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自棄
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やけ
ふりがな文庫
“
自棄
(
やけ
)” の例文
暗に嫁のお冬と言はないばかり、無事な右手に握つた煙管で、
自棄
(
やけ
)
に灰吹を叩きます。成程福島浪人と言ふのは嘘でなかつたでせう。
銭形平次捕物控:011 南蛮秘法箋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
一方の男ふたりは無事で、友之助は
自棄
(
やけ
)
酒を飲みながら、相変らず役所へ勤めていた。吉之助はとどこおりなく学校にかよっていた。
有喜世新聞の話
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「いんにゃ、駄目です! 幾らになっても売るもんですか!」と、コワリョーフ少佐は
自棄
(
やけ
)
に呶鳴った。「腐っても譲りませんよ!」
鼻
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
私は、半分
自棄
(
やけ
)
でリオへ来て、話に聴いたナイトクラブとはどんなところだろうと、なんだか
覗
(
のぞ
)
くような気持で『恋鳩』へゆきました
人外魔境:05 水棲人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
「
大砲
(
おおづつ
)
で権現堂の堰を壊してお江戸を水浸しにしてしまうともいいますし……聞いていて私、何だか
自棄
(
やけ
)
になりそうで困ってしまった」
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
▼ もっと見る
あれほど、気性の激しい父も、不快な
執拗
(
しつよう
)
な圧迫のために、
自棄
(
やけ
)
になったのではないかと思うと、その事が一番彼女には心苦しかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
だが
其
(
そ
)
のいづれの
相乘
(
あひのり
)
にも、
齊
(
ひと
)
しく
私
(
わたし
)
の
關
(
くわん
)
せざる
事
(
こと
)
は
言
(
い
)
ふまでもない。とにかく、
色氣
(
いろけ
)
も
聊
(
いさゝ
)
か
自棄
(
やけ
)
で、
穩
(
おだや
)
かならぬものであつた。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
どっかの工業学校へ入った年に病気で落第したら頑固な父さんがあんまり怒るもんで
自棄
(
やけ
)
になって家を出て仕舞ったんですって。
お久美さんと其の周囲
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「私たちを送って来た従兄は、一週間も小樽に遊んでいましたの。
自棄
(
やけ
)
になって毎日芸者を呼んで酒浸しになっていましたの。」
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そういう発見が子供の魂を永久に
毀損
(
きそん
)
したのだ、もしくは生長さしたのだ。多くのものは
自棄
(
やけ
)
になってしまった。彼らはみずから言った。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
『それぢや、
話
(
はな
)
しにならないわ』と
愛
(
あい
)
ちやんは
自棄
(
やけ
)
になつて、『
何
(
なん
)
て、
愚物
(
ばか
)
なんだらう!』と
云
(
い
)
ひながら、
戸
(
と
)
を
開
(
あ
)
けた
中
(
なか
)
へ
這入
(
はい
)
りました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
百姓
(
ひやくしやう
)
の
凡
(
すべ
)
ては
彼
(
かれ
)
の
心
(
こゝろ
)
を
推測
(
すゐそく
)
する
程
(
ほど
)
鋭敏
(
えいびん
)
な
目
(
め
)
を
有
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
なかつた。
彼
(
かれ
)
は
自棄
(
やけ
)
に
態
(
わざ
)
と
繃帶
(
ほうたい
)
の
手
(
て
)
を
抱
(
だ
)
いて
數日間
(
すうじつかん
)
ぶら/\と
遊
(
あそ
)
んで
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
パラ/\と
自棄
(
やけ
)
に頁を
繰
(
く
)
る音がする。と、やつぱり相手を求める私の力でないやうな力に
操
(
あやつ
)
られて、私はつと後を追つて行く。
脱殻
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
お銀様は頭を
自棄
(
やけ
)
に振って、銀の
簪
(
かんざし
)
を机の上へ振り落しました。振り落したその簪をグイと掴んで、呪いの息を写真の
面
(
おもて
)
に吹きかけました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
自棄
(
やけ
)
気分になって、なるべくノロノロとやるようにと命じ、その代りこの時間をウツラウツラと居睡りに提供することとした。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「太夫さん、後生ですからそんな
