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石榴
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ざくろ
ふりがな文庫
“
石榴
(
ざくろ
)” の例文
庭の隅に取り忘れられた
石榴
(
ざくろ
)
の実や藪の中なる
烏瓜
(
からすうり
)
、または植込のかげの
梔子
(
くちなし
)
の実に、冬の夕陽の反映を賞するのも十二月である。
写況雑記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
割れかかった
石榴
(
ざくろ
)
に石を加えたように沖の言葉は久慈の心中へどしりと重みのある実を落した。すると、突然、矢代は遮るように
旅愁
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
看護婦に招かれて、診察室へはいり、帯をほどいてひと思いに肌ぬぎになり、ちらと自分の乳房を見て、私は、
石榴
(
ざくろ
)
を見ちゃった。
皮膚と心
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
うかと
聲
(
こゑ
)
を
掛
(
か
)
けて、
棟
(
むね
)
あちこち、
伽藍
(
がらん
)
の
中
(
なか
)
に、
鬼子母神
(
きしぼじん
)
の
御寺
(
みてら
)
はと
聞
(
き
)
けば、えゝ、
紅
(
あか
)
い
石榴
(
ざくろ
)
の
御堂
(
おだう
)
でせうと、
瞼
(
まぶた
)
に
色
(
いろ
)
を
染
(
そ
)
めながら。
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
最も美しいのは
石榴
(
ざくろ
)
である。門の内には驚く程美事な赤い
躑躅
(
つつじ
)
の生垣があった。我国の温室で見るのと全く同じ美しい植物である。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
▼ もっと見る
さらぬだに燃ゆるばかりなる満開の
石榴
(
ざくろ
)
に四時過の西日の
夥
(
おびただし
)
く輝けるを、彼は
煩
(
わづらは
)
しと目を移して更に
梧桐
(
ごどう
)
の
涼
(
すずし
)
き広葉を眺めたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
生きた人間の場合は、整形外科手術によって全く別人に変貌するトリックもある。(例「大統領探偵小説」や私の「
石榴
(
ざくろ
)
」)。
探偵小説の「謎」
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
夜
(
よる
)
の風は盃の
冷
(
ひや
)
き
縁
(
ふち
)
に似たり。
半眼
(
はんがん
)
になりて、口なめずりて飮み干さむかな、
石榴
(
ざくろ
)
の
果
(
み
)
の汁を吸ふやうに
滿天
(
まんてん
)
の星の凉しさを。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
「まずよかった、これで安心」——で、嘉門は吐息をしたが、「打ち付けたら最後坊やの頭は、
石榴
(
ざくろ
)
のように割れたところさ」
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
歳子がそのコツプを月にさしつけて、
透
(
すか
)
してゐると、牧瀬は「水晶
石榴
(
ざくろ
)
のシロツプです。シロツプでは上品な部ですね。」
夏の夜の夢
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
井戸端
(
いどばた
)
と私の窓との間には、数本、
石榴
(
ざくろ
)
の木やなんかがあったり、コスモスなどが折から一ぱい花を咲かせながら茂るがままになっていたので
三つの挿話
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
やがて此浅き谷は低き山の
隈
(
くま
)
に尽きて、
其処
(
そこ
)
に大なる無花果、ポプラル、葡萄、
石榴
(
ざくろ
)
など
一族
(
いちぞく
)
の緑眼もさむるばかり鮮かなる小村あり。ドタンと云ふ。
馬上三日の記:エルサレムよりナザレへ
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「診察ですって、まあ。そんなことをしてももう駄目ですわ。あの人の頭は
石榴
(
ざくろ
)
のように割れているんですもの」
人造人間事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
脣の色は蒼白くなって、口中は
石榴
(
ざくろ
)
のようにただれます。それのみならず、ことに女にとって一ばん恐しいことは、髪の毛が束になって抜けることです。
暴風雨の夜
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
鈍角が強引に引き裂いて行つた傷は
石榴
(
ざくろ
)
のやうに赤い肉をはみ出してゐた。血を見ると、腰から
脹脛
(
ふくらはぎ
)
にかけての神經がざわざわして來るのが駿介の平常だつた。
生活の探求
(旧字旧仮名)
/
島木健作
(著)
そんな事を言いながら、着物を脱いで、少し乾いた流しを爪先歩きに
石榴
(
ざくろ
)
口から静かに入りました。
銭形平次捕物控:033 血潮の浴槽
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
その時分ひろ子は
石榴
(
ざくろ
)
