えん)” の例文
旧字:
えん、二千えんというふだのついた、ダイヤモンドの指輪ゆびわが、装飾品そうしょくひんにならべてありました。それをただけでもびっくりしたのです。
都会はぜいたくだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
「うちのような貧乏人びんぼうにんにゃ、三十えんといやたいしたかねがまうが、利助りすけさんとこのような成金なりきんにとっちゃ、三十えんばかりはなんでもあるまい。」
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
たとえばすみ別室べっしつ薬局やっきょくてようとうには、わたくしかんがえでは、少額しょうがく見積みつもっても五百えんりましょう、しかしあま不生産的ふせいさんてき費用ひようです。』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そいから二人えんタクに乗って堺筋さかいすじの電車通りの今橋の角で主人おろしまして私はずっとその車で天王寺い行きます。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
特にえんタクの窓からの走りながらでは、よほどのものでない限り人目をひかない。何かなしに近ごろは、人の頭をなぐりつける位いの看板を必要とする。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
十二時打ってから半時間ばかり、いつもの刻限にお千代はバアから帰った振りで、実は婆さんの家から、その夜は烏森からすもりへ廻り、そこからえんタクに乗って来た。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
翌日よくじつめると、依然としてのうの中心から、半径はんけいちがつたえんが、あたま二重にぢうに仕切つてゐる様な心持がした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
乗物のりもの支度したくもなかつたので、私達わたくしたちはぞろ/\打揃うちそろうてそとた。そしてえんタクでもとおりかゝつたらばとおもつて、さびしいNまちとおりを、Tホテルのほうへとあるいた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
少年の手のひらに一えん銅貨どうかをおしこむと、自分でおもてのドアをあけて、少年を追いだしてしまった。
影法師は、片仮名のオの字のようなかたちに地へ映ったが、天地のえんは、厳として、円を崩してはいない。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平生いつもなら彼はその電車に乗るのであったが、時間がないのですぐそこに来たえんタクに乗った。
一握の髪の毛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「嬉しがるのは後にして、一刻も早くぶつかって来給え。はイ、えんタク代が五十銭!」
遊星植民説 (新字新仮名) / 海野十三(著)
えんの、双眼鏡の端から端まで
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
宣尼せんじ 智 何ぞえんなる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
浸み渡るえんの水
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
あるおとこは、一にちのうちに、五えんばかりもうけました。あるおとこはこの一週間しゅうかんうちに、東京とうきょうから、大阪おおさかほうまでまわってきました。
生きている看板 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ねんこのかた、地方自治体ちほうじちたいはようようゆたかになったので、その管下かんか病院びょういん設立たてられるまで、年々ねんねん三百えんずつをこの町立病院ちょうりつびょういん補助金ほじょきんとしてすこととなり
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
先ず動く王様は銀色の姿で空を飛んでいる、地上地下には電車となり、えんタクとなって充満してしまった。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
通りへ出たとき一台のえんタクが、背後の方から疾風のように駆けてきたが、僕の姿を認めたらしく急にブレーキをかけ、舗装道路の上にキキキキイッと鋭い音を出して、かたわらに停った。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「元来えんとか直線とか云うのは幾何学的のもので、あの定義に合ったような理想的な円や直線は現実世界にはないもんです」「ないもんなら、したらよかろう」と迷亭が口を出す。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三十えんくらいで、その井戸いどれるということを、海蔵かいぞうさんがはなしました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「一度お伺いしなくっちゃわるいと思っていたんですけど、ついお処がわからなかったもんで……。」と女はあたりを見廻し停留場にも人影がなく通過とおりすぎえんタクもちょっと途絶とだえているのを幸い
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と、自分を中心にえんを作って駈け出していた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おばあさんは、三えんになれば、ってもよさそうなものにと、いわぬばかりのかおつきをして、おじいさんをていました。
花と人間の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
アンドレイ、エヒミチはぜに勘定かんじょうして、五百えん無言むごんともわたしたのである。ミハイル、アウエリヤヌイチはまだ真赤まっかになって、面目無めんぼくないような、おこったようなふうで。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「その三十えんをどうしておれがすのかエ。おれだけがそのみずをのむならはなしがわかるが、ほかのもんもみんなのむ井戸いどに、どうしておれがかねすのか、そこがおれにはよくのみこめんがのオ。」
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
その黒ずんだえんの四方がぼかされたように輝いて、ちょうど今我々が見捨みすてて来た和歌の浦の見当に、すさまじい空の一角を描き出していた。嫂は今その気味の悪い所をまゆを寄せて眺めているらしかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「早くえんタクでもつかまえないと駄目だぞ」
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
具足の膝と膝を、大きなえんにつなぎ合って。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの自転車じてんしゃはだれがったろうか。たしか、七えんふだがついていたが、しいことをした。おとうさんが自分じぶんはたらいたかねってもいいといったのに。」
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
「三えんのおかねをこのみせでもうけるのはたいへんなことだ。おりなさればよかったのに。」といいました。
花と人間の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「どうか、この常夏とこなつってくださらぬか。五えんさしあげますから。」といいました。
花と人間の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「さあ、ホワイトはなかった、それにグリーンもないと、まあ三えんはいりますね。」
金歯 (新字新仮名) / 小川未明(著)