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蜿蜒
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えんえん
ふりがな文庫
“
蜿蜒
(
えんえん
)” の例文
削り落しやすい火山岩であるとはいえ、川を圧して聳え立つ
蜿蜒
(
えんえん
)
たる大絶壁を、市九郎は、己一人の力で掘貫こうとするのであった。
恩讐の彼方に
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
甲府を見れば、東に
蜿蜒
(
えんえん
)
として走る大道——いわゆる甲州街道、門柱としての笹子、大菩薩の
嶺々
(
みねみね
)
を見ないわけにはゆきますまい——
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
すなわち魏の
孫礼
(
そんれい
)
は、
兵糧
(
ひょうろう
)
を満載したように見せかけた車輛を何千となく連れて、
祁山
(
きざん
)
の西にあたる山岳地帯を
蜿蜒
(
えんえん
)
と行軍していた。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
古戦場の
土城廊
(
トソンラン
)
は程遠くない所に
蜿蜒
(
えんえん
)
と連なっていた。傾斜には棒切れや藁屑等で蔽われた
土幕
(
ウム
)
小屋が這うように一杯詰っている。
土城廊
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
ジッグザッグがあり、S字型、C字型、U字型等々さまざまの曲線が無限の変化を見せて谷に面し山頂に沿って
蜿蜒
(
えんえん
)
として走り続ける。
白妖
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
▼ もっと見る
ファランドルのように何度も繰り返し引きつづく
律動
(
リズム
)
をもって、
蜿蜒
(
えんえん
)
とつづいてる険しい小山を、曲がりくねって降りてゆく列車。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ともかくその音のするところまで行こうと左手の道へ走り込んだが、そこの道の端はまた三叉に分れて
蜿蜒
(
えんえん
)
闇の奥につづいている。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
東京で描いていたイメージイが愚にもつかなかったと思えて、私はシャンと首をあげると、灰色に
蜿蜒
(
えんえん
)
と続いた山壁を見上げた。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
なるほど万里の長城のごとくに
蜿蜒
(
えんえん
)
として、見事な
混凝土
(
コンクリート
)
の
溝渠
(
インクライン
)
が走っている。
彼方
(
かなた
)
の丘に見え隠れして、時々車窓近くに並行してくる。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
或る時は瑠璃光丸が、遥かな都の空を望んで、絵図をひろげたような平原に、
蜿蜒
(
えんえん
)
と連なって居る王城の
甍
(
いらか
)
をさし示しながら
二人の稚児
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
蜿蜒
(
えんえん
)
とつらなる行進の列は、演壇の下を通過するとき、数百の顔々を一斉に演壇へ向けて、ウラーを叫んだ。広場には行進曲が響いている。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
更にすすめば
大別山
(
だいべつざん
)
の高峰眼下にあり、
麓
(
ふもと
)
には水漫々の月湖ひろがり、更に北方には漢水
蜿蜒
(
えんえん
)
と天際に流れ、東洋のヴェニス一
眸
(
ぼう
)
の中に収り
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
古焼
新焼
(
しんやけ
)
と相
聯繋
(
れんけい
)
して、左右の濃い
蒼翠
(
そうすい
)
の間を
蜿蜒
(
えんえん
)
として
爬行
(
はこう
)
し、さながらそこに
巨巌
(
きょがん
)
の行進曲を奏でている
様
(
よう
)
に見える。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
実際北海道の奥地へ行って、荒涼たる吹雪の原野の中に立って見渡すと、細い鉄道線路が雪の中を
蜿蜒
(
えんえん
)
と、息も絶え絶えに続いているように見える。
凍上の話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
この山脈が湖面に浮んで居る有様はちょうど大龍が
蜿蜒
(
えんえん
)
として碧空に
蟠
(
わだか
)
まるというような有様で実に素晴らしい。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
普魯西兵の列は、
蜿蜒
(
えんえん
)
として、果てしもなく続いた。どれを見てもみな同じように、例の普魯西の兵隊独特の操り人形よろしくと云った恰好をして歩いている。
狂女
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
汽車は鉄橋にかかり、
常盤橋
(
ときわばし
)
が見えて来た。
焼爛
(
やけただ
)
れた岸をめぐって、黒焦の巨木は天を
引掻
(
ひっか
)
こうとしているし、
涯
(
は
)
てしもない燃えがらの
塊
(
かたまり
)
は
蜿蜒
(
えんえん
)
と起伏している。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
宇宙墓地の方に向って、
蜿蜒
(
えんえん
)
と続いて流れ込んでいく
夥
(
おびただ
)
しい棺桶の列と家具の流れ。そのあとにぽつんぽつんと、落葉のように身体を曲げながら人間が続いていく。