自棄
(
やけ
)
をおこさないで。一座の者が懸命になれば、またいい芽を吹く時節もありましょうから」
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
変に
自棄
(
やけ
)
にでもなって、何処かで酔いつぶれでもしてるのじゃないかと、そりゃあ心配したんですよ。……でも、宿酔のようでもないようね。
野ざらし
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
緊張のなかに、へんに
自棄
(
やけ
)
っぱちな気持がこじれたままふくれ上り、冗談を言い合う声が奇妙にうわずって来るらしかった。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
運命が私を不公平に扱つた時、私には冷靜にしてゐるやうな智慧がなかつたのです。私は
自棄
(
やけ
)
つぱちになつて、やがて墮落してしまひました。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
救いのない気持で人はそわそわ歩いている。それなのに、練兵場の方では、いま
自棄
(
やけ
)
に
嚠喨
(
りゅうりょう
)
として
喇叭
(
らっぱ
)
が吹奏されていた。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
「俺はしばらく退屈してゐたんだぞ!」そしてひとりで
自棄
(
やけ
)
にふざけて、麓の村に石を投げる、氣流に灰を撒き散らす。
霾
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
もううずうずしている別の一人が、
自棄
(
やけ
)
に茶ばかり飲んでいる傍で、参右衛門は、煙管を炉縁へ叩きつけてばかりいる。
夜の靴:――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
人なき裏路を
自棄
(
やけ
)
に急ぎながら、信吾は淺猿しき自嘲の念を制することが出來なかつた。少し下向いた其顏は不愉快に堪へぬと言つた樣に曇つた。
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
彼は石の上へ箱を
打
(
ぶ
)
っ付けた。が、壊われなかったので、此の世の中でも踏みつぶす気になって、
自棄
(
やけ
)
に踏みつけた。
セメント樽の中の手紙
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
この小さな食い違いが正吉の運命を
捻曲
(
ねじま
)
げる因であった、そしてすっかり
自棄
(
やけ
)
になっているところへお紋が現われた。
お美津簪
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
権九郎は
自棄
(
やけ
)
に怒鳴りながら横へ
逸
(
そ
)
れる犬を引き締めた。「雪の降ってる冬の夜中だ。道草食うにも草はあるめえ、トットットットッ。走れ走れ!」
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
逡巡
(
しゅんじゅん
)
したが、しかしもうどうしようもない、半ば
自棄
(
やけ
)
気味で覚悟を定めると、彼は裸になり、湯ぶねの蓋を取った。
いのちの初夜
(新字新仮名)
/
北条民雄
(著)
かくて彼は思い切って自己に対する
自棄
(
やけ
)
な反逆から、奉行に身を売り、切支丹さがしの犬となり、踏み絵の法を案出して、奉行の歓心を得ようとした。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
数寄屋橋の近所がいまのやうにまだ開けてゐず——僅の間にこのごろは
自棄
(
やけ
)
にあの辺、賑やかになりましたが……
井上正夫におくる手紙
(新字旧仮名)
/
久保田万太郎
(著)
清次郎は
自棄
(
やけ
)
に唾を吐き散らした。そして見物人達の笑い声を
背後
(
うしろ
)
に浴びながら幹部休憩所の方へやって行った。
或る部落の五つの話
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
彼は
忌々
(
いま/\
)
しさに舌打ちし、
自棄
(
やけ
)
くそな捨鉢の氣持で
空嘯
(
そらうそぶ
)
くやうにわざと口笛で拍子を合はせ、足で音頭をとつてゐた。が、何時しか眼を
瞑
(
つぶ
)
つてしまつた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
ただあんたに言っておきたいのはね、こうして牛小屋なんぞへ送られて来ても、決して
自棄
(
やけ
)
なんか起してはいけないよ。送られて来た方が結句ましなのさ。
かもじの美術家:――墓のうえの物語――
(新字新仮名)
/
ニコライ・セミョーノヴィチ・レスコーフ
(著)
と、
自棄
(
やけ
)
くそみたいに喋りまくるのを、万五はにやりにやり聞いてゐるうちに、ふと、この粕谷といふ男が小峯喬を説得できないわけがどこにあるかを考へた。
泉
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
「それでおめえ、
自棄
(
やけ
)
酒くらってよっぱらってれば、その苦しさから脱けて出られっとでもいうのか。」
鰊漁場
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
