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蜘蛛手
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くもで
ふりがな文庫
“
蜘蛛手
(
くもで
)” の例文
見上ぐる山の
巌膚
(
いわはだ
)
から、清水は雨に
滴
(
したた
)
って、底知れぬ谷暗く、風は
梢
(
こずえ
)
に渡りつつ、水は
蜘蛛手
(
くもで
)
に
岨
(
そば
)
を走って、駕籠は縦になって、雲を仰ぐ。
栃の実
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのこちら側には願人坊主の講元があるといったような、士、工、商、雑居の吹き寄せ町で、そのごちゃごちゃと
蜘蛛手
(
くもで
)
に張られた横路地を
右門捕物帖:15 京人形大尽
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
蜘蛛手
(
くもで
)
に延びている無数の廊下! 廊下の左右には室の扉がズラリと一列に並んでいた。私は室の扉を叩いて見た。誰も中から返辞をしない。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そしていきなり、脇差を抜き、片手にふるって、
蜘蛛手
(
くもで
)
に張り廻した
帆綱
(
ほづな
)
帆車
(
ほぐるま
)
、風をはらみきった十四反帆! ばらばらズタズタ斬り払った。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この広い
倫敦
(
ロンドン
)
を
蜘蛛手
(
くもで
)
十字に往来する汽車も馬車も電気鉄道も鋼条鉄道も余には何らの便宜をも与える事が出来なかった。
倫敦塔
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
歳暮
(
せいぼ
)
大売出しの楽隊の音、目まぐるしい
仁丹
(
じんたん
)
の広告電燈、クリスマスを祝う杉の葉の
飾
(
かざり
)
、
蜘蛛手
(
くもで
)
に張った万国国旗、
飾窓
(
かざりまど
)
の中のサンタ・クロス
葱
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その上
祥雲寺
(
しょううんじ
)
門前からここまで、
蜘蛛手
(
くもで
)
の細い路地を拾ってあんな具合に飛んで来るのは、『千里の虎』でなきゃア
梟
(
ふくろ
)
だ
銭形平次捕物控:042 庚申横町
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ほら、花火だよ、
綺麗
(
きれい
)
だねえ……」みんなの眺めている空の一角に、ときどき目のさめるような美しい光が
蜘蛛手
(
くもで
)
にぱあっと
弾
(
はじ
)
けては、又ぱあっと消えてゆくのを見ながら
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
記者はこうして、九月初めから十月
半
(
なかば
)
までの東京市中を、縦横むじんにあるきまわった。
蜘蛛手
(
くもで
)
掻く縄十文字に見てまわった。用事の
隙々
(
ひまひま
)
や電車待つ
間
(
ま
)
にはスケッチも試みた。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
舞台の上方、
一文字幕
(
いちもんじまく
)
の
蔭
(
かげ
)
には、
蜘蛛手
(
くもで
)
になって、あらゆるからくり仕掛けが張りめぐらしてある。
浅黄幕
(
あさぎまく
)
の太い
竹竿
(
たけざお
)
、照明の電球を取りつけた
棚
(
たな
)
、本雨の水道管、紙の雪を降らせる
籠
(
かご
)
。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
電線
(
はりがね
)
の
蜘蛛手
(
くもで
)
の上の
二十日
(
はつか
)
の月あはれなるかも片時雨して
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「どうして、ここらの道は
蜘蛛手
(
くもで
)
になっていて、迷い込んだがさいご、皆目、出道のわからぬ何とかの
藪
(
やぶ
)
知らずも同然だ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その上
祥雲寺
(
しやううんじ
)
門前から此處まで、
蜘蛛手
(
くもで
)
の細い路地を拾つてあんな具合に飛んで來るのは、『千里の虎』で無きア
梟
(
ふくろ
)
だ
銭形平次捕物控:042 庚申横町
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
絶えず続いて、
音色
(
ねいろ
)
は替っても、
囃子
(
はやし
)
は留まらず、
行交
(
ゆきか
)
う船脚は水に流れ、
蜘蛛手
(
くもで
)
に、
角
(
つの
)
ぐむ
蘆
(
あし
)
の根を
潜
(
くぐ
)
って、消えるかとすれば、ふわふわと浮く。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「小癪な!」とかわした宗三郎、左手を放すと右の手で、大きく廻して横なぐり、きまれば円明の
蜘蛛手
(
くもで
)
となる。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
其処には丁度赤と青との花火が、
蜘蛛手
(
くもで
)
に闇を
弾
(
はじ
)
きながら、
将
(
まさ
)
に消えようとする所であつた。明子には何故かその花火が、殆悲しい気を起させる程それ程美しく思はれた。
舞踏会
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
周馬は先に、その一挺の駕へ寄り、お千絵の体を
垂
(
た
)
れの中へはねこんだ。そして、手早く
