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眸
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め
ふりがな文庫
“
眸
(
め
)” の例文
鼻腔
(
びこう
)
でだけ
呼吸
(
いき
)
をして、眼がかすんで、相手の数も顔もよく見えないために、わざと大きく
瞠
(
みは
)
っているように
眸
(
め
)
がひらいてしまった。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平常
(
いつも
)
はあまり眼に立たぬほどの切れの浅い二重瞼が少し
逆上
(
ぼっ
)
となって赤く際だってしおれて見えた。睫毛が長く
眸
(
め
)
を霞めている。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
福山すなわち
松前
(
まつまえ
)
と
往時
(
むかし
)
は
云
(
い
)
いし城下に
暫時
(
ざんじ
)
碇泊
(
ていはく
)
しけるに、北海道には
珍
(
めず
)
らしくもさすがは旧城下だけありて
白壁
(
しらかべ
)
づくりの家など
眸
(
め
)
に入る。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
すべての愛を籠めた
眸
(
め
)
で見て上げたの——其
眼
(
め
)
で見ればどんな大僧正でも王様でも家来たちが皆見てゐる前で、私の足下に跪いてしまふのよ。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
場合が場合だけに思わず
竦然
(
ぞっ
)
として振り向いたが、そこには君太郎が大きな
眸
(
め
)
に涙を一杯溜めて、訴えるように私を振り仰いでいたのであった。
生不動
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
▼ もっと見る
ああ、はればれとしたお天気で気持のいいこと。かねちゃんは、涼しい
眸
(
め
)
を見張って、父さんの、今朝出て行きました、沖の方を眺めていました。
嵐の夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
頭の中は、色々の考え事に、ぽーっと上気し、床板の割れ目に落された
眸
(
め
)
は、何故とはなく、潤み勝ちだった。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
アスカムはその手を止めて、手ざはりの粗い
頁
(
ページ
)
のうへ、刷りの黄ばんだ
希臘
(
ギリシャ
)
文字に、すばやく
眸
(
め
)
を走らせる。
ジェイン・グレイ遺文
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
皮膚があまりにも白いにおわしい色をした誇らかな
気高
(
けだか
)
い顔の
眸
(
め
)
つきはきわめて貴女らしくて、何の欠点もない美人というほかはない。二十一、二であった。
源氏物語:51 宿り木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
眸
(
め
)
を放てば、気比松原の
彼方
(
かなた
)
、
日和
(
ひより
)
によっては、日本海も見えるというところに、清作はこの不思議な半面美人と並んで、いろいろのことを考えて居たのです。
天保の飛行術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
主
(
しゅ
)
よ
願
(
ねが
)
わくは
御
(
おん
)
眸
(
め
)
を
天
(
てん
)
より
垂
(
た
)
れ
給
(
たま
)
え、
爾
(
なんじ
)
が
右手
(
めて
)
もて
植
(
う
)
え
給
(
たま
)
えるこの
葡萄園
(
ぶどうぞの
)
を
見守
(
みまも
)
らせ
給
(
たま
)
え、
訪
(
おとな
)
い
給
(
たま
)
え。
決闘
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
頬がポッと淡桃色で、文鳥のような、黒い優しげな
眸
(
め
)
で、じッとこちらをうかがっている。
顎十郎捕物帳:16 菊香水
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
しばらく
眸
(
め
)
を合わせたまま、彼は、
苗字
(
みょうじ
)
をけんめいに思い出そうとしていた。でも、思い出せたのは、薄いベニヤ板に黒ペンキで書かれた、「好文社」という文字でしかなかった。
十三年
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
さうして
魚
(
さかな
)
くさい見物のなかに蠶豆の青い
液
(
しる
)
に小さな指さきを染めて、罪もなくその葉を鳴らしながら、ぱつちりと黒い
眸
(
め
)
を見ひらいて立つてゐたその兒をちらと私の見出した時に
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「大変な秘密?」理学士はきらりと
眸
(
め
)
を光らせながら、ひと膝乗りだした
幽霊屋敷の殺人
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして朗かな
