“驟雨:しゅうう” の例文
“驟雨:しゅうう”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治14
寺田寅彦10
ロマン・ロラン7
宮本百合子4
岡本綺堂4
“驟雨:しゅうう”を含む作品のジャンル比率
文学 > フランス文学 > 小説 物語26.9%
文学 > 英米文学 > 小説 物語5.4%
文学 > 日本文学 > 日記 書簡 紀行1.6%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
そしてもう配置についた将士の目にも耳にも、前面から地をけてくる驟雨しゅううのごときものがはっきりとつかめていた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この朝は誰も知っている通り、二百十日前後にありがちの何となく穏かならない空模様で、驟雨しゅううが折りおりに見舞って来た。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
愚図々々すれば、石鹸を塗ったばかりの斑人形まだらにんぎょうを残して、いたずらな驟雨しゅううはざあとけぬけて了う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
なにしろ驟雨しゅううはまだおさまらず、波浪が高いので、ボートはいくたびか幽霊船に近づきながら、いくたびとなく離れた。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
妙に生温かい、晴れるかと思うと大きな低い積雲が海の上から飛んで来てばらばらと潮っぽい驟雨しゅううを降らせる天候であった。
二つの正月 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
二人は何の物音も感じないかのごとく、驟雨しゅううの中に、寄り添って立っている。……もう一度最も烈しい電光。……雷鳴なし。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
最後の場面で、花売りの手車と自動車とが先刻衝突したままの位置で人けのない町のまん中に、降りしきる驟雨しゅううにぬれている。
映画雑感(Ⅱ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
たがいに抱き合ったままうとうととしながら、喜びに酔った蟋蟀こおろぎの鳴く声や、驟雨しゅううの降りそそぐ音などが聞かれた。
驟雨しゅううが襲って来るとあひるは肩をそびやかしたような格好をしてその胸にくちばしをうずめたまま、いつまでもじっとしている。
沓掛より (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
観測所も、もちろん雲の上に出ているので、ヒロの町は連日驟雨しゅううの中にあるのに、ここでは雲一つない青空である。
黒い月の世界 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
この朝は誰も知っている通り、二百十日前後に有勝ありがちの何となく穏かならない空模様で、驟雨しゅううがおりおりに見舞って来た。
火に追われて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
——やがては風をはらんだ霧とも驟雨しゅううともつかない真っ白な水粒の怒濤が列をなぐッて吹き通って行く。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
春さめ、さみだれ、しぐれ、驟雨しゅうう、ゆうだち、霧雨、小糠雨こぬかあめ、そのほかにもなおあるであろう。
雨粒 (新字新仮名) / 石原純(著)
明日にもなれば、またはもう一時間もすれば、驟雨しゅううが襲うかも知れないし、それからまた続いて何度もやって来るかも知れなかった。
驟雨しゅううは雷鳴に交じって、扉を肱金ひじがねの上に揺すぶり、監獄の中は好都合な恐ろしい響きに満ちていた。
七路に迫る寄手は喊声かんせいをあげてきた。呂布ももちろん、防ぎに出ていた。——驟雨しゅうう沛然はいぜんとして天地を洗った。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
驟雨しゅううの低雲が曠野をせてゆくように、援軍は西進してたちまち、羗軍きょうぐんの大部隊と相対した。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、淳于導はなおも勢いに乗って、千余の部下を励ましながら、驟雨しゅううの如くこれへ殺到してきたものだった。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、折からの驟雨しゅううが晴れて、水々しい山頂をくっきりと披璃はりのような青い空に、聳えさせていた峰々のうるわしさは、忘れません。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
外に出ると驟雨しゅううに洗われた澄み切った空の底に、星が涼しそうに及びがたき希みのように輝いていました。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
土用どようればいついかなる時驟雨しゅうう沛然はいぜんとしてきたらぬともはかりがたい。
輿こしは一つも見えず、騎馬も少なく、みな身軽な決戦いでたちで、その迅いこと、驟雨しゅううのようです」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小区域の驟雨しゅううが某市街を通過するか、その近郊のみを過ぐるかはその市民にとりては無差別にはあらず。
