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眩惑
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げんわく
ふりがな文庫
“
眩惑
(
げんわく
)” の例文
それは自ら危難を冒しておのれの
眩惑
(
げんわく
)
を分析し推究する。一種の荘厳な反動によって自然を眩惑するともほとんど言い得るであろう。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それでなくとも、
眩惑
(
げんわく
)
の底に流れているものは、いつも寂しい空虚感で、それを紛らすためには、絶えず違った環境が望ましかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私の
眩惑
(
げんわく
)
された眼は、われ知らず、姿見の深みを探つた。その
幻
(
まぼろし
)
の虚影のなかでは、何もかもが、現實より一層冷たく陰鬱に思はれた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
しかし喧騒、
咆哮
(
ほうこう
)
は、よく反響する絶壁に当って、何倍にもされながら、たかまりひろがり、
眩惑
(
げんわく
)
的な狂気にまでふくれあがった。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
ちょうど立派な風采だけをつけたようなもので、容貌風采、
出立
(
いでだち
)
がよいのであります。その出立に日本人は
眩惑
(
げんわく
)
されております。
古陶磁の価値:――東京上野松坂屋楼上にて――
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
▼ もっと見る
クリストフは幻覚に襲われ、一身を挙げて緊張していたが、
臓腑
(
ぞうふ
)
までぞっと震え上った。……ヴェールは裂けた。
眩惑
(
げんわく
)
すべき光景だった。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
その
叫喊
(
きょうかん
)
は生まれいずる者の
産声
(
うぶごえ
)
であり、その恐怖は新しき太陽に対する
眩惑
(
げんわく
)
であり、その血潮は新たに生まれいでた赤児の
産湯
(
うぶゆ
)
であった。
レ・ミゼラブル:01 序
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
読者に
完璧
(
かんぺき
)
の印象を与え、傑作の
眩惑
(
げんわく
)
を感じさせようとしたらしいが、私たちは、ただ、この
畸形
(
きけい
)
的な鶴の醜さに顔をそむける
許
(
ばか
)
りである。
猿面冠者
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
僕自身僕のポーズに
眩惑
(
げんわく
)
される傾向もたしかにあるが、正しく
敬虔
(
けいけん
)
なる心に
於
(
おい
)
て、あの家は暗い家だと僕はやっぱり判定する。笑うなかれ。
青い絨毯
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
これがむつかしく解しにくいもののように感じられたのは、その数量と新旧の
錯綜
(
さくそう
)
、及び用法の変化の複雑さに基いた一種の
眩惑
(
げんわく
)
であった。
地名の研究
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
彼等の死が成長であることを。その愛が持続であることを。彼等が孤独ならぬことを。情欲が
眩惑
(
げんわく
)
でなく、狂気であまり烈しからぬことを。
鎮魂歌
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
ある日の夕方、あれかこれかと考えながら立戻って格子戸をあけると、そこに不意に眼を
眩惑
(
げんわく
)
されるものを見せられました。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
だから、誰でも直ぐ
眩惑
(
げんわく
)
されて、敬愛するようになるが、よく観察すると、内面的には小心で、中々意地の悪い所があり、且つ
狡猾
(
ずる
)
い所がある。
血液型殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
世間は、酒の歌と、女の脂粉と、元禄町人の
豪奢
(
ごうしゃ
)
と、侍たちの
伊達小袖
(
だてこそで
)
と、犬医者と犬目附の羽振と、あらゆる
眩惑
(
げんわく
)
や懐疑なものに満ちていた。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いわゆるスモークボールを飛ばして打者を
眩惑
(
げんわく
)
する名投手グローブの投球の秘術もやはり主として手首にあるという説を近ごろある人から聞いた。
「手首」の問題
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
圧倒され
眩惑
(
げんわく
)
されていただけでなく、そういう場合にどうすべきかということを知らなかったからだ。みすずは彼よりもはるかに能動的であった。
あだこ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
我らもこの点に留意して、奇蹟の現象そのものに
眩惑
(
げんわく
)
せざるはもちろん、奇蹟の意義をばあまりに私的・個人的に解することは避けねばならない。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
青の
眩惑
(
げんわく
)
するやうな色の、
女唐洋傘
(