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
浜にくだける
浪
(
なみ
)
の音がざあッとひびいた、それが
蜿蜒
(
えんえん
)
とした海岸のかなたまで、次々に、逆立ち、崩れ、消えて行くのが、なぜか
漂渺
(
ひょうびょう
)
と、目に見えるようであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
中川は
四十九曲
(
しじゅうくまが
)
りといわれるほど
蜿蜒
(
えんえん
)
屈曲して流れる川で、西袋は丁度西の方、即ち江戸の方面へ屈曲し込んで、それからまた東の方へ転じながら南へ行くところで
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
左手には溪の向こうを夜空を
劃
(
くぎ
)
って
爬虫
(
はちゅう
)
の背のような尾根が
蜿蜒
(
えんえん
)
と
匍
(
は
)
っている。黒ぐろとした杉林がパノラマのように
廻
(
めぐ
)
って私の行手を深い闇で包んでしまっている。
闇の絵巻
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
群集は尚
蜿蜒
(
えんえん
)
と国道を流れていた。麦畑に休んでいるのは数百人で、蜿蜒たる国道の群集にくらべれば物の数ではないのであった。麦畑のつづきに雑木林の丘があった。
白痴
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
人物と山と同じくらいな大きさに
描
(
えが
)
かれている間を、一筋の
金泥
(
きんでい
)
が
蜿蜒
(
えんえん
)
と
縁
(
ふち
)
まで
這上
(
はいあが
)
る。形は
甕
(
かめ
)
のごとく、
鉢
(
はち
)
が開いて、開いた
頂
(
いただき
)
が、がっくりと縮まると、丸い
縁
(
ふち
)
になる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「おれは植木の医者の方が上手かも知れない。
蟠竜
(
はんりょう
)
というのはこんなのだろう。これを見ると深山の
断崖
(
だんがい
)
から、
千仞
(
せんじん
)
の谷に
蜿蜒
(
えんえん
)
としている
老松
(
おいまつ
)
を思い出すよ」と
仰
(
おっ
)
しゃるので
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
町の向うのすぐ近くには、赤い禿山が
蜿蜒
(
えんえん
)
と連らなっているのでございました——
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
悠々、空を埋める恒星の大群、
蜿蜒
(
えんえん
)
、天を貫く銀河の長流は、宇宙外の宇宙、超銀河系の星雲まで加えて、われらの葉尖きを、
灼
(
や
)
き
爛
(
ただ
)
らさんばかり、火花を散らして、
軋
(
きし
)
りめぐる……。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
単にその首だけが脱出
蜿蜒
(
えんえん
)
して、何ものかを舐めたるが如く推断されたるは、夢、もしくは、夢中遊行の真相を
識
(
し
)
らざるがために
附会
(
ふかい
)
したる一個の想像にして、実は本人が夢中遊行中
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
いずれも
蜿蜒
(
えんえん
)
として四里以上にわたっている、東のものは恋岐沢と只見川と白沢に断たれている、西南は上州の水長沢山をなしている、南は上野、越後の堺をなして白沢山となっている
平ヶ岳登攀記
(新字新仮名)
/
高頭仁兵衛
(著)
新橋停車場
(
しんばしステエション
)
の大時計は四時を
過
(
すぐ
)
ること二分
余
(
よ
)
、東海道行の列車は既に客車の
扉
(
とびら
)
を
鎖
(
さ
)
して、機関車に
烟
(
けふり
)
を
噴
(
ふか
)
せつつ、三十
余輛
(
よりよう
)
を
聯
(
つら
)
ねて
蜿蜒
(
えんえん
)
として
横
(
よこた
)
はりたるが、
真承
(
まうけ
)
の秋の日影に
夕栄
(
ゆふばえ
)
して
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
石の
剣
(
つるぎ
)
の大嶺が、半円形にえぐられて、
蜿蜒
(
えんえん
)
として我が日本南アルプスの大王、
北岳
(
きただけ
)
に肉迫している、その北岳は、大岩塊が三個ばかりくッついて、その中の二塊は、楕円形をしているが
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
蜿蜒
(
えんえん
)
のびている
涯
(
はて
)
しもない砂丘に立って、うちわたす大海原を見たとき、秀之進はまるで眼がさめたような気持がした。——大きいな、そう思った。そういうほかに形容のしようがなかった。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
足の小さい年老いた女がおぼつかなく歩いていく。楊樹を透かして向こうに、広い荒漠たる野が見える。褐色した丘陵の連続が指さされる。その向こうには紫色がかった高い山が
蜿蜒
(
えんえん
)
としている。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
それは層々纍々と盛上って、明るい西空(既に大分夕方に近くなっていた)に高く向い合い、東の
方
(
かた
)
数
哩
(
マイル
)
の
谿
(
たに
)
から野にかけて
蜿蜒
(
えんえん
)
と拡がる其の影の
巨
(
おお
)
きさ! 誠に、何とも
豪宕
(
ごうとう
)
な観ものであった。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
これには、富有なケルミッシュが全資産を注ぎこみ、いよいよ準備成った翌年の三月、
