賭博ばくち)” の例文
眞「成程、じゃアわしが師匠にうてお前様お梅はんと寝て居りみすから、私に何うか賭博ばくち資本もとでを貸してお呉んなさませと云うか」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それを、それを、あの、だって、大事にして見るんなら、まだ何ですけれども、賭博ばくちの目に、よもうッていうんですもの。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いずれ、やくざに相違ないと知って、出来合ってしまったところが、これが賭博ばくちうちと思っていたのに、東金とうがね無宿の長二郎という名代の泥棒——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
だから、基督も天国では「めとらず、かず」だと言つてゐる。天国のやうな結構づくめなところでは、結婚は賭博ばくちと一緒に御法度となつてゐるのだ。
「酔狂な真似をしたものですね。ひょっとしたら、この家はもと賭博ばくち打ちか何かが住んでいたのかも知れませんよ」
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
次第に重吉はすさんで行った。賭博ばくちをして、とうとう金鵄勲章を取りあげられた。それから人力俥夫じんりきしゃふになり、馬丁になり、しまいにルンペンにまで零落した。
人いきれと酒の香と、汗の匂いと髪の毛の匂い、ジャラジャラと音を立てるのは、公然おおっぴら賭博ばくちをするらしい。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ここを修繕して納まり返り、近郷近在の無頼漢を集めて御本堂で賭博ばくちを打たせ、寺銭てらせんを集めて威張っている。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
賭博ばくちの寺錢みたいなもんで、當り前やろが、日本ではお前、親の身代も子の身代もあれへん、一軒の身代や。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
二千兩は叔父の金ぢやなく、それも賭博ばくちの元手なんぞにする氣は毛頭ありやしません。親分、妹のこの樣子を見てやつて下さい。この乞食の子よりもおとつた樣子を
今でも猶だ其根性が失せないから大きな詐偽や賭博ばくち欺瞞いかさまをやつて実業家だと仰しやいますヮ……
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
が、わしは、それからにわかに、この世が味気なくなってしもうた。されば、酒も飲む、賭博ばくちも打つ。ついには、人に誘われて、まんまと強盗にさえ身をおとしたがな。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「朝っぱらから賭博ばくちでもしてるのかと思えば、この小さい人をつかめえて小言こごとを言っているのかい」
うぞ僕に言はせて下ださい、——一体僕の家は何で食つて居るんです、何で此様こんな贅沢ぜいたくが出来るんです、地代と利子と、賭博ばくちと泥棒とぢやありませんか——や、姉さん
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
お光さんは豊津とよつの女学校をやめて、家へ帰ったそうだ。またお光さんに縫ってもらった綿入れが小包で来るそうだ。大工だいく角三かくぞうが山で賭博ばくちを打って九十八円取られたそうだ。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御厩の長五郎という賭博ばくちの親分の家に、夜昼なしに入り浸っている上に、いい賭場が、開いているというと、五里十里もの遠方まで出かけて行くという有様で、賭博に身も心も
勝負事 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「なにこの野郎、賭博ばくちも打てば泥棒もした奴だ、こんな惡黨はこの村にや置けねえ」
泥の雨 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)
着古しの平常衣ふだんぎ一つ、何のたきかけの霊香れいきょう薫ずべきか、泣き寄りの親身しんみに一人のおととは、有っても無きにおと賭博ばくち好き酒好き、落魄おちぶれて相談相手になるべきならねば頼むは親切な雇婆やといばばばか
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
若い男 だけれど、イカサマ賭博ばくちをしたというから、どうもこれ仕方がねえさ。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
(自分は根本行輔の口からこの物語を聞いて居るので)昼間の職業しごとを終つて夕飯を済すと、いつも其処に行つて、娘の子の話やら、喧嘩の話やら、賭博ばくちの話やら、いろ/\くだらぬ話を為て
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
一は久さんのうちで、今一つは品川堀の側にあるみせであった。其店には賭博ばくちをうつと云う恐い眼をした大酒呑の五十余のおかみさんと、白粉を塗った若い女が居て、若い者がよく酒を飲んで居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
親父おやじはおれになんでも学校で一番強い人間になれというだろう、だからおれは喧嘩をした、活動を見ると人をったり賭博ばくちをしたりするのが侠客だという人だ、だからおれはそれをまねて見たんだ
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
みんな寒かろ、母御も無けりや、賭博ばくちうつよな父者ててじやもないか
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
賭博ばくちが大の上手じょうずですって」
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
まア寺男からおさんの子じゃア有るけれども眞達さんまでもわれえ事にそまりまして、それからおさん此の頃寺で賭博ばくちますと
