てん)” の例文
旧字:
中学校にてんずるのを機として、教育大学附属の中学校に入れて貰うことが出来た。私の家も、もとの焼けあとに小屋を作ることが出来た。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
正直しょうじきで、しんじやすいかみなりは、たかのいうことにしたがいました。そして、かみなりは、方向ほうこうてんじて、みやこほうすすんでいきました。黒雲くろくもかみなりに、したがいました。
ぴかぴかする夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして空からひとみを高原にてんじました。まったすなはもうまっ白に見えていました。みずうみ緑青ろくしょうよりももっと古びその青さは私の心臓しんぞうまでつめたくしました。
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ここ数回は、清盛の出家と、一門繁昌の頂上期で、ひとまず筆をてんじ、牛若丸をめぐる“陰の人びと”とその母常磐の以後の境遇を摸索もさくして書いてきた。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ずてんですよ。第一日に百買って一生の運勢を試めそうってことを病院にいる時から考えていたんです。これを
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と自然に分明ぶんみょうしたから、細君はうれいてんじて喜とし得た訳だったが、それも中村さんが、チョクに遊びに来られたおかげで分ったと、上機嫌になったのであった。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
話頭わとうてん、信義なき対人圏にあつて、芸術家が何を得るとしても何れは僅かなものである。
詩と現代 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
考えたことがあるよ、さいわいこの島は無風の日がきわめて少ない、にのぞんで無用のものを有用にてんずることは、人間にあたえられた大いなる宝だ、ぼくらはさっそく利用しよう
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
のち商業学校せうげふがくかうてんじて、中途ちうとから全然すつかりふでたうじて、いまでは高田商会たかだせうくわいに出てりますが、硯友社けんいうしやためにはをしい人をころしてしまつたのです、もつとも本人の御為おためには其方そのはう結搆けつかうであつたのでせう
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
もろいやつてんの骨頂だという嫌気いやけがしたが、しかし自分の自由になるものは、——犬猫を飼ってもそうだろうが——それが人間であれば、いかなお多福でも、一層可愛くなるのが人情だ。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
はじめて瞭乎りやうこたり、てんじて北方を俯視ふしすれば、越後の大部岩代の一部脚下にあつまり、陸地のくる所青煙せいえん一抹、とほく日本海をながむ、たたうらむむらくは佐渡の孤島ことう雲煙をふて躰をあらはさざりしを
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
熊のくろきは雪の白がごとく天然てんねんの常なれども、天公てんこうてんじて白熊はくいうを出せり。
赤とんぼは、クルリと眼玉めだまてんじました。
赤とんぼ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「おかあさん、あっちのそらをごらん。」と、とつぜん、てんじようと、清吉せいきちは、さけびました。
戦争はぼくをおとなにした (新字新仮名) / 小川未明(著)
行列はきゅうに方向をてんじて、五湖の一つに沈んでいる宝物をさぐりにむかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山勢さんせいほとんど直立、くわふるに突兀とつこつたる危岩きがん路によこたはるに非れば、佶倔きつくつたる石南樹のたいさへぎるあり、し一たびあしあやまらんか、一てん忽ち深谷しんこくつるを以て、一行の両眼はつねそそぎて頭上の山頂さんてうにあり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
シグナルのみどりの燈と、ぼんやり白いはしらとが、ちらっとまどのそとをぎ、それから硫黄いおうのほのおのようなくらいぼんやりしたてんてつの前のあかりがまどの下を通り、汽車はだんだんゆるやかになって
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
てんじると、あぶなげな岩鼻いわばなをおろした、まつがありました。おなまつながら、あるものは、安全あんぜん平地へいちをおろしているし、こうして、たえずおびやかされるものもある。
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、すぐてんじて、大渡へ移ってしまった。なぜか正成を避けたのである。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、果心居士かしんこじはふかくもいわず口をにごして話頭わとうてん
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それゆえ、義貞は陣をてんじて、尊氏の上陸を迎え
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)