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葛籠
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つづら
ふりがな文庫
“
葛籠
(
つづら
)” の例文
燈心に花が咲いて薄暗くなった、
橙黄色
(
だいだいいろ
)
の火が、
黎明
(
しののめ
)
の窓の明りと、等分に部屋を領している。夜具はもう夜具
葛籠
(
つづら
)
にしまってある。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
その時細君が取り出して来たいくつかの
葛籠
(
つづら
)
を開けたら、種々反古やら、書き掛けたものやらが、部屋中一杯になるほど出て来た。
北村透谷の短き一生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
狭い家の中一パイに取散らかして、置舞台の上には、風呂敷包が二つ、
葛籠
(
つづら
)
が一つ、引越しの手伝いを待つ風情に置いてあるのでした。
銭形平次捕物控:026 綾吉殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
古い小袖を元のやうに古い
葛籠
(
つづら
)
にしまひ終つた家人は片隅から一冊
宛
(
づつ
)
古い書物を倉の
中
(
なか
)
へと運んでゐる。自分は又来年の虫干を待たう。
虫干
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
六兵衛とは
家扶
(
かふ
)
和田六兵衛のことで、支度というのを見ると釣竿らしい長い包のほかに、小さな
葛籠
(
つづら
)
ほどもある風呂敷包が二つもあった。
半之助祝言
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
仏壇の
抽斗
(
ひきだし
)
に百両、ボロ
葛籠
(
つづら
)
の底から百両、あわせて二百両だけは見付け出しましたが、残りの四百両の隠し場所がわからない。
半七捕物帳:55 かむろ蛇
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「
吝
(
けち
)
なことをお言いなさんな、お民さん、
阿母
(
おふくろ
)
は
行火
(
あんか
)
だというのに、押入には
葛籠
(
つづら
)
へ入って、まだ
蚊帳
(
かや
)
があるという騒ぎだ。」
女客
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
さうしてまた、お鈴さんに連れられて、もとの小綺麗な茶の間にかへると、そこには、大小さまざまの
葛籠
(
つづら
)
が並べられてある。
お伽草紙
(旧字旧仮名)
/
太宰治
(著)
そんならばことによると、自分が持って来た品物の中に、あの書付が残っているかも知れぬ。お絹は
葛籠
(
つづら
)
をあけて証文箱を取り出しました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と、大通りの勢いのよい人たちに突きのめされながら、薄いきもの一枚で、
葛籠
(
つづら
)
を肩にした青い少年がフラフラと現われた。
旧聞日本橋:07 テンコツさん一家
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
その身は東海道を下り、写本は
葛籠
(
つづら
)
に納めて大回しの船に積み
出
(
い
)
だせしが、不幸なるかな、遠州
洋
(
なだ
)
において難船に及びたり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
丑年
(
うしどし
)
の母親は、しまいそうにしていた
葛籠
(
つづら
)
の傍をまだもぞくさしていた。父親が二タ言三言
小言
(
こごと
)
を言うと、母親も口のなかでぶつくさ言い出した。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
玄関は
巽
(
たつみ
)
の方に向かへり。きはめて古き家なり。この家には出して見れば
祟
(
たた
)
りありとて開かざる古文書の
葛籠
(
つづら
)
一つあり。
遠野物語
(新字旧仮名)
/
柳田国男
(著)
商売用の
葛籠
(
つづら
)
の
蓋
(
ふた
)
を引っくり返して、その中へ銭をバラで
抛
(
ほう
)
り込んで置く。そんな投げやりなことをして
好
(
い
)
いのかと私は心配をして父に注意すると
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
軽い
葛籠
(
つづら
)
を背負った舌切雀の
噺
(
はなし
)
の中のおじいさんが、雀たちに送られて竹林を出て来る模様が古びている信玄袋です。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
僕の
素人
(
しろうと
)
的の考えでは、
潜在識
(
せんざいしき
)
は知識を、心という土蔵の奥にある
葛籠
(
つづら
)
の中に入れて、しまいこんだように思われる。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
中には
箪笥
(
たんす
)
や
長持
(
ながもち
)
や
葛籠
(
つづら
)
の類があった。また祖父が集めた書画骨董の類があった。戸口のわきに二階に通ずる階段があった。二階は父の稽古場であった。
生い立ちの記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
葛籠
(
つづら
)
