二重ふたへ)” の例文
こは初めひとへなりしも今二重ふたへとなりぬ、そは汝のことば、これとつらなる事のまことなるをこゝにもかしこにも定かに我に示せばなり 五五—五七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
俄盲目にはかめくらかんるいけれども、もらつた手拭てぬぐひきず二重ふたへばかりいて、ギユツとかためますと、くすり効能かうのう疼痛いたみがバツタリ止まりました。
二重ふたへほそ咽喉のどいてゐるえなを、あのほそところとほときはづそくなつたので、小兒こどもはぐつと氣管きくわんめられて窒息ちつそくして仕舞しまつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そしてこの御陵ごりようのごときは、二重ふたへほりをめぐらし、その周圍しゆういには陪塚ばいちようといつて臣下しんかひとだちのはかがたくさんならんでをります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
彼は殆ど巨人のやうな男だつたので、内へはいるには、大熊のやうに、體躯を二重ふたへにまるめなければならなかつた。
拔衣紋ぬきえもんの形にたゞ者で無いところを見せた、色の冴えない平顏ながら二重ふたへ瞼のはつきりした悧巧な目つきの、誰が見ても一寸いゝ女として許せる柄だつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
頬つぺたの非常にふくらんだ爺いさんで、目は真ん円で、大きいあご二重ふたへになつてゐる。着物は子供のと全く同じ事だから、改めて説明しなくても好からう。
十三時 (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
二重ふたへ玻璃ガラス窻を緊しく鎖して、大いなる陶炉に火を焚きたる「ホテル」の食堂を出でしなれば、薄き外套を透る午後四時の寒さは殊さらに堪へ難く、はだへ粟立あはだつと共に
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
出立なし夫より鰍澤かぢかさわの御關所せきしよへ掛るが路順みちじゆんなり都て甲州は二重ふたへの御關所あり土地は御代官ごだいくわんの支配ゆゑ御關所手形を願ふべきなれども日數ひかずも掛るにより御關所をば拔道ぬけみち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
えたるあご二重ふたへなるなど、かゝひとさへあるにてれは二心ふたごゝろちてむべきや、ゆめさら二心ふたごゝろたぬまでも良人をつと不足ふそくおもひてむべきや、はかなし、はかなし
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
横笛愈〻こゝろまどひて、人の哀れを二重ふたへに包みながら、浮世の義理のしがらみ何方いづかたへも一言のいらへだにせず、無情と見ん人の恨みを思ひやれば、身の心苦こゝろぐるしきも數ならず、夜半の夢屡〻しば/\駭きて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
おもふばかりで、何故なぜ次第しだい民也たみやにも説明せつめい出來できぬとふ。——にしろ、のがれられないあひだえた。孰方どつち乳母うばで、乳※妹ちきやうだいそれともあによめ弟嫁おとよめか、敵同士かたきどうしか、いづれ二重ふたへ幻影げんえいである。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二重ふたへに合へる静けさぞ君と我との愛の歌
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大和田おほわだの原、天の原、二重ふたへとばり
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
たしかに二重ふたへにもつてゐる
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
イザヤは、かれらいづれも己が郷土ふるさとにて二重ふたへの衣を着るべしといへり、己が郷土とは即ちこのうるはしき生の事なり 九一—九三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
さて埴輪はにわ筒形つゝがたのものは、はかをかのまはり、ときにはほり外側そとがは土手どてにも、一重ひとへ二重ふたへあるひは三重みへにも、めぐらされたのであり、またつか頂上ちようじようには家形いへがた
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
肥えたるあご二重ふたへなるなど、かかる人さへある身にて、我れはごゝろを持ちて済むべきや。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこで腮はどうかと云ふと、外の人のは二重ふたへだが、此人のは立派に三重みへになつてゐる。
十三時 (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
あごなどは二重ふたへえるくらゐゆたかなのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かの光かく、是に於てか我これに心をとめ、のち目をめぐらしてわが淑女を見れば、わが驚きは二重ふたへとなりぬ 三一—三三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
最近さいきん上野かうづけくにのある前方後圓ぜんぽうこうえん古墳こふんでは、周圍しゆういほり外側そとがは、ちょうどはかまへのところに、筒形つゝがたのものをながあひだ二重ふたへならべ、その一部分いちぶぶん人間にんげんうまとり埴輪はにわあつめててたのが發見はつけんされました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
二重ふたへの光をかさまとひしかの聖者は、そのふしにあはせてめぐりつゝ、かく歌ふと見えたりき 四—六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
雲間に生れしのろひの子等即ち飽いてその二重ふたへの腰をもてテゼオと爭へる者を憶へ 一二一—一二三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
汝ヨカスタの二重ふたへの憂ひのむごき爭ひを歌へるころは 五五—五七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)