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めんくら
ふりがな文庫
“
面喰
(
めんくら
)” の例文
実は少し
面喰
(
めんくら
)
ったのです。どういうわけだかあなたはきっとヴェエルを
被
(
かむ
)
っていらっしゃるはずのように思っていたもんですから。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
「
面喰
(
めんくら
)
ったなあ、泰安さ。
気狂
(
きちげえ
)
に文をつけて、飛んだ恥を
掻
(
か
)
かせられて、とうとう、その晩こっそり姿を隠して死んじまって……」
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
主人の勘解由もさすがに
面喰
(
めんくら
)
って居ります。日ごろ内儀に平かでない者も、内儀の機嫌取りに没頭している者も、一様に動き出しました。
奇談クラブ〔戦後版〕:15 お竹大日如来
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ところが運悪く、あの
婆
(
ばゞあ
)
がはひつて来ました。あなたが、その時、突然僕に加へられた皮肉な刑罰は、聊か僕を
面喰
(
めんくら
)
はせました。
ママ先生とその夫
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
……高の知れた女一匹……と思って調子をおろしていた相手から、思いもかけぬ不意打ちを喰ったのですっかり
面喰
(
めんくら
)
ってしまったらしい。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
▼ もっと見る
こういうものが出来上がってそれを牙彫界一般に配附したのであります。これを手にした一流側の人々は大いに
面喰
(
めんくら
)
ったわけでありました。
幕末維新懐古談:47 彫工会の成り立ちについて
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
次
(
つ
)
いで径二尺五寸程の大きな下部注水孔のバルブも開いて、吸い込まれて
面喰
(
めんくら
)
った魚を
渠底
(
きょてい
)
のコンクリートへ叩き付け始めた。
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
運転手は益々
面喰
(
めんくら
)
って、やや恐れをなした様子だったが、それでも私の云うがままに、車を帰して、小山田家の門前についた。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「夕方知らずして、
主
(
しゅ
)
の坊が Wife とともに湯の小さきに親しみて(?)入れるを見て、突然のことに気の毒にもまた
面喰
(
めんくら
)
はされつ」
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
だが、聴いてみると、それは一月程前自分が松風氏に話したものそつくりの案なので、店員はすつかり
面喰
(
めんくら
)
つてしまつた。で、やつと一言
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
と、
先刻
(
さっき
)
の蛇の目を忘れたことに気がついたらしく、
階下
(
した
)
から「三造さん。傘! 傘!」と大きな声がした。彼は
面喰
(
めんくら
)
った。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
さすがに丸田は
面喰
(
めんくら
)
つて其のまゝ後方へよろけた。隊長は一瞬間調子を柔らげたと思ふと、また限りなく怒鳴り続けた。丸田は顔色なかつた。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
なんだか亀の名みたいで僕は「リュウさん」の例もあるし変な気がしていたが、字を訊くと「泰明」という立派な名前なのでよけいに
面喰
(
めんくら
)
った。
石ころ路
(新字新仮名)
/
田畑修一郎
(著)
丁ど
颶風
(
ぐふう
)
でも來るやうな具合に、種々な考が種々の
象
(
かたち
)
になつて、ごた/\と一時にどツと
押寄
(
おしよ
)
せて來る………周三は
面喰
(
めんくら
)
つて
嚇
(
くわツ
)
となつてしまふ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
妙子がそれを承諾すると、すぐその場から妙子のことを「先生さん」と呼び出したので、妙子は
面喰
(
めんくら
)
って「妙子さん」と呼ぶことに改めて貰った。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と、
眦
(
めじり
)
の切れた目をちょっと細うして
莞爾
(
にっこり
)
しながら、敷居際で
町家
(
まちや
)
風の行儀正しく、私が
面喰
(
めんくら
)
ったほど、
慇懃
(
いんぎん
)
な挨拶。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あまり平凡のもののやうに、番頭に云はれて私は
却
(
かへ
)
つて
面喰
(
めんくら
)
つたが、買ふ段になると、どんな風な計算で買ふものか、私にはまるきり観念がなかつた。
イボタの虫