の樹と、子供の土俵あとのある庭に向って小説を書いていた。そして、折々その声にじっと耳を傾け、あの声に愛があると云えるだろうかと思った。
播州平野
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
6 この家の庭には、
石榴
(
ざくろ
)
の木が四五本あった。その石榴の木の下に、大きい囲いの浅い
井戸
(
いど
)
があった。二階の
縁
(
えん
)
の障子をあけると、その石榴の木と井戸が真下に見えた。
風琴と魚の町
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
木蓮
(
もくれん
)
や
石榴
(
ざくろ
)
の葉がじきに繁って、蒼い外の影が明るすぎた部屋の壁にも冷や冷やと差して来た。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
現に京都
清水
(
きよみづ
)
の成就院では、
石榴
(
ざくろ
)
のそれのやうな紅い小さな花をもつた椿を「本侘」と名づけて、肥後守が朝鮮から持ち帰つたのは、自分の境内にある老樹だと言つてゐる。
侘助椿
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
額
(
ひたい
)
から眼鼻の間へかけて一直線に
石榴
(
ざくろ
)
みたいにブチ割られて、脳味噌がハミ出している。
近眼芸妓と迷宮事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
やからうからうち寄りて花の下に酒もりするもまた栄ある心地す。桜の下に
石榴
(
ざくろ
)
あり。花石榴とて花はやや大きく八重にして実を結ばず。その下の垣根極めて暗き処に
木瓜
(
ぼけ
)
一もとあり。
わが幼時の美感
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
校庭には有志の寄付した標本用の樹木や草花がその名と寄付者の名とを記した札をつけられて
疎
(
まば
)
らに植えられてある。
石榴
(
ざくろ
)
の花が火の燃えるように赤く咲いているのが誰の眼にもついた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
第二回の大調和展に出した「
鷽
(
うそ
)
」は野口米次郎さんの親類の人が買った。又後に出した「
石榴
(
ざくろ
)
」は京都の方の好事家が持っている訳だが、此などは後で一寸借りたいと思って面倒な思をした。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
その箱を裏返して見ますと、『このチョコレートは日本薬局方サントニン〇・〇五
瓦
(
グラム
)
海人草及び
石榴
(
ざくろ
)
皮を主剤とし外に各種の栄養剤を配合しその相乗作用により』
云々
(
うんぬん
)
と効能書が印刷してある。
ボロ家の春秋
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
雨の降る往来に寝ころんでいたり、新聞紙の
反古
(
ほご
)
しか着ていなかったり、
石榴
(
ざくろ
)
のように肉の腐った膝頭をべろべろ舐めていたり、——要するに少々恐縮する程、ロマンティックに出来上っている。
上海游記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
分析台の上に寝かされた原田氏の足首が
石榴
(
ざくろ
)
のようにグズグズになり、はじけた肉の間から白い骨があらわれ出しているのを見ても顔色ひとつかえなかった。その度胸のよさといったらなかった。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
自分はそれでも我慢して容易に
窓側
(
まどぎわ
)
を離れなかった。つい向うに見える物干に、松だの
石榴
(
ざくろ
)
だのの盆栽が五六
鉢
(
はち
)
並んでいる
傍
(
そば
)
で、島田に
結
(
い
)
った若い女が、しきりに洗濯ものを
竿
(
さお
)
の先に通していた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その外に
石榴
(
ざくろ
)
の鉢植がありました。石榴は
直水
(
じかみず
)
を嫌うからと、鉢が大きな水盤に入れてありました。それに実がいくつか附いた時などはお喜びにもなりますが、誰にでも
褒
(
ほ
)
めてもらいたいのでした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
此処
(
ここ
)
だけの別な
前栽
(
せんざい
)
があって、その向うに、
楓
(
かえで
)
の老樹の新緑を透かして持仏堂の
甍
(
いらか
)
が見え、
石榴
(
ざくろ
)
が花を着けている
鉢前
(
はちまえ
)
のあたりから
那智黒
(
なちぐろ
)
石を敷き詰めた
汀
(
みぎわ
)
へかけて、
夥
(
おびただ
)
しい
木賊
(
とくさ
)
が生えているのを
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
都門
(
ともん
)
の春はもう余程深くなった。満目の新緑も濁ったように色が濃くなって、暗いまでに繁り合いながら、折からの雨に重く垂れている。
其
(
その
)
中に独り
石榴
(
ざくろ
)
の花が炎をあげて燃えている火のように赤い。
釜沢行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
女
(
め
)
の
童
(
わらは
)
あかき
石榴
(
ざくろ
)
を
掌
(
て
)
に置きてゐやまひ正し九九をこそよめ
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