めたうがさ
)
を、開いたりつぼめたり、つるしたりするその店の商業ぶりとおなじく、若者たちの眼をひかないではゐなかつた。
「郭子儀」異変
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
種々雑多の現象に
眩惑
(
げんわく
)
されて、
動
(
やや
)
ともするとこれを
見逃
(
みのが
)
そうとするが、山川草木の間に起る変化は他に煩わされることなく明らかにこれを見る事が出来る。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
市長さんから、大きな
金の鍵
(
ゴオルデンキイ
)
を頂くまでの市中行進も、
夢
(
ゆめ
)
のような
眩惑
(
げんわく
)
さに
溢
(
あふ
)
れたものでしたが、そのうち、忘れられぬ一つの現実的な風景がありました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
眩惑
(
げんわく
)
、
驚愕
(
きょうがく
)
——勿論その一
刹那
(
せつな
)
に、レヴェズが知性のすべてを失ってしまったことは云うまでもないのである。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
両君——篠田が山木剛造の娘に恋着して、其の二万円の持参金に
眩惑
(
げんわく
)
して、資本党の門に降参したことは
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
奇怪な馬が魔法鏡の前を通るたびに、ギョッとする大映しになって、のぞき見する男を
眩惑
(
げんわく
)
させた。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と
病
(
やまい
)
の床に小親とわれと引きつけては、二人の手を取り戯れて、小親に顔赤うさせし愉快の
女
(
ひと
)
は、かくて手品師が人の眼を
眩惑
(
げんわく
)
せしむる、一種の魔薬となり果てたり。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし当時の私は
唯
(
ただ
)
眩惑
(
げんわく
)
されるだけであった。そして今頃になって、頭の片隅に残る色々な実験室内の場面を
綴
(
つづ
)
り合せながら、
朧
(
おぼ
)
ろにその輪郭をたどるような始末である。
寺田先生の追憶:――大学卒業前後の思い出――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
探検一行二十七名上越国界を定むと
書
(
しよ
)
す、
少
(
しば
)
らく
休憩
(
きうけい
)
をなして或は
測量
(
そくりやう
)
し或は
地図
(
ちづ
)
を
描
(
ゑが
)
き、各
幽微
(
いうび
)
を
闡明
(
せんめい
)
にす、且つ風光の
壮絶
(
さうぜつ
)
なるに
眩惑
(
げんわく
)
せられ、左右
顧盻
(
こめん
)
去
(
さ
)
るに
忍
(
しの
)
びず
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
しかし私たち国民は決してこのような「積極的自衛策」の口実に
眩惑
(
げんわく
)
されてはなりません。
何故の出兵か
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
とにかく
独逸
(
ドイツ
)
の文化を
罵
(
ののし
)
るものが多くなって来た。早稲田大学で四十年来学問の独立を唱えているのはそういう軽薄な風潮に
眩惑
(
げんわく
)
されないようにしたいというのが本旨である。
始業式に臨みて
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
国芳は武者奮闘の戦場を描き美麗なる
甲冑
(
かっちゅう
)
槍剣
(
そうけん
)
旌旗
(
せいき
)
の紛雑を
極写
(
きょくしゃ
)
して人目を
眩惑
(
げんわく
)
せしめぬ。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
人々はその
絢爛
(
けんらん
)
さに長い間
眩惑
(
げんわく
)
せられた。実際その時から美術は高まり、工藝は沈み始めた。そうして美術のみが美の標準を与えた。しかもその頃は個人主義勃興の時代である。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
胸のポケットの革の鉛筆
揷
(
さし
)
に並べて揷した、赤や青や紫やの色とり/″\の鉛筆と、それ等の鉛筆の冠つた光彩陸離たるニッケルのカップとが、私の眼を
眩惑
(
げんわく
)
させたのであつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
けれども読者の
心目
(
しんもく
)
を
眩惑
(
げんわく
)
するに足る
妖麗
(
ようれい
)
な彼の叙述が、
鈍
(
にぶ
)
い色をした卑しむべき原料から人工的に生れたのだと思うと、それを自分の精神状態に比較するのが急に
厭
(
いや
)
になった。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
見あげるようなその
巨躯
(
きょく
)
に圧倒され、
眩惑
(
げんわく
)
されていた。彼らの云うところにむかって、さて、それは——と、あれこれ思いめぐらす足がかりがこちらには何一つないのであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
彼の
酷
(
むご
)
たらしい
抱擁
(
ほうよう
)
の下に、死ぬほどに苦しみ悶えながら彼女の純潔が奪われていく瞬間を想像すると、渡瀬はふたたび
眩惑
(
げんわく
)