「それぢや屠所に曳かれて行くかな。まさに斷頭臺へ上る思ひだね。」佐々木は
自棄
(
やけ
)
の快活さで應じた。
受験生の手記
(旧字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
しかるに叔父さんもその
希望
(
のぞみ
)
が全くなくなったがために、ほとんど
自棄
(
やけ
)
を起こして酒も飲めば遊猟にもふける、どことなく自分までが
狂気
(
きちがい
)
じみたふうになられた。
鹿狩り
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
彼は箒を握りしめて
自棄
(
やけ
)
に落葉を掃きながら、時々とつぜん首をあげて老堂守に罵りの激しい言葉を報ひやうとしかけるのだが、思ふやうに言葉が喉を通らぬとみえ
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
郵便局の横町にある理髪店に飛び込んで髭をあたって貰う。南を向いた店先には一ぱい日がさし込んでいる上に、ストオヴを
自棄
(
やけ
)
に
焚
(
た
)
いているので、苦しいくらい熱い。
雉子日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
そこで、それとなく様子を聞いてみると、蟹口運転手は、それ以来スッカリ
自棄
(
やけ
)
気味となり、大酒を飲み習い、誰、彼の
見境
(
みさか
)
いなく喧嘩を吹っかけるようになっている。
衝突心理
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それ以来
自棄
(
やけ
)
半分になっているのではないかと思われるところもあったが、然し祝儀の多寡によって手の裏返して世辞をいうような賤しいところは少しもなかったので
申訳
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
運転台にいる吉川が
自棄
(
やけ
)
にハンドルをきり、無茶苦茶にスピードを出すので、車体は烈しく動揺し、危険だったので、乱暴な真似は止せ、そんな運転のしかたがあるか。
青い風呂敷包
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
一郎も澤も、乙子と養子の
無慙
(
むざん
)
な死に対し、又あんまり
無雑作
(
むぞうさ
)
に人間が圧倒された自然現象に対して、腹立たしい
自棄
(
やけ
)
の心持から、死んでも
惜
(
おし
)
くないような気持だった。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
そんなところからでも仕入れて来て、
自棄
(
やけ
)
酒をあおっているのだろう——皆そう言い合った。
生きている戦死者
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
寂寥
(
さびしさ
)
に堪えず、
午
(
ひる
)
から酒を飲むと言出した。細君の支度の為ようが遅いのでぶつぶつ言っていたが、膳に
載
(
の
)
せられた
肴
(
さかな
)
がまずいので、遂に
癇癪
(
かんしゃく
)
を起して、
自棄
(
やけ
)
に酒を飲んだ。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
私の心にもなき
驕慢
(
きょうまん
)
の
擬態
(
ぎたい
)
もまた、射手への便宜を思っての振舞いであろう。(一行あき。)
自棄
(
やけ
)
の心からではない。私を葬り去ることは、すなわち、建設への一歩である。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
自棄
(
やけ
)
くそに、干からびた馬車馬の背なかを、ひっぱたくのが眼に映るが、スウィスのディリジャンスは、もっとも整頓した交通機関の一つであって、逞ましい馬の四頭立て
スウィス日記
(新字新仮名)
/
辻村伊助
(著)
それはそうと……彼はベッドから
跳上
(
はねあが
)
ると、五六歩進んでテーブルの前に
行
(
ゆ
)
き、緑罫の原稿用紙を一枚取ると、ぶっつけに、やや
自棄
(
やけ
)
気味にもなって、次のような題を書いた。
幸福な家庭
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
終には
自棄
(
やけ
)
になって、石油をかけて火をつける、随分危険な乱暴な事をしたものです。
職業の苦痛
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
不安らしいですね。私がそういう道を骨を折って歩いて行くと彼女らは僕を疑ったり、
或
(
あるい
)
は焦れて
自棄
(
やけ
)
を起して仕舞います。一人の娘などはそのために自殺するとまでいいました。
唇草
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼は悪意でそんなことをしているのか、単に
自棄
(
やけ
)
でそんなことをしているのか、自分にも分からなかった。蜘蛛はその脚を苦しそうに痙攣させた後、窓の先に死んでぶら下がった。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
“自棄”の意味
《名詞》
自棄(じき、やけ)
自分自身に失望し、自分を見捨てること。
(出典:Wiktionary)
自
常用漢字
小2
部首:⾃
6画
棄
常用漢字
中学
部首:⽊
13画
“自棄”で始まる語句
自棄酒
自棄気味
自棄糞
自棄半分
自棄腹