トップ
>
下物
>
さかな
ふりがな文庫
“
下物
(
さかな
)” の例文
土地
(
とち
)
にて、いなだは
生魚
(
なまうを
)
にあらず、
鰤
(
ぶり
)
を
開
(
ひら
)
きたる
乾
(
ひ
)
ものなり。
夏中
(
なつぢう
)
の
好
(
いゝ
)
下物
(
さかな
)
、
盆
(
ぼん
)
の
贈答
(
ぞうたふ
)
に
用
(
もち
)
ふる
事
(
こと
)
、
東京
(
とうきやう
)
に
於
(
お
)
けるお
歳暮
(
せいぼ
)
の
鮭
(
さけ
)
の
如
(
ごと
)
し。
寸情風土記
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
此の通り
徳利
(
とくり
)
を提げて来た、一升ばかり分けてやろう別に
下物
(
さかな
)
はないから、
此銭
(
これ
)
で何ぞ
嗜
(
すき
)
な物を買って、
夜蕎麦売
(
よそばうり
)
が来たら窓から買え
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
父親は早目にその日の
旅籠
(
はたご
)
へつくと、
伊勢
(
いせ
)
参宮でもした時のように
悠長
(
ゆうちょう
)
に構え込んで酒や
下物
(
さかな
)
を取って、ほしいままに飲んだり食ったりした。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼女は名代部屋にぼんやりと待ち侘びている男の寂しそうな顔を頭に描きながら、それを
下物
(
さかな
)
にこころよく酒を飲んでいた。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「アア、酒も好い、
下物
(
さかな
)
も好い、お酌はお前だし、天下
泰平
(
たいへい
)
という訳だな。アハハハハ。だがご
馳走
(
ちそう
)
はこれっきりかナ。」
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
新造
(
しんぞ
)
の注意か、枕もとには箱火鉢に湯沸しが掛かッて、その傍には一本の徳利と
下物
(
さかな
)
の尽きた小皿とを載せた盆がある。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
幸
(
さいはひ
)
に一
杯
(
ぱい
)
を
酌
(
く
)
みて
歇息
(
やす
)
ませ給へとて、酒をあたため、
下物
(
さかな
)
を
列
(
つら
)
ねてすすむるに、赤穴
九一
袖をもて
面
(
おもて
)
を
掩
(
おほ
)
ひ、其の
臭
(
にほ
)
ひを
嫌
(
い
)
み
放
(
さ
)
くるに似たり。左門いふ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
今和主の来りしこそ
幸
(
さち
)
なれ、大王もさこそ待ち侘びて
在
(
おわ
)
さんに、和主も共に手伝ひて、この
下物
(
さかな
)
を運びてたべ。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
「えらい、それではこれを
下物
(
さかな
)
に熱いとこをまア一本。」と、父は鼓のやうに能く鳴る手を二つ拍つた。
父の婚礼
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
館
(
マンション
)
ともいえるような宏壮な洋館をしめ、伊那の奥から引いてきた
柾
(
まさ
)
葺の
山家
(
やまが
)
にひきこもり、メンバという木の
割籠
(
わりご
)
からかき餅をだし、それを
下物
(
さかな
)
にして酒を飲みながら
西林図
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
冬という季節は窩人達にとっては
狩猟
(
しゅりょう
)
と
享楽
(
きょうらく
)
との季節であった。彼らは弓矢を
携
(
たずさ
)
えては熊や猪を狩りに行く。捕えて来た獲物を
下物
(
さかな
)
としては男女打ち
雑
(
まじ
)
っての酒宴を開く。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と頼めば
頓
(
やが
)
て持ち
來
(
きた
)
る膳部の外に
摺芋
(
すりいも
)
に
鷄卵
(
たまご
)
を掛けたるを
下物
(
さかな
)
として酒を持ち來り是は
明日
(
あす
)
峠を
目出度
(
めでたく
)
越え玉はんことを
祝
(
ことほ
)
ぎたてまつるなり味なしとて許されて志しばかりを
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
一見ゾッとするばかりの怪獣なりしに、さすがは血気の若者ども、そのまま料理して
下物
(
さかな
)
となし、酒は住職のおごりとなし、舌鼓して食い尽くせしとはなかなかの快談にこそ。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
下物
(
さかな
)