するような欲望の衝動を感じないではいられなかった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
そして、その間にかれが示した
気魄
(
きはく
)
と機知と、
明徹
(
めいてつ
)
な論理と、そして自然のユーモアとは、異変に
眩惑
(
げんわく
)
されていた塾生たちを常態に引きもどすのに大きな役割を果たしたのである。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
あるいは実業家が
拝謁
(
はいえつ
)
を賜わりたりと聞き、おのれも実業家たらんと思うように、一時の現象に
眩惑
(
げんわく
)
されて
終身
(
しゅうしん
)
の方針を定むることは、必ず悪い結果をもたらすとは断言されぬが
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
眼を射る小判の色に
眩惑
(
げんわく
)
されて、一枚二枚と小声で数えながら金を拾いあげはじめたが! その一つ一つに、出羽様の
極印
(
ごくいん
)
で、丸にワの字が小さく押してあるのには、おさよはもとより
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
砂利
(
じゃり
)
車のあと押しをして、熱い熱い日の下に働いていたが、ふとはげしい
眩惑
(
げんわく
)
を感じて地に倒れ、
援
(
たす
)
けられて自分の小屋に送り込まれてからは、いかな丈夫な
身体
(
からだ
)
もどうすることもできず
ネギ一束
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
中津へ移住する江戸の定府藩士は妻子と共に大都会の軽便流を田舎藩地の中心に
排列
(
はいれつ
)
するの
勢
(
いきおい
)
なれば、すでに
惰弱
(
だじゃく
)
なる
田舎
(
いなか
)
の士族は、あたかもこれに
眩惑
(
げんわく
)
して、ますます
華美
(
かび
)
軽薄
(
けいはく
)
の風に移り
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
はじめ大川の盛名に
眩惑
(
げんわく
)
されていた文壇は、米倉の戯曲をさほどには買わなかった。けれども米倉は隠忍した。我慢した。そうして大川がその絶頂に達したと思われた頃、彼はがぜん奮起した。
黄昏の告白
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
ルイザのその両眼を
眩惑
(
げんわく
)
せしめんとしている必死の戯れのようであった。
ナポレオンと田虫
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
束
(
つか
)
の間の
閃光
(
せんこう
)
が私の生命を輝かす。そのたび私はあっあっと思った。それは、しかし、無限の生命に
眩惑
(
げんわく
)
されるためではなかった。私は深い絶望をまのあたりに見なければならなかったのである。
筧の話
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
この有様と、友の
面
(
おも
)
に現われた
疲憊
(
ひはい
)
の色とから、予は彼が前夜中寝床に就かずにいたのだと判断した。その室の構造と装飾とにおける明らかな意匠は、人を
眩惑
(
げんわく
)
し驚倒させるということであった。
しめしあわせ
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
それらの熱情的の愛の言葉は、わたしの感情や理性を
眩惑
(
げんわく
)
させました。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
軽い
眩惑
(
げんわく
)
が、私の後頭部から、
戦慄
(
せんりつ
)
を
伴
(
ともな
)
って拡がって行った——
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
彼のうちにまた彼の上に司教からともされた仮借なき光明が、盲目ならんと欲する彼を
強
(
し
)
いて
眩惑
(
げんわく
)
さしたことも、幾度であったろう。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
この時代の多くのフランス人と同じく、その栄光の太陽の遠い光に
眩惑
(
げんわく
)
されていた。その戦役をやり直し、戦いを交え、作戦を議していた。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
とあるのから見ても、そうした
婦人
(
ひと
)
で、並々の容色と見えれば、厚化粧で人目を
眩惑
(
げんわく
)
させる美女よりも、確かであるということが出来ようかと思われる。
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
眼を
眩惑
(
げんわく
)
するような、極彩色の浮世絵の折本が一冊、ほころびかかっているのを見たものですから、油壺をそこへ差置くと、その折本をたぐってみました。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それが第一義でありまた最大の難事であるのに、われわれの目は伝統に目かくしされ、オーソリティの光に
眩惑
(
げんわく
)
されて、天然のありのままの姿を見失いやすい。
備忘録
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
“眩惑”の意味
《名詞》
目が眩んで正常な判断を失うこと。また、そのようにさせること。
(出典:Wiktionary)
眩
漢検1級
部首:⽬
10画
惑
常用漢字
中学
部首:⼼
12画
“眩惑”で始まる語句
眩惑操作