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浪花節
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なにわぶし
ふりがな文庫
“
浪花節
(
なにわぶし
)” の例文
全然出所が別だから、親子の血を引く筈は無いが、見ように依っては
浪花節
(
なにわぶし
)
の何処かにありそうな、親子生別れの場面が展開された。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
上框
(
あがりがまち
)
に腰をかけていたもう一人の男はやや
暫
(
しば
)
らく彼れの顔を見つめていたが、
浪花節
(
なにわぶし
)
語りのような妙に張りのある声で突然口を切った。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
まず
御定
(
おきま
)
りの
活惚
(
かっぽ
)
れの小屋が掛かる。するとデロレン
祭文
(
さいもん
)
が出来る(これは
浪花節
(
なにわぶし
)
の元です)。いずれも
葭簀張
(
よしずば
)
りの小屋掛け。
幕末維新懐古談:62 佐竹の原繁昌のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
これまで芳太郎は、中村から小遣いを
強求
(
せび
)
っては、
浪花節
(
なにわぶし
)
や講釈の
寄席
(
よせ
)
へ入ったり、小料理屋で飲食いをしたりして、ぶらぶら遊んでいた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
大祭日には「
教誨
(
きょうかい
)
」で教誨師の話の後で、
浪花節
(
なにわぶし
)
のレコードなどをかけて聴かしてくれた。また昼飯の後、大福餅をくれた。
その人
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
▼ もっと見る
通りかかった火の番小屋の中から、
疳高
(
かんだか
)
い
浪花節
(
なにわぶし
)
の放送が
洩
(
も
)
れてきた。声はたいへん
歪
(
ゆが
)
んでいるけれど、
正
(
まさ
)
しく
蒼竜斎膝丸
(
そうりゅうさいひざまる
)
の「
乃木将軍墓参
(
のぎしょうぐんぼさん
)
の旅」
人造人間事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
『今夜
宅
(
うち
)
で
浪花節
(
なにわぶし
)
をやらすはずだから幸ちゃんもおいでなさいな、そらいつかの
梅竜
(
ばいりゅう
)
』お神さんは卒然言葉をはさんだ。
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
浪花節
(
なにわぶし
)
なら前置きばっかり。エライ議論が出ておりますけれど。確かな事実は一つもわからん……チャカポコチャカポコチャカポコチャカポコ……
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
日本の
浪花節
(
なにわぶし
)
みたいな、また、講釈師みたいな、勇壮活溌な作家たちには、まるで理解ができないのではあるまいか。
豊島与志雄著『高尾ざんげ』解説
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
此の物音の中でも、殊に
甚
(
はなはだ
)
しくわたくしを苦しめるものは九州弁の政談、
浪花節
(
なにわぶし
)
、それから学生の演劇に類似した朗読に洋楽を取り交ぜたものである。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その代り木唄——さっきは木唄と云った。しかしこの時、彼らの揚げた声は、木唄と云わんよりはむしろ
浪花節
(
なにわぶし
)
で
咄喊
(
とっかん
)
するような
稀代
(
きたい
)
な調子であった。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
浄瑠璃
(
じょうるり
)
を聞いても、何をうなっているやらわからない。それが不思議な縁で、ふいと
浪花節
(
なにわぶし
)
と云うものを聴いた。
余興
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
担いで
浪花節
(
なにわぶし
)
で
歩行
(
ある
)
いては、大事な土地が
汚
(
けが
)
れるって。……橋は台なし、堪らないって、姉さんが云うんだわ。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「若いうちは覚えるがよい。
浪花節
(
なにわぶし
)
でも、ヘボ碁でも何でも研究するがよい。サン・シモンがそう言っている」
胡堂百話
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ツイこの頃も或る雑誌で考証されていたが、こういう臆断は
浪花節
(
なにわぶし
)
が好きだから右傾、小劇場の常連だから左傾と臆測するよりももっと早呑み込み過ぎる。
八犬伝談余
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「そうですねえ、広告があっちこっちに張ってありましたねえ、何か
浪花節
(
なにわぶし
)
があるって言うじゃありませんか」
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
あれは全く尋常小学を出てから、
浪花節
(
なにわぶし
)
を聴いたり、
蜜豆
(
みつまめ
)
を食べたり、男を追っかけたりばかりしていた、そのせいに違いない。こうお君さんは確信している。
