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來年
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らいねん
「
來年になれば、
安さんの
方で
何うか
都合して
上るつて
受合つて
下すつたんぢやなくつて」と
聞いた。
小六は
其時不慥な
表情をして
「しつ、
穴の
中へ
卵を
生みつけてゐるんだよ。そしてね、
來年の
春になつて
卵がかへると
蜘蛛が
蜂の
子供の
御飯になるのさ」
藤本は
來年學校を
卒業してから
行くのだと
聞いたが、
何うして
其樣に
早く
成つたらう、
爲樣のない
野郎だと
舌打しながら
『
來年はこれよりも
美くしい
初日の
出を
拜みたいものだ。』と
言つた
言葉、
其言葉を
堅く
覺えて
居て、
其精神を
能く
味はうて、
年と
共に
希望を
新たにし
今年もとう/\
行かれなかつたと、お
互に
思ひながらも、それがさしてものなげきでなく、
二人の
心にはまた
來年こそはといふ
希望が
思浮んでゐるのであつた。
手足も
利かなくなつちやつて
錢はとれずはあ、
野田で
拵えた
單衣物もなくしつちやつたな、どうせ
此れ、
來年の
夏まで
生きてられつか
何うだか
分りやすめえし
來年邊はカフカズへ
出掛けやうぢや
有りませんか、
乘馬で
以てからに
彼方此方を
驅廻りませう。
而してカフカズから
歸つたら、
此度は
結婚の
祝宴でも
擧げるやうになりませう。
「
來年また
歸つて
來る
迄は
會はないから、
隨分氣を
付けて」と
云つた。
其歸つて
來る
時節には、
宗助はもう
歸れなくなつてゐたのである。
私は六十になるが
斯な
立派な
日の
出を
見たことはない。
來年はこれよりも
美くしい
初日の
出を
拜みたいものだ。
己れは
來年から
際物屋に
成つてお
金をこしらへるがね、
夫れを
持つて
買ひに
行くのだと
頓馬を
現はすに、
洒落くさい
事を
言つて
居らあ
左うすればお
前はきつと
振られるよ。
とにかく、あなたが
始終こんな
氣まぐれな
贅澤ばかりなさるから、
月末の
拂ひが
足りなかつたり、
子供の
身のまはりをちやんとしてやれないのよ。
考へても
御覽なさい、
夏繪は
來年もう
學校よ。
來年こそは、どうしても
行つて
見やう。
「でも
新聞で
見ると、
來年から
一般に
官吏の
増俸があると
云ふ
話ぢやありませんか」
唐つきり
彼んな
袖のぺら/\した、
恐ろしい
長い
物を
捲り
上るのだからね、
左うなれば
來年から
横町も
表も
殘らずお
前の
手下だよと
煽すに、
廢して
呉れ二
錢貰ふと
長吉の
組に
成るだらう