(新字旧仮名)
/
中戸川吉二
(著)
こんな際だから、まさか負け惜しみでもあるまいが、骨が出てるのに痛くないなんて、先生余程
面喰
(
めんくら
)
ったと見える。
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
で、上つて行つて、蒲団などを
侑
(
すゝ
)
められると、彼女は里離れのした態度で、
更
(
あらた
)
めて両手をついて
叮嚀
(
ていねい
)
にお辞儀をした。彼は
面喰
(
めんくら
)
つたやうな困惑を感じた。
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
壮太は
面喰
(
めんくら
)
って、何がなにやら、分らぬながら、駆逐艦だの戦闘準備だのと聞いてこれも跳び上りながら喚いた。
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
その
娘
(
むすめ
)
のお母さんは、すこし眼に険のある美人でしたが、
恐
(
おそろ
)
しく早口で
捲舌
(
まきじた
)
に
喋
(
しゃべ
)
るので、なにを言うやら、さっぱり
判
(
わか
)
らず、いつもぼくは
面喰
(
めんくら
)
いました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
かくも短時間の間に、かくも満員を占める人気というものの広大なことに、道庵先生も
面喰
(
めんくら
)
った様子であります。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
服部フクは
面喰
(
めんくら
)
って棒立になっていたが、その間に、おせいや、タツたちが、うしろをとりまいてしまった。
工場新聞
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
二個の長い
食卓
(
しよくたく
)
には、何かしら
温
(
あたゝか
)
い物の
入
(
はひ
)
つてゐる鉢から煙が出てゐた。ところが、
面喰
(
めんくら
)
つたことには、食慾を起させるどころか、大變な臭氣を發してゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
二、三回目に会った時に、友人の数学者の
岡潔
(
おかきよし
)
君を紹介したら、「オカさんは、コウですか、キュウですか」ときかれて、大いに
面喰
(
めんくら
)
ったことをおぼえている。
日本のこころ
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
……しかし懐中電気を手にしていた男の方でも、そんなところに思いがけず私たちが突っ立っていたのに、
面喰
(
めんくら
)
ったらしかったが、その一人が私だと気がつくと
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「パルシファル⁉」鎮子は法水の奇言に
面喰
(
めんくら
)
ったが、彼は再びその問題には触れず、別の問いを発した。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
慶三は
真昼間
(
まっぴるま
)
の往来とて、少し
面喰
(
めんくら
)
って
四辺
(
あたり
)
をきょろきょろ見廻したが、坂地の道路が広いだけに、通行の人は誰も気のつくものがないらしいので大きに安心して
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
此の間初めて、舞台稽古をみたんですけど、全部あれでしょう、和服みたいなものでしょう、そこへ音楽が妙なんですもの……妾なんかまるで
面喰
(
めんくら
)
って了って……。
華々しき一族
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
イワン・フョードロヸッチは、ちやうど、舞踏会に乗りつけた洒落者が、どちらを見ても自分より優れた服装をした客ばかりなのに、聊か
面喰
(
めんくら
)
つたといつた形だつた。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:04 イワン・フョードロヸッチ・シュポーニカとその叔母
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
子供達を
面喰
(
めんくら
)
わせるものは、ただあまりにひねくりまわした、こみ入ったものだけなのである。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
そうしてその語調が如何にも自然で、
迚
(
とて
)
も咄嗟の間の判断じゃなかったね。僕は
一寸
(
ちょっと
)
面喰
(
めんくら
)
ったよ
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
俺はまったく
面喰
(
めんくら
)
って臆病に眼を伏せたが、
咄嗟
(
とっさ
)
に思い返して眼をあけた。すると女は、美しい歯並からころげ落ちる微笑を、白い指さきに軽くうけてさッと俺に投げつけた。
苦力頭の表情
(新字新仮名)
/
里村欣三
(著)
恐らくフランケの外の誰もが僕と同じくさわぎたてるだろうと思い、まわりを見廻したのであるが、その予想は
外
(
はず
)
れて、誰もさわがない。それには
面喰
(
めんくら