細曳
(
ほそびき
)
を引ッぱずして、駕のまわりを
蜘蛛手
(
くもで
)
にかがりだす。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大掃除
(
おほさうぢ
)
の
時
(
とき
)
に、
床板
(
ゆかいた
)
を
剥
(
はが
)
すと、
下
(
した
)
は
水溜
(
みづたまり
)
に
成
(
な
)
つて
居
(
ゐ
)
て、
溢
(
あふ
)
れたのがちよろ/\と
蜘蛛手
(
くもで
)
に
走
(
はし
)
つたのだから
可恐
(
おそろし
)
い。
此
(
こ
)
の
邸
(
やしき
)
……いや
此
(
こ
)
の
座敷
(
ざしき
)
へ
茸
(
きのこ
)
が
出
(
で
)
た。
くさびら
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
蜘蛛手
(
くもで
)
のように織られていたが、それの一つへ投げ込まれたが最後、死人であろうと、怪我人であろうと、犬や猫のように扱われて、死人は下手人も探されず、そのままどこかへ片寄せられ
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と続いて
揮
(
ふ
)
り込んで来た前後左右の乱刀をも、しばらくバラバラと
蜘蛛手
(
くもで
)
に受け払っていたが、すッくと岩から立ち上がるが早いか、手当り次第に帯
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
死んだは、
活
(
い
)
きたは、本宅の主人へ電報を、と
蜘蛛手
(
くもで
)
に座敷へ散り乱れるのを、騒ぐまい、騒ぐまい。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蜘蛛手
(
くもで
)
に造られてある廊下の諸所で、人獣争闘が行われた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
万事休
(
ばんじきゅう
)
す——伊那丸は完全に、
蜘蛛手
(
くもで
)
かがりという
野武士
(
のぶし
)
の術中におちてしまったのだ。身に
翼
(
つばさ
)
でもないかぎりは、この
罠
(
わな
)
からのがれることはできない。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
此處
(
こゝ
)
の
森
(
もり
)
敢
(
あへ
)
て
深
(
ふか
)
しといふにはあらねど、おしまはし、
周圍
(
しうゐ
)
を
樹林
(
きばやし
)
にて
取卷
(
とりま
)
きたれば、
不動坂
(
ふどうざか
)
、
團子坂
(
だんござか
)
、
巣鴨
(
すがも
)
などに
縱横
(
たてよこ
)
に
通
(
つう
)
ずる
蜘蛛手
(
くもで
)
の
路
(
みち
)
は、
恰
(
あたか
)
も
黄昏
(
たそがれ
)
に
樹深
(
こぶか
)
き
山路
(
やまぢ
)
を
辿
(
たど
)
るが
如
(
ごと
)
し。
森の紫陽花
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
がしかし、いまは何をいってる
暇
(
いとま
)
もありません。
蔡
(
さい
)
大臣の厳命から
北京
(
ほっけい
)
大名府の手配まで、
蜘蛛手
(
くもで
)
に行き渡っているといいます。なんとて、
遁
(
のが
)
れえましょうや
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
線路へ出て、ずっと見ると、一面の浜田がどことなく、ゆさゆさ動いて、
稲穂
(
いなぼ
)
の分れ伏した処は幾ヶ所ともなしに
細流
(
せせらぎ
)
が
蜘蛛手
(
くもで
)
に走る。二三枚空が映って、田の白いのは
被
(
かぶ
)
ったらしい。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
既に今も、新九郎の一命を乗せて、怖ろしい
蜘蛛手
(
くもで
)
かがりの駕は、
冥府
(
めいふ
)
の門へ息杖を振り込んで行く——
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
屈竟
(
くつきやう
)
なる
壯佼
(
わかもの
)
具
(
ぐ
)
したるが、
車
(
くるま
)
の
輪
(
わ
)
も
緩
(
ゆる
)
やかに、
彼
(
か
)
の
蜘蛛手
(
くもで
)
の
森
(
もり
)
の
下道
(
したみち
)
を、
訪
(
と
)
ふ
人
(
ひと
)
の
家
(
いへ
)
を
尋
(
たづ
)
ね
惱
(
なや
)
みつと
覺
(
おぼ
)
しく、
此處
(
こゝ
)
彼處
(
かしこ
)
、
紫陽花
(
あぢさゐ
)
咲
(
さ
)
けりと
見
(
み
)
る
處
(
ところ
)
、
必
(
かなら
)
ず、
一時
(
ひととき
)
ばかりの
間
(
あひだ
)
に
六度
(
むたび
)
七度
(
なゝたび
)
出
(
い
)
であひぬ。
森の紫陽花
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
とたんに、もんどり打ッたのは、
蜘蛛手
(
くもで
)
に張ってあった
罠
(
わな
)
の一
条
(
すじ
)
に足もとをすくわれたものらしい。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……梢の風は、雨の如く
下闇
(
したやみ
)
の草の
径
(
こみち
)
を、清水が音を立てて
蜘蛛手
(
くもで
)
に走る。
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
蜘
漢検準1級
部首:⾍
14画
蛛
漢検準1級
部首:⾍
12画
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
“蜘蛛手”で始まる語句
蜘蛛手形
蜘蛛手縢