-
トップ
>
-
きやうり
竹村は
呆れてしまつた。
彼は
郷里の
新聞で、
大久保が
奈美子を
虐待して、
警察を
煩はしたなぞの
噂を
耳にしてゐたが、それも
強ち
新聞記者の
誇張でもなかつたやうに
思へた。
殊に
永い
間野田へ
身上を
持つて
近所の
藏の
親方をして
居るのが
郷里の
近くから
出たので
自然知合であつたが、それが
卯平に
引退を
勸めた。
細君の
云ふ
所によると、
彼は
郷里へ
歸つてから
當日に
至る
迄、
一片の
音信さへ
下宿へは
出さなかつたのである。
宗助は
案外な
思で
自分の
下宿へ
歸つて
來た。