)
わずにいられなかった。
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼は
徐
(
しず
)
かにそれを云ったのだ。けれども使丁は聞きかえした。相手の変化に
面喰
(
めんくら
)
っていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
私は、あなたから君に変り、そうじゃ、そうじゃという老人臭い口調に変り、そして又、このバーの主人なんじゃと名乗られたことに、いささか
面喰
(
めんくら
)
ったかたちであったのだが
白金神経の少女
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
面喰
(
めんくら
)
つたのは
神奈川縣
(
かながはけん
)
の
警察部
(
けいさつぶ
)
で、
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
き
迷信
(
めいしん
)
を、
成
(
な
)
すが
儘
(
まゝ
)
に
増長
(
ぞうちやう
)
さしては
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
が、誰も多少予想していないじゃないが余り迅雷疾風的だったから誰も
面喰
(
めんくら
)
ってしまった。その上、東京の地震の火事と同様、予想以上に大きくなったのでいよいよ面喰ってしまった。
二葉亭追録
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
ブラウンは
面喰
(
めんくら
)
って、あわてだし叫び声をたてて、気を失わんばかりだった。アンナは化粧版の留め金を引きちぎり、燃えだしてる
裳衣
(
しょうい
)
を腰からすべり落として、それを足にふまえた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
面喰
(
めんくら
)
った日本人は、首を後に硬直さして、どうしていいか分らなかった。……。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
捨吉はちょっと
面喰
(
めんくら
)
った。お婆さんや姉さんと玉木の小母さん夫婦との間に
板揷
(
いたばさ
)
みにでも成ったように感じた。大人同志のあらそいを避けて、誰も居ないようなところへ走って行きたい。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
未
(
いま
)
だ
嘗
(
かつ
)
て、彼女はこういう調子でにんじんに話しかけたことはないのである。
面喰
(
めんくら
)
って、彼は顔をあげる。見ると、彼女の指は、
布片
(
きれ
)
と糸で、さっぱりと、大きくがんじょうに包まれている。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
回々教
(
フイフイけう
)
の
旅行者
(
りよかうしや
)
たちはすつかり
面喰
(
めんくら
)
つて、ラランを
火
(
ひ
)
の
中
(
なか
)
から
引
(
ひ
)
き
出
(
だ
)
したが、やつと
正気
(
しやうき
)
づいたラランは
舌
(
した
)
の
自由
(
じゆう
)
がきかないほど、
口
(
くち
)
の
中
(
なか
)
を
火傷
(
やけど
)
してゐた。カラカラと
笑
(
わら
)
ふどころではなかつた。
火を喰つた鴉
(新字旧仮名)
/
逸見猶吉
(著)
我々は
面喰
(
めんくら
)
って立ちすくみ、「これが日本か?」と自ら問うのであった。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
若い元気のある士官であったが、先きに礼の言葉を述べられたりして甚だ
面喰
(
めんくら
)
ってしまった。私はその日の祭壇に
祀
(
まつ
)
られたものの、相当多くが機関員であることを聞いて今更のように目を
睜
(
みは
)
った。
指導物語:或る国鉄機関士の述懐
(新字新仮名)
/
上田広
(著)
与一も
面喰
(
めんくら
)
ったのだろう、
脣
(
くちびる
)
を引きつらせてピクピクさせていた。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
私と峻とが、ひどく
面喰
(
めんくら
)
わされたのは、妻の
姪
(
めい
)
の貞子であった。
秋草の顆
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
「え? 何のことですか?」と私は
頗
(
すこぶ
)
る
面喰
(
めんくら
)
って訊ね返した。
誤った鑑定
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
「はゝゝゝ、唐沢の奴、
面喰
(
めんくら
)
つてゐるだらう。はゝゝゝ。」
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
おれも
面喰
(
めんくら
)
つてしまつた。おい、助十。どうも困つたな。
権三と助十
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
面
常用漢字
小3
部首:⾯
9画
喰
漢検準1級
部首:⼝
12画
“面”で始まる語句
面
面白
面影
面目
面持
面倒
面色
面長
面当
面貌