の紋やふろしきの染め抜きを見ると、これは、今夜の火事を出した火元とか噂をされていた
田舎
(
いなか
)
廻りの旅役者、岩井染之助一座の河原者と思われる。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
先刻、出しかけていた衣裳
葛籠
(
つづら
)
を肩にかついで、避難所へ急いだ。火勢は強まるばかりのようだ。張りめぐらされた交通遮断の綱の外に、見物人が密集している。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
どの女の
葛籠
(
つづら
)
には
麻布
(
ぬの
)
がどれだけ入つてゐるとか、また堅気な男が祭りに衣類なり家財なりの
何品
(
なに
)
をいつたい酒場へ
抵当
(
かた
)
に置いたとかいふことを、細大漏らさず知つてゐる。
ディカーニカ近郷夜話 後篇:02 降誕祭の前夜
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
新左衛門は家来に命じて屍骸を
葛籠
(
つづら
)
へ。棄てにやる。もうおもてはしんしんと雪ふっている。
我が円朝研究:「怪談牡丹灯籠」「江島屋騒動」「怪談乳房榎」「文七元結」「真景累ヶ淵」について
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
そこは
長櫃
(
ながもち
)
の並んだ処で、長櫃の前には
葛籠
(
つづら
)
が並んでいた。平吉はその間を入って往った。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そういうと、庵主は僕をさしまねいて、隣室の戸棚から、一つの
葛籠
(
つづら
)
を下ろすと、これを弥陀の前にまで担がせた。僕が蓋を明けましょうかというと、まあ暫くといって止めた。
鍵から抜け出した女
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
曾
(
ひい
)
じいさんかが、
切支丹
(
キリシタン
)
の邪宗に
帰依
(
きえ
)
していたことがあって、古めかしい横文字の書物や、マリヤさまの像や、
基督
(
キリスト
)
さまのはりつけの絵などが、
葛籠
(
つづら
)
の底に一杯しまってあるのですが
鏡地獄
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
俺の心に済まないから、どんなことがあっても、この金ばかりは決して使ってはならないと、お石に堅く云いつけて、彼は彼女に知らさないようにして、古
葛籠
(
つづら
)
の底へ隠してしまった。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
一隅に小さい
葛籠
(
つづら
)
、その傍に近所の人の情けで
拵
(
こしら
)
えた
蒲団
(
ふとん
)
に
赤児
(
あかご
)
がつぎはぎの着物を着て寝ていて、その向こうに一箇の
囲炉裏
(
いろり
)
、黒い竹の
自在鍵
(
じざいかぎ
)
に
黒猫
(
くろねこ
)
のようになった
土瓶
(
どびん
)
がかかっていて
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
箪笥
(
たんす
)
、
葛籠
(
つづら
)
等に納めおきし衣類が、いつの間にか怪しの穴あきて着ることのできぬようになり、柱に掛けておきたる衣類が、故なくして中央より切断してるなど、実に不思議にたえぬとて
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
(昔の名残りの
葛籠
(
つづら
)
の底から、成田山の疵薬を出す。薬は辛うじて残っている)少しシミるけれど、もうこれで大丈夫、今、
結
(
ゆわ
)
えといてあげるよ。(小布れを探して結えてやる)さあ、もういい。
一本刀土俵入 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
古行李や古
葛籠
(
つづら
)
、焼焦だらけの畳の狼籍しているを横に見て
灰燼十万巻:(丸善炎上の記)
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
虫干や
葛籠
(
つづら
)
払へば
包熨斗
(
つつみのし
)
鶴声
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
表には
葛籠
(
つづら
)
が置いてある。
武蔵旅日記
(新字新仮名)
/
山中貞雄
(著)
出代
(
でかわり
)
や春さめ/″\と古
葛籠
(
つづら
)
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
葛籠
(
つづら
)
にいつぱい
綾錦
(
あやにしき
)
。
とんぼの眼玉
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
古ぼけた
箪笥
(
たんす
)
が二た
棹
(
さお
)
、片方へ
歪
(
ゆが
)
んだ茶箪笥、ふちの欠けた長持、塗の
剥
(
は
)
げた
葛籠
(
つづら
)
などが、幾つかの風呂敷包と共に壁にそって置いてある。
雪と泥
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
さうしてまた、お鈴さんに連れられて、もとの小綺麗な茶の間にかへると、そこには、大小さまざまの
葛籠
(
つづら
)
が並べられてある。
お伽草紙
(新字旧仮名)
/
太宰治
(著)
ある時おじさんがうんうんいって押入れの
葛籠
(
つづら
)
を引っぱりだして暑いのに何をはじめたんですとおしょさんが小言をいった。
