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甥
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おい
ふりがな文庫
“
甥
(
おい
)” の例文
まもなく
宅
(
うち
)
から持って来た花瓶にそれをさして、
室
(
へや
)
のすみの洗面台にのせた。同じ日に
甥
(
おい
)
のNが西洋種の
蘭
(
らん
)
の
鉢
(
はち
)
を持って来てくれた。
病室の花
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「——そのうえ店のこと万端取仕切っている
甥
(
おい
)
の吉三郎さんが、大坂へ商売用で行っているとかで、迎えの飛脚を出す騒ぎでしたよ」
銭形平次捕物控:149 遺言状
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
皆で力を貸して守立てようってことになり、おかみさんの
甥
(
おい
)
に当るとかいう今の旦那を養子に入れて、店を続けることになったんです
夜の蝶
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
さらに頼朝の兄、
信田三郎先生義憲
(
しだのさぶろうせんじょうよしのり
)
を尋ねて
信田
(
しだ
)
の浮島へ下り、木曽冠者義仲も
甥
(
おい
)
なので令旨を伝えようと、行家は中山道へ赴いた。
現代語訳 平家物語:04 第四巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
九郎右衛門は是非なく
甥
(
おい
)
の事を思い棄てて、江戸へ立つ支度をした。路銀は使い果しても、
用心金
(
ようじんきん
)
と衣類腰の物とには手は着けない。
護持院原の敵討
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
だから津田は手もなくこの叔父に育て上げられたようなものであった。したがって二人の関係は普通の叔父
甥
(
おい
)
の
域
(
いき
)
を通り越していた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
権右衛門はハッと思って透かして見ると、雨龍の
甥
(
おい
)
で非常な腕ききなところから、投げ槍小六と異名されている郷士の一人であった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
甥
(
おい
)
と
姪
(
めい
)
の白痴であることを話しだし、どうにかしてこれにいくぶんの教育を加えることはできないものかと、私に相談をしました。
春の鳥
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
その目見得の晩に私の
甥
(
おい
)
が急性
腸胃加答児
(
ちょういかたる
)
を発したので、
夜半
(
よなか
)
に医師を呼んで灌腸をするやら注射をするやら、一家が徹夜で立騒いだ。
二階から
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
甥
(
おい
)
に留守を頼んで置いて、一寸三吉は新宿の
停車場
(
ステーション
)
まで妻子を送りに行った。帰って見ると、正太は用事ありげに叔父を待受けていた。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その間の長さと申しましたら、橋の下の私の
甥
(
おい
)
には、体中の
筋骨
(
すじぼね
)
が妙にむず
痒
(
がゆ
)
くなったくらい、待ち遠しかったそうでございます。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それはジルノルマン氏の
父方
(
ちちかた
)
の系統で、
甥
(
おい
)
の子に当たり、一族の外にあって、いずれの家庭からも遠く離れ、兵営の生活を送っていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それは彼の伯母が「お上からの仰せつけで」自分の
甥
(
おい
)
が名誉ある仕事を「お引きうけ申し」ている事を近所にふれ回したからであった。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
町を通るついでに、いつものとおり、妹と
甥
(
おい
)
とを抱擁しにやって来たのであった。でも翌朝はまた出かけると、前もって言っておいた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「ああ、それは私の弟だ。お前は、まあ、私の
甥
(
おい
)
だったんだね。私は、しばらく外国へ行っていた、お前の
伯父
(
おじ
)
さんなんだよ。」
アラビヤンナイト:01 一、アラジンとふしぎなランプ
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
叔父
(
おじ
)
さんは、
博物館
(
はくぶつかん
)
の
方
(
ほう
)
を
名残惜
(
なごりお
)
しそうに、もう一
度
(
ど
)
見返
(
みかえ
)
ったが、つい
甥
(
おい
)
の
後
(
あと
)
からついて
美術館
(
びじゅつかん
)
の
入
(
い
)
り
口
(
ぐち
)
をはいってゆきました。
町の真理
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
笹村の
甥
(
おい
)
が一人、
田舎
