さげ)” の例文
その花を、たくましい腕のやうな蔓がひつさげて、あちこち気儘にはひ廻り、そして私達の住居を囲み、私達夫婦の『繊細な暮し』を脅かしはじめた。
泥鰌 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
おびもせざる女片手かたて小児せうに背負せおひ提灯ちやうちんさげ高処たかきところにげのぼるは、ちかければそこらあらはに見ゆ、いのちとつりがへなればなにをもはづかしとはおもふべからず。
おたあちやんが、不図ふと見ますと、おきいちやんのさげてゐる籠の一番上に、憎い憎い三又土筆が載つてゐました。
虹の橋 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
くんで持ち出で傳吉の足をあら行燈あんどうさげ先に立ち座敷へ伴ひ木枕きまくらを出しちと寢轉ねころび給へとて娘は勝手へ立ち行き半時ばかり出で來らず傳吉はかしらめぐら家内かないの樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひっさげて、政道の一線に立つものはああいう最期を遂げたいものじゃ。うらやましい事よ喃
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
種員は桟留さんとめひとさげを腰に下げて席を立ちかけたが、その時女中に案内されて梯子段はしごだんあがって来たのは、何処どこぞ問屋の旦那衆かとも思われるような品の好い四十あまりの男であった。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しゃがんで、力なげに一服吸って三服目をはたいた、駄六張だろくばり真鍮しんちゅう煙管きせる雁首がんくびをかえして、つついて火を寄せて、二ツさげ煙草入たばこいれにコツンと指し、手拭てぬぐいと一所にぐいと三尺に挟んで立上り
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とも気づかず、抜刀ぬきみを鞘に入れる間もなく駈けてきた大月玄蕃が、思わず、駕わきの侍にドンとぶつかった。ふと見ると、さげがたなの浪人が、血相変えて行列をけようとしたので
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
象牙の根附ねつけ銀鎖ぎんぐさり附きたる菖蒲皮しょうぶかわさげ煙草入、駒下駄と云ふこしらへにて、きつかけなしに揚幕より出で、金五郎を呼び止めて意見をし、花道にいきかけたる勘十郎に向ひて、堪忍の歌を繰返し
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
生れてからしたことはない。物を買うに何だ、ぜにやって買うに少しも構うことはないとう気で、顔も頭も丸出しで、士族だから大小はすが、徳利とくりさげて、夜は扨置さておき白昼公然、町の店に行く。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
蛍籠さげて聞夜や後夜ごやの鐘 半残
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
その花を、たくましい腕のやうな蔓がひつさげて、あちこち気儘にはひ廻り、そして私達の住居を囲み、私達夫婦の『繊細な暮し』を脅かしはじめた。
小熊秀雄全集-15:小説 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
さげ合羽かつぱの穴より鮫鞘さめざやの大脇差を顯はし水晶すゐしやう長總ながふさ珠數じゆずを首に懸し一の男來懸きかゝりしが此容子ようすを見るより物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
観人みるひとぐんをなして大入なれば、さるの如きわらべどもにのぼりてみるもあり。小娘ちひさきむすめざるさげ冰々こほり/\とよびて土間どまの中をる。ざるのなかへ木の青葉あをばをしき雪のこほりかたまりをうる也。
ふたさげの——もうこの頃では、山の爺がむ煙草がバットで差支えないのだけれど、事実を報道する——根附ねつけの処を、独鈷とっこのように振りながら、煙管きせる手弄てなぶりつつ、ぶらりと降りたが
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
観人みるひとぐんをなして大入なれば、さるの如きわらべどもにのぼりてみるもあり。小娘ちひさきむすめざるさげ冰々こほり/\とよびて土間どまの中をる。ざるのなかへ木の青葉あをばをしき雪のこほりかたまりをうる也。
かけければ三人はたゞゆめに夢見し心地にて引立ひきたてられつゝ行所に身のたけ六尺有餘の大男おほをとこ黒羽二重くろはぶたへ小袖こそでに黒八丈の羽織朱鞘しゆざや大小だいせう十手じつて取繩とりなはこしさげのさ/\と出來りしに小猿三吉はこし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
で、ふたさげ煙管きせる突込つツこ
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こは何事なにごとやらんとむねもをどりてふしたる一間ひとまをはせいでければ、いへあるじ両手りやうてものさげ、水あがり也とく/\うら掘揚ほりあげ立退たちのき給へ、といひすてゝ持たる物を二階へはこびゆく。