おぼえ)” の例文
新字:
もし(いゝやわることをしたおぼえもないから、那樣そんな氣遣きづかひちつともい。)とうありや、なん雨風あめかぜござらばござれぢや。なあ那樣そんなものではあるまいか。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ながめてゐるが此身のくすりで有ぞかしと言を忠兵衞押返おしかへは若旦那のお言葉ともおぼえずおにはと雖も廣くもあらずましてや書物にこゝろ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
されど我今默し難し、讀者よ、この喜劇コメディアの詞によりて(願はくは世のおぼえながく盡きざれ)誓ひていはむ 一二七—一二九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
貴殿あなた何處どこ御出身ごしゆつしんですか』と突然とつぜん高等商業かうとうしやうげふ出身しゆつしんなにがしいまある會社くわいしや重役ぢゆうやくおぼえ目出度めでた一人ひとりをとこ小介川文學士こすけがはぶんがくしとなりすわつて新來しんらいきやくひかけた。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
貴方あなたひとたいしてまないことをしたおぼえがある。そのつみたゝつてゐるから、子供こどもけつしてそだたない」とつた。御米およねこの一言いちげん心臟しんざう射拔いぬかれるおもひがあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
やなぎまゆかすかにうごいて、そつとわたくしむかひ『なにかやつてませうか。』といふのはうでおぼえのあるのであらう
二十三年の今まで絶えておぼえなき異樣の感情くもの如く湧き出でて、例へばなぎさを閉ぢし池の氷の春風はるかぜけたらんが如く、若しくは滿身の力をはりつめし手足てあし節々ふし/″\一時にゆるみしが如く
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
ほんに承はれば兼がわるう御座升だが孃樣御結婚はなさらず共御心に替りなくば、お嬉しう御座ませう靜夫樣も決て貴女をおわすれは、これおぼえがお有でせうと取出す手箱の内にほわせし白ばら一輪
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
「金は盜つたが、主人を殺したおぼえは無いと言ふのか」
しづめ夫は年の頃はいくつ位に候や我が村中に彌太八といふ者なければ我頼みしおぼえなしさつする所前日の惡者の仲間を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「いやおとゝなどをつてゐると、隨分ずゐぶん厄介やくかいなものですよ。わたくし一人ひとりやくざなのを世話せわをしたおぼえがありますがね」とつて、自分じぶんおとうと大學だいがくにゐるときかねかゝつたことなど
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『世を隔てたる此庵このいほは、夜陰やいんに訪はるゝおぼえなし、恐らく門違かどちがひにても候はんか』。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
おぼえのこつてゐるのに——あとわたしたちもいたうたしるしてある。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おぼえさせまた金者かなもの相針あひばりはいくらにあかゞねつぶしにして何程といふ相場をきゝ一々手覺ておぼえに書留かきとめさせて歸りしが夫より長八夫婦は店住たなすまひとなり翌日よりかごかつぎ紙屑かみくづ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
自分じぶんくだしたおぼえがないにせよ、かんがやうによつては、自分じぶんせいあたへたもののせいうばふために、暗闇くらやみ明海あかるみ途中とちゆうけて、これを絞殺かうさつしたとおなことであつたからである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)