郷里きやうり)” の例文
れがしきりに交代かうたいされるので、卯平うへいは一しか郷里きやうりつちまなくても種々しゆ/″\變化へんくわみゝにした。かれは一ばんおつぎのことが念頭ねんとううかぶ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
安井やすゐ其後そのごまい端書はがきさへこさなかつたのである。宗助そうすけ安井やすゐ郷里きやうり福井ふくゐけて手紙てがみしてた。けれども返事へんじつひなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
るくするととりかへしのかぬことになるとまをしまして、れで其時そのときまをしました、わたし郷里きやうりおさ友達ともだちれ/\つて、かんもちの、はつきりとして
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
竹村たけむらあきれてしまつた。かれ郷里きやうり新聞しんぶんで、大久保おほくぼ奈美子なみこ虐待ぎやくたいして、警察けいさつわづらはしたなぞのうはさみゝにしてゐたが、それもあなが新聞記者しんぶんきしや誇張こちやうでもなかつたやうにおもへた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ことながあひだ野田のだ身上しんしやうつて近所きんじよくら親方おやかたをしてるのが郷里きやうりちかくからたので自然しぜん知合しりあひであつたが、それが卯平うへい引退いんたいすゝめた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
細君さいくんところによると、かれ郷里きやうりかへつてから當日たうじついたまで一片いつぺん音信おんしんさへ下宿げしゆくへはさなかつたのである。宗助そうすけ案外あんぐわいおもひ自分じぶん下宿げしゆくかへつてた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かれはしばらく奈美子なみこ同棲どうせいしてゐた郷里きやうり世帯しよたいをたゝんで、外国ぐわいこくへわたる準備じゆんびとゝのへるために、そのとき二人ふたり上京じやうきやうして、竹村たけむらちかくに宿やどつてゐた。かれなんとなくいら/\してゐた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
あそばすまじきものならず御最愛ごさいあいのお一人娘ひとりごとて八重やへ何分なにぶんたのむぞと嚴格むづかし大旦那おほだんなさまさへ我身わがみ風情ふぜいおほせらるゝは御大事おだいじさのあまりなるべしかれにつけこれにつけづかはしきはひとことりし對面たいめんとき此處こゝ居給ゐたまふとはおもひがけず郷里きやうりのことは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
郷里きやうりからたものにいてかれ勘次かんじ次第しだい順境じゆんきやうおもむきつゝあることをつた。かれこゝろ動搖どうえうしてもろつたこゝろひどあはれつぽくなさけなくなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
著者は多少思考を費した上、この説に同意して、たゞちに煤煙の前半、即ち要吉が郷里きやうりに帰つて東京に出て来る迄の間を取敢とりあへず第一巻として活版にする事に決心した。
『煤煙』の序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
安井やすゐ郷里きやうりこと東京とうきやうこと學校がくかう講義かうぎことなにくれとなくはなした。けれども、御米およねことついては一言いちごんくちにしなかつた。宗助そうすけ勇氣ゆうきとぼしかつた。其日そのひはそれなりわかれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
この状態はなかば事件其物そのものの性質から出る事もついでに注意したい。煤煙の主人公が郷里きやうりへ帰つてから又東京へ引き返す迄に、遭遇したり回想したりする事件は、決して尋常のものではない。
『煤煙』の序 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)