らずとかで、
境界
(
きょうがい
)
の臭みに居ても、おそらくは、その臭味がわかるまい。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
証得妙果の
境界
(
きょうがい
)
に入り得たら、今度は自分が其の善いものを有縁無縁の他人にも施し与えようとすべきが自然の事である。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
芭蕉のような孤独の
境界
(
きょうがい
)
にいる人が、秋の夕暮旅に在りてまだ
宿
(
しゅく
)
にもつかず、これからまた
峠
(
とうげ
)
を一つ越さねば宿がないというような場合の心持は
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
幼少の鶴見にとっては、これが家庭以外の世間というものにはじめて触れて、未知の
境界
(
きょうがい
)
を少しずつ知る機縁となった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
白「
其処
(
そこ
)
でどうも是迄の身の上では、
薄氷
(
はくひょう
)
を
蹈
(
ふ
)
むが如く、
剣
(
つるぎ
)
の上を渡るような
境界
(
きょうがい
)
で、大いに千
辛万苦
(
しんばんく
)
をした事が
顕
(
あら
)
われているが、そうだろうの」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
私はその
境界
(
きょうがい
)
がいかに尊く
難有
(
ありがた
)
きものであるかを
幽
(
かす
)
かながらも
窺
(
うかが
)
うことが出来た。そしてその
醍醐味
(
だいごみ
)
の前後にはその境に到り得ない生活の連続がある。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「
流々転住
(
るるてんじゅう
)
の
舟住居
(
ふなずまい
)
。ここしばらくは、思いがけない、気楽な
境界
(
きょうがい
)
になったもの……」と弦之丞も、ほほ
笑
(
え
)
まれる。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蓋
(
けだ
)
し廃藩以来、士民が
適
(
てき
)
として
帰
(
き
)
するところを失い、或はこれがためその品行を
破
(
やぶっ
)
て
自暴自棄
(
じぼうじき
)
の
境界
(
きょうがい
)
にも
陥
(
おちい
)
るべきところへ、いやしくも肉体以上の心を養い
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
消える印象の
名残
(
なごり
)
——すべて人間の神秘を叙述すべき表現を数え尽してようやく
髣髴
(
ほうふつ
)
すべき霊妙な
境界
(
きょうがい
)
を通過したとは無論考えなかった。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
東京のがやがやした
綺羅
(
きら
)
びやかな
境界
(
きょうがい
)
に神経を
消耗
(
しょうこう
)
させながら享受する歓楽などよりも
遥
(
はるか
)
に
嬉
(
うれ
)
しいことと思っていた。
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「そうなれたは、このごろじゃよ。——つまり、いるところに楽しむという
境界
(
きょうがい
)
にやっと心がおけてきたのじゃ」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それに昇は花で言えば今を
春辺
(
はるべ
)
と咲誇る桜の身、
此方
(
こっち
)
は
日蔭
(
ひかげ
)
の枯尾花、
到頭
(
どうせ
)
楯突
(
たてつ
)
く事が出来ぬ位なら打たせられに行くでも無いと、
境界
(
きょうがい
)
に
随
(
つ
)
れて
僻
(
ひが
)
みを起し
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
其の心の
中
(
うち
)
の
戦
(
たゝかい
)
は実に修羅道地獄の
境界
(
きょうがい
)
で、三人で酒を飲んで居りましたが、松五郎は調子の
好
(
い
)
い男で
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
父の心を測りかねていた五人の子供らは、このとき悲しくはあったが、それと同時にこれまでの不安心な
境界
(
きょうがい
)
を一歩離れて、重荷の一つをおろしたように感じた。
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それは今の僕の
境界
(
きょうがい
)
では許されない事です。僕は朝から晩まで機械のごとく働かねばなりませんから。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
しかしまた
黄口
(
こうこう
)
の
児
(
じ
)
でありながら、お
尻
(
しり
)
に卵の殻がくっ付いているごとき
境界
(
きょうがい
)
であるのにかかわらず、ほしいままに人生を脱離したごとく考えているというのは片腹痛い感じがして
俳句の作りよう
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
我々衆生が無心であり得るのはあそびの
境界
(
きょうがい
)
においてのみである。我々は小供とは違って、いつでも無心ではあり得ない。否定の最後の線を踰える時に、やっと得られる無心である。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
もし
駆落
(
かけおち
)
が自滅の第一着なら、この
境界
(
きょうがい
)
は自滅の——第何着か知らないが、とにかく終局地を去る事遠からざる
停車場
(
ステーション
)
である。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
其他同様の
境界
(
きょうがい
)
に
沈淪
(
ちんりん
)
して居た者共は、自然関東へ流れ来て、秀吉に敵対行為を取った小田原方に居たから、小田原没落を機として氏郷の招いだのに応じて
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
天王寺で紙入れを
掏
(
す
)
った罪を深く悔悟している心もわかり、また、その悪い渡世の
境界
(
きょうがい
)
から、生れ代ろうとしている悩みも分っているが、より以上、どこまでも
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……葉子はもうそんな
境界
(
きょうがい
)
が来てしまったように考えて、だれとでもその喜びをわかちたく思った。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
それは抽斎が哲学文芸において、考証家として樹立することを得るだけの地位に達していたのに、わたくしは
雑駁
(
ざっぱく
)
なるヂレッタンチスムの
境界
(
きょうがい
)
を脱することが出来ない。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
されば
己
(
おのれ
)
の好む所の
境界
(
きょうがい
)
が悪いと其の身を
果
(
はた
)
すような事もあるのでございます。
闇夜の梅
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
“境界”の意味
《名詞》
物と物との境。疆界。極限。
(出典:Wiktionary)
境
常用漢字
小5
部首:⼟
14画
界
常用漢字
小3
部首:⽥
9画
“境”で始まる語句
境内
境
境遇
境涯
境目
境地
境川
境木峠
境木
境論