(
いなか
)
から出て来たころには家が狭いので、一緒にいた
深山
(
みやま
)
という友人は同じ長屋の別の家に住むことになった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
甥
(
おい
)
が死んだ。
従弟
(
いとこ
)
が死んだ。私は、それらを風聞に依って知った。早くから、故郷の人たちとは、すべて音信不通になっていたのである。
東京八景:(苦難の或人に贈る)
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
女はそれからうえ云うのを
厭
(
いと
)
うように口をつぐんだ。父親はふと伯父
甥
(
おい
)
で
陸
(
おか
)
へあがって道楽でもするのであるまいかと思った。
参宮がえり
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
いいえ、それがちっとも不審ではござりませぬ。あれなる番頭十兵衛は、先代の
甥
(
おい
)
でござりまして、口やかましく身代の管理を
右門捕物帖:18 明月一夜騒動
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
出張の途次、余を訪いたる
甥
(
おい
)
の政利も、その隊に加わらむとせり。余無事に旭川に戻りて、甥は愁眉を開き、有志も安心せり。
層雲峡より大雪山へ
(新字新仮名)
/
大町桂月
(著)
叔父
(
おじ
)
のリチャード・ロイドはその
甥
(
おい
)
を理想的に育て上げることを神聖かつ最高の義務と信じて、これにその一身をささげた。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
晩年は藤森とかいう自分の血すじの
甥
(
おい
)
を近づけていたが、その甥は鉱山かなんかに手を出し、失敗して、それきり
失踪
(
しっそう
)
してしまったそうである。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「ながまさこそかたきだけれども子どもになんの罪があろう、わたしには
甥
(
おい
)
になるのだからいとおしゅうてたずねるのだ」
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
福田氏は、数字が「九」まで進んだ時、もう我慢がし切れなくなって、
甥
(
おい
)
の玉村
二郎
(
じろう
)
を呼びよせて、この快活な若者の智恵を借りることにした。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その「お
髯
(
ひげ
)
の伯父」(
甥
(
おい
)
たちはそう呼んでいた。)の物静かさに対して、上の伯父の狂躁性を帯びた峻厳が、彼には、大人げなく見えたのである。
斗南先生
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
幸いオークランドに小農地を持ってとにかく暮らしを立てている
甥
(
おい
)
を尋ねて
厄介
(
やっかい
)
になる事になったので、礼かたがた
暇乞
(
いとまご
)
いに来たというのだった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
広島の兄からは、間近に迫った
甥
(
おい
)
の結婚式に戻って来ないかと問合せの手紙が来ていた。倉敷の妹からも、その途中彼に立寄ってくれと云って来た。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
蘿月はその頃お豊の家を訪ねた時にはきまって
甥
(
おい
)
の長吉とお糸をつれては
奥山
(
おくやま
)
や
佐竹
(
さたけ
)
ッ
原
(
ぱら
)
の
見世物
(
みせもの
)
を見に行ったのだ。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
何故だかわからないままになっているのです……しかしタッタ一人その源次郎氏の
甥
(
おい
)
というのが残っていたそうです。
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「わしの
甥
(
おい
)
なんだよ」と、叔父は言った。「いっしょに連れてきたよ」そして、紹介した。「業務主任ヨーゼフ・K」
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
彼の作品に比すれば、その孫の
光甫
(
こうほ
)
や
甥
(
おい
)
の子
光琳
(
こうりん
)
および
乾山
(
けんざん
)
の立派な作もほとんど光を失うのである。いわゆる光琳派はすべて、茶道の表現である。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
御孫である左大将家の長男次男は紫夫人の
甥
(
おい
)
としても、主催者の子としても席上の用にいろいろと立ち働いていた。
源氏物語:34 若菜(上)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
血のつながりのない他人よりも、
甥
(
おい
)
を子供に迎えたいというのは当然なことである。しかし栄介の父母はそれに対して、若干のこだわりを感じたらしい。
狂い凧
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
息子と
甥
(
おい
)
に見送られて発車した西川夫婦は、長いこと無言で考え込んでいた。無論我儘な独息子の身の上である。
