いいえ)” の例文
いいえ、」とおかあさんがった。「わたしはむねくるしくって、がガチガチする。それでみゃくなかでは、えているようですわ。」
『ハ、いいえ。』と喉が塞つた様に言つて、山内は其狡さうな眼を一層狡さうに光らして、短かい髯を捻つてゐる信吾の顔をちらと見た。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いいえ、まだ出して上げません。……お話を聞かなくツちや……でないと袖をくわへたり、乗つたり、悪戯いたずらをして邪魔じゃまなんですもの。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いいえ、蒟蒻じゃけん、目も鼻もござッせん。唯いきない頭の上へ……いきない頭の上へだあいと……ハッハッハヽヽヽヽ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いいえこの世の中がそういうおとなのために涙の谷になっているのです。こんなに深刻に人を苦しめるのがみなおとなです。
おさなご (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
いいえ」正太の眼は輝いた。「勿論もちろん——私が書くべき場合でもなし、阿父にしたところが書けもしなかろうと思います。 ...
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いいえ、こういうことになったのも、竹の木戸のお蔭で御座いますよ、ですから私は彼処あそこを開けさすのは泥棒の入口をこしらえるようなものだと申したので御座います。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それよりほかの根はなんにもないであろうか? あたしはいいえといいたい。
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
いいえ、お前も覚えておりはすまい?」
頸飾り (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
島か、みつか、はたきを掛けて——お待ちよ、いいえう/\……矢張やっぱりこれは、此の話の中で、わにに片足食切くいきられたと云ふ土人か。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いいえ、今日は何とも無いんですけれど、昨晩恰度お腹が少し変だつた所でしたから……折角お使者つかひを下すつたのに、済みませんでしたわねえ。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いいえとても当てになりませんよ。それですから、家のものに安心させる為め、この間から申上げています通り、是非謙一をお供に連れて行って下さいましな」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いいえ、憎らしいとその時思うことが出来るならまで苦しくは無いのです。ただ悲嘆かなしかったのです。」
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
いいえ、」とおかあさんがった。「わたしはむねがどきどきして、まるで暴風あらしでもまえのようですわ。」
いいえ、どう致しやして。家でこしらえやした味噌漬みそづけで、召上られるようなものじゃごわせんが」
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いいえ、寝ていたんじゃなかったんですけども、貴下あなたのお姿を拝みますと、急に心持こころもちが悪くなって、それから寝たんです。」
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いいえ、今日は土曜日ですから先刻さつきにお帰りになりましたよ。そしてね祖母おばあさん、アノ、梅と新坊に単衣を買つて来て下すつて、今縫つて下すつてるの。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いいえ、たった五人です。一番の流行児はやりっこが選ばれて此処まで練って来るのです。斯ういう具合に若い衆が後方うしろから日傘を翳しかけましてな。綺麗な禿かむろが供をしましてな。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いいえ、僕は真実ほんと左様そう思います、何故なぜ彼女がおしょうさんと同じ人で無かったかと思います。」
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
いいえ、そうじゃごわしねえ。わしは東京でごわす」
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いいえ、今つたぢやないか、人の通るみちは廻り/\うねつて居るつて。だから聞くんですが、ほかに何か歩行あるきますか。」
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いいえ、違ひません、決して違ひません。』と主張して、衣服きものの事まで詳しく言つた。そしてう附加へた。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いいえ、お二人とも随分理窟ばかり言うわ。毎晩毎晩、酔っては討論会を初めますわ!」
恋を恋する人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
いいえ、使に行って居りませんよ」
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いいえ、はじめてお目にかかりました貴下あなたに、こんなお話を申上げまして、もう気が違っておりますのかも分りませんが
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いいえ、構ひませんから、も少し借して下さい。』と言つて却々なかなか放さない。母親は笑つてゐた。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ついの自分で勝手にくるしんで勝手に色々なことを、馬鹿な訳にも立たん事をかんがえてるもんですから、つい見境もなく饒舌しゃべるのです。いいえだれにもんなことを言った事はないのです。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
いいえ、山さえおあらしなさいませねば、誰方どなたがおいでなさいましても、大事ないそうでございます。薬の草もあります上は、毒な草もないことはございません。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いいえ、嬢ちやん、サア、お土産みやを買つて来て下さいツて。マア何とも仰しやらない!』
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いいえわたくしは『中の部屋』のお戸棚とだな衣類きものを入れさして頂ければお結構で御座ございます」
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
いいえ、気分は初めからしたる事も無いのです。宝丹は道楽に買った、と云って可いくらいなんですが。」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いいえ、私は炭籠すみかごの炭ほか使つかわないよ」
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
いいえ、本年度の学齢児童数は?』
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いいえ、いつも一人で往復ゆきかえりします時は、馴れて何とも思いませんでございましたけれども、なまじおつれが出来て見ますと、もうさびしくって一人では帰られませんから
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いいえ。』
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
いいえ
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
いいえめしは持つてます、うせ、人里ひとざとのないを承知だつたから、竹包たけづつみにして兵糧ひょうろうは持参ですが、おさいにするものがないんです、何かちっと分けてもらひたいと思ふんだがね。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いいえ
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
いいえ、あの御幣は、そんなおどかしぢやありませんの。不断ふだんは何にもないんださうですけれど、二三日前、誰だか雨乞あまごいだと言つて立てたんださうですの、此のひでりですから。」
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いいえ、何ともありやしませんわ。それだし、もしか、船に故障があつたら、おーいと呼ぶか、手をたたけば、すぐに誰か出て来るからつて、女中がう言つて居たんですから。」
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あ、あ、たんと、そんなことをお言いなさい、どうせ寝られないんだからうございます。うらみますよ。夢にでもお目にかかりましょうねえ、いいえ、待たれない、待たれない……
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あ、いいえ。」と言つたが、すぐ又稚児ちごの事が胸に浮んだ。それなり一時いちじ言葉が途絶とだえる。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
沢山たんとおっしゃいまし。——いいえう片手間の、あの、些少ほんの真似事でございます。」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いいえの色なんです。——あの時あのひと——は緋の長襦袢を着ていました。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いいえ、そういう御遠慮をなさるから、それだから不可いけません。それだから
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いいえさ、景色がよくないから遊山ゆさんぬの、便利が悪いから旅の者が通行せぬのと、そんなつい通りのことぢやなくさ、私たちが聞いたのでは、此の野中のなかへ入ることを、俗に身を投げると言ひ伝へて
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いいえ、私ども石垣の前をお通りがかりの時、二階からおがみました。」
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こわくはないよ、いいえ怖いのではないと言って、母親の病気の次第。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いいえ、どれも実子じっしではないでございます。」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)