葱
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「あ痛え、………下司張った声は己の地声さ、己あ
浪花節
(
なにわぶし
)
語りにならなかったのが、天下の恨事だ」
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
二階で勝ちゃんが大きな声で
浪花節
(
なにわぶし
)
を歌っている。電気もつけないで薄暗い所で歌をうたっている。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
湯帰りに師匠のところへ行って、一番
唸
(
うな
)
ろうという若い
衆
(
しゅ
)
も、今では五十銭均一か何かで新宿へ繰込む。かくの如くにして、
江戸子
(
えどっこ
)
は次第に亡びてゆく。
浪花節
(
なにわぶし
)
の寄席が繁昌する。
思い出草
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
浪花節
(
なにわぶし
)
の寄席の
広告
(
ひろめ
)
でも、もう少し気の利いたのを使うと思われるような代物だった。
勧善懲悪
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
何処からか聞えて来る蓄音機の
浪花節
(
なにわぶし
)
。わびしげな活動小屋に「黒田誠忠録」がかかっている。切符売の女の
窶
(
やつ
)
れた顔。小舎の前にしゃがんでトーキイの音だけ聞いている男二人。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
オリムピック
応援歌
(
おうえんか
)
、さては
浪花節
(
なにわぶし
)
に近代詩といった取り交ぜで、興がわくままに大声はりあげ、しかも
音痴
(
おんち
)
はこの上なしというのですから、他人には見せも聞かせもしたくない
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
あまり淋しいので、
夜
(
よる
)
隣家
(
となり
)
の人々を案内にやったら、皆
浪花節
(
なにわぶし
)
に出かけて留守だった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
旅廻りの
浪花節
(
なにわぶし
)
語りにまで身を
堕
(
おと
)
していたが、そのうち再び落語家の小かつさんに拾われ、それからは心をいれかえて一しょう懸命に高座を勤めていたので、小かつさんにも可愛がられ
三つの挿話
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
口三味線
(
くちじゃみせん
)
の
越後獅子
(
えちごじし
)
に毎々人を驚かした画家はモン・パルナッスから、
追分
(
おいわけ
)
、
端唄
(
はうた
)
、
浪花節
(
なにわぶし
)
、あほだら経、その他の隠し芸を
有
(
も
)
った彫刻家や画家は
各自
(
めいめい
)
に別れ住む町々から
別離
(
わかれ
)
を惜みに来た。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
うす汚ない小さな酒場の隅で、土間を下駄で踏みにじり、
白粉
(
おしろい
)
の
剥
(
は
)
げたようなぶくぶくに肥った女給の首を抱き、ふいに
浪花節
(
なにわぶし
)
でオセローのせりふを喚きだし、ぐいぐいと
麦酒
(
ビール
)
を
喉
(
のど
)
へながしこんだ。
陽気な客
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これと同じような聯想作用に関係しているためかと思われるのは、例えば落語とか
浪花節
(
なにわぶし
)
とかを宅のラジオで聞くと、それがなんとなくはなはだ不自然な、あるまじきものに聞こえて困ることである。
ラジオ雑感
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
後は
浪花節
(
なにわぶし
)
を
呻
(
うな
)
る声と、
束藁
(
たわし
)
のゴシゴシ水のザブザブ。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
「すると
浪花節
(
なにわぶし
)
も芸術かい?」
心のアンテナ
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
「あら、
浪花節
(
なにわぶし
)
が聞こえる」
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
浪花節
(
なにわぶし
)
みたいだな」
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
しかし歌劇とか現代劇とか、
浪花節
(
なにわぶし
)
芝居とかいった旅芸人は、入れ替わり立ち替わり間断なくやって来て、小屋の
空
(
あ
)
く時はほとんどなかった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
二人
(
ふたり
)
は連れだって中二階の前まで来たが、
母屋
(
おもや
)
では
浪花節
(
なにわぶし
)
の
二切
(
ふたき
)
りめで、
大夫
(
たゆう
)
の声がするばかり、みんな耳を澄ましていると見えて
粛然
(
しん
)
としている。
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「そうだ、よく知っているね。どこで、そんなことおぼえたのかね。ははあ分った。
浪花節
(
なにわぶし
)
をきいて、おぼえたね」
未来の地下戦車長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