自然現象の予報 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
雨雲を仰ぎながら、旅人の一団が前の街道を走り去ると、それを追って、白い驟雨しゅうういて過ぎた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
突然の高熱、突然の腹痛、突然の煩悶はんもん、それは激しい驟雨しゅううが西風に伴われてあらしがかった天気模様になったその夕方の事だった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
八月も終りに近く、驟雨しゅううが時々襲って来て、朝晩はそよそよと、肌触りも冷やかに海風か吹き通り、銀子は何となし東京の空を思い出していた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
はじめ驟雨しゅううのように断続して降りだした空は、おもい雲を重ね、野面をうす暗くおさえつけていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
日光新緑を射て驟雨しゅうう一過、快。緑のぬれぬれしたる中をからす一羽葉に触れさうに飛んで行く。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
それは何でも私が東京に来た当時の事で、驟雨しゅううに会って駈け込んだついでに、屋根の借り賃のつもりで一時間ばかり説教を聞いた事がある。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
大正十二年の開会日は朝ひどい驟雨しゅううがあって、それが晴れると蒸暑くなって、竹の台の二科会場で十一時五十八分の地震に出遇ったのであった。
烏瓜の花と蛾 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
と、我武者羅がむしゃらに、柵を目がけ、戦友のかばねを踏んで、跳びかかって来る勇士も、驟雨しゅううのような弾道の外ではあり得なかった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その冷たい驟雨しゅううがにわかにおこって、その四角な中庭のなかに、彼らの裸の頭の上に、裸の体の上に、地面にならべられているみじめな衣類の上に
死刑囚最後の日 (新字新仮名) / ヴィクトル・ユゴー(著)
夜の明け放れる頃には夜来の嵐はしのつくような驟雨しゅううを名残として鳴りをひそめ、ケロリとしたようにすがすがしい朝が一ぱいに訪れていた。
夜半よなかごろ一しきり、驟雨しゅううがあった。勝頼は上機嫌で、具足をつけたまま仮寝に就く。——明けやすい夏の夜を滝川の水音ばかり高かった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちに春らしい驟雨しゅううが日に一度か二度は必らず通り過ぎるようになった。明は、そんな或日、遠い林の中で、雷鳴さえ伴った物凄い雨に出逢った。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
クリストフは憤怒ふんぬのあまりあおくなり、恥ずかしくなり、亭主や女房や娘を、締め殺すかもしれない気がして、驟雨しゅううを構わず逃げ出した。
ある日同じ寄宿舎にいる学生七、八人と夕方から宿舎をぬけ出して、そこらを遊びまわって、夜なかに帰って来ると、にわかに驟雨しゅううがざっと降り出した。
それでも、中庭の向こうに建てられてる家の屋根の上では、この悲しむべき日々の間、驟雨しゅううの下で、職人どもが最後の金槌かなづちを打ち納めていた。
数年前に、驟雨しゅうう綜合研究(プロゼクト・シャワー)が、この島でおこなわれたことがある。
黒い月の世界 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
朝飯が終わったころはもうシンガポール間近に来ていた、そして強い驟雨しゅううが襲って来た。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
浴後の茶漬も快く、窓によれば驟雨しゅうう沛然はいぜんとしてトタン屋根を伝う点滴の音すゞしく、電燈の光地上にうつりて電車の往きかう音も騒がしからず。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
熱帯の植民地は一日に二、三回かならず驟雨しゅうう来るが故に外出の折西洋人は傘を携ふ。
洋服論 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そのうち、ふと、一間の蚊帳かやの中に、逃げおくれていた白い顔が、驟雨しゅううを予感する夕顔の花みたいに、わなわなとおののき顫えているのを見出した。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
糸を座繰ざぐりの音が驟雨しゅううのようにあっちこっちからにぎやかに聞こえる。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
その初めの日は帰途かえり驟雨しゅううに会い、あとの一日は朝から雨が横さまに降った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
窓から外を見れば、驟雨しゅううの水晶棒が万物の上に激しい飛沫しぶきを叩きつけている。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それも時としては約十二尺もあろうというほど深い塹壕であって、そのあまり急な斜面の土は驟雨しゅううのために所々くずれ落ち、ことに冬にははなはだしかった。
