もしお聞入れがなくば、この場に於て切腹をいたしまして、魂魄となって奥様をお守り申して、御本望を遂げさせまするでございます
念願の金がたまった瞬間に、幽明境を異にして、魂魄だけが水ものまず歯ぎしりして巴里へ走って行きそうな暗い予感がするのである。
「本当かも知れん。なら、目出度いことだ。赤山殿の魂魄も、浮ぶことだろう——ところで、皆が集まっているが、出向いてくれんか」
「友次郎どのの魂魄が迷いますわ。しろうとが刃物いじりなぞするものではありませぬ。あなたもおとなしく! おとなしく!」