方向はうかう)” の例文
公之をうれへ、田中不二麿ふじまろ、丹羽淳太郎等と議して、大義しんほろぼすの令を下す、實に已むことを得ざるのきよに出づ。一藩の方向はうかう以て定れり。
御米およねもつまりはをつと歸宅後きたくご會話くわいわ材料ざいれうとして、伊藤公いとうこう引合ひきあひぐらゐところだから、宗助そうすけすゝまない方向はうかうへは、たつてはなし引張ひつぱりたくはなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
が、小娘こむすめわたくし頓著とんぢやくする氣色けしきえず、まどからそとくびをのばして、やみかぜ銀杏返いてふがへしのびんそよがせながら、ぢつと汽車きしやすす方向はうかうやつてゐる。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
むし地味ぢみ移氣うつりぎこゝろ際限さいげんもなくひとつをふには年齡ねんれいあまり彼等かれら冷靜れいせい方向はうかうかたむかしめてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
今迄いまゝですこしも心付こゝろづかなかつたが、たゞる、わが弦月丸げんげつまる左舷船尾さげんせんび方向はうかう二三海里かいりへだゝつた海上かいじやうあたつて、また一かすか砲聲ほうせいひゞきともに、タールおけ油樽等あぶらだるとう燃燒もやすにやあらん、㷔々えん/\たる猛火まうくわうみてらして
その光明くわうみやうのある方向はうかうさへも、誰もゆびさしてくれるものはなかつた。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
講和問題かうわもんだい新婦しんぷ新郎しんらう涜職事件とくしよくじけん死亡廣告しばうくわうこく——わたくし隧道トンネルへはひつた一瞬間しゆんかん汽車きしやはしつてゐる方向はうかうぎやくになつたやうな錯覺さくかくかんじながら、それらの索漠さくばくとした記事きじから記事きじほとんど
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かれかんがへた。けれどもかんがへる方向はうかうも、かんがへる問題もんだい實質じつしつも、ほとんどつらまえやうのない空漠くうばくなものであつた。かれかんがへながら、自分じぶん非常ひじやう迂濶うくわつ眞似まねをしてゐるのではなからうかとうたがつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
きはめてそつとしかさわがしさううごくもたかひく反對はんたい方向はうかう交叉かうさしつゝあるのをるとともに、枯燥こさうしかけた草木くさきあひあひつてはだん/\とやぶれつゝざわ/\とかなしげなひゞきてゝつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
むかしやうくわつげきして、すぐ叔母をばところ談判だんぱんける氣色けしきもなければ、今迄いままで自分じぶんたいして、世話せわにならないでもひとやうに、餘所よそ々々/\しく仕向しむけておとうと態度たいどきふ方向はうかうてんじたのを
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)