渠等が労役の最後の日、天油然ゆうぜん驟雨しゅううを下して、万石の汗血を洗い去りぬ。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大正十二年の開会日は朝ひどい驟雨しゅううがあって、それが晴れると蒸し暑くなって、たけだいの二科会場で十一時五十八分の地震に出会ったのであった。
からすうりの花と蛾 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ジャン・ヴァルジャンが出会った崩壊孔は前日の驟雨しゅううのためにできたものであった。
丁度上野でデモが解散という刻限、朝から晴れていた空が驟雨しゅうう模様になって来た。
刻々 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
殊に、明智方の銃士は、桂川をわたるとき、驟雨しゅううのために、だいぶ装備を濡らしている。中には幾筋もの切火縄がみな役に立たず、後に退っている者もいた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飯の準備をしているうちに、驟雨しゅううが一としきりあって、雷鳴が近くに聞えたが、夜に入って、星が瞬いた……かと思うと、淡い、軽い霧が、銀河のように空に懸る。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
気候。驟雨しゅうう多し。青天に葉書を出しに行くにも洋傘コウモリを忘るべからず。
踊る地平線:04 虹を渡る日 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
驟雨しゅううの後に暖かい一陣の風が、濡れた樹木の枝から振い落す小雨にも似ていた。
が、其処へはいるや否や、雲雀ひばり、目白、文鳥、鸚哥いんこ、——ありとあらゆる小鳥の声が、目に見えない驟雨しゅううか何かのように、一度に私の耳を襲った。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
菊池一族の三百騎ほどは、息ノ浜から松原口まで、驟雨しゅううのように駈けて来たが、
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その上いつ驟雨しゅううが来るか解らないほどに、空の一部分がすでに黒ずんでいた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、船列と船列とのあいだには、まるで驟雨しゅううのような矢と矢が射交わされた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとその言葉がまだ終らない内に、驟雨しゅううの襲いかかるような音が、対岸の松林を震わせながら、その上にまばらな星をいた、山々の空へのぼり出した。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おりから驟雨しゅううのあとで場内の片すみには川水がピタピタあふれ込んでいた。
映画時代 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
驟雨しゅううのまさに来ようとする前のようなシーンとした静かさが感じられた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その日は午後になって降り出した驟雨しゅううが運よくひけ前にあがった。
三月の第四日曜 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
世俗の怖れる二百十日とおかの前一日、二三日来の驟雨しゅうう模様の空がその朝になって、南風気みなみげの険悪な空に変り、烈風強雨こもごも至ってひとしきり荒れ狂うていたが
死体の匂い (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
驟雨しゅううが来た。全軍、渡河を半ばにしつつ、真っ白な雨に打たれた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
驟雨しゅううのようなその昂奮こうふんの通りすぎるのを待っていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
あられ交りの激しい驟雨しゅううが降りだして、遠くで笛が鳴った。
まえぶれとして、いつものごとく、驟雨しゅううがやってきました。
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これと同時に驟雨しゅうう、滝の如くに降り諸所の火焔を鎮滅したり。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
そのことばと同時に、背後の一山から、驟雨しゅううのように矢が飛んできた。おどろいて急に振りかえると、敵の楊昂、楊任、楊平などの旗じるしが、攻めつづみに士気を振って、
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
台所で盛んに火をいて、驟雨しゅううの過ぎるのを待った。
驟雨しゅうう雷鳴から事件の起ったのを見て、これまた作者常套じょうとうの筆法だと笑う人もあるだろうが、わたくしは之をおもんばかるがために、わざわざ事を他に設けることを欲しない。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