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なかに一人、船に、賭博ばくちに、加之おまけいくさにも、女にも弱いやうな顔をした士官が、海の荒れ始めから、自分の船室ケビンへ潜り込んで一向影を見せないのがあつた。
ダンスでも賭博ばくちでも、あんたよりズット巧かったわ……それからもう一つ……お話がトテモ上手だったの。
支那米の袋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いいえ賭博ばくちは遣りません、賭博は感心に遣りませんが、それも何幾干いくらかありゃきっとはじめるんでさ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
京子が此處へ來たので、賭博ばくちを打つてゐた者共が驚いて逃げたのではあるまいか。——と道臣は考へて、雪洞ぼんぼりに暗を照らしつゝ、西の局から神饌所しんせんじよなぞを見て廻つた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
与力よりきの笹野新三郎を訪ねて訊くと、石原いしはら利助りすけは堂守殺しの下手人として、徳蔵稲荷の隣に住んでいる、やくざ者の仙吉せんきちを挙げたという話、これは賭博ばくちの元手に困って
というような声がれて来る。ははあ、賭博ばくちをやっているな! 賭博の一種、花合せを——
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
けれども村のものはみんな賭博ばくちをしてげられたと評判してゐる。田舎いなかでもうだから、東京にゐる御前なぞは、本当によく気を付けなくては不可いけないと云ふ訓戒がいてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その夢の記憶の中で、彼は支那人と賭博ばくちをしていた。支那人はみんな兵隊だった。
女郎買をるばかりではない、悪い山の猟師と墾意につて、賭博ばくちを打つ、喧嘩を為る、茶屋女を買ふ、またゝく間にその残つて居る田地をもこと/″\く人手に渡して、なほ其上に宅地と家屋敷を抵当に
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
賭博ばくちは打っても、卑怯ひきょうなことはするな。男らしくねえことはするな」
入れ札 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それらの大名と呼応したならば面白い賭博ばくちが打てるかもしれない
正雪の遺書 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
七日がすぎると土手の甚藏が賭博ばくちに負けて裸体ぱだかになり、寒いから犢鼻褌ふんどしの上に馬の腹掛を引掛ひっかけて妙ななりに成りまして、お賤の処へ参り
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今日持っていった賭博ばくち資金もとで各自めいめいに相違なく返し遣わすのみならず、賃銀は望みに任するであろう。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
可笑をかしいのは賭博ばくちが好きだつたからといつて、墓石はかいし骰子さいころの目まで盛つたのがあつた事だ。それを考へてせがれの右団次も亡父おやぢの墓を幽霊の姿にでも刻んだら面白からう。
ナニ、どうして? お寺で賭博ばくちがあったのだそうです。そうですか、それはどうも。いいえ、そうではありません、人殺しの凶状持きょうじょうもちが、あのお寺へ逃げ込んだのだそうです。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「滝三郎が入込んでから、誰もとがめ手がないのと、お袋が死んで少し自棄やけになったんでしょう。三文賭博ばくちを打つ元手のない時は、この辺の飲屋を門並かどなみ荒して歩いていますよ」
「ええ、賭博ばくちに負けたか、食えねえか、それほど金子かねほしくばな、盗賊どろぼうをしな、人を殺せ、けだものにむすめを売るとは、野郎本気の沙汰じゃねえ、どれ、性根を着けてやろうよ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
丁度その時、辮髪の支那兵たちは、物悲しく憂鬱な姿をしながら、地面に趺坐ふざして閑雅な支那の賭博ばくちをしていた。しがない日傭人ひようとりの兵隊たちは、戦争よりも飢餓を恐れて、獣のように悲しんでいた。
御光さんは豊津の女学校をやめて、うちへ帰つたさうだ。又御光さんに縫つて貰つた綿入が小包こづゝみるさうだ。大工の角三かくぞうが山で賭博ばくちを打つて九十八円取られたさうだ。——其顛末がくわしく書いてある。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
商売に出ても賭博ばくちが好きで道楽ばかりして、女房を置去り同様音も沙汰もしずに居ましたが、旅魚屋の仲間の者が帰って来て聞きましたら
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そこのくらがりで水を飲む柄杓ひしゃくの音がカラカラと聞こえたが、やがて又今度は音も立てずにヒッソリと渡殿を引返して、何やドッと笑い合う賭博ばくち連中のどよめきを他所よそ
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
五百両といへばなかなかの大金で、これだけあつたら女一人の霊魂たましひを買ふ事も出来るし、男の運を買ふ賭博ばくちをも打つ事が出来るのだ。それを知らない和尚でもない筈だ。
それはお前様、あのてあいと申しますものは、……まあ、海へ出て岸をばみまわして御覧ごろうじまし。いわの窪みはどこもかしこも、賭博ばくちつぼに、あわびふたかにの穴でない処は、皆意銭あないちのあとでござります。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これは賭博ばくちの元手に困つて、仁三郎の財布さいふを狙つたものと見たわけです。
乞食共のする砂利場の賭博ばくちでもながめてゐよう。
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)