蜿蜒
(
えんえん
)
の車輛をつらねる探検隊が
察緬
(
リーミエン
)
をでた。そこから
大理
(
タリ
)
、大理から
麗江
(
リーキヤン
)
、じつにそこが
西域夷蛮地帯
(
シフアン・テリトリー
)
の裾だ。
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
八五郎の話は、
日向
(
ひなた
)
の縁側に腰を
卸
(
おろ
)
して、
蜿蜒
(
えんえん
)
とつづきます。日本橋に逆立ちする娘の話がこんなにまでもつづくのです。明神様から遅れた桜の花が落ちて、うらうらとして、どこかで鴬も
啼
(
な
)
きます。
銭形平次捕物控:376 橋の上の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
壁にはルノアールの
偽
(
にせ
)
もの
蜿蜒
(
えんえん
)
の画がかかっていた。
飛行機から墜ちるまで
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
行市
(
ぎょういち
)
山から中尾本陣までの軍用路は、幅二間の新道で、
蜿蜒
(
えんえん
)
二里余、ほとんど嶺の上を縫っていた。折ふし満目、深山の春である。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
続いて笹付の青竹に
旗幟
(
はたのぼり
)
の幾流が続々と繰り出されて来る、村から停車場へと行くこの道は、早くも
蜿蜒
(
えんえん
)
たる行列が
曳
(
ひ
)
き栄えられて来た。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ある会があって、お濠端の前の建物のバルコンから、その下に
蜿蜒
(
えんえん
)
と進行する灯の行列を眺め「勝たずば生きてかえらじと」の節の楽隊をきいた。
祭日ならざる日々:日本女性の覚悟
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その形は、天井が多少アーチ型で、底は平らになり、鉄道のトンネルのようにどこまでも
蜿蜒
(
えんえん
)
とつづいているから、それで熔岩隧道というのである。
地底獣国
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その流れが
蜿蜒
(
えんえん
)
三十町に及んでいるというので、私はその凄まじい、まだ生々しい熔岩流の状態を見たいのであった。
雲仙岳
(新字新仮名)
/
菊池幽芳
(著)
厚い
混凝土
(
コンクリート
)
の
溝渠
(
インクライン
)
が、二十五度ぐらいの傾斜を帯びて、
眼路
(
めじ
)
も遥かに
霞
(
かす
)
んで、
蜿蜒
(
えんえん
)
とうねうねとして、四里先の大野木村まで続いていると聞いては
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
本町通りと云えば京城では一番繁華な内地人町(日本人町)で、それは
蜿蜒
(
えんえん
)
と東西に細長く連なっている。
天馬
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
千仞
(
せんじん
)
の雪峰より
蛟龍
(
こうりゅう
)
が跳って岩下に飛び降るかのごとき趣がある。あるいはまた徐々と布を引いたように落つる滝もあり
蜿蜒
(
えんえん
)
として白旗の流れて居るようなのもある。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
川の水は、辛うじてここに辿りついたこれらの人間が、あんなに困苦して
穿
(
うが
)
った路とは反対に、
淙々
(
そうそう
)
と自分の路を流れて行った。やがて
蜿蜒
(
えんえん
)
としたイシカリ川に合するのであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
葡萄
(
えび
)
色に
赭
(
あか
)
ッちゃけて、もう心もち西へ廻った日光が、斜にその上を漂っている、西の方遥かに
白峰
(
しらね
)
、赤石、駒ヶ岳、さては飛騨山脈が、プラチナの大鎖を空間に繋いだように、
蜿蜒
(
えんえん
)
として
雪中富士登山記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
試みに彼に向って自由なる精神生活とはどんな生活かと問えば、
端的
(
たんてき
)
にこんなものだとはけっして答えない。ただ立派な言葉を秩序よく並べ立てる。むずかしそうな
理窟
(
りくつ
)
を
蜿蜒
(
えんえん
)
と
幾重
(
いくえ
)
にも重ねて行く。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
蜿蜒
(
えんえん
)
たる
寨柵
(
さいさく
)
を結いまわし、小船はすべて内において交通、連絡の便りとし、大船は寨外に船列を布かせて、一大船陣を常備に張った。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蜿蜒
(
えんえん
)
として小仏へ走る一線と、どこから来てどこへ行くともない
小径
(
こみち
)
と、そこで十字形をなしている地蔵辻は、高尾と小仏との間の
大平
(
おおだいら
)
です。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
蜿蜒
(
えんえん
)
としてよこたわる中産階級の崩壊の過程と人間変革のテーマを扱う能力は文学的にないし、人間的にない。
心に疼く欲求がある
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
“蜿蜒”の意味
《名詞》
蛇のようなものがうねうねと進むこと。また、そのようなさま。
うねうねと長く続くこと。また、そのようなさま。
(出典:Wiktionary)
蜿
漢検1級
部首:⾍
14画
蜒
漢検1級
部首:⾍
13画
“蜿蜒”で始まる語句
蜿蜒裊娜