眸
(
め
)
をした寄宿舍學校のおきやんのお孃さん方が寄つてゐた。
クリスマス・イーヴ
(旧字旧仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
紳士は
其儘
(
そのまゝ
)
かき
抱
(
いだ
)
きて、其の白きもの
施
(
ほど
)
こせる額を
恍惚
(
うつとり
)
と
眺
(
なが
)
めつ「どうぢや、浜子、嬉しいかナ」と言ふ顔、少女は
媚
(
こび
)
を
湛
(
たゝ
)
へし
眸
(
め
)
に見上げつゝ「
御前
(
ごぜん
)
、奥様に
御睨
(
おにら
)
まれ申すのが
怖
(
こは
)
くてなりませんの」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
急に涼しい
眸
(
め
)
からハラハラ涙が溢れ落ちてきた。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
こころを むしばみ
眸
(
め
)
を むしばみ
秋の瞳
(新字旧仮名)
/
八木重吉
(著)
然るに上人は何もご自身に求めるのではない、あのお
眸
(
め
)
に
映
(
うつ
)
るすべての者を、ひとしく倖せにしてやろうというほかに、他意はない。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
キラキラした髪……
挙措
(
ものごし
)
、
恰好
(
かっこう
)
……ちらと横から見た、
睫毛
(
まつげ
)
の長い
眸
(
め
)
……優しい
頤
(
おとがい
)
……決して決して、私の幻覚や見誤りなぞでは、ないのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
上品な
眸
(
め
)
つき、髪のぐあいが大姫君の顔も細かによくは見なかった薫であったが、これを見るにつけてただこのとおりであったと思い出され、例のように涙がこぼれた。
源氏物語:51 宿り木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
捕れた男の顔は、土色と変って
眤
(
じっ
)
と
眸
(
め
)
を据えて下を向いている——
此所
(
ここ
)
には文明の手が届いていない。警察の権利が及んでいない。全く暗黒の山奥で、人の知らぬ秘密が演ぜられる。
捕われ人
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
さらに冷たきもの、真珠、鏡、水銀のたま、二枚わかれし蛇の舌、
華魁
(
おいらん
)
の
眸
(
め
)
。
第二真珠抄
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
セラピオンは心配さうな、厳格な
眸
(
め
)
でぢつとわしを見たが、やがて云ふには
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
嬉々として、梅作が小さい
掌
(
て
)
をひらいている、——淋しげではあるが、お咲の顔も、自分をゆるすかのような
眸
(
め
)
で、
凝
(
じっ
)
と見ている。
山浦清麿
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
眠っているとばかり思っていた君太郎が、重そうな
丸髷
(
まるまげ
)
の下から、パッチリと
眸
(
め
)
を開いた。
生不動
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
さらに冷たきもの、真珠、鏡、水銀のたま、二枚わかれし蛇の舌、
華魁
(
おいらん
)
の
眸
(
め
)
。
観相の秋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
Kは、じっと
眸
(
め
)
を
凝
(
こら
)
して闇の中を覗き込んでいた。折々バサバサと鳴って硝子窓に当るものがあった。風に散る木の葉の音より大きかった。乾き切った
地面
(
じべた
)
から舞い
揚
(
あが
)
る黄色な埃でなかった。
扉
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
露八は、うしろへ手をのばして、
煤黒
(
すすぐろ
)
い
行燈
(
あんどん
)
を膝へよせた。カチッ、カチッと
燧石
(
ひうち
)
の青い火がとぶたびに、お蔦の白い横顔が
眸
(
め
)
に入る。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なるほど私の想像していたとおり、同じような顔立ちながら、姉の方は無口とみえて
恍惚
(
うっとり
)
と細目に
眸
(
め
)
を開いて、ただ夢のようにほほえんでいるばかり、私の相手は妹に任せている風でした。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
気のふれし
女寡婦
(
をんなやもめ
)
のいと蒼くしまりなき
眸
(
め
)
に朝顔のさく
桐の花
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その大沢治郎左衛門が、
虎髯
(
とらひげ
)
の中から眼鼻を出して、むっそりと歩いて来たので、番所の兵は、
眸
(
め
)