は菜漬位である。女でも皆大酒であるといふ事ぢや。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
和「おゝ、何も身が無理に
左様
(
そう
)
いうのではない、左様いうことなら今の話は
止
(
や
)
めにするから、島路大儀じゃが
下物
(
さかな
)
に何か一つ踊って見せい」
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
後は芝居の噂やら弟子どもが
行状
(
みもち
)
の噂、真に罪なき雑話を
下物
(
さかな
)
に酒も過ぎぬほど心よく飲んで、
下卑
(
げび
)
た
体裁
(
さま
)
ではあれどとり膳
睦
(
むつ
)
まじく飯を
喫了
(
おわ
)
り
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それらの人を
犒
(
ねぎら
)
うために、台所で酒の
下物
(
さかな
)
の支度などをしていた母親と、姉は
暫
(
しばら
)
く水口のところで立話をしてから、お島のところへ戻って来たのであった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
海鼠腸
(
このわた
)
を
下物
(
さかな
)
にお駒の酌で、熱いのを立て續けに三四杯呷りつゝ、平七はまたこんなことを言ひ出した。
父の婚礼
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
酒のない
猪口
(
ちょく
)
が幾たび飲まれるものでもなく、食いたくもない
下物
(
さかな
)
を
挘
(
むし
)
ッたり、煮えつく
楽鍋
(
たのしみなべ
)
に
杯泉
(
はいせん
)
の水を
加
(
さ
)
したり、三つ葉を
挾
(
はさ
)
んで見たり、いろいろに自分を持ち扱いながら
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
厚く
勞
(
ねぎ
)
らいて戻し是より風呂を新たに焚き酒の
下物
(
さかな
)
を調するなど宿の者は騷ぐうち
其
(
そ
)
を待つ程もなく我は座敷に倒れて
熟醉
(
うまゐ
)
したれば梅花道人
如何
(
いか
)
なる妙狂言ありしかそれは知らず
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
「
僕
(
やつがれ
)
も
然
(
しか
)
思ひしかども、今ははや夜も
更
(
ふ
)
けたれば、今宵は思ひ
止
(
とど
)
まり給ふて、明日の夜更に他をまねき、酒宴を張らせ給へかし。さすれば僕明日里へ行きて、
下物
(
さかな
)
数多
(
あまた
)
索
(
もと
)
めて参らん」
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
事件の起った晩にあつまったのは、佐兵衛、次郎兵衛、弥五郎、六右衛門、甚太郎、権十の六人で、今夜は
後
(
のち
)
の月見というので、何処からか酒や
下物
(
さかな
)
を持ち込んで来て、宵から飲んで騒いでいた。
半七捕物帳:24 小女郎狐
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
大「いや/\然うでない、一体貴様の気象を感服している、これ女中、
下物
(
さかな
)
を
此処
(
これ
)
へ、又
後
(
あと
)
で酌をして貰うが、早く家来共の膳を持って来んければならん」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
泡盛
(
あわもり
)
だとか、
柳蔭
(
やなぎかげ
)
などというものが喜ばれたもので、
置水屋
(
おきみずや
)
ほど大きいものではありませんが
上下箱
(
じょうげばこ
)
というのに茶器酒器、食器も
具
(
そな
)
えられ、ちょっとした
下物
(
さかな
)
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ソクイに練り交ぜながら
下物
(
さかな
)
は有るやと問ふ宿の女なしと淡泊無味に答ふデモ此邊の川で取れる
岩魚
(
いはな
)
か何かあらうと押し返せば一遍聞合せて見ませうと立つ我々紀行並びに手紙等を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
そはともあれわれ今日は大王の
御命
(
おおせ
)
を受け、和主を今宵招かんため、
今朝
(
けさ
)
より里へ
求食
(
あさ
)
り来つ、かくまで
下物
(
さかな
)
は獲たれども、余りに
層
(
かさ
)
多ければ、独りにては運び得ず、
思量
(
しあん
)
にくれし処なり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
夜の目も合わさず
衆
(
みんな
)
が立ち働いているところへ心も体も酒に
爛
(
ただ
)
れたような父親が、嶮しい目を赤くして夕方帰って来ると、自分で
下物
(
さかな
)