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
司令官も、一彦が帆村探偵の
甥
(
おい
)
であることは、よく知っていました。この少年が、なにをいいだすやらと、急に顔をにこにこさせて一彦をながめました。
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
女が酒の醸造を
掌
(
つかさど
)
ったことは、近昔の文学では狂言の「
姥
(
うば
)
が酒」に実例がある。
無頼
(
ぶらい
)
の
甥
(
おい
)
が鬼の面を
被
(
かぶ
)
り、
伯母
(
おば
)
の老女を
脅
(
おど
)
して貯えの酒を飲むのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
火事場の中には、テンコツさん一家の一人に、肺病で寝ている、来春大学を出る法律書生の、父のたった一人の
甥
(
おい
)
もいたから、家のものは案じきっていた。
旧聞日本橋:07 テンコツさん一家
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
店を弟子であり
甥
(
おい
)
でもある現マネージャア、ヂュプラに
譲
(
ゆず
)
って生れ故郷のブレターニュのルンヌスに引退した。
食魔に贈る
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
しかるにその
甥
(
おい
)
なる
田崎某
(
たざきぼう
)
妾に向かいて、ある遊廓に
潜
(
ひそ
)
めるよし告げければ、妾先ず行きて磯山の在否を問いしに、
待合
(
まちあい
)
の
女将
(
おかみ
)
出
(
い
)
で来りて、あらずと弁ず。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
有家だけが六条家の人だが、これも歌の上では定家についてきている人で、その
甥
(
おい
)
知家
(
ともいえ
)
は定家の門人になった。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
しかもその婿さんというのは、
継母
(
おっか
)
さんの
甥
(
おい
)
だったんですからね。私はこうして、今に恋というものを知らないんですよ。ふみさん。つまんないわねえ……。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
兄の子供の新太郎に忠次郎といって彼には
甥
(
おい
)
に当る相棒がいたが、ある日忠次郎を相手に剣術を使ったら、出会い頭に胴をぶん殴られて目をまわしてしまった。
安吾史譚:05 勝夢酔
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
この六日は
下
(
しも
)
の河原で年に一度の花火の大会がある
筈
(
はず
)
であった。名古屋の
甥
(
おい
)
たちや隆太郎にも見に来るように通知はしたが、それもどうやら怪しくなって来る。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
この
家
(
うち
)
は旦那様、
停車場
(
ステエション
)
前に
旅籠屋
(
はたごや
)
をいたしております、
甥
(
おい
)
のものでも
私
(
わたくし
)
はまあその厄介でございます。
政談十二社
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
丁度ドストエフスキーの『
虐
(
しいた
)
げられた人々』中のイユメニエフという老人が青年作家たる若い
甥
(
おい
)
の評判高い処女作を読んで意外な作才に驚くと同一の趣きがあった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
それじゃア此の
布子
(
ぬのこ
)
を貸せと云ってはア何でも持出して遣い果した
後
(
あと
)
で、何うにも斯うにも仕方が無いが、まア真実の
甥
(
おい
)
だからと云って文吉も可愛がって居たゞが
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
けれども血は
繋
(
つなが
)
らずとも縁あッて叔母となり
甥
(
おい
)
となりして見れば、そうしたもんじゃア有りません。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
されどもこなたへはたやすく顔も出さざるを、世間
気質
(
かたぎ
)
の善平は大いに面白からず思いぬ。第一不断からおれを
軽蔑
(
けいべつ
)
して、と伯父
甥
(
おい
)
の間は次第にむずかしくならんとす。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
其墓場の一端には、彼が
甥
(
おい
)
の墓もあった。甥と云っても一つ違い、五つ六つの
叔父
(
おじ
)
甥は常に共に遊んだ。ある時叔父は筆の
軸
(
じく
)
を甥に与えて、犬の如く
啣
(
くわ
)
えて振れと命じた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
“甥”の意味
《名詞》
(おい)兄弟姉妹の息子。
(出典:Wiktionary)
“甥”の解説
甥(おい)とは、自分の兄弟姉妹の息子を指す語。対義語は姪。
(出典:Wikipedia)
甥
漢検準1級
部首:⽣
12画
“甥”を含む語句
甥御
令甥
甥子
愛甥
阿甥
総領甥
甥御様
甥姪
甥女
甥君
我甥
小甥
子甥
女甥
外甥女
外甥児
外甥
叔甥
叔父甥
伯父甥