ざん)” の例文
孔明は色をあらためて恐らくはこれ何か内官のざんに依るものではありませぬかと、突っこんでたずねた。帝は黙然たるままだったが
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あまりに昇進の早いのをねたむ同輩のためにざんせられて、山口藩和歌山藩等にお預けの身となったような境涯きょうがいをも踏んで来ている。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
〔評〕或ひと岩倉公幕を佐くとざんす。公薙髮ていはつして岩倉邸に蟄居ちつきよす。大橋愼藏しんざうけい三、玉松みさを、北島秀朝ひでとも等、公の志を知り、深く結納けつなふす。
その神経を亢奮こうふんさせその肉体を衰弱させ、そうして常にざんを構えては忠臣義士を追い退けないしは義明をして手討ちにさせた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
十年来、衛は南子夫人の乱行を中心に、絶えず紛争ふんそうを重ねていた。まず公叔戍こうしゅくじゅという者が南子排斥をくわだてかえってそのざんに遭って魯に亡命する。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
是以こゝをもつて君をはいして親王を立、国柄こくへいを一人の手ににぎらんとの密謀みつぼうあり 法皇ほふわうも是におうじ玉ふの風説ふうせつありとことばたくみざんしけり。時に 延喜帝御年十七なり。
盡さんと心懸しに却て小栗美作が爲にざんせられ終に永の暇を給はり其後未だ斯々かく/\して居るなりされども忠臣は二君に仕へずとの金言を守り一錢二錢の袖乞そでごひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
父がざんせられた後の母は計られない世が身にしみて空を行く渡り鳥の行末さえ案じ乍ら見送りました。
荘子 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
氏郷に毒を飼ったのは三成のざんに本づくと、蒲生家の者は記しているが、氏郷は下血を患ったと同じ人が記し、面は黄に黒く、項頸うなじかたわら、肉少く、目の下すこ浮腫ふしゅ
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かの戦国の時、楚の名士屈原がざんせられて放たるるや、「挙世皆濁れり、我独り清めり」と歎息し、江の浜にいたりて懐沙の賦を作り、石を抱いて汨羅べきらに投ぜんとした。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
尊氏の野心を早くも察せられたのは、建武中興に大功労のおはしました護良親王で、打倒尊氏を策せられたが、却つて尊氏のざんに遭ひ、鎌倉に流され幽閉され給ふに至つた。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
それから、監察御史かんさつぎょし起居舎人ききょしゃじん知制誥ちせいこうを経て、とんとん拍子に中書門下ちゅうしょもんか平章事へいしょうじになりましたが、ざんを受けてあぶなく殺される所をやっと助かって、驩州かんしゅうへ流される事になりました。
黄粱夢 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いつも我生処種姓形色力勢皆師子に勝る我日々好美食を得師子わが後を逐うて残肉を食うと言うと、それから虎にもかように告げて師子をざんす、後二獣一処に集まり眼をいからして相視る
はじめお村をざんししお春は、素知らぬ顔にもてなしつゝ此家このやに勤め続けたり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼はまた従来金には淡白なる武男が、三千金のために、——たとい偽印の事はありとも——法外に怒れるを怪しみて、浪子がふるき事まで取りでてわれを武男にざんしたるにあらずやと疑いつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
人をざんすべからず、まさしく国法を守りて彼我ひが同等の大義に従うべし。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
実はそれなる老職がまえからくだんの妻女に年がいもなく懸想していたためで、まずその目的を果たすためには浪人させる必要があるというところから、君侯にざんを構えてまんまと江戸に追いたて
彼女の袂へ忍ばすなどの腐心ふしんまでこころみたが、ついには彼女の良人高貞を亡き者とするにかずと考え、将軍家にざんして、討手を向け
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
是以こゝをもつて君をはいして親王を立、国柄こくへいを一人の手ににぎらんとの密謀みつぼうあり 法皇ほふわうも是におうじ玉ふの風説ふうせつありとことばたくみざんしけり。時に 延喜帝御年十七なり。
国境に至りて大いに戦い、敵国をして降を乞わしむ。皇帝喜び賞を与え僧を少林寺に帰さんとす。隆文耀りゅうもんよう張近秋ちょうきんしゅう、二人の大官皇帝にざんし、少林寺の僧を殺さしむ。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
が、昨夜、夜更けの庭に耳にした咳払の主が、主君に自分たちをざんしたのではあるまいかという微かな懸念は持っていた。彼は常よりも更に粛然として、主君の前に頭を下げた。
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
てらし給はぬにや國にては惡人あくにん小栗美作をぐりみまさかが爲にざんせられ終に浪人らうにんしてかく零落れいらく困窮こんきうに及び其上にも此度斯る無實むじつの難にあふ事はよく/\武運ぶうん盡果つきはてたりしか夫に付てもうらめしきは新藤市之丞殿が當時の名前并びに町所等ちやうどころとう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「それこそ、それがしのことを、つねに司馬懿にざんしている秦朗しんろうでしょう。司馬懿にいいつけられて、追手に来たものでございましょう」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(同月七日従二位にすゝみ玉へり)此密事みつじいかにしてか時平公のきゝにふれしかば、事にさきんじて 帝にざんするやうは、君の御弟斉世ときよ親王は道真みちざねむすめ室適しつてきして寵遇ちようぐうあつし。
