良心りやうしん)” の例文
自ら不良少女と名乘なのることによつてわずかになぐさんでゐる心のそこに、良心りやうしん貞操ていさうとを大切にいたわつているのを、人々は(こと男子だんしおいて)
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
惡者わるものだと信じたとしても、あなたの良心りやうしんが、あなたの正しいのを證明し、あなたを罪から解くならば、あなたはお友達なしではないわ。
世間せけん容赦ようしやなく彼等かれら徳義上とくぎじやうつみ脊負しよはした。しか彼等かれら自身じしん徳義上とくぎじやう良心りやうしんめられるまへに、一旦いつたん茫然ばうぜんとして、彼等かれらあたまたしかであるかをうたがつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はまだほんのりとあかるかつたので勘次かんじはそつちこつちとから草刈籠くさかりかご背負せおつたまゝあるいた。かれれでも良心りやうしん苛責かしやくたいして編笠あみがさかほへだてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
然うなると周三はさすがにうちかへりみて心にづる、何だか藝術の神聖をがすやうにも思はれ、またお房に藝術的良心りやうしん腐蝕ふしよくさせられるやうにも感ずる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
その亞米利加人あめりかじん母親はゝおやからはれた言葉ことばいて、あれが自分じぶんの『良心りやうしんざめ』だ、自分じぶんが一しやううちのどんな出來事できごとでもあんなにふか長續ながつゞきのしてのこつたものはない
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
が、這麼事こんなこと女主人をんなあるじにでも嗅付かぎつけられたら、なに良心りやうしんとがめられることがあるとおもはれやう、那樣疑そんなうたがひでもおこされたら大變たいへんと、かれはさうおもつて無理むり毎晩まいばんふりをして、大鼾おほいびきをさへいてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
宗助そうすけ今日けふまではふつてくらゐだから、あまりその方面はうめんには興味きようみなかつたので、すこしも良心りやうしんなやまされてゐる氣色けしきのない叔母をば樣子やうすても、べつはらたなかつた。それでも、叔母をば
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しか這麼心遣こんなこゝろづかひ事實じゝつおいても、普通ふつう論理ろんりおいてもかんがへてればじつ愚々ばか/\しい次第しだいで、拘引こういんされるだの、獄舍らうやつながれるなどこと良心りやうしんにさへやましいところいならばすこしも恐怖おそるるにらぬこと
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ひとつには良心りやうしん苛責かしやく餘所よそにしてさうしてまたそれが何處どこまでも發見はつけんせられないものであるならば他人ひとものることは口腹こうふくよく滿足まんぞくせしむるには容易よういかつ輕便けいべん手段しゆだんでなければならぬはずである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)