もうごかさずに緊張していた。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真っ赤になってうなずいた私を見ると、
円
(
つぶら
)
にみはった
眸
(
め
)
の中から大粒な涙が、
転
(
ころ
)
がり出たと思った次の瞬間、身を翻してスパセニアはたちまち
脱兎
(
だっと
)
のごとく、階下へ駈け降りていってしまいました。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
緑は
沁
(
し
)
みて、ゆめのゆめ、黒いその
眸
(
め
)
に啜り泣く
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
彼とともに、同じ方へ
眸
(
め
)
をやった。見れば、乾ききった白い道を、ふたりの武士が宙を飛んでこなたへ駆けて来るのである。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
悲しや鐘の中の
安珍
(
あんちん
)
、
金
(
きん
)
の中の
眸
(
め
)
真珠抄
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そして、覚運が
眸
(
め
)
でうなずいたのを見て、十日ほどの
暇
(
いとま
)
をいただいて京都へ行ってきたいという願いを申し出ると、覚運は
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
棒の秘術は虎の
眸
(
め
)
のなかに奇異な幻覚を持たせたにちがいない。何十人もの人間の影がまわりにあって、じぶんを
弄
(
なぶ
)
るように見えたであろう。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
川を
眸
(
め
)
でさがしていると、果たして、一艘の
大伝馬船
(
おおてんません
)
が
上流
(
かみ
)
からゆるやかに下ってくる。が、ただの船ではない。山のように家財が積んである。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
なおかつ如海は加えるものを与えず、女の
蘭瞼
(
まぶた
)
をむごたらしく上から見すえる。女は
眸
(
め
)
も気も
霞
(
かす
)
み、怨めしげに重なっている上の眼を見すえた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
弁馬はこう自嘲すると共に、すぐ明け方の夢の中から、お
悦
(
えつ
)
の
眸
(
め
)
と、角三郎の顔だけを脳膜にぼんやり映し出していた。
御鷹
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
本能は、母を慕い、感情は、反抗と
憎
(
にく
)
みをこめて、ねめつけて来るかの女の子だった。けれど、清盛のその
眸
(
め
)
は、とたんに、
羞恥
(
はにか
)
みと変じ出した。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
血みどろに
踠
(
もが
)
きながらも、頭も
眸
(
め
)
もうつろに
呆
(
ぼ
)
けたここちである。
病
(
やまい
)
かというに、肉体にはかわりはない。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ささやきあう公卿たちの
眸
(
め
)
をしり目に、忠盛は、わざと、刀を抜いて、自分の
鬢
(
びん
)
へ当ててみたりしていた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「私は、可愛いくって、しかたがないくらいなんだが、ご覧のとおりな……」女は、
眸
(
め
)
から針を放って
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
狡猾
(
こうかつ
)
な盗っと猫のように屈みこんでいた男の挙動が
凡
(
ただ
)
ではない。遠く
眸
(
め
)
を見あわせたと思うと、ぱっと植込みを斜めに駈け抜けて、長屋門の外へ逃げ出そうとした。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ひょいと、彼女の
眸
(
め
)
を眼にうけて、武松はいわれもなく胸がどきっとした。——そこへ階段の下から
武大
(
ぶだ
)
が
魚菜
(
ぎょさい
)
や肉を籠いッぱい入れたのを抱えて上がりかけて来た。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
片目をつぶって、
眸
(
め
)
の前に指を立てた。その方法で、灯のすすむ速度を測ると、ただ歩いているのではなくて、およそ人間の脚としては、最大の速さで城下へ来るものらしい。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いい出したら
肯
(
き
)
かない
眸
(
め
)
をしている。しかしあわれに少年は
縋
(
すが
)
るのだった。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
眸
漢検1級
部首:⽬
11画
“眸”を含む語句
双眸
眼眸
眸子
黒眸
一眸
明眸
明眸皓歯
眸中
星眸
眸底
皓歯明眸
眸瞼
丹唇明眸
雙眸
開眸
金眸
美眸
緑髪黒眸
展眸
眸鼻
...