曠野あらの)” の例文
そらを仰ぎ、地をたたきて哭悲なきかなしみ、九三ともにもと物狂はしきを、さまざまといひなぐさめて、かくてはとてつひ九四曠野あらのけぶりとなしはてぬ。
芭蕉の「曠野あらのの夢、宗祇の月をながめて」といった、あの臨終の言葉にこもるあくがれごこち、どちらも芸術の執心にきざさぬものはない。
歌にていはば万葉調、俳句にていはば曠野あらの調、詩にていはば『詩経しきょう』とか何とかいふ、ごく古き調の上において始めてしか申すべきにやと存候。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
今日けふも我等に日毎のマンナを與へたまへ、これなくば、この曠野あらのをわけて進まんとて、最もつとむる者も退く 一三—一五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
一面いちめんくさしげつて、曠野あらのつた場所ばしよで、何故なぜ一度いちど人家じんかにはだつたか、とおもはれたとふのに、ぬま眞中まんなかこしらへたやうな中島なかじまひとつたからです。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
されど斯くてわれカムパニアの曠野あらのに日を送ることなくば、かゝる貴人のいかでか我を認め得給はん。
だから索寞さくばくたる曠野あらのの方角へ向けて生活のみちを歩いて行きながら、それがかえって本来だとばかり心得ていた。温かい人間の血を枯らしに行くのだとは決して思わなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我儕われらエジプトの地において、肉の鍋の側に坐り、あくまでにパンを食いし時に、エホバの手によりて、死にたらばよかりしものを。汝はこの曠野あらのに我等を導きいだして、この全会を
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
其後、しきりなく断続したのは、山の獣の叫び声であった。大和の内も、都に遠い広瀬・葛城あたりには、人居などは、ほんの忘れ残りのように、山陰などにあるだけで、あとは曠野あらの
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
と氣のついた時は、此曠野あらのに踏込んでから、もう彼是十哩も歩いてゐた。朝に旅籠屋を立つてから七八哩の間はみづたまりに馬の足痕の新しい路を、森から野、野から森、二三度人にも邂逅でつくわした。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それから急に思いついて「曠野あらの」という中世風なものがなしい物語を書いた。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
吹きさらす曠野あらのの駅に兎をさげてぽつつりと待てるをぢも居り午後
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
彼等は曠野あらのと山と地の洞と穴とに周流さまよいたり
彼は曠野あらの彷徨さまよって行った。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
曠野あらの集の付句に
かはたれ時 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
蜜と蝗蟲いなごとはかの洗禮者バテイスタ曠野あらのにやしなへるかてなりき、是故に彼榮え、その大いなること 一五一—一五三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
汽車きしやはたゞ、曠野あらの暗夜やみ時々とき/″\けつまづくやうにあわたゞしくぎた。あとで、あゝ、あれが横濱よこはまだつたのかとおもところも、あめれしよびれた棒杭ぼうぐひごと夜目よめうつつた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんじはこの曠野あらのに我等を導きいだして、この全会をうえに死なしめんとするなり。」
風の便り (新字新仮名) / 太宰治(著)
世の人はポンチネの大澤たいたく(パルウヂ、ポンチネ)といふ名を聞きて、見わたす限りの曠野あらのに泥まじりの死水をたゝへたる間を、旅客の心細くもたどり行くらんやうにおもひすなるべし。
曠野あらの行く四等車といふにかほ群れて生きたかりける冬もたのめし
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
曠野あらののようにしらじらと残っているばかりであった。
曠野 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
曠野あらのゆく汽車のごとくに
悲しき玩具 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
くもくらし、くもくらし、曠野あらの徜徉さまよかり公子こうしが、けものてら炬火たいまつは、末枯うらがれ尾花をばな落葉おちばべにゆるにこそ。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
群れにけり曠野あらの寒きにぶしゆぶしゆと黒豚づれが土饅頭どまんぢゆう食む
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
曠野あらのの汽車の窓をてらせり
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
曠野あらの
雲は低く灰汁あくみなぎらして、蒼穹あおぞらの奥、黒く流るる処、げに直顕ちょっけんせる飛行機の、一万里の荒海、八千里の曠野あらの五月闇さつきやみを、一閃いっせんし、かすめ去って、飛ぶに似て、似ぬものよ。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
曠野あらのより帰るごとくに
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
曠野あらのの、鳴る沢の
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うらやましさうにながめながら、喜多八きたはち曠野あらのちた團栗どんぐりで、とぼんとしてつてた。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そこを——三光坂上の葭簀張よしずばりを出た——この老人はうらがれを摘んだかごをただ一人で手に提げつつ、曠野あらのの路を辿たどるがごとく、烏瓜のぽっちりと赤いのを、蝙蝠傘こうもりがさからめていて、青い鳶を目的めあて
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鷹狩の連中は、曠野あらのの、塚のしるしの松の根に、みおに寄ったふなのように、うようよたかって、あぶあぶして、あやい笠が泳ぐやら、陣羽織が流れるやら。大小をさしたものが、ちっとは雨にも濡れたがい。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この見果みはてぬ曠野あらのに。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
曠野あらの
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)