合点がってん)” の例文
旧字:合點
この夜ふけに、森の中で探し物というのも変ですし、それが一向この辺で見かけた事のない都会風な男であるのも合点がってんが行きません。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「面倒だ、やッつけましょう、可いや、手籠てごめが悪いという方がありゃ後でまた対手あいてになる、留めなすったって合点がってんしねえ、さあ、退け。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
合点がってんという風に、六人の黒衣くろごが道の両側に分れたかと思うと、まだ短い青すすきの中を、這うようにして少しずつ近寄って行く。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして低声こごえで何か言うと、対馬守がほほえんでしきりに合点がってん合点をしている。ひとり遅れて、平淡路守が超然と歩いて来る。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
中庭を隔てて遙かに眺めるわれ等の眼にはいずれもただ白く美しい人である。成程美人が多いわいと合点がってんする。
丸の内 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
祖父が、そばからそう云って、私をうなずかせた。「父はロスケ征伐にゆくのだ」と私は合点がってんした。私は父と別れるという様な悲しみは、少しも起らなかった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
合点がってん合点がってん。十分間だけおちなさい。十分間ですぜ」とってきつねはまるで風のように走って行きました。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「ふざけちゃあいけねえぜ、米友様だってこれ、生身なまみを持った身体からだだ、飛道具でやられてたまるかい。ムク、こうしちゃあいられねえぞ、おいらに続け、合点がってんか」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
合点がってん! 姐ご、追っかけやしょう」で、二人ははせ下ったが、追いつくことができるだろうか?
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
少しのことをかどに取って粂どんが嬢様じょうさまを殺したなんてえが、何処どこまでも汝がそんな事を頑張って殺したといわば、おら合点がってんしねえだ、粂どんが庭へ来てお嬢様と相談して
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
僕がええ早く帰りますからおとなしくして待っていらっしゃいと返事をすれば合点がってん合点をする。もし黙っていると、早く帰って来てちょうだいね、ね、と何度でも繰返す。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
藤吉とうきちにも、んで師匠ししょう堺屋さかいやたせるのか、一こう合点がってんがいかなかったが、めていた気持きもちきゅうゆるんだように、しょんぼりといけ見詰みつめてっている後姿うしろすがたると
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
このように脚が不自由だから、岸隊長を公室までまねいたことが一応合点がってんがいった。
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わかりやすい文字で書けば誰にでも読めるものをわざわざむずかしい文字を並べて無理な振仮名をつけてある。振仮名を読んでみてああなるほどこう読ませるのかとようや合点がってんするような場合がある。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
お花はこわくて物が言えないのか、黙って合点がってん々々をした。
心中 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
合点がってん
踊る美人像 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
心に潔しとしない事に、名刺一枚御荷担は申兼ぬる、と若武者だけにはやってかかると、その分は百も合点がってんで、戦場往来の古兵ふるつわもの
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
合点がってんだ……オイ、お前何をボンヤリしているんだ。早くこっちへ来て手伝わないか。馬鹿だな。ここへ来てまで顔を隠している奴があるものか」
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
というと、山ほりたち、合点がってんといっせいにこしつちをひきぬいて、金脈きんみゃくだ金脈だ! 家康公いえやすこうから恩賞おんしょうのでる金脈だとばかり、たちまちそこをりぬけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
合点がってんだ、どのみち危ねえ橋は渡りつけてるんだから、地道じみちを歩くのがばかばかしいくらいなもんだ」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「へいへい、合点がってんでげす。つきはなくとも星明ほしあかり、足許あしもとくるいはござんせんから御安心ごあんしんを」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
声はたしかにさいの寝ている、次の部屋から出る。同時にふすまれて赤い火がさっと暗い書斎に射した。今開けるまぶたの裏に、この光が届くや否や自分は火事だと合点がってんして飛び起きた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なぞは謎を生み、わからないことずくめだが、それより、もっと合点がってんのいかない一事は。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
合点がってん々々お連れしますとも! さあさあ急いで参りましょう。私の家は柏野で。そこにあるのでございますよ。少し遠いが元気を出し、走って行きましょう、走って行きましょう!」
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なか/\合点がってんしねえ、それはお嬢さん飛んでもない事で、お店の奉公人や何かと私通いたずらをするようなお嬢様なら、私の処へは置きませぬ、った今出ておいでなせえというから、わっしが仲裁をして
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「おっと、そのことなら合点がってんだ。あっしにすっかりまかせておきなさい」
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
寺なれば秋蚊合点がってんかわや借る
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
合点がってん
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
秋にでもなって、朝ぼらけの山のに、ふと朝顔でも見えましたら、さてこそさてこそ高峰たかねの花と、合点がってんすれば済みます事。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時たま思い出した様に合点がってん合点をするけれど、滅多めったに話手の顔を見はしない。そして、一方が黙ると、今度は冷淡な聞手だった方が、打って変って熱心な口調で話し出す。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
合点がってんでございます、がんちゃんの足を見込んでお頼みとありゃ、後へは引きません」
合点がってんです!」意気込んだ宅助、三角を右に見て、腕ッ限りグングンとたわめる。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あじがよくってでがあって、おまけに肌理きめこまこうて、笠森かさもりおせんの重肌えはだを、べにめたような綺麗きれいあめじゃ。ってかんせ、べなんせ。天竺渡来てんじくとらい人参飴にんじんあめじゃ。んとみなしゅう合点がってん
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
夜遁よにげのような事をするとア合点がってんがいかねえ……兎も角も親方に会って行こう
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「へえ、合点がってんです。おい、竹見、考えこんでないで、手つだえよ」
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
合点がってん」と云って立ち上ったは、例の小男の勘八であった。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
合点がってんだッ!」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
なあ、お香、いつぞや巡査がおまえをくれろと申し込んで来たときに、おれさえアイと合点がってんすりゃ、あべこべに人をうらやましがらせてやられるところよ。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
合点がってんだ——こうと、三日を限ってひとつ約束して上げようじゃねえか、明日の朝から三日だよ、いいかい、その間、お前は、ここに永く泊っているのもなんだろうから、これから
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
己ア取りゃアしねえが只黙って使ったのだというと、此の泥坊野郎と云うから私が合点がってんしねえ、泥坊とはんだ、ういう理窟で人の事を泥坊と云うのだ、只われが金え出して使ったばかりで
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そして、その時の眼つきが実に妙なんだ、まるで泥坊同志が合点がってん合点をする様な調子で、何もかも呑み込んでいるから安心しろという、どう考えても、そうとしかとれない様な合図をするのだ。
疑惑 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
合点がってんです! オイ松明を持った野郎やろうはさきに立て」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
町長の吉田老人は独りで合点がってんをしながら
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
合点がってん!」とばかり走り出した。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
合点がってんだ。名前はおちか。——」
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
何が大丈夫だか、主税には唐突だしぬけで、即座には合点がってんしかねるばかり、お蔦の方の意気込がすさまじい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
合点がってんでござんす——ずいぶん、がんりきの腕のあるところをお目にかけやしょう」
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
拙者は新役の事ではあるが此の事についてはお家のためじゃからと云うので、種々いろ/\御相談があった、始めは拙者にも分りません所があったが、だん/\重役衆の意見を承わって成程と合点がってんがゆき
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
大袈裟おおげさな前ぶればかりしていて、一向いっこう読者に迫る所がない様であるから、(だが、この前ぶれが少しも誇張でないことは、後々あとあとに至って読者に合点がってんが行くであろう)前置きはこの位にとどめて、さて
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
合点がってん合点。ところでなんだい、その一大事とは」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)