誰が拾って来たのか、燈籠の一つが食堂のテーブルの上に置かれてあったので、私は手に取って眺めていると、ぬぐったような湖面は俄かに暗くなって、例の驟雨しゅううがさっと降り出して来た。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「今の驟雨しゅううで、たいそう青梅の実が落ちましたな」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
颱風たいふう名残なごり驟雨しゅううあまたゝび
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
君江の威勢に運転手は暴力を出しても駄目だと思ったのか、そのままおとなしく車をめると、折からざっと吹ッ掛けて来た驟雨しゅううに傘の用意のないのを、さもい気味だといわぬばかり。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そう周囲が真暗なため、店頭にけられた幾つもの電燈が驟雨しゅううのように浴びせかける絢爛けんらんは、周囲の何者にも奪われることなく、ほしいままにも美しい眺めが照らし出されているのだ。
檸檬 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
しかし六月の驟雨しゅううは大したことではない。
白い河洲かわすゆる彎曲線わんきょくせんほどよい近景をして、はるかには暗雲の低迷したそれは恐らく驟雨しゅううの最中であるであろうところの伊吹山のあたりまでをバックに
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
大正十二年八月二十四日 曇、後驟雨しゅうう
震災日記より (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
昼食後、公子さんの弟という二十三四の青年、書生と、モーターボートを出してくれたはよいが、モーター動かず、湖上に浮いて居るうち、段々彼方の方から曇って山が見えなくなり、軽い白い驟雨しゅううが来た。
人々は喜んでこの驟雨しゅううに身をさらす。
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
——E・S微風、驟雨しゅうう模様の薄曇。
旅客機事件 (新字新仮名) / 大庭武年(著)
いもが宿春の驟雨しゅううに立ち出づる
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
まるで驟雨しゅううのような矢であった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八月十一日。ま白き驟雨しゅうう
創生記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それから、夏の篇の驟雨しゅうう
驟雨しゅううが時々やってくる。
驟雨しゅうう模様の天気だった。
彼はまったく子供らしくなっていて、ようやく息がつけるようになったのは、汽車が動き出して、灰色の空の中に、もの悲しい驟雨しゅううの下に、夜の落ちかかってる都会の影が消えてゆくのを、車窓から見送った時からであった。
欧羅巴と同じ様に疾風、暴風、颶風ぐふう、狂風が吹き、同じ様に驟雨しゅううが降り、洪水が降り、同じ様に、一時は蘇生の想いをなし更に同じ様に、前に倍する焦熱に苦しめられてヤッと「日の入り」と云う休戦に助けられた。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
八日、晴、驟雨しゅうう
慈悲心鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
黒い驟雨しゅうう
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
とやかくと一刻いっときばかりは、敵も味方も囂々ごうごうかなえの沸く如く騒然としていたが、やがて再び合図の太鼓がとうとうと鳴り渡ると、緊張し切った大衆は炎に驟雨しゅううが来たかのような静謐せいひつに返ってしまった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中国の江南こうなんの景色、セイロンの落日の景色、仏蘭西のローヌ河畔の木の芽の景色、ムードンの森の驟雨しゅううの景色、独逸ドイツのラインがわの古城の景色、ベルギーのヒヤシンス・チュウリップ等の花畠はなばたけ、オランダの風車、倫敦ロンドンの霧等、数えれば数限りなくある。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
こういって若い女は、あわてて二階へせ上って、かいがいしく雨戸を繰りはじめましたが、兵馬はなにげなく二階を見上げますと、いま戸を立てた女は、最後の一枚を残してそこから驟雨しゅううの空と往来とを見ていましたのと、ちょうど両方の間が斜めに向って、見上げても見下ろしても、ぜひ眼のぶっつかる地位でありました。
無かったよ。犯人は手袋を穿めていたらしいんだね。それよりも大きな足跡があったんだ。モウ拭いてしまってあるが、向うの北向きの一番左側の窓から這入って来たんだね。ところでこの辺では昨夜の二時ちょっと前ぐらいから電光いなびかりがして一時間ばかり烈しい驟雨しゅううがあったんだが、その足跡は雨に濡れた形跡がない。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
酒席の憲法恥をかかすべからずといられてやっと受ける手頭てさきのわけもなくふるえ半ば吸物椀すいものわんの上へしのつかねて降る驟雨しゅううしゃくする女がオヤ失礼と軽く出るに俊雄はただもじもじとはしも取らずお銚子ちょうしの代り目と出て行く後影を見澄まし洗濯はこの間と怪しげなる薄鼠色うすねずみいろくりのきんとんを一ツ頬張ほおばったるが関の山
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)