旧聞日本橋:18 神田附木店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
へッ、へッ、二十五両と稼いだのは悪くなかったぜ、——最初は
葛籠
(
つづら
)
へ入れて船の中に飼っておいたが、知合いの船が
五月蠅
(
うるさ
)
くてかなわねエ。
銭形平次捕物控:115 二階の娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
革鞄
(
かばん
)
もござりますれば、貴女、
煙草
(
たばこ
)
盆、枕、こりゃ慌てて抱えて出たものがあると見えます。
葛籠
(
つづら
)
、風呂敷包、申上げます迄もござりません。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
十畳の間、真中に
紙張
(
しちょう
)
が吊ってあって、紙張の傍に
朱漆
(
しゅうるし
)
、
井桁
(
いげた
)
の紋をつけた
葛籠
(
つづら
)
が一つ、その向うに
行燈
(
あんどん
)
が置いてある。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
怪我
(
けが
)
もしなかったことを私は安心しましたが、父はこんな突発的な場合にも素早く、馴れたものでそれというと、
葛籠
(
つづら
)
の中の売り
溜
(
だ
)
めを脇に
挟
(
はさ
)
んで
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
この純然たる浪人生活が三十年ばかり続いたのに、源吾は刀剣、
紋附
(
もんつき
)
の衣類、
上下
(
かみしも
)
等を
葛籠
(
つづら
)
一つに収めて持っていた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
二階は六疊
一間
(
ひとま
)
で、うす暗い隅には
葛籠
(
つづら
)
などが置いてあつた。をぢさんも後からつゞいてあがつて、小幡の屋敷の奇怪な出來事について詳しく話した。
半七捕物帳:01 お文の魂
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
とまた松雲は静かに言い添えて、小さな
葛籠
(
つづら
)
の
風呂敷包
(
ふろしきづつ
)
みにしてあるのを取り出して来た。あだかも、和尚の本心はその中にこめてあるというふうに。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「京の
梅渓家
(
うめたにけ
)
から徳島へ依託されました三ツの
葛籠
(
つづら
)
がございます。それも
明日
(
あした
)
の便船へ積みこむことになっておりますので、ひとつ、そいつをからくりして」
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
伽話
(
おとぎばなし
)
にある「
舌切雀
(
したきりすずめ
)
」の
葛籠
(
つづら
)
にいかなるものが潜在してあるかは、もらう人の
与
(
あず
)
かるところでないようなものの、その根本を
質
(
ただ
)
せばもらう人が入れ込むのである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
貴様の荷物と一処に
乃公
(
おれ
)
のこの
葛籠
(
つづら
)
も
序
(
ついで
)
に
持
(
もっ
)
て
帰
(
かえっ
)
て
呉
(
く
)
れ。
乃公
(
おれ
)
はもう
着換
(
きがえ
)
が一、二枚あれば
沢山
(
たくさん
)
だ。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
彼方此方
(
かなたこなた
)
に響く
鑿金槌
(
のみかなづち
)
の音につれて新しい材木の
脂
(
やに
)
の
匂
(
におい
)
が鋭く人の鼻をつく中をば、引越の荷車は
幾輛
(
いくりょう
)
となく
三升
(
みます
)
や
橘
(
たちばな
)
や
銀杏
(
いちょう
)
の葉などの
紋所
(
もんどころ
)
をつけた
葛籠
(
つづら
)
を運んで来る。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
父親が
箪笥
(
たんす
)
や
葛籠
(
つづら
)
造りの黒塗りのけんどんなどを持ち込み、小さい
世帯
(
しょたい
)
道具は自身リヤカアで運び、
釘
(
くぎ
)
をうったり時計をかけたりしていたが、職人とも商人ともつかぬ
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
衣裳入れの
葛籠
(
つづら
)
に手をかけたとき、金五郎は、背後から、頭へ、鳶口を打ちかけられた。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
そして、室の一方には蒲団を畳んで積み、衣類を入れた
葛籠
(
つづら
)
を置き、
鎧櫃
(
よろいびつ
)
を置き、三尺ばかりの狭い床には
天照大神宮
(
てんしょうだいじんぐう
)
の軸をかけて、其の下に真新しい
榊
(
さかき
)
をさした徳利を置いてあった。
海神に祈る
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
“葛籠”の解説
葛籠(つづら)は、元来、ツヅラフジのつるで編んだ蓋つきの籠の一種である。後に竹を使って網代に(縦横に組み合わせて)編んだ四角い衣装箱を指して呼ぶことが一般的になった。
(出典:Wikipedia)
葛
常用漢字
中学
部首:⾋
12画
籠
常用漢字
中学
部首:⽵
22画
“葛籠”で始まる語句
葛籠笠
葛籠作
葛籠屋
葛籠番
葛籠造