を拵えながら、炉端で二人がまた迎え酒を飲みはじめる。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
唯さえ蒼白い顔は
藍
(
あい
)
のように変わってしまって、ただ黙ってうつむいていると、やがて吉五郎はじろりと見かえって、「若けえ人に飛んだお
下物
(
さかな
)
を見せたが、おめえはあの女を知っているかえ。」
子供役者の死
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
鳴き渡る音も
趣味
(
おもむき
)
ある不忍の池の景色を
下物
(
さかな
)
の外の下物にして、客に酒をば亀の子ほど飲まする蓬莱屋の裏二階に、気持の好ささうな顔して欣然と人を待つ男一人。
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
大「何はなくとも折角の
御入来
(
ごじゅうらい
)
、
素
(
もと
)
より斯様な
茅屋
(
ぼうおく
)
なれば別に
差上
(
さしあげ
)
るようなお
下物
(
さかな
)
もありませんが、
一寸
(
ちょっと
)
詰らん支度を申し付けて置きましたから、一口上ってお帰りを」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
女が台所へ出て、酒の
下物
(
さかな
)
を拵えている
気勢
(
けはい
)
もした。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
さて、たべる菊は普通は黄の千葉又は万葉の小菊で、料理菊と云つて市場にも出て来るのであるが、それは
下物
(
さかな
)
のツマにしか用ゐられぬ、あまり褒めたものではない。
菊 食物としての
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
梅「お
戯
(
ふざ
)
けでないよあのお
店
(
たな
)
から酒の
下物
(
さかな
)
にしろって台所の
金藏
(
きんぞう
)
さんが持って来た物があるよ」
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
真に罪無き雑話を
下物
(
さかな
)
に酒も過ぎぬほど心よく飲んで、
下卑
(
げび
)
た
体裁
(
さま
)
ではあれどとり膳睦まじく飯を
喫了
(
をは
)
り、多方もう十兵衞が来さうなものと何事もせず待ちかくるに
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
夫
(
それ
)
にまだ
世間
(
せけん
)
には
売物
(
ばいぶつ
)
にないと
云
(
い
)
ふ
結構
(
けつこう
)
なお
下物
(
さかな
)
でせう
何
(
なん
)
だか名も知らない
美味物許
(
うまいものばかり
)
なんで
吾知
(
われし
)
らず
大変
(
たいへん
)
に
酔
(
よ
)
つちまひました、
夫
(
それ
)
ゆゑ
何方様
(
どちらさま
)
へも
番附
(
ばんづけ
)
を
配
(
くば
)
らずに
帰
(
かへ
)
つたので
世辞屋
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
鳴き渡る音も
趣味
(
おもむき
)
ある
不忍
(
しのばず
)
の池の景色を
下物
(
さかな
)
のほかの下物にして、客に酒をば亀の子ほど飲まする
蓬莱屋
(
ほうらいや
)
の裏二階に、気持のよさそうな顔して欣然と人を待つ男一人。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
と、兼松は是より酒を買って来て、折詰の料理を
下物
(
さかな
)
に満腹して寝てしまいました。
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「石塔に鉢卷」といふ壯んな諺が日本にはあるが、石塔になつた氣で鉢卷をして働いたなら、華嚴の瀧はその人の棺前の華では無くて、必ず酒の
下物
(
さかな
)
たる好い眺めであらう。
華厳滝
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
婆「はい、
下物
(
さかな
)
はどうだね」
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
構うことあ無えやナ、
岩崎
(
いわさき
)
でも
三井
(
みつい
)
でも
敲
(
たた
)
き
毀
(
こわ
)
して酒の
下物
(
さかな
)
にしてくれらあ。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
“下物”の意味
《名詞》
下 物(かぶつ、げぶつ、したもの)
(かぶつ、げぶつ)酒の肴。つまみ。
(したもの)価格の安い品物。安物。
(出典:Wiktionary)
下
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
物
常用漢字
小3
部首:⽜
8画
“下物”で始まる語句
下物打
下物拵