自動車にも乗ろう。園遊会にも行こう。
浪花節
(
なにわぶし
)
も聞こう。女優の
鞦韆
(
ぶらんこ
)
も下からのぞこう。
沙翁劇
(
さおうげき
)
も見よう。洋楽入りの
長唄
(
ながうた
)
も聞こう。頼まれれば小説も書こう。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
御経の文句を
浪花節
(
なにわぶし
)
に
唄
(
うた
)
って、金盥の
潰
(
つぶ
)
れるほどに音楽を入れて、
一荷
(
いっか
)
の水と同じように
棺桶
(
かんおけ
)
をぶらつかせて——最後に、半死半生の病人を、無理矢理に引き摺り起して
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
行
(
ゆ
)
く先々の庄屋のもの
置
(
おき
)
、村はずれの辻堂などを仮の
住居
(
すまい
)
として、昼は村の註文を集めて仕事をする、傍ら夜は村里の人々に時々の
流行唄
(
はやりうた
)
、
浪花節
(
なにわぶし
)
などをも唄って聞かせる。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二三日前から泊りこんでいる
浪花節
(
なにわぶし
)
語りの夫婦が、二人共黒いしかん巻を首にまいて朝早く出て行くと、煤けた広い台所には
鰯
(
いわし
)
を焼いている母と私と二人きりになってしまう。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
彼女は不平を重ねながら、しまいにはやはり電燈会社の技師か何かと結婚するであろう。結婚した
後
(
のち
)
はいつのまにか
世間並
(
せけんな
)
みの細君に変るであろう。
浪花節
(
なにわぶし
)
にも耳を傾けるであろう。
文放古
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その内に始まった
饗応
(
きょうおう
)
の演芸が、いかにも亜米利加三界まで流れてきたという感じの
浪花節
(
なにわぶし
)
で、
虎髭
(
とらひげ
)
を
生
(
はや
)
した語り手が苦しそうに見えるまで面を
歪
(
ゆが
)
めて水戸黄門様の声を
絞
(
しぼ
)
りだすのに
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
入場料も高く、また盆正月の他にもここに
浪花節
(
なにわぶし
)
とか大魔術とか活動写真とか、たえず何かしらの興行物があり、この他、開気館という小ぢんまりした気持のいい寄席が東一番丁にあって
惜別
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼等の大好きな芝居や、
浪花節
(
なにわぶし
)
や、寄席がだんだん這入らなくなって来る。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
おきまりの会費で存分愉しむ肚の不粋な客を相手に、息のつく間もないほど
弾
(
ひ
)
かされ歌わされ、
浪花節
(
なにわぶし
)
の三味から
声色
(
こわいろ
)
の合の手まで勤めてくたくたになっているところを、
安来節
(
やすぎぶし
)
を
踊
(
おど
)
らされた。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「
浪花節
(
なにわぶし
)
とボクシングと、野球と——」
奇談クラブ〔戦後版〕:03 鍵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
公園と見ればベンチや芝生へ大の字なりに寝転んで
鼾
(
いびき
)
をかこうが
浪花節
(
なにわぶし
)
を
唸
(
うな
)
ろうが
是
(
これ
)
また勝手次第なので、
啻
(
ただ
)
に気候のみならず、東京中の建築物とも調和して
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
三館共通十銭也で、オペラに、活動に、
浪花節
(
なにわぶし
)
。ここだけは大入満員のセイキョウだ。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
引傾
(
ひっかし
)
いだ小屋に、
筵
(
むしろ
)
を二枚ぶら下げて、こいつが戸になる……横の羽目に、半分ちぎれた
浪花節
(
なにわぶし
)
の
比羅
(
びら
)
がめらめらと動いているのがありました、それが
宿
(
しゅく
)
はずれで、もう山になります。
唄立山心中一曲
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
二三時間たった
後
(
のち
)
、白は貧しいカフェの前に茶色の子犬と
佇
(
たたず
)
んでいました。昼も薄暗いカフェの中にはもう赤あかと電燈がともり、音のかすれた
蓄音機
(
ちくおんき
)
は
浪花節
(
なにわぶし
)
か何かやっているようです。
白
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
佐渡情話とか言う
浪花節
(
なにわぶし
)
のキネマを見て、どうしてもがまんができず、とうとう大声をはなって泣きだして、そのあくる朝、
厠
(
かわや
)
で、そのキネマの新聞広告を見ていたら、また
嗚咽
(
おえつ
)
が出て来て
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
浪
常用漢字
中学
部首:⽔
10画
花
常用漢字
小1
部首:⾋
7画
節
常用漢字
小4
部首:⽵
13画
“浪花節”で始まる語句
浪花節語
浪花節屋
浪花節的