けれどそういう幸福には、きっとわざわいがつきやすいもので、一人の恋仇が現われました。あの丑松でございます。丑松は父にざんをかまえ、観世様を地の底の、造船工場へ追いやりました。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
老公は由来、幕府からまれておいでになる。老公の御事業おんじぎょうは、反幕的のゆうなるものと、幕府の学者はみな口をそろえて、将軍家へざんしている。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(同月七日従二位にすゝみ玉へり)此密事みつじいかにしてか時平公のきゝにふれしかば、事にさきんじて 帝にざんするやうは、君の御弟斉世ときよ親王は道真みちざねむすめ室適しつてきして寵遇ちようぐうあつし。
親藩しんぱんの、しかも副将軍たるひとを、ざんするなど、むずかしいとも思えるが、直接、声をひそめるには及ばないのである。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右にいふ兄弟の父岩城判官いはきはんぐわん正氏まさうぢ在京ざいきやうの時ざんにあひて家の亡びたるは永保年中の事なり、今をさる事およそ七百五十余年也。兄弟の怨魂ゑんこん今に消滅せうめつせざる事人知じんちを以論ずべからず。
「では、女奏にょそうざんを用いて、宮を初雪見参の夜に、おとしいれたのは誰ですか。兄者、あなたの計ではないか」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右にいふ兄弟の父岩城判官いはきはんぐわん正氏まさうぢ在京ざいきやうの時ざんにあひて家の亡びたるは永保年中の事なり、今をさる事およそ七百五十余年也。兄弟の怨魂ゑんこん今に消滅せうめつせざる事人知じんちを以論ずべからず。
いなとよ君。それは常識の解釈というもの。よく忠臣の言を入れ、奸臣かんしんざんをみやぶるほどなご主君なら、こんな大敗は求めない。おそらく田豊の死は近きにあろう」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諫言をすすめて、主君に容れられず、政務に忠ならんとして、朋人にざんせられ、職を退いて、野に流れ住むこと三年になるが、何とて、故主の恩を忘れ得ましょうや。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、一蹴したので、十常侍たちはこもごもに、天子にざんしたので、帝はたちまち、朱雋、皇甫嵩のふたりの官職を剥いで、それに代るに、趙忠ちょうちゅうを車騎将軍に任命した。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、准后の廉子やすこが、てもなく、尊氏方へ廻って、大塔追放のざんに、大きな役割をつとめたなどは、むしろ彼女自身の凱歌としたところなので、これなどもよくわかる。
ただいえることは「これも尊氏が女奏のざんに始まったことだ」という恨みだけなのである。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「村重様の戦功せんこうと、ご出世をそねんで、明智日向守様が、ひそかに信長公へざんしたのがもとだとか。いや、毛利家の方から手を廻して、非常な恩賞を約して誘いこんだものとか」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それもこれも、ただ朝家のお為と、たくさんな人命の犠牲にえを惜しむばかりに申したことで、決して、尊氏をおそれ、左中将殿にお恨みがあって、ざんしたわけなどではありませぬ」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こっちのすねにもキズはある。まず高時の耳へざんささやくにも春の日永のことでいい。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敗れて漢中にはしり、張魯のため、よい道具につかわれたあげく、一族の楊松などにざんせられ、腹背に禍いをうけ、名もなき暴戦をして、可惜あたら、有為の身を意義もなく捨て果てようとは。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は黄匪討伐の征野からざんせられて、檻車かんしゃで都へ送られ、一度は軍の裁廷で罪を宣せられたが、後、彼を陥し入れた左豊さほうの失脚とともに、ゆるされて再び中郎将の原職に復していたのである。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冷泉家や斎宮いつきのみやなどをとおして、それとなくとうの大敵、大塔ノ宮を陥れるざんを植えてゆき、道誉もそれにあわせて、馴じみの武器商人や公卿貴紳きしんのあいだに、巧妙な流言るげんをまいていたのだった。
楊修のうしろだてがあったので長男の曹丕そうひよりは、何事にまれすぐれて見えたが、やがて自分こそ、当然、太子たらんとしている曹丕は、心中大いに面白くなく、事ごとに楊修を父にざんしていた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
したがって、宋江の就いていた押司おうしの職なども、重要なだけに、ちょっとした私意や違法の間違いを犯すと、ざんに会って、すぐ流罪るざいだの家産没取のやくにあい、その連累れんるいは、一族にまでおよぶ有様。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おまちがいですっ。……何者かの、ざんに相違ございませぬ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)