と栄蔵の大好物の
石榴
(
ざくろ
)
を二つ出してくれた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
「僕ね、
石榴
(
ざくろ
)
の木を一杯植えるよ。」
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
石榴
(
ざくろ
)
の花は赤く散りこぼれている。
旧聞日本橋:04 源泉小学校
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
その、ヒッポの子、ネロが三歳の春を迎えて、ブラゼンバートは
石榴
(
ざくろ
)
を種子ごと食って、激烈の腹痛に襲われ、
呻吟転輾
(
しんぎんてんてん
)
の果死亡した。
古典風
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
庭には
石榴
(
ざくろ
)
の花が
灼然
(
しゃくぜん
)
として燃るが如く開いていた。星巌は御玉ヶ池にあること正に十二年。江戸に来った日より算すれば十五年である。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
小山とも見えるニキビの先端が、
石榴
(
ざくろ
)
のようにはぜて、そこからドス黒い血のりが、芝居の殺し場の絵看板の感じで
物凄
(
ものすご
)
くにじみ出しているのです。
鏡地獄
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
卯木
(
うつぎ
)
の花が咲いている。
石榴
(
ざくろ
)
の花が咲いている。泉水に水
禽
(
どり
)
でもいるのであろう、ハタ、ハタ、ハタと羽音がする。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
お洲美さんは、
睜
(
みは
)
っていた目を閉じました。そして、うなずくように
俯向
(
うつむ
)
いた
耳許
(
みみもと
)
が
石榴
(
ざくろ
)
の花のように見えた。
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
頭部を壁にぶっつけて
石榴
(
ざくろ
)
のように割られ、肋骨も四肢の骨もぽきぽき折られてしまったことであろう。
地球発狂事件
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
艶々
(
つやつや
)
した鮮紅色の
石榴
(
ざくろ
)
の花が、家を取りかこむ濃い緑の木立の間に咲いている所は、まことに美しい。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
その廊下の外に、一本の
石榴
(
ざくろ
)
の木が生えていた。このような公共建築の空地に生えた木らしくいつも
徒花
(
あだばな
)
ばかり散らしていた。珍しく、今年は、低い枝にたった一つ実を結んだ。
一本の花
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その
蒸
(
む
)
しつく空気の中で、笑婦の群れが、赤く割られた
石榴
(
ざくろ
)
の実のように詰っていた。彼はテーブルの間を黙々として歩いてみた。押し
襲
(
よ
)
せて来た女が、彼の肩からぶら下った。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
言うも無惨ながら、その男の後頭部は
石榴
(
ざくろ
)
のように割られていたのであります。
墓地の殺人
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
竹は油障子を開けて、女が
石榴
(
ざくろ
)
口から入るところを、拳下がりに短刀を飛ばし、女が浴槽に落込むのを見定めて油障子を締め、悠々と降りた。人間はつまらないが、竹の野郎腕は大したものだ。
銭形平次捕物控:033 血潮の浴槽
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
石榴
(
ざくろ
)
ちよいと枝一面に蚤のたかつたやうでせう。
新緑の庭
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
間もなく、母が、自殺した。父の猟銃でのど
笛
(
ぶえ
)
を射って、即死した。傷口が、
石榴
(
ざくろ
)
のようにわれていた。
火の鳥
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
地平線の上に
腕
(
かいな
)
を長くさしのべなば、われは
燃
(
もゆ
)
るかの土と
紅色
(
くれない
)
の
石榴
(
ざくろ
)
とに触れもやせん。
金光
(
きんこう
)
燦爛
(
さんらん
)
たる国土かな。鳥飛ばず、曇りもえせず、色もあせざる空の下。
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
令嬢姿の女掏摸の、衣裳の裾がひるがえり、深紅の蹴出しが渦を巻き、
石榴
(
ざくろ
)
の
花弁
(
はなびら
)
そっくりである。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“石榴(ザクロ)”の解説
ザクロ(石榴・柘榴、英名: pomegranate、学名: Punica granatum)は、ミソハギ科ザクロ属の1種の落葉小高木、また、その果実のこと。庭木などの観賞用に栽培される。最も古くから栽培された果樹の一つで、果実は食用になる。
(出典:Wikipedia)
石
常用漢字
小1
部首:⽯
5画
榴
漢検1級
部首:⽊
14画
“石榴”で始まる語句
石榴口
石榴市
石榴花